型番:MDR-EX1000
メーカー:SONY
タイプ:密閉ダイナミック型
再生周波数帯域:3 - 30,000Hz
インピーダンス:32Ω
感度:108dB
質量:8g(コード別)
ケーブル長:1.2m/0.6m 7N-OFCリッツ線(両出し)
プラグ1:金メッキL型ステレオミニプラグ(1.2m コード)
プラグ2:金メッキステレオミニプラグ(0.6m コード)
その他:ケーブル着脱式
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付属のイヤーピースにフィットするサイズがあれば装着感は問題なさそうです。ジワジワ抜けてくる場合はコンプライに付け替えることで安定した装着感を得られます。ケーブルはしなやかで、絡みにくいので煩わしさを感じることがなくgood。遮音性はいまいちで外の音が普通に聞こえます。外の音が聞こえて安全と考える人にとっては良いものの、音楽に没頭したい人にとっては致命的な欠点となる恐れがあります。ケーブルが着脱式で、もしもの断線に対応できる点は安心感がありますね。
量感バランスはフラット~やや低域寄り。基本性能は十分に高く、特に低域の解像度の高さはハイレベル。細部の音を明確に表現できる解像度の高さには素直に驚きを感じます。容易に個々の音に意識が行き届くだけの分離感がありつつも、音が分離しすぎることがなく全体の一体感、統一感を併せ持つ絶妙なバランス感覚を持っています。そして何よりも推したいのが、個人的にMDR-EX1000の最大の強みだと感じている低域のクオリティです。MDR-EX1000の低域の解像度と分離感の高さ、多彩な表現力は素晴らしく、タイトな打音から更に低いベース音までを見事に描き分け、量ではなく質で勝負できる最高峰の低域を実現できています。もしヘッドホンでこのレベルの低域の分離感を持った機種を探すとなると、そうそう見つかるものではありません。耳とドライバーユニットとの距離が短く、音をダイレクトに聞くことができるイヤホンの強みを上手く活かしたお手本のような低域ではないでしょうか。具体的には、濃くグゥっと沈み込み、重さや密度感を感じられる低域で、豊かさとタイトさが上手く噛み合っています。唯一気になるのは、低音をより低音らしく感じさせるような強調感、別の言い方をすれば人工的な癖を多少感じること。とは言っても、無駄に響きを乗せることなく重く分厚く質量感があり、それでいながら息が詰まるような重苦しさを感じさせないMDR-EX1000の低域は、癖があるという点を差し引いても個人的には最大限の評価をしたい部分です。中域~高域にかけては、派手さが無く統一感、連帯感を大事にした堅実な音作りで安定感のあるものです。高域方向へはしっかりと音が伸びますが、際限なくノビノビと音が伸びていくのではなく、許容範囲内でコントロールして鳴らしている印象を受けます。線が細かったり、音の輪郭が鋭利なわけでもなく、線が太く筋肉質であったり、音が柔らかいこともなく、力強いというわけでもなく繊細というわけでもなく、これといった特徴の無い音をしています。これは言い換えるならば、癖の少ない日常生活に溶け込むような自然な音と言えるのかもしれません。そして、もしMDR-EX1000の中~高音を表現する時にひとつだけ言葉を選ぶなら、「正確な音」というのが最もイメージに合致します。この「正確な音」は全体的な印象としても言えることです。
音の方向性は、「優等生」という言葉が的確にMDR-EX1000のキャラクターを表しているように思います。良くも悪くもソニーらしい音作りで、低域を除けば色付けは皆無に等しく、モニター的と言える音をしています。柔らかさ、派手さ、煌びやかさ、熱気や色気などを演出するわけではありませんし、かといって冷徹、寒色系、硬質と言うわけでもありません。実に中庸、ソースに忠実に音を出します。低域から高域までを、自分のコントロールできる範囲内で制御する堅実さ。決して暴れずぶれず、どっしりと腰を下ろし、安定感のある分厚いサウンド。暴れずミスをせず丁寧かつ正確に、日本人気質な精巧なサウンド。何か一つ得意科目があるタイプではなく、全ての科目で確実に高得点を叩き出し、掌の上で音を自在に転がす「優等生」、それがMDR-EX1000の正体です。原音忠実性という部分を重視する人にとっては、かなりポイントの高いイヤホンになり得ると思います。
あえて欠点をあげるならば、キャラクターが薄いだけに面白さがないことでしょうか。突出した特長がないため、音色での求心力、鳴り方での求心力が弱いように思います。無表情、無機質、淡白な音だと言えなくもない点は否定できず、実際ボーカルモノのように感情表現が鍵となる楽曲は苦手な部類だと私は感じます。しかし、この特性は欠点でもあり利点でもあると私は考えます。なぜなら、独自の色が薄いからこそ環境側の音が乗りやすいからです。下記で再度述べますが、このMDR-EX1000の無個性路線は考え方によっては強みとなるのです。ただひとつ、音の流れ、それによるノリの良さはお世辞にも「素晴らしい!」とは言えないイヤホンです。この部分は環境側で調整が効きにくい部分であって、イヤホンに大きく依存する部分です。MDR-EX1000は所謂「前ノリ」に関してはやや良い部類に入るように思いますが、対して「縦ノリ」に関しては弱い部類に属し、淡々と音楽が進行していく感覚があり、ノリが良いにも関わらずノリが悪いという「どっちやねん」状態に陥ります。ノリの良し悪しについては、どちらのノリを強く意識するか、感じるかで個人差が出るところなので、一概にノリが悪いと断定することはできません。
MDR-EX1000は非常に環境追従性の高いイヤホンです。性能面や音色、音場感が環境に合わせて変化します。元々色付けがなく演出効果が少ないだけに、アンプの味が素直に反映されるのでしょう。特に中高域でアンプの色がハッキリ出るので、MDR-EX1000のキャラクターの薄さは問題視すべき点ではないように思います。あまりソリッドな音に追い込むのではなく、響きを増して色付けすることで「遊び心を持った優等生」へと変身します。ポータブルアンプを使用して、自分好みの音に調整する楽しみを存分に味わえるイヤホンですね。ちなみに、MDR-EX1000の音場は、横は狭め、前後、上下にそこそこ広い空間を作り、立体的に音像を配置します。この状態をベースとして、アンプによっては更に前後感を出すことが可能です。
得意ジャンルはオールジャンル。何を聞いても良い音だと思わせてくれます。ただし、アンプを使用しない場合は、キャラクターが薄いので、ボーカルモノや生楽器は多少苦手と言えなくもありません。また、MDR-EX1000は高域の処理が上手いイヤホンなのですが、この良さがipodに直挿し程度では感じることができず、解像度不足で高域がゴチャゴチャ、ガヤガヤしてしまうため、音数の多い楽曲でうるさくなってしまいます。MDR-EX1000の高域のポテンシャルを引き出すために、是非ともアンプ等で基本性能を底上げして使用してほしいと思います。
音は素晴らしく良いと断言します。何を持って高音質かは別として、単純に誰が聞いても「高音質だ!」と思わせる音です。これって簡単なようで実に難しいと私は思います。アンプを使用することで色々な表情を見せてくれる点も良いですね。MDR-EX1000は、イヤホンにおける高音質とは何か、そのひとつの基準、指針としてもいいのでは?と思えるだけのクオリティーを持ったイヤホンです。
型番:K3003
メーカー:AKG
タイプ:密閉ハイブリッド型(ダイナミック型&BA型)
再生周波数帯域:10 - 30,000Hz
インピーダンス:8Ω
感度:104dB
質量:10g(コード別)
ケーブル長:1.2m(両だし)
プラグ:3.5φステレオミニストレート
その他:ケーブル着脱不可
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造形は奇をてらったものではなく、シンプルな円柱形。材質はステンレス製で質感が良く、重量があり存在感をアピールしてくれます。スポっと耳に収まる装着感は快適。装着し難い、抜けやすい、ずれやすい、ケーブルが絡みやすい、といったマイナス要素が無く扱いやすいイヤホンです。遮音性は良いとは言えず、外の音が聞こえてきます。ただひとつ、高価なイヤホンなだけに、ケーブル交換ができないのは残念です。
量感バランスはフラット~低域寄り。広範囲で鳴る低域の影響で聴覚上僅かに低域寄りに感じます。基本性能は非常に高く、解像度、レンジ、情報量、どれを取ってもトップクラス。中でも情報量の多さは抜けており、情報量で押し切るイメージを持つほどです。高解像度な中高域の影響もありますが、他のイヤホンで知覚できないような音に気づかされることが多々あります。低域の解像度は少し弱め。中高域の解像度が高いので、相対的に低域の解像度が弱く感じます。レンジ面では特に高域方向へよく音が伸びます。密閉型でありながら高域がよく伸びるのは、音の流れが綺麗な証拠、形状の勝利、構造の勝利。K3003の高域は奇跡的にノビノビと抜けていきます。頭打ち感がなく伸びきる高域は気持ちが良いですね。また、音の応答速度が非常に速く、リズム感に優れています。そのため音楽との一体感が強く、楽しく音楽に没頭することが可能です。
K3003は、低域はダイナミック型、中高域はBA型(バランスアーマチェア型)で鳴らすハイブリッド型イヤホンです。このハイブリッドテクノロジーによる音は実にユニークかつ魅力溢れるものであり、成功していると断言します。ダイナミック型で奏でられる低域は、豊かな情報量、迫力、音の厚み、力感、押し出し感といった音楽の持つパワー、エネルギッシュさを演出し、全体の雰囲気を形作ります。少し話が逸れますが、私が初めてK3003の音を聞いたときの感想が、「ヘッドホンみたいな鳴り方をするイヤホン」でした。後から知ったのですが、AKGのK3003の謳い文句は、「まるで高級大型ヘッドホンを聴いているかのような、サイズを超えた最上級のサウンド」なのですね。これは大いに納得できます。このイヤホンとは思えないスケール感は、全体感が強く広範囲で鳴る低域によってもたらされているのでしょう。あえて欠点を強引に挙げるならば、輪郭を強く描き実体感の強いゴリっとした低域ではないことでしょうか。しかし、これは欠点と言うよりも個性の差異。K3003の低域は、「実体感」ではなく「実在感」を感じさせるものであり、其処に音が「在る」ことを強く印象付けるものです。
対してBA型による中高域は、「そこまで作りこむか!?」というほどに精密に作られた銀細工のようで、どの角度から見ても一分の隙もない音像を形成します。場の空気感を臨場感たっぷりに再現する低域の中で、立体的で高精度かつ正確な音像が中高域によって形を成します。ハーモニーで聞かせる水彩画タイプではなく、キッチリ音を分離して鉛筆デッサンのように描写するタイプです。この中高域の音作りは、古代種K240 Sextett、異端児K1000、名機K701などと共通したものです。AKGは「まろ~ん」とした柔らかな音は作らないですね。シャキっとした素直な出音、そこに程よく金属的な艶が乗ります。そしてAKGの代名詞とも言える繊細さ、精細さは、K3003にしっかりと受け継がれています。飽きのこないAKGサウンドであり、様々なジャンルに対応できるニュートラルな音です。
次に、ハイブリッドテクノロジーによる長所と短所ですが、個人的には短所は無いに等しく、圧倒的なまでに長所が光っているように思います。まず長所ですが、K3003は中高域が高精細であるため、中高域と比較することで低域の「ダイナミック感」が強調され、よりダイナミックに感じます。逆もまた然り、ダイナミック型の低域と比較することで、BA型の細かな表現力が際立つ結果となっています。このお互いを高め合う相乗効果がK3003の音の良さの原因のひとつであると私は確信しています。更に、音のノビの良さもこのハイブリッドテクノロジーが影響してるのではないかと私は考察します。構造的に優れているのはまず間違いないのですが、高域方向の空間をクリアーにすることで、音を目ならぬ耳で追いやすいように感じます。このように、タイプの違う鳴り方が混同しているにも関わらず、否、タイプの違う鳴り方を混同したからこそ、K3003はお互いの長所を高めることに成功したのでしょう。それにしても、このバランス感覚、チューニング精度には頭が下がります。
しかし、長所ばかりとはなかなかいかないもので、短所が無いわけではありません。冒頭で少し述べましたが、低域と中高域の性能差、主に解像度の差は存在します。また、低域は全体的に鳴らすのに対し、中高域はクリアーな空間に音像を配置します。この空間表現力の違いに違和感を感じる人もいるでしょう。この点に関しては、無理に統一感を追求するのではなく、それぞれ役割を分担することで長所を伸ばしたK3003独自の新しい音なのだと私は解釈しました。
得意ジャンルはオールジャンル。何が苦手というのは特にありません。イヤホンの規格を超えたスケール感、LIVE感を持ったイヤホンなので、人の声や生楽器のほうが良さを引き出せますね。今まで持っていたステンレス筐体の機種のイメージとはちょっと違い、K3003は後味の爽やかな清清しい艶、程よく人肌を感じられるような温もり、決して攻撃的にはならない音の先端を持っており、これらはボーカルを非常に魅力的に再生してくれます。ステンレス=クールなイメージは通用しません。K3003はパッションを感じるサウンドです。
K3003の音は、AKGの集大成とも言える完成度の高い音です。「もうイヤホンを買うことは無いかな」、そう思わせるだけの実力と魅力を持った機種です。しかし、悲しいかなハイエンドヘッドホンと比較してしまうと全てにおいて完敗です。それでも、イヤホンの枠の中であれば、№1を争えるだけのポテンシャルを持った機種だと私は思います。利便性、扱い易さ、ポータビリティ、音質といった総合力で考えれば、ドラクエでいう裏ボスクラスですかね。
今までありそうでなかった音。
オーディオ的な味付けを廃し、音楽を直球で伝えてくれる。
一見魅力の無い音なので嫌われる傾向にあるのは悲しい性。
発売当時と比べるとずいぶん価格も下がり手に入れやすくなっているので、物好きさんには一度聞いてみて欲しい機種である。
オーテクは、ヘッドホン販売をメインにしている企業では筆頭と言っていいだろう。
個人的には良いヘッドホンをいくつも開発しているように思うが、一部過激なアンチが存在する謎なメーカー。
私は記念モデルの中から、ヘッドホン2機種とイヤホンを購入。
正直、50周年という大きな節目なだけに、とんでもない化け物ヘッドホンを期待していた。
しかし、実際にお披露目されたのは無難なヘッドホンで少しガッカリ。
でも音はなかなか良いので好し。
今回のオーテクの無難な記念モデルからも感じたが、奢ったヘッドホンを造る流れがピークに達し、下降線へ入ったように感じる。
QUALIA 010やATH-L3000、EditionシリーズやSR-009、このような高級モデルは、FAのようなメーカーを除けば、しばらく開発されなくなるような気がしてならない。
そう考えると、現存するハイエンド機たちは、稀代の名機種として語り継がれる可能性もなくはない。
今後のヘッドホン界の流れに注目したい。
おそらくこの買収劇によってSTAXの収支は大幅に改善されるだろう。
しかし、品質の良し悪しと利益率は比例しない。
品質を落として利益を上げることは十分に可能。
要はコストと利益の最適なバランスのポイントにいかに近づけることができるかどうかだ。
STAXはこの点が下手だったのは事実。
コストがかかりすぎる、価格が高くなる、数が売れない、悪循環この上ない。
しかし、それでこそ維持される品質があったのも事実。
どうなるSTAX?
今年の最大の収穫はAKGのイヤホン、K3003だ。
これしかない。
音が良いと言うよりも、音楽を伝える能力が飛びぬけて高い。
音の流れが秀逸。
ドバーっと音楽の持っている魅力を余すことなく伝えてくれる。
詳細はレビューで書くとして、これは今のうちに買っとけ!と強くオススメする。
生産コスト高そう、高額、売れ難そう、嫌な雰囲気しかない。
生産中止になってからでは後悔するのみ。
外出時はイヤホンで音楽鑑賞、EX1000に始まりK3003で感動。
音楽を聞く時間が格段に増加。
来年の目標は
「ブログ記事を12以上書く」
これが今の自分にとってどれだけ厳しいノルマか・・・
というのも、なんと今年は記事を3つしか書いていないのだ。
これは酷い・・・
アクセス数が一日一桁ぐらいなら更新しなくても気にしないのだが、そうでもないので見に来て戴いている方に申し訳ない。
ひと月にひとつは記事を書くように頑張ろうと思う。
オーディオは時間と心に余裕がないと楽しめないもの。
時間に追われている今の自分にはオーディオを楽しむだけの余裕がない。
もっと精進しなければならないな。
いろいろと、頑張ります!
型番:HD800
メーカー:SENNHEISER
タイプ:開放ダイナミック型
再生周波数帯域:6 - 51,000Hz(-10dB)、14 - 44,100Hz(-3dB)
インピーダンス:300Ω
感度:102dB
質量:370g(コード別)
ケーブル長:3.0m(両だし)
プラグ:6.3φステレオ
その他:ケーブル着脱可能
装着感は良くもなく悪くもなく。側圧は緩め、イヤーパッドの質感はサラサラしており肌触りは良好だが薄く硬め、370gという重量もあり前傾姿勢になるとずれてきます。頭頂部が痛くなったり、耳が痛くなったりすることはなく、長時間リスニングに対応可能。ケーブルは軽くて癖がなく、音楽鑑賞時にさほど気にならない点はgood。外観に関しては、高級感溢れる質感で近未来的なクールビューティーヘッドホンと感じるか、プラモデルのような安っぽさのあるオモチャヘッドホンと感じるか、どちらとも言えないギリギリのラインにあるように思います。個人的には後者ですが、、、いずれにせよ、奇抜なデザインであることは間違いないので好みが分かれそうですね。
量感バランスはほぼフラット。基本性能はなかなか高いのですが、それ以上にオーディオとしての音作りの完成度の高さのほうが際立っています。「自然さ」を極めるとこのような音になるのかと、しばし時を忘れて感嘆してしまう程に隙の無い音作り。広大な音場と広角的な音の鳴り方、そして細部まで明確に描くと言うよりも、ひたすら細かく微粒子の如く音を表現する解像度感は、コンデンサー型であるSTAXを連想させます。情報量が多く、非常に細かな音まで、隅々の音まで出し切り、例えば残響成分の丁寧な表現からは、性能の高さと同時に職人技のような芸術性すら感じます。繊細さや精巧さの結晶により音が形作られているHD800に、どこか懐かしさや安堵感、馴染みある何かを感じるのは、日本とドイツの伝統的美意識の共通点によるものなのでしょうか。
基本的なキャラクターとしては、僅かにゼンハイザーらしい陰影と温もり、落ち着きを感じさせるものの、限りなく中庸で味付けを感じさせない音色となっています。HD650譲りの余裕を持って”細かな描写を当然かの如く自然に鳴らす”という芸当は、更に洗練されて磨きがかかっており、HD800を象徴する性質と言っていいでしょう。静寂さの中に多彩な音色が水彩画のように描かれる様から、「日本のヘッドホンメーカーの老舗であるSTAX以外で、日本特有の『侘び』や『寂び』といった美意識を表現できる機種が出てくるとは、、、」と思わず唸らされてしまいました。HD800の内面の描写力の高さによる求心力はピカイチ。
決して音が強い輪郭感を持って強調せず、ガツガツと押しの強いタイプではありません。音の輪郭をハッキリさせて存在感を目立たせるのではなく中身で勝負し、音に芯を持たせることで個々の音の存在感や分離感を実現しています。そのため、ただただサラサラと綺麗な音を垂れ流すことなく、迫力を出すべきところでは鳥肌が立つほどのスリリングさを体感させてくれます。この特徴はゼンハイザーが有する匠の技のひとつで、HD650でも体験することができます。全域に亘って細身で輪郭感が薄く、音がグラデーションのように空間に溶け込んでいくため、音と音、音と空間の融合性やハーモニーが秀逸。全体の音のまとまりが良いのは、低域から高域までの量感バランスが良い証拠でしょう。全ての音が同じ方向を向いて音楽を成しています。
音色はゼンハイザー製品で共通して感じられる若干ダークなもの。ゼンハイザーらしい独特のウォーム感を纏っており、大人の落ち着きを感じさせます。ただし、ゼンハイザー色を全面に押し出しているわけではなく、薄く全体を「安らぎの源」で支配し、クリアーかつレスポンスの良いサウンドに仕上がっているのはHD800独自の特性でしょう。あらゆる面で余裕を持って音を鳴らし、「リッチ」「贅沢」「優雅」という言葉がとてもよく似合います。客観的に見れば、音色に若干のゼンハイザー的な着色を感じますが、実際音楽に集中すれば、これが味付けではなく自然さを感じさせるために必要不可欠な要素なのではないかとも思えてきます。つまり、音色面での演出ではなく、味の素よろしくゼンハイザーの素として、自然感を作り出しているのではないかと、、、そんな妄想が膨らむほどに自然さを極めたサウンドです。僅かな色付けのある音色に対し、鳴り方の面で見ると異常なほどに癖の無いヘッドホンです。音の硬さ、輪郭、響き、音の出方、引き方といった点にわざとらしさが感じられず、これによって非人工的な音、要は原音忠実性の高い音を実現出来ています。個人的には、原音忠実と言うよりも美しく綺麗に聞こえるように音が調整されているように感じますが、原音に忠実か否か、音が調整されているか否かにかかわらず、HD800は「リアル」ではなく「自然」を感じられるヘッドホンだという事実をしっかりと心に留めて欲しいと思います。
音場感は、大きなホール状の空間を形成し、低域から高域までが非常に充実して空間に満ち溢れます。どちらかと言えばスカっとした音抜けの良さよりも、空間の中に音を響かせて間接的に音を聞かせるタイプ。間近で全ての音を隅々までチェックするような所謂モニター的な鳴り方をするヘッドホンとは逆で、音の広がりや響き・余韻を十二分に活かし、コンサートホールのS席の臨場感を再現したかのような贅を尽くしたサウンドを追及したヘッドホンです。目を閉じたならば、空間を満たすサウンドが新世界を創造し、生活感溢れる一室からトリップすることが可能です。ヘッドホンひとつで”場”を造り出すゼンハイザーの空間表現へのこだわり、熱意、探究心に最敬礼。物理的に距離感をおいた位置から音楽を鑑賞するスタイルになるため、ダイレクト感、音楽との距離感、一体感は弱く、言うなればLIVE会場の最前列の熱気を表現することはできない機種です。空間演出力に大きく貢献している"響き"の美しさは一聴の価値有り。
ゼンハイザー特有の落ち着いたムードの中で、あらゆるジャンルをそつなくハイクオリティーにこなせる万能型ヘッドホンです。中でも得意ジャンルは叙情性に富んだ楽曲。大味なサウンドでは決して実現不可能な、音色やメロディに宿る複雑に絡み合う感情を表現しきれるヘッドホンで、生きたボーカルの繊細なニュアンスを惜しみなく感じ取ることができるでしょう。艶っぽさや色気といった音色面での後押しは無いものの、素材の味を正直に引き出すボーカル表現力は個人的に有りです。レスポンスに優れておりノリに関しては申し分ないのですが、音が広い範囲で鳴る傾向、音の輪郭が薄い点、音が遠目でダイレクト感が弱い点から、ロックやメタルとの合性は「最高」とは言えず「良い」止まり。また、明るくスカッっと爽やかな、ゼンハイザー色を活かせないタイプの楽曲は明らかに苦手分野でしょう。HD800は臨場感を重視した鳴り方をするため、どのような曲を聞いても若干LIVE音源的な聞こえ方になる点は利点であり欠点で、上手く使いこなす必要がありそうです。特にこの”現場を再現する力”を発揮するのがクラシックで、HD650を経ることでクラシック音楽への対応力は完成の域に到達したように思います。様々なHD800の特徴が、クラシックの良さを引き立てるために調整されているのではないかと勘繰ってしまうぐらいに相性抜群です。ジャズやフュージョン、打ち込み系でも"臨場感"を存分に味わえることから、室内、ホール的LIVE感を再現することには長けていることが確認できますが、野外LIVEのような開放感を出すのは苦手なようです。野外LIVEの醍醐味を味わいたい場合は、素直にGRADOのヘッドホンを使うのが賢そうですね。ともかく、何を聴くにしても贅沢な気持ちにさせてくれる高級料理のようなヘッドホンだと言えます。
オーディオシステムの影響を受けやすいヘッドホンです。まず第一にipodやノートPCに直接繋ぐ場合は音量がとり難いので、ヘッドホンアンプを使用することをオススメします。性能面はシステムのグレードに比例して見事に向上してくれるので、環境整備に力を入れている人にとっていろんな意味で楽しみの多い機種となりそうです。情報量、解像度に関しては、上流機器による差が如実に表れます。また、性能の向上によってクリアーなサウンドになるため、空間の見通しが良くなり音場が広がります。音場感はシステムによって差が出やすい部分のように思います。
ファーストインプレッションで感じた「ゼンハイザーの音だなぁ」という感想が全てを物語っているように思います。ワクワクドキドキテンションが上がり、自ら音楽に乗っかっていくような音ではなく、音楽が体に染み込んでくるような受動的な音。限界ギリギリまで性能を使い切るのではなく、「余裕を持って最高」であるからこそ生まれる貫禄ある音楽性を体験できる、HD800はそんなヘッドホンです。
最後に、HD800によってゼンハイザーの音の方向性が1968年に発売された開放型ヘッドホンHD414の頃から変わっていないのを確認することができました。別の言い方をすれば、オーディオメーカーとして音楽性にブレがないことを確認することができました。この事実から、今後も安定したゼンハイザーサウンドを提供し続けてくれるであろうことを確信できます。誰もが良い音だと思える安定感、ノーリスクの安心感、世界を虜にしたHD650の後を継ぐフラグシップ機として、HD800は一時代を築いてくれそうです。「王道此処に在り」を示すに相応しい音質を備えた名機だと私は思います。
★リケーブル Locus design Hyperion Ag
公開するかどうか未定
とりあえず感想は、良くも悪くもゼンハイザー色が消えます
型番:Edition10
メーカー:ULTRASONE
タイプ:開放型ヘッドフォン
再生周波数帯域:5 - 45,000Hz
インピーダンス:32Ω
感度:99dB
質量:282g(コード別)
ケーブル長:3.0m
プラグ:6.3φステレオ
その他:ヘッドフォンスタンド付属
装着感は最高レベル。強すぎず弱すぎず適度な側圧で、上を向いても下を向いてもずれることがなく、長時間つけていても疲れない軽さ、痛くならない頭頂部、蒸れることなく優しくフィットするエチオピアンシープスキン製イヤーパッド、といった具合にどこをとっても隙の無い作りを備えています。開放型の中でも音漏れは激しい方で、小型のスピーカーかと思うぐらいに音が漏れる点には注意が必要。ケーブルは非常に軽量。質感がプリプリとしており柔軟性に欠けますが、その代わりに絡まることは皆無です。艶やかに輝く立派な木箱はご愛嬌。箱の底にヘッドホンスタンドが隠されているのでお忘れなく。ヘッドホンのデザインについては好みが分かれそうです。
バランスはフラット。個性ある低域と高域の影響で若干弱ドンシャリ傾向に感じますが、量感的には凡そフラットです。基本性能は、”High end of High end ”と言えるだけの貫禄を感じさせてくれます。特に情報量の多さは圧巻で、音の洪水が空間を埋め尽くし、全域にわたって密で厚みのあるサウンドを形成します。余すことなくソースに含まれている音を出し切るので、超微小な音を含めた全ての音に意識が行き渡ります。低い音から高い音まで必要十分に再現可能な帯域の広さは勿論のこと、特に中域から高域にかけての最後まで流れるように伸びきる音は「お見事!」の一言に尽きます。分離感の強さと解像度の高さのコラボレーションは、想像を超える明瞭さを生み出し、細部までクッキリハッキリ描き出します。
音の方向性は、総合的に見て”Editionの音”を継承しているように思います。特徴のある高域と低域、低域から中域にかけての密な音空間、キレ及びハイスピード感、クッキリとした音の輪郭、自然な鳴りよりも全ての音を細部まで描写しきる顕微鏡のような音作りに”Edition魂”を感じずにはいられません。音に個性を持たせて惹きつけるという過去築き上げてきたEditionスタイルを礎に、進化したEditionサウンドとして”ナチュラルな音”、そして開放型でなければ出せない特徴である”音の抜け”や”スケール感”が付加されているのがEdition10です。
高域は、解像度の高さに加え、輪郭感の強さと分離感の強さから、細かな音まで潰れることなく正確に描写されます。管楽器や弦楽器では、感性を刺激するようなスリリングさを持ち合わせ、例えばシンバルの音であれば、原音忠実性よりも、人が金属から連想する音にどれだけ近づけられるかを追求したような音をしており、鋭角な金属の粒子が耳を擽り、脳に直接訴えかけるような鮮烈、鮮やかな音色となっています。低域は、密度感や粘度、弾力のあるものですが、流石に密閉型のEdition9と比較すると圧力、迫力、力感、インパクトといった部分で物足りないものがあります。しかし、その代償として、開放型でなければ実現できないであろうストレスフリーな音抜けの良さとスケールの大きさを得ています。重心が低くて重く沈み込むような低域ではないので、レスポンスに優れており、全くもたつきを感じません。超ハイスピードかつ鬼のキレを持った低域である点は、Edition10のセールスポイントのひとつでしょう。Editionシリーズらしい解像度が高く濃密で実体感の強い低域を感じさせつつ、ノリと言うよりも機械の如く正確無比にリズムを刻む様にある種の物恐ろしささえ感じます。中域は個性的な低域や高域に負けることなく主張感があり埋もれることがありません。数々のチェック項目を拾い上げていく中で、ソースに含まれている音の隅々にまでくまなく意識がいきわたるように調整されたバランス感覚の良さには度々感心させられます。分厚い中域が低域と高域の間に入り、ガッチリと全体を支配、コントロールしているかのようです。
音調は暗くもなく明るくもなく中庸、音色は鮮やかな高域を除けば基本的に味付けがなく無機質でクリア。音の芯、輪郭をハッキリ作るタイプで分離感が強く、ふわりとした軽やかさや繊細さ、角の無い柔らかさ、まろやかさとは逆をいくスタイル。アスリートの鍛え抜かれたしなやかな筋肉、はたまた鍛え上げられた日本刀、そんなイメージを彷彿とさせます。音がカッチリしすぎることがなく、芯に力を秘めつつ音がしなるように躍動する様は、”機能美から昇華された芸術美”とも言える美しさを持っており、この部分がEdition9との違いと言えそうです。各所に特徴ある音を持っているにも関わらず、初めて聞いたときに「なんて生々しい音なんだ」と衝撃を受けたのが面白い点で、艶っぽさや潤い、温もりや暖かさ、柔らかさ、味わい深さといった所謂オーディオ的な美的要素をバッサリと切り落とした結果、生き生きとした現実感のある音を得ることに成功しています。汚い音を素直に汚く、乾いた音を乾いて表現できるヘッドホンで、特にその効果が空気感、場の雰囲気(臨場感)などで強く感じられ、尚且つ高い性能も相まって奏者のニュアンスをダイレクトに伝えてくれます。ここまで音の"美"の部分を思い切って排除した音作りは珍しく、ある部分ではオーディオ的な癖を持たせつつ、ある部分ではオーディオ的な癖を排除するという、矛盾とも思える音作りが生み出す摩訶不思議な非現実的リアルサウンドに新境地を見た気がします。Edition10は、中庸な音調、無機質な音色から、キャラが無い無個性な音だと判断するか、生々しいリアリティのある音だと判断するかで大きく評価がわかれそうな紙一重の音作りなのかもしれません。
音場感は良好。どちらかと言えばホール的に空間を作るタイプですが、音が空間に満ちる感覚は薄く、むしろ逆に開放的に抜けていく感覚のほうが優勢です。”限りなく開放的なホール”とでも表現したらいいのでしょうか、最後まで綺麗に音が伸びきり、そこまで空間が存在する感覚で、GRADOのような全抜けタイプとは違うものの、絶妙な塩梅で開放感溢れる音をしています。音が満ちる感覚が薄いことからもわかる通り、必要以上に音が響きません。残響成分が少なく敏速にスっと音が引いていきます。この性質がレスポンスの良さに影響しており、アナログ的な音の味わいを生み出さない原因でもあるのでしょう。空間の広さは録音に左右されるように感じます。クラシックやLIVE音源では広い空間を感じられ、離れた位置から聞いている感覚になりますし、スタジオ録音では間近で聞いている感覚になります。総合的に判断すると、直接的に音を聞く所謂スタジオモニター的な鳴り方に近く、間接的に音を聞くタイプではありません。前後の距離感を感じられ、耳の真横ではなくやや前方から音が聞こえます。そして、ULTRASONEのヘッドホンの代名詞とも言えるS-Logicテクノロジーについての言及を避けるわけにはいかないでしょう。過去のS-Logicでは、聞き始めの時にグルングルンと回るような感覚があり違和感を覚える人もいたかと思われますが、S-Logic plusになった影響か、開放型である恩恵か、以前のような不自然さは無くなり、より自然な空間表現力を得ているように感じます。また、定位感が良く、各楽器、ボーカルの位置が手に取るようにわかります。音抜けが良いので、耳への負担が少なく、長時間聞いていても耳が疲れない点は隠れた嬉しいポイントで、装着感、音の両面で、長時間のリスニングに適したヘッドホンだと言えそうです。
得意ジャンルはオールジャンル。ゆったりな音楽、激しい音楽、クラシックやジャズからメタルや打ち込みまで、個人的には全てを気持よく聞くことができます。これでもかと素っ気無く鳴らすことが、これでもかとリアリティを生み出します。ボーカル、楽器、全てにおいてリアル。正確には擬似リアルと言うべきかもしれません。低域や高域に特徴があり、原音忠実性など語れるような音ではありませんが、それでも音にリアリティを感じ取れるということは、音楽性の再現度が高いからではないかと思います。全ては応答速度の速さによる優秀なリズム感によるもので、それによって直球で音楽を伝えてくれるため、ジャンルを問わず何を聞いても楽しく、そして音楽とのシンクロ率が高いように感じます。音質的には、乾いた音、例えばハスキーな声質をこれほど上手く表現できるヘッドホンは他にないのでは?と思わせるほどに再現度が高く、それは管楽器や弦楽器等でも同様です。これは、素材による音の癖を上手く抑えているからこそ実現できているように思います。甘美な音色で人を惹きつけるのではなく、レスポンスの良さ、リズム感でグイグイ引っ張っていくタイプのヘッドホンです。どうしたって味わいのある音を出せないヘッドホンですが、それだけに嫌味が無く、飽きのこない何時間でも聞いていられる音を持っています。
久しぶりに驚きを与えてくれたヘッドホンで、今までに聞いたことの無い新しい音でした。リズム王の称号を得るに相応しい最高峰の応答速度を持った機種なので、キレ重視な人、そして音に色づけをしたくない人にオススメです。自然さを追求したような音ではないので、その点は注意が必要です。途中でも述べましたが、長時間使用していても全く耳が疲れないのは驚くべきことで、これほど耳への負担の少ないヘッドホンは初めてのように思います。値段相応の価値があるのかと言われれば、そこはオーディオの世界、人によりけり何とも言えない部分ではありますが、少なくとも私は購入して良かったと満足感を得ることができました。
★エージング
エージングの進行度によって音の印象がずいぶん変わっていくヘッドホンのようで、音が落ち着くまでに時間がかかりました。Edition9もずいぶん音が変化していく機種でしたが、Edition10はそれ以上に変化が大きいように感じます。
・初期
弱ドンシャリ。全ての音をハッキリと認知できる優れたバランス。音が凝縮されていて密で濃く、edition9のような音をしています。驚くべきは開放型とは思えないほどにビシっと締まっていて制動が効き、キレキレで超速な低域。高域は適度に輪郭がクッキリしていて金属質。中域もよく前に出てきます。開放型らしい綺麗な音の広がりはあまり感じられませんが、この時期は凝縮された音の圧力、パワーが気持ちよく、音抜けが良いので耳への負担もなく、ある意味良いこと尽くめの音だったりします。edition9に空気感を+αしたような音で、この音は最初期でしか味わうことができない貴重なものです。
・中期
徐々に音がほぐれていきますが、様々な部分で音が暴れだします。この頃から長時間高域がシャリシャリと癖のある時期が続きます。この擦れた感じは楽器の音だけでなく空気感にまで影響します。特にボーカルのカサカサ感は酷いものです。全体的に乾いていて粗く、低域がスッカスカになり出なくなると同時に、刺激的すぎる高域の主張が激しく、高域寄りのバランスへ変化します。バランス、音色など全てにおいて、この時期の音は本当に酷く、聞けたものではありません。
・後期
その後、徐々に低音が回復しながら、音のトゲトゲしさが収まっていきます。低域の量感は割りと短時間で回復します。高域のシャリシャリ感は長時間続くものの、次第に落ち着いていき、ピークの時からは想像できないほど高域の刺激は消えていき、最終的には痛さを感じることは無くなります。そこからさらに鳴らしていくと、音の硬さが取れていき、音にしなやかさが生まれてきます。また、音の繋がり、まとまり感が出てきて一体感が向上し、僅かに残響成分が増えてきます。そして、レビューのような音へと落ち着いていきます。
「ULTRASONEのヘッドホンはエージングに200時間」という一種のネタとして確立しているような一文があります。私自身、これはネタでも誇張表現でもなく、過去の経験上「確かに200時間は鳴らしてから評価したほうがいいのかな」と思います。それぐらい長時間経過してから音がまとまってくるわけです。途中、お世辞にも良い音とは言えないような音になる期間もあります。それだけに、早期に評価を決め付けてしまうのは、Edition10にとって酷な仕打ちとなるので、暖かく長い目で見守ってあげてください。
型番:PS1000
メーカー:GRADO
タイプ:開放型ヘッドフォン
ハウジング:アルミ&木製
再生周波数帯域:5 - 50,000Hz
インピーダンス:32Ω
感度:98dB
質量:-----
プラグ:6.3φステレオ
GS1000同様イヤーパッドが直接耳に触れることがないので、ザラザラとしたパッドの質感によって耳がヒリヒリと痛くなることはありません。ヘッドホン界最高峰の重量は相応の覚悟が必要で、頭頂部が痛くなることはないのですがひたすら重いです。重さに耐えながら音楽を聴く必要があり、決して快適なリスニング環境とは言えません。前傾姿勢になると重さでヘッドホンが落ちてくるため、机に向かいながらのリスニングも不可能です。また、開放型ヘッドホンの中でも音漏れが激しい部類に入る点も注意が必要です。
オーディオ壁まで導入して壁にぶち当たるとか洒落になっていない・・・
このような低価格帯のオーディオ機器では、まともに鳴らないことも多々ある。
昔ONKYOのアンプ内臓パワードスピーカーを使っていたことがあったが、あれは低域の質が酷くて使い物にならなかった。
価格、性能を考えて、その範疇で上手にまとめたなぁ、と感心。
ふんわりとした印象が強く、音の厚みが感じられる。
最近は付属のイヤホンなどでもハイクオリティーなものが多いので、十分ありえる話である。
スピーカー出力だけに限定すれば、又はヘッドホン出力だけに限定すれば、もっと優れた製品があるのかもしれない。
しかし、ヘッドホン、スピーカー出力を含め、利便性、デザインなど、総合力で見たときに、このセットは上位に位置するだけの実力を持っているように思う。
ゲームやTV、映画などでは、マルチチャンネルが主流になっているし、それはオーディオでも言える話。
また、2ch再生であれば、もっとこだわる人はいっぱいいる。
そんな中で、iconの立ち位置は「デスクトップスピーカーシステム」という少し路線の違う所にある。
デスクトップスピーカーシステムとして見ると、なかなか魅力的な製品である。
★Captain
ローゼンクランツのスパイク受けインシュレーターCaptain。
Point BasieとGiant Baseの間に位置する製品。
Giant Baseはちょっと高すぎる・・・、といった方にも入手しやすい価格設定になっている。
Captainの構造はインシュレーターのPB-COREによく似ている。
階段構造になっており、「きれいな音だけではなく、激しい音や汚い音をも含めて”全ての音を開放する”」ことをテーマとしている。
このコンセプトはPB-COREそのもの。
PB-COREは、私が最も衝撃を受けたインシュレーターで、そのエネルギッシュさもさることながら、なんとも生々しいエレキギターサウンドに驚かされたものだ。
歪んだギターの音を見事に再現してくれており、こんな音が出たのは初めての体験だった。
「綺麗な音に仕上げることがオーディオ」という概念をぶち壊した作品である。
オーディオの音に慣れてしまうと忘れがちになるのが生の音。
生演奏の音には、時に乾いた音、擦れた音、歪んだ音などが存在する。
このような音も全て含めてリアリティを生み出すのではないだろうか。
全てを吐き出すというPB-COREと同じコンセプトを持ったCaptainの実力や如何に。
★Captainインプレ
まず初めに、ジャズボーカルの音源を鳴らしてみた。
最初に低音の質の違いに気を取られたが、直後にボーカルの存在感に驚かされた。
よく言われる「スピーカーが消える」という表現の意味はこのことか・・・一人で納得。
スピーカーから音が出ている感覚が極めて薄く、「目の前に人が居て歌っているのが見える」感覚。
ボーカルや楽器だけに限らず、例えば川が流れている音が入っている音源であれば、目の前に川があって水が流れているように感じられるぐらいに実在感、存在感のある音がスピーカーから出てくるのだ。
空間表現力が上がったと言ってもいいだろう。
空間の中に音像を作り上げ、存在させる力、場の再現能力。
「場」「空間」といった音楽が奏でられる雰囲気を見事に部屋に具現化してくれる。
今まで以上に部屋を使って音が鳴っているという点も見逃せない。
特に低域の重心が下がり、上から下までを大きく使って音楽が鳴るようになり、これがスケール感のUPに繋がっている。
次に好きなクラシックのひとつである「ラフマニノフ / ピアノ協奏曲第3」で試聴。
この曲で感じたのは、音の膨らみのバリエーションの向上。
こんな表現は今までしたことがない。
初めての経験だ。
少なくともヘッドホンでは一度も感じたことがない感覚。
部屋全体で音を鳴らすスピーカーならではの変化だろうか。
「こんな音の変化の仕方もあるのか・・・」と、オーディオマニア心を擽られる。
ストレートに音が伝わってくる楽器と、ぶわっと広がって音が伝わってくる楽器があるが、その音の膨らみ具合の違いがわかるようになった。
これは管楽器だけに限ったことではなく、例えばピアノでも同じことが言える。
弦をハンマーで叩き、空気が振動して音が伝わる、その音の振動がピアノの筐体に伝わり、更に外へ音が伝わっていく。
その音の振動の経過が感じ取れると思ってしまうぐらいに、空気を伝わる音の振動の強弱、柔と剛の表現力が高い。
この効果が一番影響を与えているのが音のリアリティ。
よりピアノはピアノらしく、より管楽器は管楽器らしく鳴るわけだ、ボーカルもしかり。
音色ではなく、音の広がり方、空気の震わし方、音の伝わり方、こういった面でリアリティのある音へ持っていくパターンは新しい経験だったので斬新かつ新鮮であった。
空間表現力(実在感)の向上、多彩な音の膨らみ方によるリアリズム。
この二つの変化が大きいだけに後回しになってしまったが、PB-COREの経験から今回一番期待していたのは音色の変化。
この点は期待通りで、音の艶っぽさ、甘さをずいぶん消すことができた。
味付けの無い音へ少し近づくことに成功。
ローゼンクランツの支配率が高まれば高まるほどに音色の演出された色気は消えていく。
当然、音を作るというのはオーディオの醍醐味のひとつであり、とろりと甘く艶やかな音も魅力的。
しかし、ローゼンクランツに関しては、PB-REX Ⅳのような例外を除けば甘い音にはならないので人によっては注意が必要である。
次に、音色の多彩さを確認するためへヴィーメタルを試聴。
ギラつくエレキギターサウンド、ノリの良さ、アタック感などを確認する。
やはり、まず最初に驚かされたのは低域。
バスドラの音の響き方が格段に良くなった。
ドラムを打つ時のアタック音、その響きの再現度が凄まじく高い。
あえて強調させてもらうが、この打音のリアリティは誰もが驚くのではないか。
今まで書いてきたことを全て踏まえて、低域の変化が一番分かりやすくて意識がいきやすいようだ。
この低音のスケールの大きさは、完全にヘッドホンの枠を超えたものであり、スピーカーシステムを導入して良かったと改めて思わせてくれた。
私の中で、「この楽曲を上手く鳴らせればゴール」というものがある。
それがへヴィーメタルの王道ジューダスプリーストの名曲ペインキラー。
この曲に関しては、ヘッドホンで到達することが出来た理想の鳴り方にまだまだ届かないと感じたのが正直なところ。
これぞメタルと言えるような金属的なギター音をまだ出せていないし、攻撃的な縦ノリも納得いくレベルに達していない。
そして、バスドラはもっとスピード感とキレが欲しいし、なにより音のタイミングがもっとビタっと揃って欲しい(音の統一感、体との一体感)。
このあたりの向上が今後の課題となりそうだ。
余談ではあるが、ヘッドホンの利点は、「耳との距離が近く、音がバラバラにならずに綺麗にまとまる点」だということにスピーカーシステムを体験して気付くことができた。
逆に言えば、スピーカーは全体の音をまとめあげる、そしてタイミングをビタっと揃えるのが難しい。
セッティングの必要がないヘッドホンは、スピーカーとは比較にならないほどお手軽であり、これがヘッドホンの良いところだと思われる。
最後に打ち込みを試聴。
当たり前だが無機質感が最も際立つ打ち込み。
それだけに、甘さや艶が減少したのが一番良く分かる。
電子音がより電子音らしく鳴ってくれる。
しかし心地よい、それは音楽が伝わってきている証拠。
打ち込みというのは、非常に低い低域が入っていたりするため、システムによっては低域がブーストされたようになってしまい不快に感じるケースがある。
しかし、ローゼンクランツの音は、音楽と向き合う時にはグっと心を掴む求心力のあるサウンドでありながら、何か作業をしながら聞くときにはBGMとして聞き流せるような自然なサウンドとなる。
邪魔にならない音、これもまたスピーカーならではの音楽の楽しみ方だろう。
まとめると、音色の味付けを減らし、ソースに含まれる音をそのまま引き出せていると言えそうだ。
最近のローゼンクランツの製品は、このようなあるがままを全て出す傾向が強まってきているように感じる。
インシュレーターだけでなくケーブルも同様。
そのため、全てのジャンルに対応できる(どんなジャンルでもその良さを引き出せる)ようになってきている。
「音楽」を見据え、音楽の要であるタイミングを極め、奏者であり製作者の意図を聴き手へ伝える。
これがローゼンクランツの意思。
★総評
Captainの導入、結果は大成功。
何が変わったんだろう?
と聞かれれば、なんとも返答できないような不思議さが毎度お馴染みローゼンクランツの特徴だが、Captain導入による音の変化を一言に集約するなら「本物っぽくなった」ことに尽きる。
ギターはギターらしく、ピアノはピアノらしく、ドラムはドラムらしく、打ち込みに本物も何もあったものではないが、打ち込みは打ち込みらしく。
個人的には、特に音の響きにより生まれるリアルさというのが大収穫だったように思う。
軽視されがちなスパイク受けというオーディオアクセサリーは、なかなかどうして侮れない存在であった。
ヘッドホン、イヤホン、アンプ、ヘッドホンケーブル大放出!ヘッドホンを売るのはコレが最後になりそうです。興味のある機種などありましたらお気軽にご連絡ください。よろしくです。
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