★まみそアンプ
2009年5月9日開催の「春のヘッドフォン祭 2009」に出展されましたOJI Special(山陽化成有限会社)仕様のバランスヘッドフォンアンプです。
特注品で製品名が存在しないため通称「まみそアンプ」とでも名付けておくことにします。
※人によって構成やパーツが違うこと、材料費の変動等様々な理由により、例え同じアンプであっても製作価格が違ってくるため、制作費は時価となっております。
★特徴
新時代のハイエンドバランスヘッドフォンの特徴を生かすために完全DCアンプ構成と共通インピーダンスを排除した設計から生まれたハイスピードアンプです。
選別された各種パーツにより無駄な回路を省き、電源からモノラル構成の左右正負完全同一構成による完全DCアンプで製作しています。
バランスヘッドフォンの特長を生かすためにDCアンプによる低域のドライブ力、高精度な広帯域回路とパーツ仕様によるクリアーで抜けの良いサウンドを目指しました。
構成は入力アンバランスバランス変換回路とセレクターそしてアッテネータからバランスヘッドフォンドライブアンプを経てバランスヘッドフォンコネクタへ接続されます。
アンプ信号の流れを考慮して無駄のない構造を心がけています。
★仕様
■入力部
バランス1系統 アンバランス1系統 背面セレクタ
バランス入力コネクタ ノイトリック ロジウムメッキ
アンバランス入力コネクタ ノイトリックRCAタイプ金メッキ
入力インピーダンス 約50KΩ
■アッテネータ
東京光音電波製 4連シールド付きボリューム
■アンバランス→バランス変換回路
FET入力DCアンプ構成による変換回路
帯域外高周波フィルター付き(使用部品 シルバードマイカコンデンサー)
■バランスヘッドフォンドライブアンプ
FET入力DCアンプ構成による広帯域ドライブ回路
電圧ゲイン 約2.5
出力コネクタ (バランス) ノイトリック ロジウムメッキ
(Φ6.3アンバランス)金メッキタイプ
絶縁タイプフレームで共有アースはアースポイントに一点アース
アンバラ出力はバランスアンプを共有
■電源
左右独立 トロイダルコア大容量トランス
ショットキーダイオード整流、オーディオグレード 大容量電解コンデンサー 4ヶ
出力パスコン 大容量OS-CON、入力パスコン フィルムコンデンサー
AC入力コネクタ フルテック金メッキタイプ
ヒューズ コバルトヒューズ
■その他
オーディオ回路 使用抵抗 プレート抵抗
回路上のコンデンサー パスコンOSーCONのみ(一般アルミ電解コンデンサー不使用)
DC検出保護、電源ディレイ回路搭載
EIAラックマウントパネル
★インプレ
駆動力が高いヘッドフォンアンプと言えばAT-DHA3000が代表格だと思われるが、それと比べても比較にならない駆動力を持つ。
これがバランスアンプの駆動力というものなのか。
上流の音量レベルが一般的なアンバラ駆動ヘッドフォンアンプと同じと仮定すれば、まみそアンプの場合ボリュームは8時の位置で限界(始点を7時位置とする)。
実際に使用する際は上流で音量を絞り、アンプのボリューム位置はもう少し上げる状態となる。
無音状態で2時の位置を越えるあたりからノイズが出現するが、このレベルでの使用はまずあり得ないので問題ない。
非常にSN比は高いと言っていいだろう。
特徴は原音忠実。
私は原音忠実という言葉を嫌うが、まみそアンプに限れば原音忠実という言葉が最も適切。
入力された音を一切加工せずにそのまま増幅できるアンプ、それが一番の特徴だろう。
忠実に、そして正確に。
まみそアンプによって音が柔らかくなったり艶っぽくなったり、濃くなったりアッサリしたり、緩くなったり硬くなったりすることはない。
DACまでの音、そしてケーブル類によって作られた上流の音をそのまま増幅してくれる。
そのため、アンプで音が整えられることはなく、粗があればそのまま粗が出てくるし、バランスが悪ければ悪いまま音として出てくる。
私は環境の音をそのまま素直に出してくれるという意味でATH-W5000を高く評価しているが、それと同じイメージをまみそアンプに持ち、そして同じ意味で高評価したい。
アンプは音調、音色を決める部分という考えを覆し、アンプはDACで作られた音を一切の着色なしに増幅する装置であるという考え方を身をもって知ることとなった。
これを原音忠実以外の何と表現したらいいのであろうか、他に言葉が見つからない。
それにしても、オーディオという音の味付けを楽しむことに主眼を置くような世界において、これほど音色や鳴り方に対してストイックなアンプは稀なのではないだろうか。
上流の音をそのまま素直に増幅してくれるというのは喜ばしいことでもあり厳しいことでもある。
上流において一つでも自分にとって不満な部分があれば、それがそのまま音として出てしまうためアンプまでの経路で妥協が許されない。
ソースに含まれる音をそのまま出したいという視点からは勿論のこと、システムの欠点を確実に潰していけるという意味においても、まみそアンプは趣味のオーディオアンプと言うよりはモニターアンプとしての要素が強いアンプと言えそうである。
このような特徴をもったアンプであるため、音のインプレはあまり意味をなさない。
インプレを書くとすればそれは「オーディオシステムの音」を書くことになる。
私の環境では上流で構築された性能面が制限されることなくしっかり出し切れており、音楽性の高い柔らかくて優しくもキレや実体感のあるハイスピードな音となっている。
真空管アンプと比較した時にそれほど違和感を感じ無いことからも、決して無機質でクールな音のアンプではないことがよくわかる。
真空管等で独特の柔らかさやなめらかさ、艶っぽい音色を作らずとも、ソースに忠実に再生することでもまた高い音楽性を引き出せることを証明してくれたわけだ。
★アンバランス出力と比較
アンバランス出力はバランス出力と比べると全体的にモヤ&モワっとした感じになるため多少解像度が落ちるようである。
低域で比べると解像度の差がハッキリと確認できる。
アンバランス出力と比べると空間の見通しが良くなり微妙に音場感は向上しているように感じるが、このあたりの変化はヘッドフォンによる部分のほうが大きいように思う。
また、特に違いが顕著なのが音のキレで、バランス駆動のほうがハイパワーで音をビシっとコントロールできているのがよくわかる。
この特徴によってバランス駆動は音に優しさや柔らかさ、自然さがあっても決して音が緩まず、キレやアタック感、躍動感を失わないというアンバランス駆動では実現できない境地に到達している。
「自然さ、なめらかさ、優しさ、柔らかさ」と「キレ、実体感、ハイスピード感、アタック感」の高いレベルでの両立はバランス駆動の特権である。
小音量でもメリハリある音を維持できるのは感動。
しかし、アンバランス出力も非常にレベルが高く、それほど大きな差があるわけではない。
★まとめ
パっと聴いた時にアンバランス駆動と比べてすぐにわかるような差があるわけではないため、アンバランス駆動でのオーディオシステムを極限まで追い込み、もうこれ以上どうしようもないといった状態に陥った時、更に少しだけ上を目指せるのがバランス駆動だと私は感じた。
この微小な差と多額の投資が釣り合うと感じるか釣り合わないと感じるかは人それぞれだと思うが、ハイエンドの世界になればなるほど微々たる違いに多額の投資をすることになるので、そのあたりを理解し納得した上で導入することをお薦めする。
★KA-10SH [6DJ8ヘッドフォンアンプキット](春日無線変圧器)
春日無線変圧器の19AQ5単管・ステレオヘッドフォンアンプに続くヘッドフォンアンプキット。
設計は長島勝氏。
構造が非常に複雑で、立体的にパーツや線材が配置されている。
※詳細は春日無線変圧器Webサイトをご覧ください
★インプレ
※このインプレは可能な限り標準仕様に近い構成によるものとする
中低域は厚みがあり密度感が高く濃い音。
決してボワつかず半導体アンプのようなメリハリも兼ね備えている。
全域に渡って線が太く、低域から高域までしっかり音が出ており駆動力は文句無し。
基本的にどの球でもパワフルで力強い面が目立つが、優しく柔らかい面を持っているのは真空管ならでは。
その優しさや柔らかさが際立って目立つ球も存在する。
解像度は球によって差はあるが、必要十分なレベルは確保できており、音楽を聞く際に音が粗いと感じることはまずないだろう。
解像度と同時にSN比も球による差はあるが、どの球でも認識できるようなハッキリとしたノイズが出ることは皆無。
SN比は優秀と言えるレベルにあると感じる。
ボリュームは通常10時の位置付近で聞くことになるが、MAX(6時)まで上げてもノイズは聴覚上全く聞こえない。
レンジ感、解像度、情報量といった基本性能はコンデンサの換装等による改造で引き上げることが可能なので是非試してみて欲しい。
いくら「半導体アンプのような」と言っても真空管の鳴りであるのは確か。
半導体アンプと比べれば『輪郭が甘く』『メリハリ感が弱い』傾向があり、『全体感が強く』『芯が軟らかく』『ふんわり』とした鳴りを基調とする。
これらの点を利点と取るか欠点と取るかは好み次第だろう。
半導体アンプと差があるとは言ってもそれほど違いがあるわけでもなく、「違いがわからない」と感じる人がいてもおかしくない。
あまり気にせず、漠然と「聞きやすい音な気がする」程度に考えておいていいレベルの範囲内の差。
音のバランス、おおまかな傾向はどの球でもほぼ同じと言えるが、音色は使用する真空管によって変わってくるので断定することはできない。
艶やかさ、柔らかさ、力強さ、響きなどといった要素は球によりけり。
★まとめ
真空管アンプではあるが、かなり半導体アンプらしさの強い真空管アンプだと私は思う。
メリハリも兼ね備えたアンプなので、どのような音楽でもこなせるバランス型だと言えそうだ。
なんとなく聞きやすい音がして、中低域に厚み、密度感、濃さのある、線の太いしっかり音の出るアンプ、といった感じだろうか。
芯が軟らかく音の粒立ち感が弱い、及び音の分離感が弱く全体の音の繋がり感が強いため、ニュアンスをハッキリと聞き取りたい、言い換えればモニター的な意味で聞きたいという場合には向いておらず、全体の雰囲気、臨場感で音楽を感じたい場合には向いているように思う。
全体感の強さが影響しているのか、音と無音空間とのコントラストが弱い点は人によっては嫌う可能性があるが、逆にこの鳴り方を好む人もいるだろう。
真空管アンプなので当然と言えば当然だが、真空管アンプの鳴り方が根本的な部分で支配していると考えて間違いない。
分離感、定位感重視であれば半導体アンプを使い、臨場感重視であれば真空管アンプを使う。
このように音楽や気分によってアンプを使い分けるのも乙なものである。
★改造その1~カップリングコンデンサ変更~
カップリングコンデンサは無極性のため極性を合わせる必要性はないのだが、実際向きを変えて接続してみると、極性によって音質が変わるのを確認できる。
接続する向きは好みに合わせてどうぞ。
>auricapに変更
当たり前だがauricapの特徴が強く出てくるようになる。
解像度が非常に高く空間表現力、音場感に優れ、なによりバランスが良い。
この音と比べると標準仕様はボヤけた音だと感じる。
低域から高域までバランス良く出ており、とても自然な鳴りとなる。
豊富な情報量と超解像度によりサラサラとした細やかな音成分が満ちる感覚はSTAXのヘッドフォンを思わせる。
ふわっとした優しい鳴り方もSTAXを連想させる要因のひとつだろう。
ダイナミック型でありながらコンデンサー型ヘッドフォンのような音を手に入れることが可能。
この音をATH-W5000で聞けば、「ATH-W5000がSTAXのようだ」という例えに誰もが納得するだろう。(コンデンサー型と同等の高解像度を実現できるポテンシャルをATH-W5000が有しているという意味)
>DynamiCapsに変更
auricapに負けない性能、音場感。
なにより音楽性が高い。
言葉で説明するのは難しいのだが、あえて音質面の特徴を説明するならば音が濃く、粘りが出ることだろうか。
エージングが進むにつれ、この濃さや粘りが自然に溶け込んでいき、最終的に生命感へと変化する。
auricapも素晴らしいコンデンサだが、DynamiCapsは「auricap + 生命力」、そんな音のするコンデンサ。
有機的な生きた音を望む人に強くオススメしたい。
★改造その2~電解コンデンサを変更~
>16V100μFの部分をシルミックⅡ αに変更
シルミックはDACにも使用している個人的に好きなコンデンサ。
全体的に柔らかく優しい音となり、艶やか、そしてなめらか。
★改造その他
コンデンサ以外にも内部配線材や抵抗の変更、パーツ配置の変更、3Pインレット化やジャック類のパーツ変更、ボリュームの変更、振動対策やノイズ対策等々。
★改造まとめ
オーディオグレードのパーツに変更すればそれだけ制作費は嵩むものの、標準仕様と同じとは思えないハイクオリティーな音を手に入れることができる。
自作の強みは通常市販のアンプではまず使われることが無いハイエンドパーツを自由に使えること。
それはつまり、性能面においても市販のアンプを大きく超える可能性を秘めているということでもある。
改造を前提として製作するのであれば、極めて高い性能と音楽性を両立できるアンプとなるだろう。
★聞いたことのある真空管
※現存する球数に限りのある真空管では評価が及ぼす流通価格への影響が無いとは言い切れないため球別インプレは無しとします
○6DJ8 / SYLVANIA
○6DJ8 / Ei Elites 金足
○6922 / PhilipsECG
○E88CC / TESLA 軍刀マーク 金足 ※常用球
○E88CC / Mullard 金足
○E88CC / Amperex
○E88CC / JJ
○ECC88 / TRONAL (6N23P V1-77)
○ECC88 / PHILIPS MINIWATT
○E288CC / SIEMENS ※流石に凄い伝説の球
○6R-HH2 / 日立
○6N1P
○6N23P
○6BQ7A
○6ES8 / Zaerix
東京サウンドの真空管ヘッドフォンアンプ。
双三極管12AU7のプッシュプル方式で、非常に高出力、駆動力のあるアンプ。
なかなかコンパクトで場所をとらないのはgood。
★仕様
出力:650mW+650mW
使用真空管:12AU7x2
入力端子:RCAピンL・R
スルーアウト端子:RCAピンL・R
ヘッドフォン端子:標準ジャック(前面)、ミニジャック(後面)
周波数特性:10Hz~60KHz
残留ノイズ:0.1mV以下
適合ヘッドフォンインピーダンス:100Ω(16~100Ω)⇔100Ω以上(100~600Ω)
寸法:130Wx170Hx230Dmm
重量:3.4Kg
★インプレ
真空管らしい音ではあるものの、パワフルで肉付きの良い音で、「真空管=心地良い音」というイメージで聞くと少し違和感を感じる人もいるかもしれない。
決して心地良さが無いということではない。
心地良さ一辺倒でなく、半導体アンプ的なビシっとしたメリハリも兼ね備えていると解釈してほしい。
厚み、力感があり、音がぼやけることはなく適度に締まり、インパクトや躍動感を感じられる鳴り。
「半導体アンプと真空管アンプの美味しいところを合わせたようなアンプ」という印象を持った。
バランスはほぼフラット、どちらかと言えば中低域寄りで中域重視、高域は控えめ。
m902と比べると低域が低いところまで出ていないので物足りないが、厚みでカバーできているのでそれほど気にならない。
19AQ5単管ヘッドフォンアンプと比べれば低域はしっかり出る。
高域は若干控えめで派手さに欠け、刺激は無く優しさを感じるソフト系の高域。
SN比はなかなか優秀で、音楽を聞いててノイズ感が気になることはまず無いだろう。
解像度はそれほど高いとは思わないが、低いということも無くそれなりのレベル。
Valve X SEの鳴り方も影響し、あまり繊細な表現を得意とするアンプではないと感じた。
全体感が強く音をハッキリ分離するタイプではない。
このあたりは真空管の特徴でもあると思うのだが、音の厚みも相俟って全体で見たときの迫力に長けたアンプ。
響き成分がなめらかで非常に魅力的、このあたりは真空管ならではの特徴だろうか。
厚みがあり押し出しの強い鳴り、真空管らしい聞き疲れの無さも持っている。
これといった強い癖や個性はなく、非常にバランスのとれたスタンダードな音づくり。
万能タイプでどのようなジャンルの音楽にも対応できるだろう。
真空管ヘッドフォンアンプに興味のある人の入門用として安心してオススメできるヘッドフォンアンプ。
★AT-DHA3000
オーディオテクニカのフルデジタルヘッドフォンアンプ。
筐体が大きく重量感がある。
デジタル入力専用のヘッドフォンアンプで、DACを内蔵しており、ヘッドフォンアンプとしてのみの使用は不可能。
★仕様
型式 フルデジタルステレオヘッドホンアンプ
DAコンバータ 24ビットオーバーサンプリング フルーエンシ型DAコンバータ
入力端子(デジタル) 同軸×1系統
光(角形)×2系統
スルー出力端子(デジタル) 同軸×1系統
光(角形)×2系統
入力サンプリング周波数 32kHz、44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz
ヘッドホン出力端子 φ6.3標準ステレオジャック×1
φ3.5ステレオミニジャック×1
推奨負荷インピーダンス 16Ω~600Ω(ヘッドホン1台使用時)
32Ω~600Ω(ヘッドホン2台使用時)
最大出力 250mW+250mW(16Ω負荷、LOWポジション)
125mW+125mW(32Ω負荷、LOWポジション)
180mW+180mW(49Ω負荷、MIDポジション)
65mW+65mW(300Ω負荷、HIGHポジション)
周波数特性(+3dB、-2.5dB) 10Hz~20kHz(サンプリング周波数48kHz時)
10Hz~40kHz(サンプリング周波数96kHz時)
全高調波歪率 0.03%以下(1kHz、180mW出力時、49Ω負荷)
チャンネル間セパレーション 68dB(20~20kHz、49Ω負荷)
利得 LOW 6.0dB、MID 10.0dB、HIGH 13.5dB
SN比 90dB(JISA、MID、49Ω負荷)
デジタルイコライザーコントロール
BASS±4dB
TREBLE±4dB
電源 AC100V、50/60Hz(インレット入力)
消費電力 34W
外形寸法 H93×W310×D230mm(突起部除く)
質量 5.3kg
付属品 OFC電源ケーブル(2m)
★インプレ
「本当にヘッドフォンアンプ?」と思える程に強力な駆動力を持っており、スピーカーも鳴らせそうに思える。
この強大なパワーにより、悠々と全てのヘッドフォンを鳴らしきることが可能。
無音時のノイズ音が多少気になるが、余程の爆音にしない限り問題なく使えるレベル。
性能面において特に不満を感じる部分はなく、優秀な性能を有しているように思う。
とてもバランスのとれた音調。
僅かに低域の量感が少なく、中高域に重点を置いた音作りのように感じる。
このあたりはATH-L3000を活かすためにバランスを調整しているのかもしれない。
明瞭な音でありながら音の厚みがあり、アッサリしているわけでもなく濃い音というわけでもない。
艶やかさがあると言うわけでもなく艶やかさが無いわけでもない。
音が締まっているわけでもないが、緩いこともない。
音の広がりや響きは必要十分。
音は細くなく、どちらかと言えば太く力強さを感じる。
刺激的な音は出ず、柔らかく聞きやすい部類に属する。
これと言った突出した個性のないヘッドフォンアンプ。
この個性の無さが最大の良さだろう。
全ての要素が中間ポイントを突いてきている。
やはりこのアンプの特徴はパワフルさにあるのではないだろうか。
これほどパワーのあるヘッドフォンアンプは他にないだろう。
余裕のありすぎる駆動力により、厚みや力感を出しつつ、それでいて明瞭でクリアーな音質を実現できている。
m902と比較すると音場感、音の広がり、響きが優れており、空間的に余裕をもって鳴らしている印象を受ける。
解像度が高く明瞭、高域が若干派手で、低域の締まりと量感、躍動感があるのはm902。
なんでもこなせるAT-DHA3000、ロックやメタルと相性抜群なm902といった感じだろうか。
AT-DHA3000はDAC&アンプの一体型として見ると非常に優れたクオリティーを持っており、一体型としての完成度はm902を上回るように私は思うが、勿論これは人それぞれ好みによって変わってくるだろう。
イコライザー機能がついており、低域や高域を微調整可能。
私は必要性を感じ無いが、人によっては便利な機能となりそうだ。
editon9やATH-L3000といった、濃い音でありながらもクリアーさを必要とするヘッドフォンとの相性が良い。
低域で厚みや濃さを出しつつ、中高域で解像度が高くクリアーな音質を引き出すことができる。
もう少しメリハリをつけたい、もう少し柔らかさが欲しい、などといった時はケーブルやインシュレーターなどで微調整するといいだろう。
バランスのとれた音なので、自分好みの音へもっていくのが楽な点も見逃せない。
★19AQ5単管・ステレオヘッドフォンアンプ(春日無線変圧器)
画像を見ての通り、通常版とは見た目と中身が違う。
何が違うとは細かく説明しないが、改造してあるので通常版とは少し音が違うということを最初に補足しておく。
※以下の感想は全てm902との比較になっていることに注意
★19AQ5
慣れ親しんだm902と比較して、まず一聴して解像度の低さ、音の分離の低さ、情報量の低下といった所謂基本性能と言われる部分の低下を感じた。
しかし、これらの点に関しては音を聞く前から予想していたのと、思っていたより遥かにクリアーで綺麗な音が出てるなと逆に驚いたものだ。
というよりも、私はいわゆるモニター的な音とは対極のアナログ的な音を真空管アンプに期待していたので、「期待通り!」の音だと言えるだろう。
各音をそれぞれビシっと分離せず音が繋がり全体で聞かせる感覚は、全体で見たときの音の厚みや密度感が増し、解像度の低さから粗が見えるが、この粗が空気感を感じやすく音の温かみを感じさせてくれる。
この鳴り方から、音楽の世界にどっぷりと浸ることができるヘッドフォンアンプだと私は感じた。
情報量の低下も関与しているとは思うのだが、微細な表現、ニュアンスまで明確に描き出すことができなくなってしまい、リアリティ、実体感といった部分の減少は否めない。
バランス的にはほぼフラット~中高域寄り。
高域は鋭く刺さる高域ではなく、角が取れて刺激の無い聞きやすい音。
かなりキツめのソースでも心地良く聞かせてくれる。
ノイズは皆無。
真空管なのでノイズは付き物かと思っていたのだが、ノイズを感じることは今のところ全く無し。
SN比はかなり優秀なようだ。
m902と比較しても同等レベル(差を感じ無い)。
一番気に入ったのが、音像がぼやけたこと(イイ意味で)。
一見悪いことのように思われるが、これによって音がピンポイントではなく広範囲で出てくるようになった。
一番分かりやすい例だとVo。簡単に、極端に言えば小口ではなく大口。
空間全体にVoの声が響き満ちる感覚を存分に引き出してくれる。
ただし、空間の広さを感じにくくなってしまうのが欠点だろう。
m902では各音がハッキリと分離し、それぞれの楽器の位置があり、その距離感がしっかり把握できるので、空間の広さをイメージしやすい。
対して真空管アンプは分離感が弱く、音が繋がり全体で鳴らすので、距離感を感じにくい。
当然どちらが良いとは言えない。
それぞれに利点があるように私は思う。
私的には真空管の鳴り方こそ理想だったりする。
★WE408A
この真空管HPAには408Aという球も使うことができる。
バランスは中高域寄り。
どっしり、ぐっとくる低音が出ないので、全体的にアッサリした印象で、スッキリしてて外見上の解像度は高く感じる。
その代償と言ってはなんだが、中高域の美しさは圧倒的。
高域は繊細で可憐、響きを楽しむことができる。
Voの魅力を非常に引き出してくれる球である。
★19AQ5と408A
個人的には19AQ5のほうが好み、私の中にあった「真空管の音」のイメージにビシっとはまった。
408Aは低域が出ないのが最大の弱点、中高域の美しさは抜群なのだが・・・
私の好みからすると、総合力で19AQ5、中高域の美しさに限定するなら408Aといった感じだろうか。
どちらも良さがあるのでジャンルや気分によって使い分けができそうだ。
★電源ケーブル
私の真空管HPAは3Pインレットに変更してあるので、電源ケーブルを付け替えることが可能。
電源ケーブルによって音が変わることを痛感しているので、これだけは絶対に必要だと思ったのだ。
結論だけ言うが、電源ケーブル次第で低域の弱さは改善可能。
情報量や解像度といった基本性能部分も向上させることができる。
物足りないと感じる部分を補えるような特性を持つ電源ケーブルを合わせるといいだろう。
現在のシステムでは、m902のヘッドフォン出力を完全に上回った(より私好みの)音を真空管HPAから出せている。
★真空管+ヘッドフォン
真空管アンプで鳴らすとイイかも!?と思っていた機種がいくつかある。
GRADO RS-1 : 艶やかな音を出すRS-1、良さを更に伸ばせそう?
ULTRASONE edition9 : 高域の刺激を上手く和らげられるか?
EXH-313ver2.0 : メイン機種USTヘッドフォンはどう生まれ変わる?
SENNHEISER HD25 : 番外編
それぞれ簡単にコメントしていこう。
(☆はヘッドフォンと真空管の相性、最高☆5個)
■GRADO RS-1 + 19AQ5 ☆☆☆☆☆
音に厚みが出て重厚になった。
どこか音がスカスカしたイメージのあったRS-1の弱点を上手く補完できたと言えそうだ。
RS-1のイイ部分が上手いこと伸びており、悪くなったと感じる要素は無し。
元々音場感を得意とする機種ではないので、真空管の鳴り方が上手くはまったように思う。
RS-1の売りであるVoは前に出てきて更に魅力的になった。
こいつはかなりイイぞ。
■GRADO RS-1 + 408A ☆☆☆☆☆☆
19AQ5と同様、これもまた合う。
中高域寄りな408AがRS-1の艶やかな音を更に艶やかにしてくれる。
バイオリンの音などは涎が出そうだ。
これは・・・満点以上の☆6個つけよう。
RS-1は真空管で聞くべし!
■ULTRASONE edition9 + 19AQ5 ☆
モニター的でHiFiな傾向のあるedition9に真空管のアナログ感は合わないようだ。
edition9の良さである高解像度、音の分離感、情報量といった部分が減ってしまい、edition9の売りと言える部分を減退させてしまっている。
んまぁ、これはこれで良い音ではあるのだが、edition9らしいとは言えない。
何に繋いでも性能の高さを感じさせてくれるのは流石だが、全然真価を発揮できていないので相性は悪いと判断。
■ULTRASONE edition9 + 408A ☆
確かに、素晴らしい音ではある。
が、edition9でこの音はどうなんだろう?
やっぱり、バキバキに高解像度、締まり、メリハリある音にシステム組んだほうがedition9らしくて良いと個人的には思う。
■EXH-313ver2.0 + 19AQ5 ☆☆☆
USTと真空管がこれほど合うとは・・・
USTが元々持つ心地良さをグンとUPさせることに成功。
真空管の全体で鳴らす感覚により音が空間に満ち、音に包まれる感が倍増。
音楽の世界にどっぷりと浸ることができる。
より心地良く!より聞きやすく!
最強のヒーリングカップルの誕生である。
ただし、空間表現力が落ちるのが欠点なので☆は3個。
■EXH-313ver2.0 + 408A ☆☆☆☆
USTは元々Voを得意としているが、この組み合わせはもう・・・
なんと表現したらいいのかわからない程に美音。
中高域の美しさは圧倒的なまでにm902を上回る。
我が家では女性Voモノを最も魅力的に聞かせてくれる組み合わせ。
空間表現は19AQ5より上のため☆4個。
■SENNHEISER HD25 + 408A ☆☆☆☆☆
これは予定になかったのだが、たまたまHD25を使ってみたら予想外に良かったので番外編として載せておく。
HD25の音のイメージからして、真空管には合わないだろ!
と決め付けていたのだが、意外や意外これが合う。
特に408Aとの相性は素晴らしく、お互いが上手く弱点を補完し合っている。
低域の量感があるHD25と中高域の量感の多い408Aが合わさることで、なんとも絶妙なバランスになり、HD25らしさを維持しつつも真空管の魅力が上手く上乗せされている。
相変わらずロックには合うし、打ち込みやポップスなどへの適正度がアップしたように感じる。
★まとめ
真空管アンプでありながらノイズが無い点は非常に魅力があるのではないだろうか。
また、分析的には説明しにくいのだが、感覚的に「聞いてて心地良い」、「体が求めてしまう音」が19AQ5の音である。
★m902
私が初めて買ったヘッドフォンアンプ、それがGRACE DESIGN m902だ。
長いことお世話になっているなぁ、相棒と言っていいだろう。
まず最初に、なぜm902を買うことになったのか、その動機は?
私の場合はいたって単純な理由からだ。
PCがプレイヤーだから
本当にこれだけ、これだけの理由で買ったのだ。
m902はUBS接続に対応しているため、USBケーブルでPCと繋ぐだけでok。
これは便利!という理由で購入。
正直、当時は音に関しては深く考えていなかった。
本当にm902を買って正解だったと思える。
というのも、便利だからだ。
例えば、PCからの接続をしつつゲーム機との接続、更にm902から別のアンプへ接続。
オーディオシステムの核として機能することができる多機能なヘッドフォンアンプである。
★機能性
多彩な入力端子、それを前面にあるロータリー・インプット・セレクターをカチカチ回すだけで切り替えることができる便利さ。
出力端子があるので、真空管アンプへ出力したり、パワーアンプ→スピーカーと繋ぐことも可能だ。
過去にm902からBOSEのスピーカーM3に繋いでいたことがあるが、m902らしさが付加され高解像度な音で鳴っていたものだ。
豊富な入力端子、出力端子があってプリメインアンプとしても使える点に加え、わかりやすいデジタル音量、High Gain Modeにより+10dBできる点も重宝している。
それらよりも何よりも、一番助かるのがDAC内臓って点でしょーよ!
これが本当に大きい、大きすぎる。
DAC内臓の多機能ヘッドフォンアンプ、それがm902なのだ。
★音質インプレ
さて、音質について少し書いておこう。
音質は一言で言えばモニター系、高解像度、優秀なSN比、余計な味付けの無いスッキリとした寒色系の音色。
ただし、個人的には完全なるモニター系だとは感じ無い。
程よい響きや柔らかさも兼ね備えており、多少の音楽性も持っている。
非常にクリアーな音質で、躍動感に溢れ元気の良い音。
若干線が細めで厚みに欠ける音だが、締まった低域や繊細かつ芯のある高域は魅力的。
私のようなメタルを好んで聞く人にはもってこいの音だろう。
SR-325やedition9との相性が非常に良い。
★使い勝手の良い特性
m902はm902自体が強い個性を持っていないので、他の機器への影響力が少なくシステムに組み込みやすい。
多少m902らしさは乗るものの、基本的に上流で作った音を素直にそのまま増幅することができるのはm902の優れた部分であり強み。
このような特性を持っているので、電源ケーブルやインシュレーターなどの効果がハッキリと現れる。
先程の「上流で作った音を素直にそのまま増幅する」を言い換えるならば、「まわりの環境に染まりやすい」と言える。
そのため、音質チェッカーとしても優秀であると同時に、オーディオアクセサリーを使って自分の好みの音へもっていきやすい。
つまり、どのようなCDプレイヤー、又はDACと組み合わせても上手く適応することができる。
★総評
多機能で便利な上、他機器との相性で悩む必要の無いヘッドフォンアンプ。
単体(DAC&アンプ)で使用した場合には「m902」といった音になるが、先ほど言ったとおり「まわりの環境に染まりやすい」特性を持っているので自分好みの音にしやすいし、後にプレイヤーやDACをグレードアップさせたとしても、「上流で作った音を素直にそのまま増幅する」という特性を持っているのでそのまま流用が可能。
つまり、長く使える万能選手、そんなヘッドフォンアンプであると私は思う。特にPCを使用する時間が多い人にはオススメ。オーディオ用のラインもPCのラインも同時にm902に繋ぎ、セレクターで簡単に切り替えることが可能な点は想像以上に便利である。
ヘッドホン、イヤホン、アンプ、ヘッドホンケーブル大放出!ヘッドホンを売るのはコレが最後になりそうです。興味のある機種などありましたらお気軽にご連絡ください。よろしくです。
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