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スピーカー、ヘッドホンとオーディオアクセサリーのレビューをメインとしたオーディオブログ。感じ取れ音楽!
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★2012年まみそ的オーディオ事件 BEST5
 
今年もこの時期がやってきました。
個人的に衝撃を受けたオーディオ機器やオーディオアクセサリーのBEST5を紹介。
機器やアクセサリーによる音質変化、及びそれによる音楽観への影響力等も考慮しチョイス。
 
 
2位:RK-AL12/Gen2 & RK2-111B

ローゼンクランツのスピーカーとアンプを春頃に導入し、ようやく満足のいく音を手に入れることができた。
ヘッドホンに慣れた耳でも満足のいく音。
それはヘッドホンの音を遥かに超える音。
ヘッドホンの利点だと思っていた音の反応速度であったり、キレやスピード感。
それだけでなく、優雅さや壮大さ、激しさや重さなど、あらゆる点でヘッドホンとは次元の違う音を実現することができたのだ。
これによって、一部の愛着のあるヘッドホンを除き、ヘッドホンとお別れする決心がついた。
ヘッドホンにはヘッドホンの良さがあるが、やはり高みを目指すならスピーカー。
そう思わずにはいられない。

 
 
 
LCD-3と、ついでにLCD-2。
平面駆動型の力をまざまざと見せ付けてくれたヘッドホン。
高い解像力と力強さをバランスよく両立し、今までにない新境地を開拓したと言っていいだろう。
キレのあるLCD-2、濃密で満足度の高いLCD-3。
これからのAUDEZ'Eの作品に期待。
 
 
 
音色を大きく変えてしまうようなオーディオアクセサリーは、効果が大きくても扱い難い印象がある。
オースカーブレードは、タイミングや音の抜け方といった音楽の核となる部分を改善してくれるので、副作用なく微調整できる点が魅力。
言い換えれば効果が少ないとも言えるが、そういった製品のほうが長く使い続けていないだろうか。

 
5位:なし
 
 

スピーカーやアンプを差し置いて1位にするのはどうかとも思ったが、純粋にオーディオアクセサリーの面白さを思い出させてくれたローズキャップを今年の1位とする。
とにかく効果がわかりやすく、使う数や位置などで無限のバリエーションを生み出すことが可能。
その作業にはまってしまうと、あっという間に時間が経過していく・・・
ココまでオーディオアクセサリーに没頭したのは久しぶりで、効果も含めて◎の評価をしたい。
 
★2011年総括
 
去年の「2011年まみそ的オーディオ事件 BEST5」で宣言した「ブログ記事を12以上書く」という目標は、この記事をもって達成!
ギリギリ12記事だが、達成は達成。

しかし、今年は競馬に注力しすぎてオーディオが疎かになっていたのは事実。
もう少しだけ時間をいただきたい。
今年は全力で独自の競馬理論構築に時間とお金と労力を費やし、その完成は間近。
完成した暁には、以前にも増してオーディオを堪能できると信じている。
何事も極めてこそ価値がある。
極めてこそ見えてくるものがあり、学ぶものがあり、必ず経験値となり、自身の成長へと繋がる。

というわけで、2013年の目標は、競馬理論の完成、そしてオーディオへの回帰。
中途半端な状態で競馬をやめるわけにはいかないので、2013年中に極めて、そしてオーディオへ回帰する。
これを目標とする。
それまで「まみそぶろぐ」は凍結する。

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まず、オスカーサウンドという会社。
聞いたことがない人がほとんどだと思われる。
オスカーサウンドは、メグ・ジャズ・オーディオとカイザーサウンドの共同プロジェクト?ということで間違っていないと思うが、一言で言えばローゼンクランツとは違った視点で作られるオーディオアクセサリーメーカーだ。
製品の設計はカイザーサウンドの貝崎氏が行っているので、音質傾向としては同じ方向性になるのだろう。

今回ご紹介するのは、穴のあいたステンレス板、オスカーブレード。
ゲームに武器として出てきても違和感のないネーミング。
一見大工道具から取ってきた何かの刃のようにも見えるが、れっきとしたオーディオアクセサリーである。

この板をオーディオ機器の上に置くと音が良くなる

と、こんな言い方をすると怪しさ爆発だが、どんな言い方をしたって怪しいものは怪しい。
それがオーディオアクセサリー。
とは言っても、この手の貼り付ける系オーディオアクセサリーは、良くも悪くも効き目が大きいと経験上知っているので、否が応にも期待してしまう。

da41fef8.jpeg

オスカーブレードの説明には、コンポハーモナイザーと書かれている。
コンポハーモナイザー、、、初めて聞く言葉だ。
自分なりに解釈してみると、コンポから生み出される音を多彩にするアイテムといったところだろう。
制振アクセサリーと言うよりは、振動の流れを整えるのが目的と考えてよさそうだ。

使い方はいたってシンプル。
オーディオ機器の天板の両サイドの中央に貼り付けるだけ。
角がカットされている方を外側に向けて貼り付ける。

さて、その効果やいかに。

音色は変化なし。
情報量、解像度といった基本性能的な面の変化も特に感じられない。
やや音が明瞭になったように思うが・・・
タイミングの面も大きく変わったようには感じない。

何が変わったのか。
ひとつだけ、ココは変わったな、とハッキリ感じたものがある。
それは、音の広がりが拡大したこと。
綺麗に、最適に部屋中に音が広がるようになったと言えばいいのだろうか。
場の再現性による空間的リアリティーの向上とも言えそうだ。
コンポハーモナイザーというネーミングは、音色の多彩さではなく、空間に広がる音のハーモニー、すなわち音の調和を整えるという意味なのだろう。

音を綺麗に部屋いっぱいに満たしたいと考えている人は多いはずで、音の広がりを副作用なしに向上させることができるという意味では優れたオーディオアクセサリーだと思う。
使い方はオーディオ機器の天板に限らず、オーディオラックの端に置くのも同様の効果が得られるので是非試してみてほしい。

ちなみに、貝崎氏から聞いた話では、オスカーブレードの狙いは、「音のキレや力感、リズミカルさの向上」だそうだ。
私のシステムではこれらの点の向上は特に感じられず、それよりも音の広がりの改善のほうが顕著に現れた。


1c4153c5.jpeg

ひとつ気がかりなのが、オスカーブレードの効果が、どのようなシステムでも、どのような部屋でも発揮されるのかどうかだ。
私の場合、部屋も壁もオーディオシステムもローゼンクランツで支配されているため、オーディオシステムの小さな変化が音の変化として出る傾向が強い。
これは、小さな変化でも大きな効果として現れるので一見良いことのように思える。
しかし、実はローゼンクランツで統一したオーディオシステムは、表裏一体のリスキーシステムでもある。
というのは、悪い部分がひとつでも出来れば、その悪い部分が増幅されて滅茶苦茶な音になってしまうからだ。

複数のメーカーの機器やアクセサリーを組み合わせた一般的なオーディオシステムの場合、ここまでシビアなシステムにはならないので、何かひとつオーディオアクセサリーを加えることで、悪い部分が増幅されて聞けないほど酷くなることもなければ、逆に効果が小さい場合に変化に気がつかないことも十分にありえる。

スピーカーシステムの場合、ローゼンクランツに限ったことだと思うが、オーディオラックが非常に強く音をコントロールしている。
ネジ1本少し緩めるだけで音が狂うし、支柱にテープを貼れば音が広がらず、ラックを前後逆にすれば生気の抜けた音となる。
部屋全体へ音を広げる役割をオーディオラックが担っているのである。
オスカーブレードとローゼンクランツのラックとの相乗効果はあると考えて間違いないだろう。

sDSC_0052.jpg

さて、それでは部屋への音の広がりを考えなくてもよいヘッドホンシステムの場合はどうだろう?
ヘッドホンでもオスカーブレードによる音の変化はあるのだろうか。
結論から言えば変化はある。
ヘッドホンの場合、どのような違いが生まれるかと言えば、それは音の抜け方に影響してくる。
耳で直接音を聞くヘッドホンのほうが、効果を感じやすいのではないかと思う。
ヘッドホンシステムで、「どうも音抜け、音の伸びがいまいちだな」と感じている人に試してみてほしいオーディオアクセサリーだ。

どのようなオーディオシステムでも効果があるのかどうかは実際に試してみないと何とも言えないが、少なくとも私のシステムでは効果を感じることができた。
ただし、効果絶大とは言えないとも書いておく。
ローゼンクランツ製品で言えば、カイザーオーディオラック/Gen2であったり、サウンドステーションⅡ(オーディオボード)のほうが効果的に音の広がりを生み出すことができるが、そもそも価格が違いすぎるので比較するのは酷というもの。
オスカーブレードは、安価なオーディオアクセサリーなりに、音の広がりを生み出すアイテムだ。
スピーカーであれば音の広がりヘッドホンであれば音の抜けを改善してくれる。
まだまだ効果的な使用方法が他にもあるかもしれないので、いろいろな場所に貼り付けて試してみるのも面白いだろう。

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s2012-10-22_14-44-36_209.jpg型番:HE-6
メーカー:HiFiMAN
形式:平面駆動型
再生周波数帯域:8 - 65,000Hz
感度:83.5dB/mW
インピーダンス:50Ω
ケーブル長:2.0m
プラグ:4pin XLRメス出しケーブル(OCC 4pin XLR - 標準フォン)
質量:502g

メーカー製品紹介ページへ


Gradoのようなヘッドバンド、ハウジングはプラスチック製ですが、ピアノブラックで安っぽさはありません。重量は502gと重量級。側圧が弱めでイヤーパッドがフカフカしているので、ドッシリと重く圧し掛かるような重量感はありません。ケーブルは付属にしては高品質。ALOaudioのような外観で、手の込んだ編みこみケーブル。音質、造りの両面でクオリティーが高いです。4pin XLRバランスケーブルと、シングルエンドへの変換ケーブルが付属しています。日本で一般的な3pin XLRバランスケーブルへは別途変換ケーブルが必要です。音量がとり難いのでハイパワーなアンプが必要な点は注意が必要です。

s2012-10-22_14-44-49_280.jpgバランスはフラット。深く黒い低域も魅力なのですが、それよりも高域方向への音の伸びのほうが特質すべき点だと私は感じます。今まで経験してきた多くのヘッドホンと比較してもトップクラスの高域方向へレンジ感です。限界を見せないノビノビとした高域は爽快そのものです。情報量、解像度も高水準で、基本性能は十分に高く、微細な音の表現、空気感、ニュアンスを余すことなく伝えてくれます。平面駆動型ということもあり、音の輪郭を作るタイプではなく、STAXのような全面で音を出す傾向が強いです。LCD-2やLCD-3と比べると平面駆動らしさは弱く、ダイナミック型の良さをしっかりと残しつつ平面駆動型の繊細な表現を手に入れたような音と言えそうです。しかし、それでも繊細さはHE-6の大きな特徴であることに変わりはなく、中高域の音の出し方はSTAXを連想せずにはいられません。また、平面駆動型でありながら打音においてタイトさを感じられるのは斬新で、締まったビシっとした低域を出すことが可能であり、ロックやメタルもそつなくこなせます。同様に、音に緩さがなく張りがあるのも特徴でしょう。


s2012-10-22_14-45-59_155.jpg環境追従性の高い機種で、オーディオシステムの音を素直に出してくれるヘッドホンです。私のシステムで鳴らしたときには色がつかずに音が再生されているので、ヘッドホンそのものの色はほとんど持っていないことが確認できます。あえて言うなら僅かに灰色がかったような音調ですが、ほとんど気にならないレベルです。基本的には素直な音色であって、例えば金属音であれば、金のようなキラキラと演出的なものではなく、スチールやアルミのような、光沢を抑えたような質感をしています。ただし、音色に関してはオーディオシステムに依存する部分が大きいので、銀にも金にも変化させることは可能でしょう。色っぽい音の出るシステムであれば、甘美な世界観を構築するでしょうし、押しの強い音の出るシステムであれば、深い低域の良さを引き出し、ダークな面を見せてくれる機種です。曲による表情の変化が面白く、綺麗な曲であれば綺麗な面を見せてくれますし、激しい曲になれば激しい面を見せてくれます。空間表現はソース次第。クラシック等のLIVE音源での臨場感の再現性に優れており、広い空間を感じられます。逆にスタジオ録音で音が近いものは近くで音が鳴ります。 やはり推したいのはクラシック音楽への適正の高さでしょう。

s2012-10-22_14-45-03_547.jpg平面駆動型は本当に場の臨場感を引き出すのが上手いです。コンサートホールの再現度はダイナミック型とは一線を画すものがありますね。クラシック以外では、ボーカルとの合性がよく、中高域の澄んだ空間にボーカル成分が広がり心地よさに満たされます。艶っぽさは加味されませんが、声が持つ味わいをストレートに感じることが可能です。 STAXは専用アンプが必要なため、なかなか導入するのが難しいと考えている人にとって、平面駆動型ヘッドホンはありがたい存在です。音量がとり難くて使い難いヘッドホンですが、こういった開発者のこだわりを感じられるヘッドホンというのは魅力的だと思います。

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PICT0750.JPG型番:ATH-CKW1000ANV
メーカー:オーディオテクニカ
形式:ダイナミック型
ドライバー:Φ14mm パーメンジュール採用磁気回路
再生周波数帯域:5 - 30,000Hz
感度:100dB/mW
最大入力:200mW
インピーダンス:17Ω
ケーブル長:0.6m
プラグ:Φ3.5金メッキ ミニステレオ

バランスは低域寄り。オーディオテクニカ特有のシャリシャリした高域は抑えられています。低域の質は響きを活かしたもので、木の影響がしっかりと出ています。丸く柔らかく「ボンッ」と響く低域で耳に優しい音です。中高域はクリアーで見通しが良く、音場感が良好で狭さはそれほど感じません。全体的に落ち着いた印象があり、オーディオテクニカで期待してしまう鮮烈さや派手さ、煌びやかさは弱いです。特に欠点、不満な点がなく上手くまとめられた音という印象。高性能かつ音の面で「木のイメージ」を持つイヤホンというのは他になかなか無いので、貴重なポジションのイヤホンだと思います。


sPICT0775.jpg型番:ATH-W3000ANV
メーカー:オーディオテクニカ
形式:密閉ダイナミック型ドライバー:Φ53mm
    OFC7Nボビン巻きボイスコイル
     パーメンジュール採用磁気回路
ハウジング:北海道産アサダ桜心材、漆仕上げ
再生周波数帯域:5 - 42,000Hz
感度:102dB/mW
最大入力:2000mW
インピーダンス:40Ω
ケーブル長:3m
プラグ:Φ6.3金メッキ ステレオ標準
質量:約340g


性能はかなり高めで、オーディオテクニカ製品の中ではトップクラスと言っていいでしょう。解像度が高く、非常に細かな音まで拾うので、ハイエンドと言えるクオリティーは確保できているように思います。情報量はATH-W5000ATH-L3000と比べると落ちます。ウッドシリーズなので木の響きが入ってくるのは間違いないのですが、しっかりと音が安定している感があり、制動の効いたヘッドホンという印象を受けます。バランスはフラット~微妙に低域寄り。ソースによっては結構しっかりドゥムドゥムと低域が鳴ります。概ね低域から高域までバランスよく鳴ると言っていいでしょう。音場表現は近くで鳴るものの平面感を感じさせず、耳を小さなドームが包み込む感じです。特徴は中高域のクリアーさと、それにプラスして聞きやすい音の響き、そしてボリューム感、程よい厚みを持っています。ATH-W2002のような飴のような甘さはありません。音色は中庸。ATH-W5000程ではないものの、程よく厚みのある音でありながらキレの良さも持ち合わせており、ノリのイイ曲も対応できる点は、「何でもいけるよ?」とATH-W3000ANVに言われているようです。オーディオテクニカはボーカルがグイグイ前面に出てくるのが良くも悪くも特徴だったのですが、この点に関してはやや控えめになっています。見た目が綺麗なので所有満足度は高いと思いますが、緩い装着感はマイナスポイントです。
 


sPICT0759.jpg

型番:ATH-PRO700MK2ANV
メーカー:オーディオテクニカ
形式:密閉ダイナミック型
ドライバー:Φ53mm
再生周波数帯域:5 - 35,000Hz
感度:107dB/mW
最大入力:3500mW
インピーダンス:40Ω
ケーブル長:カールコード1.2m(最長3m)
プラグ:Φ6.3/Φ3.5金メッキステレオ2ウェイプラグ
質量:約340g
 

パワフルで音楽を楽しく聞かせてくれます。カッチリ系ではなくガッチリ系で、緩くはないですが堅くもなく、響く音はしっかり響きを感じられる程度にバランスが取られています。とは言っても自然さとか原音とか、そんなのは無視して個性的な音であることは間違いありません。バランスは低域寄り、低域の主張感が強いですが、DJモデルなのでこれぐらいが普通なのでしょう。低域でノリを作り出すタイプ。性能はなかなか高く、十分に繊細な音も表現できるレベル。とは言っても高級機と比べればモコモコしています。意外だったのが音場感が優れていること。広くはないのですが壁を感じず気持ちよく音が抜けていきます。中高域は空間に広がり、低域はハウジングの壁で反射してモリモリ鳴る、実に面白い鳴り方をします。また、音楽性を伝える能力がなかなか優れています。もっと音が抜けてスコーンと届いてくれると完璧なのですが、そこまで求めるのは酷でしょう。音色面での魅力は特別ありませんが、ノリやグルーヴ感で惹きつけるタイプです。低域が強いので打ち込み系を聞く人にはオススメです。とても楽しく音楽を聞けるヘッドホンなので、隠れた?名機なのかもしれません。良いヘッドホンだと思います。癖は強いですけどね。

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カイザーサウンドのオーディオクリニック

000.jpg2012年9月10日発売のオーディオ雑誌「AUDIO BASIC 10月号」で、カイザーサウンドのオーディオクリニックが記事として掲載されている。
オカルト色の強いカイザーサウンド、ローゼンクランツの存在というのは、オーディオ業界において異端であり異色。
そんな奇知をてらった存在であるカイザーサウンドの技を、オーディオ専門誌が題材として採用したことにまず驚きを感じた。
しかも紙面にして4ページ、「SPECIAL REPORT "カイザー"の不思議なクリニックに立ち会った」と題して特集が組まれているのだから尚更である。


雑誌とは広告

オーディオに限らずどのような業界でも言えることだが、雑誌というのは広告媒体そのものであって、言わずもがなお金が絡み、泥臭いイメージで見てしまうというのが私の正直な感想である。
そのため、雑誌に掲載されている製品の紹介文であったりレビューを鵜呑みにするのは言語道断だと考えている。
製品を酷評している紹介文など絶対にありえないし、あってはならない。

通常、ガレージメーカー、中小企業の製品が、オーディオ専門誌で特集を組んでまで紹介されることは無い。
更に言えば、オカルトと言われるような摩訶不思議な商品となれば、まず間違いなく特集記事などお目にかかれないだろう。

前置きが長くなってしまったが、世間一般にオカルトと認知されているであろうカイザーサウンドの技がオーディオ専門誌で特集を組まれることの特異性をわかっていただけたであろうか。


カイザーサウンドが特集を組まれた理由とは

それでは、なぜココまで大々的に採り上げられたのかを考えると、それは人の感情のひとつである「興味心」に尽きる。
「音を良くしたい」、「もっと素晴らしい音で音楽を楽しみたい」というオーディオに関わる人であれば誰もが持っている純粋な感情から生まれるのが、オーディオ製品に対する「興味心」である。

オーディオ製品に対する感情が肯定的であれ否定的であれ、興味が無ければ感想は生まれてこないと私は考えている。
この世に無数に存在するオーディオ機器、オーディオアクセサリーが人の感情を刺激し、揺さぶり、誘惑する。
ローゼンクランツ製品であり、カイザーサウンドの技も例外ではなく、「本当によくなるの?」「何で音がよくなるの?」と気になってしまうのは人の常である。
そして、「そんなことあるわけない」、「プラシーボ効果、思い込みだろ」といった感想であったとしても、それは興味があるということ。

興味のないことで人は動かない、興味があるから人は行動を起こす

今回は、その「興味心」に"東京オリンピック出場、競輪でグランプリ獲得、シドニー五輪で日本代表監督という経歴を持つ斑目秀雄氏のオーディオシステムをオーディオクリニックする"という「話題性」が加わることによって企画が実現したのだろう。

特集記事に書かれている「チューニング以上に斑目さんと会えることが楽しみ」という編集者の言葉が正直すぎて面白い。
もし仮に一般人のオーディオシステムをオーディオクリニックするとなれば特集が組まれることはないはずだ。


いざ、オーディオクリニック

さて、記事の詳細については実際に雑誌を購入して特集記事を読んで戴くとして、ココではオーディオクリニックに対する私なりの意見を書いてみたいと思う。

今回特集記事で紹介されているオーディオクリニックの内容は、カイザーサウンドファンであればお馴染みの「スピーカーの加速度組み立て」や「ケーブルの配置管理」、そして「スピーカーの配置」。
他にも細かなクリニックを行っているようだが、特に効果が大きいのはこの3点である。
新しい機器や、新しいケーブルを導入することなく、技の力だけでどれだけ音質向上することができるのかを実践している。


スピーカーの加速度組み立て

まず最初に行ったのがスピーカーの加速度組み立て。
スピーカーを一度解体して組みなおす。
このときにポイントとなるのが、ネジを全て外して適材適所に配置転換して締めなおす作業。
振動が最も綺麗に抜けていくように、言い換えれば加速度がつくようにネジを配置していくのだが、何度も目の前でこの作業を見ている私であっても、いったいどのようにしてネジを見分けているのかサッパリわからない。

常人にはわからない感覚、人は理解できないものをオカルトと判断する

しかし、大事なのはオカルトかオカルトでないかという点ではない。
それよりも、音楽としてのクオリティが高いか低いかのほうが重要である。
オカルトだから、といった理由で食わず嫌いになってしまうのはいかがなものだろうか。

何よりも大切なのは、音楽を真正面から見つめ、音楽を感じること

オカルト談議など本来の目的からズレていると断言する。


方向性とは

ここでカイザーサウンドの提唱する「方向性」について軽く説明しておこう。
方向性は金属だけでなく木材にもあるのだが、今回は金属にスポットを当てて説明していく。
ネジでもインシュレーターでも支柱でも何でもいいのだが、金属というのは重心が完全に中央にはこない
これは地球の重心の影響によるものだが、それによって金属には偏りが生まれ、振動の抜ける方向を決定するため、カイザーサウンドで言われる「方向性」が生まれる。
その方向性を整備することで振動の抜ける道を整えることができる。
これが加速度組み立てと言われる技術の理屈である。

金属の重心を中心にもってくるのは簡単なことではない。
とてつもなく高度な技術が要求される。
有名な話なので知っている方も多いと思われるが、日本の小さな町工場が作る砲丸が非常に精度が高く、「魔法の砲丸」と言われている。
砲丸というのは鋳物から作られ、鉄、シリコン、カーボン、マンガン、リン、硫黄などを混ぜてつくるのだが、その時に品質にバラつきが出来てしまう。
それは、重力によって重いものは下へ、軽いものは上へ浮くため、下のほうが密度が高くなってしまうからだ。
当然重心はズレる。
この話からもわかるとおり、カイザーサウンドの技のキーポイントである「方向性」というのは非常に理に適った考え方であることがわかる。
ただし、それを見極める術、この点だけが唯一オカルティックであることを除けば・・・


モノが違えば音は変わる、人が変われば音は変わる

記事の中で、「自転車も組む人で違いますか?」「驚くほど違います」というやり取りがあるが、これは素人であっても容易に想像することができるはずだ。
自転車でもF1カーでも何でもいいが、組み立てる人が変れば違いが出るだろう。
同様に、この世に完全に同一なネジ、金属板、木材などは存在しないのだから、同じ製品であったとしても正確には同じとは言えないはずである。
モノが違えば音は変わる
考えてみれば当たり前のこと。

同じオーディオ機器なのに音が違う、なんてことがあっても決して不思議ではない。
むしろ違っていて当然。
全く同じであることのほうがおかしいのだ。


スピーカーの配置調整

次にスピーカーの配置調整について書いていこう。
これは誰もがやっていることなので、特に詳しく書かなくても理解できる部分だろう。
スピーカーの配置を変えれば音が変わる
スピーカーから音の波が出る、壁にぶつかり反射する、戻ってくる、また反射する、この繰り返し。
最初にスピーカーから出る音を第一波とするなら、第一波が向かいの壁を反射し、スピーカーの後ろにある壁でまた反射し、スピーカーから出る第二波とピタリとタイミングが合うことで音がまとまる。
このタイミングがずれるとグチャグチャになってしまう。
そして、左右のスピーカーから出る音は放射状に広がっていくわけだが、左の波と右の波がぶつかる。
このときの角度、距離によって調和するかしないかが決定する。
音が綺麗に調和するポイントを探
これがスピーカーの配置調整。


調和こそが真理

これはオーディオだけでなく様々な場面で言えることだと思うのだが、

全ては調和してこそ真価を発揮する

私の自論のひとつである。

子供の頃に熱中していたゲーム
どうすれば強くなれるのかを考えたどり着いた答え、それが調和。
場を把握し、相手の動き、相手の心を把握し、決して自我を強調せず、溶け込むように、空間と相手に適応して呼吸を合わせることで勝利へ近づくことができる。

学生時代に熱中したF1
どのようなチームがレースで勝つのかを考えたどり着いた答え、それが調和。
クルー達の想い、技術によって作られたF1カー、タイヤ、ドライバー、作戦、当日の天候や気温など、あらゆる要素が調和したときに、最高の結果が生まれるのだ。
ドライバーだけが優れていても優勝できないし、車だけが速くても駄目。
全てが絶妙のバランスで調和しなければならない。

大好きなヘヴィーメタル
メタル以外の全ての音楽で言えることだが、これも調和が大事。
ボーカル、ギタリスト、ベーシスト、ドラマーなど、全ての奏者の息が合い、更に言えばオーディエンス、観客とバンドマンの息が合えば完璧なる調和。
ライヴは全てが調和したときに最高のライヴとなる。

調和はジャンルを問わない、競馬であっても同じこと。
馬が強ければ勝てるのか?勝てるわけがない。
馬、調教師、騎手、当日の芝や気温、コースの形状、更には馬主の考えなどなど、あらゆる要素が調和し一致したときに最高のポテンシャルを発揮する。

そしてオーディオ
アンプだけハイエンドなら音が良くなるのか?そんなことはありえない。
アンプ、スピーカー、DACやトランスポート、電源や部屋などなど、全ての要素が調和し足並みを揃えることで音楽が完成する。

何事も大切なのはバランスよく調和すること
オーディオであれば、各機器の音楽性がバラバラでは音楽はまとまらない。
全ての意思が同じ方向を向いて前へ進むことで初めて調和が生まれる。
自然に、綺麗に、なめらかに、あるがままに・・・

自然体で音楽が鳴るような状態にするのがカイザーサウンドの音楽真理

私はそう解釈している。


最後に

貝崎氏は、オーディオシステムのバランスの悪いギクシャクしたところクイクイっと調整して滑らかに動くようにする。
オーディオ界の整体師のような存在なのかもしれない。
そして、その技は職人の域であって、誰でも簡単に真似できるようなものではない。
今までに見てきた数多くの患者(オーディオシステム)の経験があるからこそ会得できた感覚。


「どうしようもないぐらいに体調が悪い・・・何でもいいからどうにかしてくれ!」

「治しましょう。この魔法の手で。」

「怪しいけど、、、お願いします。」


人はそれをオカルトと呼ぶけれど、健康であることが何よりも大切
オーディオシステムは健康が一番!

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sPICT0942.jpgローゼンクランツのオーディオアクセサリー、ローズキャップ。
単純にRCA端子を保護するだけのアイテムではない。
音質を改善するために開発された正真正銘のオーディオアクセサリー。

ローズキャップには方向性があることを先に書いておく。
しかし、あえて方向性を無視して、バラバラな方向で最初は使ってみた。

全ての端子に装着、方向性はバラバラ、全て奥まで差し込む。
という使い方をしてみた。

結果、正直改善したとは感じなかった。
むしろ逆に悪化した。
何が?
音が硬くなり、緊張したような音になってしまったのだ。
音もバラバラでまとまっていない。


①方向性の管理

全てのキャップの方向性を、右向きにしたり、左向きにしたり、いろいろと試してみた。
結果的に、全てを上向きに装着するのが最も音がまとまることが判明
全て上向きにすることで、音が皆同じ方向を向き、まとまってくれる。
(※上向きとは、薔薇の絵の花びらの幅の狭い方を上向きにするということ)


②キャップをつける数の管理

数を増やすほど効果が大きくなるようだ。
音が硬くなるという効果を例にあげるなら、数を増やすほど音が硬くなる。
逆に、数を減らすほど音がリラックスして聴きやすくなった。


③キャップをつける場所の管理

間隔をあけてキャップを配置するよりも、間隔をつめてキャップを配置したほうが効果が大きいようだ。
②と③の検証の結果、全ての空き端子に使用するのがベスト
(後から聞いた話だが、キャップ間の距離が狭いほど加速度がつくらしい。そういう目的のアイテムなのかと納得)


⑤差し込む深さの管理

全てに使用するのがベストだが、音が悪化する使い方をすれば、悪い効果が増加するだけで意味が無い。
そこでポイントとなってくるのが差し込む深さの管理。
差し込む深さの管理がローズキャップを使いこなすための奥義である。

検証を進めるうちに差し込む深さで何が変化するのかを把握。
そして、その変化の割合は差し込む深さで調整が可能であることを発見。

深く差し込むほど

1.リズム感が消滅する、音が死ぬ
2.音の活力が無くなる
3.特に高域がバッサリと消える
4.響き成分を押さえ込む
5.音のパワー感が強調される
6.音の節が強調される
7.音の流れが鋭角になる
8.ノリが悪くなる

浅く差し込むほど

1.リズム感が良化する
2.音が生き生きとしてくる
3.響きが開放されて音が部屋中に拡散する
4.音のハーモニーを増加する
5.細かなニュアンスまでわかるようになる
6.スイングするような流れるリズム感が生まれる
7.音がノビノビとし、ワイドレンジ、高域改善

特に1と2の効果は絶大で、音楽の節、溜め、インパクト感を維持しつつ、流れるようなリズミカルな音を生み出すことが可能で、ノリノリで躍動感溢れる音、簡単に言えばローゼンクランツらしさが増す。
 

基本的な使い方まとめ

全ての空き端子に使う
方向性は上向きで揃える
深さの調整のポイントとしては、リズム感に意識を集中させ、リズム感が死なないギリギリの位置よりやや浅めあたりで固定すると、しっかりと節、溜めを強調しつつ流れるリズム、そしてブワっと広がる音になる。
何よりもノリを意識してほしい。
聞いていて体を動かさずにはいられないような音になれば、それがローズキャップのベストポジションである。


⑥使いこなし応用編

貝崎氏よりアドバイスを頂戴したので以下に掲載しておく。




1.差込の深さ即ち前後の調整は、音の強弱(凝縮と開放)と大きな関係がある
2.時計の針が進むように回転方向に対して、何度の位置にあるかによって緩急表現が可能

例えば、10時~12時までの間にすると溜めができ、次に信号の下流側を12時~14時あたりで調整すると両者の関係からタメと加速が作れる




実際にチャレンジしたみたが、これがなかなか難しい。
DAC側を10時ぐらいの位置までずらし、アンプの端子の下側を12時よりやや左、最上段を2時ぐらいの位置にすると効果を感じやすい。
あまり怖がらずに思いきって方向性を変えてみよう。

全て上方向にするとストレートに音が出るイメージになるので、これは無難と言えば無難なセッティングである。
決して悪くないし、簡単にできるのでオススメ。
このALL上方向の音と比べて、応用編のセッティングにしたときに明らかに変わるのが音の溜めと瞬発力
リズムの質がグっと向上し、上下のリズム感から、指揮者のタクトのような流動的な生きたリズム感へと変化する。

例えるならば、静かな一音一音であっても、ストンと下に落ちていくのが通常ならば、応用編のセッティングでは、手をハの字にスっと下ろすような深みを引き出すことができるようになり、更にそこからスパンとキレ良く立ち上がる音の勢いが見事としか言いようがない。
静と動の切り替えの速さは、まるで居合い抜きの達人。
そして、床から天井までを音が駆け上がるのが目に見えるようだ。

他にも、数、位置、方向性、差し込む深さのバリエーションは無限にあるわけで、いろいろな音を作ることができる。
しかし、数、位置の変則パターンはかなり難しいというのが個人的な感想で、空き端子全てに使うのが無難なように思う。


⑦アンプ以外への使用

最後に、DACで使う場合、完全に奥まで差し込んだほうが明らかに好結果を得られた
おそらく、上流機器になるほど振動を押さえ込んだほうがいいのだろう。
このあたりは一般的なオーディオアクセサリーの常識が通用するように思う。
つまり、上流機器ほど奥まで差し込むほうが好結果を得られる可能性が高い
ただし、私の使用しているDACの場合、端子が一つしかなかったため、奥まで差し込んで丁度良かったとも考えられる。
DACでも、複数端子がある場合は、数に応じて効果が増大するので、アンプ同様に差し込む深さを調整してみてほしい


総評

費用対効果は抜群。
何十万もするケーブルと同等の効果と言っても決して大袈裟ではないかもしれない。
ノイズ対策、SN比向上を狙った保護キャップが主流の中、ローズキャップは加速度をつけてリズム感を強化するという別視点からの音質改善アプローチをとっている。
方向性管理が可能なローゼンクランツだからこその商品ではないだろうか。
システムによって効果の差があるとは思うが、価格も安いので是非一度チャレンジしてみてほしい。
いろいろなキャップの使い方を試すのも面白い。



テスト経過

いろいろな使い方を試しています。
本当にたくさんの表情を見せてくれることがわかってきました。
キャップの配置、深さ、方向性。
ピンケーブルを挿す位置を変えて検証すると、ガラっと違った表情になったりします。

ここでは検証結果を随時追加で書いていきたいと思います。
ある程度使い方が固まってきた段階で、改めて記事を追加修正したいと思います。

まず、貝崎さんにクリニックをしてもらっている場合、キャップをつけていない状態の音が非常に優れたバランスを持って音が鳴ことを忘れてはなりません。
キャップを使っていろいろといじった後に、一度元に戻してみると、ニュートラルな状態、バランスの良い音で鳴っていることがよくわかります。
このバランスとは、低域から高域までのバランス、音の繋がり、テンポ、響きなどなど、全てが基準となりえる音にセッティングされており、この状態からどのようにも変化できるように、そして対応できるようになっていることに驚かされます。

なので、このバランスの良さを崩さないように、更なるリズム感の向上、音の溜めを作って感情表現を高める、といった方向に持っていくのを私は課題にして調整を進めています。

まずは個数についてですが、やはり使用する個数を増やしたほうが音の溜め、加速といったリズム面の向上は大きく出ます。
この時に注意が必要なのが、多く使うほど響きが削がれるため、バランスが崩れやすいということです。
つまり、ローズキャップを使う数が増えるほどに、バランスを取るのが難しくなるわけです。
6ピン使った状態で、素晴らしい音を実現することができたので、多く使用することによる悪影響というのは、調整技術次第で消すことができ、それよりも利点を多く引き出せると言えそうです。
ただし、非常にシビアな調整が必要となります。

使用するキャップを減らせば、当然調整の難易度は下がります。
キャップを使わない部分は開放の状態になるようで、響きをしっかり残すことが可能。
バランスをとりやすいです。
ただし、個数が減った分だけリズム感の強化度合いは減ります。

次に配置ですが、ピンケーブルが一番左側にさし、右側に全てキャップをつけると、開放していくイメージになり音が広がる傾向があります。
逆に、ピンケーブルを右側にさして、そこへ向かってキャップをつけていくと、音に力強さ、パワーが付加されます。
面白い現象でしたが、音楽を発揮できているのは断然ピンケーブルを左につけたときで、そこから音を開放していくイメージを作ったほうがいいようです。

深さの調整は本当にシビアで、かなりの集中力を必要とします。
音楽を流しながらミリ単位で深さを調整し、ココだ!というポイントを見つけます。
変化については既にレビューで書いている通りで、浅くさせば開放、深くさせば凝縮され力感が出ます。
個人的には浅くさすほうがオススメで、方向性によって音の溜め、リズム感を作るのが良いように思います。

そして、このリズム感強化が最も難しく、1度だけキングオブコンダクターと言えるほどのリズムを実現できたのですが、それ以降その壁を越えることができていません・・・更に言えば、その音の再現する方法すらわからず四苦八苦しています。

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「カイザーサウンド」

第一章~初心忘れるべからず~

第二章~カイザーサウンド(音は生き物)~

第三章~破滅からの転生~

第四章~貝崎親子来訪記Part.2~

第五章~ヘッドホンサウンド~

第六章~スピーカーサウンド~

第七章以降未定
 

★第三章~破滅からの転生~

◆スピーカーセッティング

ヘッドホンシステムとスピーカーシステム。
機器におけるオーディオシステム上の違いはどこにあるのか。
実は、全くといっていいほど差が無い。
それどころか、差は無いと言い切ってしまってもいいだろう。

音を出す振動板までは、ヘッドホンとスピーカーは同じ道を辿る。
音が出る瞬間、その時まで、何も差は生まれない。
差は無いのだ。
あとはヘッドホンから、スピーカーから音が出てフィニッシュ。
と、上手くことが運べばどれだけ楽か。
現実はそんなに甘くない。

確かに、音が出るまでに限れば、差は何一つ無いと結論付けて問題ないだろう。
しかし、音は耳に届くまで見届けなければならない。
音を感じるのは人なのだから、至極当たり前の道理である。

音が出てから耳に届くまでの空間。
ココがヘッドホンとスピーカーの決定的な違いだ。
たったコレだけの違いが、とてつもない差を生み出す。

もし仮に、ヘッドホンが「樹海を抜けたら目の前に旅館」だとすれば、スピーカーは「樹海を抜けたら絶壁」と表現したい。
トランスポート、DAコンバータ、アンプ、ケーブル、電源などなどを攻略し、樹海を抜ければ気持ちのよい温泉と美味しいご馳走、ふかふかのお布団が出迎えてくれるヘッドホンシステム。
同じ苦労をして樹海を抜けても、今まで以上に困難な、スピーカー設置とルームチューニングという絶壁を攻略する必要のあるスピーカーシステム。
ヘッドホンシステムとスピーカーシステムのセッティングに大きな隔たりがあることに疑問の余地はない。

スピーカーの設置とルームチューニング。
スピーカーユーザーなら誰もが悩み苦労していることだろう。
考えただけでも心が疲弊し、オーディオを投げ出したくなるほどである。
それほどスピーカーを鳴らすことは難儀。

スピーカーシステムにおいて重要なのは、音が出てから耳に届くまでの空間を制すること。
空間を制することで、音楽は心の壁を越えて人へ伝わる。
すなわち、心に響く音楽の獲得である。

心の壁は無理矢理越えることなどできない。
音の流れを感じ取り、音と呼吸を合わせ、空間に溶け込む意識。
音と心が通じたとき、心の壁は消えてなくなる。
スピーカーのルームチューニングとは、このような領域なのではないかと素人ながらに推測する。


◆破滅からの転生

初めてのスピーカー導入については、「貝崎親子来訪日記」を読んで戴きたい。
「貝崎親子来訪日記」によって、以下の流れを知ることができる。

・初めて自分で組んだスピーカーシステム
・鳴らないスピーカー
・命を吹き込まれたスピーカー

貝崎氏の腕によって一旦は音楽を表現できるようになった現実。
その後何があったのか。
話を進めていこう。

貝崎親子来訪から数ヵ月後、サウンドステーションⅡというオーディオボードを導入した。
自分で設置したため、若干スピーカーの配置が変わってしまった。
位置が変わることで音が狂うかと思ったが、その心配は杞憂であった。
素人がポンと置いただけで部屋いっぱいに音が広がる。
魔法か!このオーディオボードは!
サウンドステーション恐るべし。
音が部屋全体で鳴らなくて困っている人には是非試して欲しいオーディオボードである。

次に、スピーカーケーブルをSP-RGB3に変更。
これは、SP-RGB1、SP-RGB2を超えるハイクラスのケーブル。
非常に高価なケーブルということもあり、大いに期待して導入した。
それはもう、期待に期待を込めて。
この時、スピーカーケーブル導入が破滅の始まりになろうとは微塵も思わなかった。

そして、スピーカーケーブルを交換して音出し。

!!??
まさかの崩壊。
音は痩せ細り、部屋全体で音を鳴らすなど夢のまた夢。
前方からしか聞こえてこない音。
音が死んでいる。
聞くに堪えない酷い音だ。

スピーカーケーブルをアップグレードしたことによって音が死んでしまったのだ。
こんな結果は想定の範囲外。
悪化することなど予想できようものか。
上りきった絶壁から突き落とされ、振り出しに戻ってしまった。
またも目の前に立ちはだかる壁。
絶望以外のなにもない。

その後、スピーカーの配置を移動、移動、移動、移動、移動・・・・・・
掴めそうな岩を探りに探り、少しでも這い上がろうと試みる。
上っては戻り、上っては行き詰る。
一線を越えれない。
素人技の限界。
結局、壁を登りきることはおろか、上ろうとする気力すら消え失せた。
そして、スピーカーシステムは破滅した。

後から貝崎氏にこの話をしたところ以下のような回答を戴いた。

前回訪問した時は、その時に所有していたメーカーのバラバラなアンプやスピーカー、ケーブルを使って、強引に鳴るようにセッティングしたようだ。
それはもう針の穴を通すほどの緻密なセッティング。
使用するケーブルが変わり、位置も変われば、バランスが崩れて当たり前。

無限に存在する絡み合ったセッティングの紐。
その中から当たりの紐を探り当てるのは、スピーカー素人の私にできる芸当ではない。

お手上げ。
己の力の限界、袋小路、完全なる敗北。
職人技によって生み出される工芸品を素人が作るのが無理なのと同じこと。
スピーカーセッティングは実力が全て。
そこには慈悲の欠片も存在しない。
戦争、戦い、力を持つものが勝利を手にする。
自分の手によってスピーカーに命を吹き込むことは不可能だと悟り、静かにスピーカー第一章は幕を閉じた。

時は流れ、2年。

オーディオとは人生そのもの。
自分の生活スタイルに合わせ、自分の精神、肉体に合わせてオーディオ、即ち音は変化していく。

あらゆるパーツがカチカチと組み合わさり、タイミングという名のパズルが完成する。
今こそ転機なり。
アンプも、スピーカーも、スピーカースタンドも、ケーブルも売却。
そこに迷いはない。
一度白紙へ戻し、全てを一新する。
新たなスピーカーシステムを組むタイミングは今しかないと警笛が鳴っている。
準備は整った。
早速貝崎氏に連絡をとる・・・破滅からの転生を信じて。

こうしてスピーカーシステム第二章が幕をあけた。

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「カイザーサウンド」

第一章~初心忘れるべからず~

第二章~カイザーサウンド(音は生き物)~

第三章~破滅からの転生~

第四章~貝崎親子来訪記Part.2~

第五章~ヘッドホンサウンド~

第六章~スピーカーサウンド~

第七章以降未定


★カイザーサウンド(音は生き物)

カイザーサウンドとは、

「カイザーサウンドは特徴が無い音」

「・・・?」

誰もの頭上に浮かび上がる特大の疑問符。
間違いない、カイザーサウンドの音を言葉で伝えきることは不可能。
実際に自分の耳で聞くことでしか理解できない、これが現実。
と言ってしまっては元も子もないので、言葉の限界に挑戦してみよう。

カイザーサウンドとは、

兎にも角にも音楽的、熱く生命力に溢れ、パッションに満ちている。
何よりも音の流れ、しなやかに音が流れ、ビシッ!ビタッ!と決まるタイミング、リズム。
感情表現の鬼、時に激しく、時に優しく、そして悲しさ、楽しさも表現可能。
音色もまた変幻自在、暖かくも冷たくも変化する。
あらゆる音を一つのシステム、一つのスピーカーで再現できる。
なぜなら、固有の音を持たないから。
無個性、そう、個性、特徴が無いのがカイザーサウンド!

結局ソコかい!
右往左往して到着した先に待ち受けていた言葉。
それはスタート地点で横にいたあいつ、「特徴の無い音」。
特徴の無い音、特徴の無い音・・・、ブツブツと唱えていてふと思う。

「だから何なんだ?」

そう、だから何なのだ。
ローゼンクランツの音は特徴の無い音、無個性な音。
これは間違いない。
今まではここで思考が止まっていた。

これでは話が先に進まない。
一歩踏み出す必要がある。
しかし、その一歩を踏み出す為に必要なピースが欠けていた。
否、思考の欠如、はたまた怠慢か。
何故?の思考を止めるなとはよく言ったものだ。
人間は常に疑問を抱くことで成長する。

どんな音か、それを伝えようとしていたことが間違い。
先見性、視野の拡大、音の先にあるナニカ。
今一度問おう。

「だから何なんだ?」

今なら更に先まで思考を巡らせることができる。
ローゼンクランツの音は個性を持たない音。
言い換えれば、低音が、高音が、音が太い、音が細い、冷たい、暖かい、柔らかい、硬いなどといった、音の細かな要素に意識がいかない音。

だから・・・ローゼンクランツの音は、「強制的に音楽に意識がいく」のだ。

それは、まるで目を閉じ、耳や鼻を塞ぎ、五感を一つ一つ排除していった時に、研ぎ澄まされてくる第六感に似ているのかもしれない。
数々の音の要素を排除することによって、音楽の本質が浮き彫りになってくるのだ。
まるで、強制的に音楽に意識がいくように操られているかのように。
自然と、無意識に、音楽に意識が引き寄せられる。
これがカイザーサウンドなのだと今は確信を持って言える。

「強制的に音楽に意識がいく」ことを狙ってローゼンクランツ製品は作られているのか。
それとも結果的に「強制的に音楽に意識がいく」音作りになったのか。
いずれにせよ、「魅力」という能力値が特化していることに変わりはない。
例えるなら、三国志で魅力溢れる武将達、劉備、諸葛亮、周瑜、張昭・・・何か違う。
ローゼンクランツのイメージに合うのは張魯か。

人を惑わすほどの圧倒的魅力。
一種の宗教的魅力に近いものがある。
ということを客観的意見として書いておこう。
これもまた素直な感想。

原音に忠実な音を目指す場合、おのずと癖の少ない音を目指す人が多いのではないか。
私もその一人。
それが自然な音に近づけると考えていた。
自然な音は、妙に艶っぽかったり、派手でキラキラしてはいない。
作ったような癖のある音ではない。
つまり、癖を減らせば自然な音に近づいていく。
いたって理に適った考え方ではないか。

しかし、自然な音を目指していくと同時に、陥りやすい音の傾向がある。
これは私のオーディオシステムを組む能力不足によるところもあるので、一例として捉えて欲しいのだが、「音の癖を削るほど、音楽を流していても気にならないほど自然で、空間に溶け込んだ音になっていく」というのが私が経験から自力で導き出した結論だ。
また、自分にはこの結論に至るだけの力しかなかったとも言える。

耳に優しく、サラサラと体に入ってくる自然体なサウンド。
これが音の癖を削ることで到達する境地。
ただ・・・そこに・・・熱が、勢いが、感情が、うねりが無いのだ。
そして、汚さや凄み、激情を表現することができない。

癖の無い音、カイザーサウンド。
同じ癖の無い音でも、カイザーサウンドは全く逆。
グイグイと心を惹きつける魅力の強い音。

同じ癖の無い音でも、全く方向性が違うというのは驚きである。
カイザーサウンドは、小さな音量であろうが、疲れて寝ようと思っていようが、音楽に心奪われる。
それだけの求心力を持った音。

なぜこんな音が実現できたのか。
私は、ローゼンクランツ製品が秀でている「魅力」の原因は以下の3点にあると考える。

1.生命力
2.運動能力
3.感情表現

オーディオ経験のある人ならば、

「何を言っているんだ?今はオーディオの話をしているんだぞ?」

と思うに違いない。
およそオーディオに関連性があるとは思えない言葉ばかり並んでいる。
しかし、これらがカイザーサウンドの正体。

生命力、運動能力、感情表現、まさに生物そのものではないか。
溢れ出るエネルギーとパワー、激しくも柔軟にも動き、ピタっと静止し、勢いよく動き出す。
そして、無限に変化する感情を巧みに描き出す。

どうすれば生命力が出るのか。
どうすれば運動能力が高くなるのか。
どうすれば感情表現が豊かになるのか。

カイザーサウンドは、そのカラクリを熟知し、自在にコントロールすることができる。
匠の技、それは1000を超える現場でのセッティングによって培われた熟練の技術、研ぎ澄まされた感性。
その技術と感性によって製品が作られているからこそ、ローゼンクランツ製品は共通して三大要素を持つ。
また、全製品に流れるマインドにブレが無いからこそ、ローゼンクランツ製品の支配率が高くなるほどに足並みを揃え、生き物としての完成度を増していく。

自然に身を任せる。
自然の摂理に逆らわない。
生物、植物、自然界の全てが、理に適った構造を持っている。

当たり前のことを当たり前にすることの難しさ。
それが出来た時、生きた音を生み出すことができる。
自然を模範とし、理解し、オーディオに流用することで音に生命が吹き込まれる。

カイザーサウンドとは、生き物である。

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「カイザーサウンド」

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第五章~ヘッドホンサウンド~

第六章~スピーカーサウンド~

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★第一章~初心忘れるべからず~

「どんなスピーカーが欲しいですか?」

「どんなヘッドホンが欲しいですか?」

このような質問をされた時、脳裏に浮かんでくるイメージ。
それが自分にとっての理想の音だろう。
理想の音、真に好きな音、心から音楽を楽しめる音。

オーディオを趣味とする者は、己の理想とする音を追い求めることに邁進する。
ただ直向に、前へ前へと歩を進めることに集中する。
しかし、その先にある理想郷へ辿り着けるものは極僅か。
多くの者は迷い、苦しみ、立ち止まり、失い続ける。
考え、正しき道を定めない限り・・・

「あなたにとっての理想の音ってどんな音ですか?」

こう聞かれた時、どのように答えるか。
この質問、決定的に音楽観を判別する魔性の質問。
回答は以下の四つ。

1.クリアーで澄み切った音
2.甘美でとろけるような美しく柔らかな音
3.鋭利でキレのあるスピード感のある音
4.重厚で密な圧倒されるような音

究極の選択、よく考えて選んでほしい。
今までのオーディオ経験から結論を導き出す。
自分の好み。どんな音が好きなのか。
本来ならば考えてはいけないこと。
嗜好とは、直感に頼り、即答すべき本質的なもの。

1番を選んだ人。
クリアー、澄み切ったというイメージは、生演奏の音そのもの。
色付けされていない自然な音を指している。
即ち、原音に忠実な音をオーディオで再現しようとしている人。

なんてのはデタラメ、馬鹿げた虚偽そのもの。
どの回答を選んだとしても言えることが一つある。
それは、音を部分部分のパーツで見てしまう人というのは、オーディオの悪魔に囚われている可能性が非常に高いということ。

対して、以下のように答えた人はいるだろうか。

「何言ってんだ。音楽を楽しめる音が理想の音だろ?」

これこそ真理。
音楽の真髄を理解できている人。
心を揺さぶるその音が、音を判断する指針となる。

さて、あなたの回答は前者か後者か。
おそらく、前者のほうが圧倒的に多いのではないだろうか。

いくつものオーディオ機器、オーディオアクセサリーを試し、金と労力、時間を費やす。
変化する音に喜び、そして悩み、近づき遠ざかる理想像。
その道は険しくそして果てしない。
夢は夢なのか、心を削られる日々。
オーディオの悪魔が、身動きのとれない泥沼へと引きずり込む。
動けば動くほど深みへとはまっていく、これがオーディオの怖さである。

無駄、無駄、無駄、全てが無駄だ。
そんなことを思う時もあったのではないか。
オーディオにおいて、無駄なことなど一つもない。
無駄にしてしまうことが過ち。
無駄だと考えず、そこから学び糧とすることで成長へと転ずる。
オーディオに限らず、人生においても同じこと。
過ちの数が多いだけ人は成長する。

いつからだろう。
理想の音など考えるようになったのは。
この発想はオーディオに興味のある人特有のもの。
いろいろな音を経験するからこそ生まれてくる考え方。
様々な音を知れば知るほどに、理想の音はより具体的に細かく設定される。
その時にはもう遅い、手遅れ。
砂漠の中央に置かれた蟻、生存確率は限りなくゼロだ。
起死回生、命を繋ぐオアシスを見つけることができるか否かに全てがかかる。

オアシスとは何か。
自分の力でオーディオシステムをゴールへと導くことができないと悟った時。
救世主たる存在、音のカラクリを知る人に頼るのは決して間違いではない。
自分ひとりでは実現不可能なこと、それは生活、仕事においても多々あること。
餅は餅屋、専門家の存在、それこそオアシス。

話を戻そう。
オーディオの知識など全く無かった頃の自分を思い出してみてほしい。
ラジカセから流れてくる音楽を聞いて、低音が弱い、高音が痛いなどと考えていただろうか。
ラジオから流れてくる音楽を聞いて、解像度が低い、音色が冷たいなどと考えていただろうか。
単純に、「この曲良いなぁ」と思えたあの感覚が、音楽の核心をついている。
そこを忘れてしまっては、いつまでたってもゴールに到達することはできないのではないか。

かといって、音のひとつひとつの要素を軽視していいわけではない。
なぜなら、人それぞれ好みの音があるからだ。
甘美な音が好きな人もいれば、繊細な音が好きな人もいれば、へヴィな音が好きな人も存在する。
これはこれで大事なこと。

しかし、好みの音を追い求めることに意識がいきすぎていないだろうか。
常に忘れてはならないのは音楽の本質。つまり、音楽を楽しむということ。
本能に全てを委ね、音楽を楽しむ。
こんな簡単なことが、オーディオ経験が長ければ長いほど難しくなってしまう不思議。
経験が、知識が、鋭い感覚を鈍らせる。
音の変化が人を惑わせるのだ。
これがオーディオの悪魔の正体だろう。

自分は音楽を楽しんでいるのだろうか。
音の細かな要素にばかり意識がいっていないだろうか。
改めて自問自答してみてほしい。

誰もが初めは純粋に音楽を楽しんでいたはずだ。
初心忘れるべからず。
音を楽しんでこその音楽であることの再認識。

何よりも第一に、音楽の本質を見極められるようになった時。
本当の意味での理想の音へと近づいていけるようになるはずだ。
これは、一度オーディオという世界を経験しなければ理解できないこと。
経験した苦労、苦悩が多いほど、何倍も音楽に感動できるのではないか。

何が理想なのか、その考え方を変える勇気。
もし今の自分がひとつひとつの音の要素に囚われているならば、今すぐ初心に戻ってほしい。
音楽を楽しむことの大切さ。
それだけで、間違いなく理想へ近づけるはず。

拍手[9回]

slcd3-0.jpg

型番:LCD-3
メーカーAUDEZ'E
タイプ:平面磁界・全面駆動式
再生周波数帯域: 5Hz - 20KHz,(usable high frequency extension 50KHz)
インピーダンス:50Ω
感度:93dB/1mW
質量:550g(ケーブルなし)
ケーブル長:2.5m
プラグ:6.3mmステレオ標準プラグ,4ピンXLR
その他:ケーブル着脱式

メーカー製品紹介ページへ


slcd3-3.jpg見た目通り?見た目以上?の超重量級ヘッドホン。装着すれば意外と重さを感じないのでは?という期待を見事に裏切ってくれます。ガッツリと頭部から肩にかけて圧し掛かる重量感は、修行と言うよりも苦行の類。LCD-3の直後にGRADOのPS1000を装着した時に、装着してないのかと錯覚する程に軽く感じ、「あれ?RS-1かコレ?」と言葉が漏れたのは嘘のような本当の話。ラムスキン製のイヤーパッドはフカフカしており感触が良く、耳にピトっと吸い付きます。イヤーパッド部分で頭部に固定する力が強いため、これだけ重いにも関わらず、頭頂部にはそれほど負担がかからない点はgood。頭頂部に鈍痛を感じるものの、刺さるような激痛を感じることはなく、辛うじて最悪の事態だけは免れています。とは言っても、数ある全てのヘッドホンの中で、ワースト10以内に必ず入るであろう装着感を有した極悪ホンであると個人的には思います。いくら音が良くても、重量だけは気にしなければならないと今更ながら学習することができました。93dBという能率は、一般的なヘッドホンと比べるとやや低いスペックとなっていますが、特に音量を取り難いという印象はなく、大抵のヘッドホンアンプで十分音量を取ることが可能です。この点は特に問題視する必要はないでしょう。LCD-2ではヘッドホン側のケーブルコネクタが真下に向かって出ており、ケーブルが肩に当たって気になる欠点がありましたが、LCD-3では斜め45度前方へコネクタが向いているため、肩にケーブルがかからなくなっています。ちょっとしたことではありますが、嬉しい改善ポイントとなっています。全体の造りはしっかりしており、木と金属の質感を活かした見た目はハンドメイド感と高級感が上手く融合していて好印象。所有欲を満たすのに十分なクオリティーを持っています。ヘッドホンケーブルは着脱式。リケーブルが可能ですので、ケーブルによる音の変化を楽しむことができます。レビューの最後に述べますが、リケーブルによる音の変化が出やすいヘッドホンなので、リケーブルによって二度も三度も楽しめるヘッドホンです。

slcd3-5.jpgLCD-3付属のケーブルは、シングル接続のものとバランス接続のものの2種類入っています。ただし、バランス接続のケーブルは、主流とは言えないAKGのK1000やHE-6などで採用されている4ピンXLRコネクタになっている点に注意が必要。今回のレビュー内容は、付属のバランスケーブルに変換ケーブルを噛まして、主流であるXLR×2のバランス接続に変更して使用したものとなっています。変換ケーブルをかましているので完全には付属ケーブルの音とは言えませんが、限りなく付属ケーブルの音を聞いてのレビューと思って戴いて問題ないと思います。

slcd3-6.jpg量感バランスは中低域寄り~フラット。基本性能は十分に高く、膨大な情報量を筆頭に、レンジ感、解像度感もハイレベルです。解像度感はコンデンサー型のそれに近く、全ての音を微粒子のように感じられるタイプ。音の分離感はほぼ無いに等しく、全面で音が鳴る点もコンデンサー型同様です。一般的なダイナミック型ヘッドホンのような高い解像度と分離感によって、一つ一つの音を鮮明にクッキリハッキリ知覚できるようなオーディオ的な解像度感ではありません。コンデンサー型とまではいかないものの、まるで流水のように滑らかに流れる音が、自然音に近い解像度感を感じさせてくれます。音の歪みの無さは通常のダイナミック型とは比較になりません。全帯域において凸凹感や癖を感じさせない淀みのない綺麗な出音で、決してガチャガチャしない音を奏でてくれます。情報量の多さはLCD-3のセールスポイントのひとつでしょう。開放型とは到底思えない密な空間を作り出します。湿度の高いミストサウナの蒸気を音に置き換えた感じでしょうか。もし仮に音度(おんど)という言葉が存在するならば、限りなく音度100%に近い空間だと言えます。レンジは低域方向へよく伸びており、かなり低いところまでしっかり鳴らしてきます。高域方向に関しては、ハイエンドヘッドホンとして見ると少し物足りなさを感じるかもしれません。低域方向と比較するとやや抑えた高域といった印象を受けますが、これは音が抜けきるのではなく、空間内で響かせて音の末端をスーッっと消えていくように処理する特徴のためで、音が伸びきらないという印象を持つことはありません。もう一つ、LCD-2でも同様の傾向が見られる特徴があります。それは、LCD-2、LCD-3共にダイナミックレンジが優れていることです。ダイナミックレンジに関しては、数多くのヘッドホンを聞いていても凄いと感じることが滅多に無い部分なのですが、LCD-2とLCD-3はこの部分が明らかに優れています。AUDEZ'Eが意識的にダイナミックレンジが音楽を表現する上で大事な要素だと認識して重視しているのか、もしくは、理想の音を追求した結果、ダイナミックレンジに優れたヘッドホンが完成したのか、いずれにせよ、両機がダイナミックレンジに優れていることが音質において好結果を生む形となっているのをLCD-3から感じ取ることができます。LCD-2とLCD-3は、微小音から大きな音までを動的に鳴らし、音の流れに起伏があり、表情豊かに活力に満ちた音楽表現をします。まるでビッグウェーブに乗っているかのような、またはジェットコースターに乗っているかのような勢いと躍動感溢れるサウンドに体が反応し、ゾクゾクと身震いするほどの興奮と高揚感を与えてくれます。音を抑えた状態から・・・ブワッ!と湧き上がる大音量に体がリンクし、鳥肌が立つような感覚を味わえる稀なヘッドホンです。ダイナミックレンジについては、別のメーカーであればSTAXやゼンハイザーも得意とする部分です。これらのメーカーのヘッドホンでも同様の感覚を味わうことができるので、STAXのイヤースピーカーや、ゼンハイザーのHD650HD800を所有している人であれば容易に想像できるかと思います。

slcd3-2.jpg次に、それぞれの音域を具体的に見ていきましょう。低域は濃く深く凄みのある音をしています。ここまで凄みのある低音というのは貴重なもので、低域の印象の強さという視点から見れば、比較対象としはULTRASONEのEdition9ぐらいしか思いつきません。強烈なインパクトを持ったEdition9の低域とは質が全く違うという前置きをした上で、LCD-3はEdition9と同等の迫力ある低域を聞かせてくれます。LCD-3の場合は、歪みがなく解像度感が高い低域であることを礎として、ふわりと豊潤で量感があり、ウッドベースや管楽器などの響きを含んだ低音を得意とします。逆に、打音のようなタイトさ、エッジ感、力感が欲しいような低音は若干苦手で、明確に低域を描き分けるタイプではありません。低域の主張感、存在感の強さは勿論、縁の下の力持ち的な意味で全体の雰囲気作りをする低域としても高い能力を発揮します。次に中域を見ていくと、まず言わせてください、「極上」であると。LCD-3の中域は、直接脳に訴えかけるような音楽性豊かな中域です。この直接的な中域はオーディオテクニカの中域表現に近いものがあります。LCD-3は分厚い低域に意識がいきがちですが、実はLCD-3の魅力は低域よりも中域にあるのではないかというのが個人的な見解です。平面駆動という構造上、尖った音やジャキジャキした音の表現は出来ませんが、歪みがなく滑らかで艶やかで綺麗な音にかけては、「極上」の域に達しています。高域は僅かに鮮やかさを持ち、金属的な華やかさも多少表現することが可能です。柔らか滑らか一辺倒な高域と思いきや、意外と快活さのある高域で、そこに繊細というイメージは浮かんできません。高域の線が細くないので、個性ある低域に負けることなく意識が全帯域に行き届きます。

slcd3-1.jpgさて、ここからLCD-3の音の方向性について書いていきます。先ほどのサウナの話でも十分に感じて戴けたかと思いますが、このヘッドホンの最大の特徴は、音の「厚み」と「濃さ」だと断言します。この「厚み」と「濃さ」という要素が癖、個性と言えるぐらいにパラメータ的に特化しています。全域で音の厚み、密度感が圧倒的で、ここまでギッシリ音の詰まった音はそうそうあるものではありません。過去濃く充実した音だと感じたヘッドホンに、Edition9やオーディオテクニカのATH-L3000がありますが、それらと比較しても同等の凄みのある音をしています。Edition9やATH-L3000が密閉型なのに対し、LCD-3は開放型ですから、いかに特異なヘッドホンであるかがわかるというものです。通常、「厚み」や「濃さ」があると同時に「重い」音になるものですが、LCD-3は「重い」音ではなく「想い」音を持ったヘッドホンです。物理的に重量があるという意味での音の重さは感じず、心に響く感情という意味で、「想い」を伝える力に秀でた説得力のある音なのです。決して音が重くならず、くどくならず、むしろ僅かに清々しさを感じるほどで、このように感じるのは、歪み感の少なさによって体にさらりと溶け込む音の性質によるものなのだと思います。

slcd3-4.jpgオーディオの醍醐味である音色でもまた、LCD-3は独自の魅力ある音色を持っており、存分にアピールすることが可能です。特に中域で感じられる艶やかな音、そして甘い音、これはLCD-3の個性を決定付ける要素のひとつでしょう。LCD-3は、人工甘味料のような甘さではなく、自然の甘さ、自然な艶やかさを持っています。ちょっと艶っぽいかな?と感じる程度なので、何でもかんでも艶やかに甘く染めてしまうわけではなく、ロックやメタルにも十分対応できる範囲内で、程よい味付けがされているという認識で問題ないでしょう。例えるなら、ATH-W2002のような、口に含んだ瞬間に旨みが爆発するような大トロではなく、口に含み深く味わい心の奥底で美味いと思えるような大トロ、それがLCD-3です。そして、低域の説明の時に少し述べましたが、LCD-3は響きの上手さも優れています。響きのコントロールについてはSTAXを筆頭に、平面駆動がかなり有利なように感じます。ボーカルは勿論のこと、ウッドベース 管楽器などの音を自然かつリアルに再現します。このような響き成分を含んだ音の表現力と比べると、打音はちょっと苦手なように感じますが、しっかりエネルギーの乗った音なので、聞き応えは十分にあります。「もうちょっとアタック感が欲しいかな?」という感想が、例えばピアノなどの音を聞いたときに出てくるのは否定できませんが、これは好みの範囲内であって、決定的に不得手ということは決してありません。

ダイナミック型平面駆動ヘッドホンとは大まかに言ってどのような音なのでしょうか。仮に、コンデンサー型を0、ダイナミック型を10とするならば、LCD-3は鳴り方として3~4の位置に在るヘッドホンです。どちらかと言えばコンデンサー型の鳴り方に近いと感じます。一般的なダイナミック型ヘッドホンと比べれば一目瞭然で、まず音が全面で鳴り、音に輪郭を作らずに鳴らす傾向が強いです。ただし、コンデンサー型ほどは全面で鳴らず、僅かに焦点の合った音像感と、エネルギー感や力強さを内包しており、上手くバランスのとれたヘッドホンという印象です。HD800のレビューで「何を聴くにしても贅沢な気持ちにさせてくれる高級料理のようなヘッドホン」と表現したのに対して、LCD-3は「何を聴くにしても満足感に満たされる郷土料理のようなヘッドホン」と表現したいですね。高級料理でなくても心の底から「美味かった」と満足感に満たされる料理ってありませんか。

音場感はソースの影響がよく出てくるようです。スタジオ録音では狭めな空間を作ることが多く、LIVE音源やクラシックなどではそれなりに広さを感じられます。しかし、広い音場という印象はあまりありません。多くの音源で、低域から中域にかけて間近でモリモリ鳴り、高域にかけては放射状に広がっていく空間を形成します。そのため、迫力ある低域や味わいあるボーカルなどは間近で感じられ、綺麗な響き成分は上空にふわっと広がり満ちて心地よさを感じることができます。「それが理想の音場感!」となる人も出てきそうな、オーディオとして一つの理想系とも言えるような音場感を持っています。基本性能として応答速度が速くキビキビした音をしていますが、LCD-3に関しては、あえて俊敏性を見せつけないようにしている感があります。機敏でキレのある音が欲しい場合には、音の傾向上LCD-2のほうが優れているので、両機種を上手く使い分けることが可能でしょう。

slcd3-9.jpg得意ジャンルはクラシックとジャズ。異論は認めません!と言いたくなるぐらいに最高に合います。全面で鳴る音というのは、本当にクラシックのホールの臨場感を生み出しますね。STAXのイヤースピーカーでクラシックを聞けば、クラシックに興味の無かった人でも虜になるように、LCD-3もSTAXレベルとまでとは言いませんが、ダイナミック型のヘッドホンでは最高峰の臨場感を味わうことが可能です。とにかく音が自然、「ホールの音の響きを完全再現!」なんて誇大広告があったとしても、「確かに再現できとるな」と思わず納得してしまうぐらいの音です。打音のインパクト感や、緊張感、スリリングさなども含めると、HD800のほうが適正が高いとも言えますが、STAXを使うか、LCD-3を使うか、HD800を使うか、各々好みで選んで戴けたらと思います。いずれもクラシックを聞くならば、一本で満足できるクオリティーを持ったヘッドホンです。クラシックとの相性と比べるとグンと落ちてしまう感があるのは否めませんが、それでもボーカルモノとの相性は素晴らしいものがあります。オーディオテクニカのボーカル表現が好きな人であれば、LCD-3のボーカル表現も好きなのではないでしょうか。ボーカルを身近に感じられ、声の細かなニュアンスまで感じとることができ、声に加味されるいい塩梅の艶っぽさが、ノスタルジーに浸るのに一躍買っています。優しい声質との相性が特に良いので、この手の音楽が好きな人にはオススメしたいヘッドホンです。どんなジャンルの音楽でも綺麗に鳴らしてしまう傾向があるため、キレや音のエッジ感、歪んだ音のジャキジャキ感が欲しいロックやメタルとの相性は良いとは言えません。私の好みの問題ではありますが、メタル特有の"負の感情"を表現する能力が低いため、私の場合はメタルは駄目だと切り捨てるというのが正直な感想です。"凄み"は出せるけど"エグさ"が出せないといった感じで、なかなか言葉で伝えるのが難しい部分ではあります。しかし、綺麗な音で聞くロックが好きな場合には、他に代えのきかないヘッドホンになることでしょう。楽器別で個人的に良い音だと感じたのは、ヴァイオリンとウッドベースです。どちらも甲乙つけがたいほどに心に響く音をしていますが、どちらか選べと言われればウッドベースの音を選びます。ボンボンと響くウッドベースの低い音の再現度、響き成分を含んだ低域を得意とするLCD-3の十八番です。この音は是非実際に聞いて確認してみてほしいものです。

ここまでで付属ケーブルのレビューは終了となります。「どんだけ書くねん、もうええわ!」って人は右上の×ボタンを、もっとLCD-3のことを知りたい人は引き続きお付き合いください。ここからはリケーブルした時の音のレビューになります。


★BLO-DSQL2B(Blossom)へリケーブル

このケーブルは、LCD-2Rev2に付属でついていたものですが、通常は、AUDEZ'E社製のシングルエンド標準ケーブルが付属ケーブルとしてつくようです。2ndstaffは、LCD-2Rev2のキャンペーンを二度行っており、そのうちの一回目のキャンペーンの時のみ付属ケーブルをBlossomのBLO-DSQL2B(シングル / バランス)にして出荷していたようです。

slcd3-7.jpgLCD-3付属ケーブルと比較して基本性能はやや向上。音色が中庸で色付けが少ないため、後で紹介するALO audioのReference 16よりもこちらのほうが解像度が向上しているという実感が強いです。とは言っても、付属ケーブルと比べて劇的に性能の向上を感じるかと言えばそんなことはなく、逆にそれほど変化がないと言ったほうが正確でしょう。解像度同様、情報量についても特に差があるとは感じません。高域方向へのレンジ感は多少改善されており、よく音が伸びていて、クリアーな音質になったことで高域の主張感が少し強くなっているように感じます。Reference 16でも高域方向へのレンジの改善が感じられることから、相対的に見てLCD-3の付属ケーブルは、他のケーブルと比べると低域にバランスが寄っており、高域方向への音の伸びが控えめになっているようです。

BLO-DSQL2Bの音を、コンデンサー型を0、ダイナミック型を10とするならば、鳴り方として4~5の位置になります。丁度中間地点、文字通りダイナミック型平面駆動ヘッドホンと言えるような、平面駆動とダイナミック型の良さをバランス良く引き出せているケーブルです。

まず音を出してすぐに感じるのは、クリアーな空間になったことでしょう。音の色付けが排除され、クリーンで澄み切った音色になります。付属ケーブルで感じられた甘さや柔らかさ、音の厚みや重厚さが減退し、全体的に音が締まってピシっとします。この結果、特に低域の解像度感、というよりは分離感の向上によって、低域の明確さが増したように感じます。音に輪郭が若干つき、加えて見通しがよくなったことで、全体感の強い低域にタイトさが生まれ、背景と低域が分離しています。このような低域になった影響で、キレやスピード感が増し、ロックやメタルへの対応力が良くなっており、付属ケーブルと比べれば、オールランドに使える汎用性の高いヘッドホンになっています。これは他の帯域でも同じことで、例えばボーカルにおいては、フォーカス精度が上がったことによって、ボーカルの音像がポッカリと空間に浮かび上がるようになり、同様に楽器の位置関係も把握しやすくなっています。

slcd3-10.jpg付属ケーブルでは耳あたりの良い色艶ある音色をしていて、それが大きな魅力のひとつとなっていました。BLO-DSQL2Bにリケーブルすると、その色付けがガクンと減少してしまいます。音の味わいという部分で見れば、魅力は減ったと言わざる得ません。しかし、これがリケーブルの醍醐味で、BLO-DSQL2BにはBLO-DSQL2Bにしか出せない独自の魅力があり、それを楽しむのがリケーブラーのマナーと言うもの。中庸な音になり、輪郭が生まれたことによって、高域には鮮やかさとエッジ感が加わり、ジャキジャキとした音が出せるようになっています。また、低域ではタイトさ、キレ、スピード感、迫力や凄みが出せるようになっています。BLO-DSQL2BにはBLO-DSQL2Bにしか出せない魅力がたっぷりと詰まっているのです。このような傾向から、ストレートかつダイレクトに音をぶつけてくるタイプに変化したのかと思うかもしれませんが、そこは平面駆動、やはり平面駆動、されど平面駆動、何度でも言いますが、平面駆動の土台は絶対的に崩れません。どこまでも痛みや圧力のない音で、耳に優しい音なのです。また、BLO-DSQL2Bは音場感に優れており、間近で音が鳴る印象が薄らぎ、自分を中心に全方向へ音が広がるようになります。特に中高域での変化が顕著で、少し距離を置いて音が鳴るようになるので、ガツガツしたサウンドを少し距離をおいて聞くようなリスニングスタイルになります。空間がクリアーになったことも影響しているのだと思いますが、音が響き広がっていくのをしっかりと感じられます。

得意ジャンルはやはりクラシック。この点はどのケーブルに変更しても変わらないでしょう。それ以外のジャンルでは、BLO-DSQL2Bではロック、メタル、打ち込みとの相性が良くなったように思います。音の色付けが少なく、金属的な音や打ち込みの音を素直に出してくれます。また、非常にノリの良さを引き出せる点もプラスに影響しています。付属ケーブルの低域がウッドベースの音に最適ならば、BLO-DSQL2Bの低域はエレキベースの音に最適です。低域の輪郭が強く描かれることで、低域が地を這うようにうねっているのが目に見えるようです。また、唸るボーカルの凄みや、突き上げるハイトーンヴォイスなど、付属ケーブルの時とはまた違った意味で、ボーカルを堪能できるようになっています。圧倒的プレッシャーとパワー、押し寄せる威圧的な気配、破壊力は抜群です。Edition9の低域を力100、圧のかかる面積を60とするなら、BLO-DSQL2Bでの低域は、力70、圧のかかる面積100といった感じです。広範囲で重量級の低域を体にぶち込んできます。歪みがなく耳へ負担がかかるような圧力の無い低域は、コンデンサー型の低域との共通点が多いように思いますが、この迫力ある低域をコンデンサー型で出すことはできないでしょう。逆に、ダイナミック型である以上、コンデンサー型級の究極のなめらかサウンドを出すことも不可能でしょう。

BLO-DSQL2Bバランス感覚に優れ、高いクオリティーを持ったよく出来たケーブルで、優しい音から激しい音までをニュートラルな音色で多彩に表現が可能なケーブルです。BLO-DSQL2Bにリケーブルすることで、「多様なジャンルに対応できるLCD-3」にすることが可能です。個人的にはLCD-3付属ケーブルよりもこちらのほうが使い勝手が良くてオススメですね。ちなみに、クラシックやボーカルモノをメインで聞く場合には、LCD-3付属のケーブルのほうが相性が良いように思います。


★Reference 16 Silver/Copper(ALO audio)へリケーブル

slcd3-12.jpg最後に、ALO audioのReference 16 Silver/Copperへリケーブルした時の音について書いていきます。まず見た目が美しいですね。綺麗に編み込まれたキラキラと輝く線材が期待を増幅させます。流石にこれだけの物量を投入したケーブルだけに、あまり取り回しは良いとは言えません。重さもなかなかのもので、通常であればケーブルが重くて邪魔になるところですが、LCD-3はヘッドホンそのものが重過ぎるので、ケーブルの重さが全く気になりません。「なんだかなぁ」といったところでしょうか。

LCD-3付属ケーブルと比較して基本性能はやや向上。とは言っても、それほど変化はないように思います。BLO-DSQL2BとReference 16の解像度は差がほとんど感じられません。情報量についても特に差があるとは感じません。しかし、細かな音の鮮明さ、音の滑らかさなどから、若干ではあるものの基本性能が高いのは間違いないでしょう。解像度、情報量と違って一聴して改善されたと感じられるのはレンジ感です。明らかに高域方向へのレンジが良化しており、しっかりと音が伸びきるようになっています。そのため、低域方向へも高域方向へも思う存分音がノビノビと躍動し、低域寄りな印象の強かったバランスがフラット傾向へ近づいています。付属ケーブル時にあれだけ主張していた低域が、他の帯域と足並みを揃えて整然としています。

slcd3-8.jpgReference 16の音を、コンデンサー型を0、ダイナミック型を10とするならば、鳴り方として5~6の位置になります。付属ケーブルと比べると、ずいぶんと音に輪郭が生まれ、焦点が定まり、音の粒立ちがハッキリしています。BLO-DSQL2Bと比較しても、Reference 16のほうが音の輪郭を描き、音を締め上げる傾向があり、音がシャキっとスタイリッシュになります。全体で鳴る印象はかなり薄まったように感じます。そのため、音像が見えやすくなり、音の実在感、実体感が増し、より迫力ある音、言うなれば一般的なダイナミック型に近い感覚の迫力あるサウンドを出せるようになっています。しかし、その反面音の重厚感、濃さといった要素は減退しています。輪郭を強く描くことで音のエッジ感が出るようになっていますが、音の輪郭の滑らかさという見方をすると、3本のケーブルの中でReference 16が最も滑らかで、耳当たりの優しい音になっています。また、意識しなければ感じないレベルではあるものの、音の定位感が優れており、安定感があって安心して音楽に没頭できるようになったように思います。そのせいか、ついつい長時間音楽を聞いてしまうのは、Reference 16を使用した時のLCD-3だったりします。

音色的には付属ケーブルともBLO-DSQL2Bとも違います。付属ケーブルのように甘くもなく、BLO-DSQL2Bのように中庸な音色でもありません。唯一このケーブルだけは格調高い華やかさを持っています。音色の味付けは微々たるもので、明確に知覚できるようなものではありません。しかし、多彩な色使いで、表情豊かな音色になったことは間違いないと確信しています。深い音、濃い音、凄みのある音、煌びやかな音、綺麗な音、艶やかな音、エレキトリックな音まで、他のケーブルでは味わえなかった様々な音に出会うことができます。そして、空間に漂う空気感、雰囲気が変わったことも重要な変化でしょう。突如として気品ある貴族が現れたかのように場の空気感が変わるのです。音に上品さが付加され、薄っすらと高貴な気配が音に感じられるようになります。その結果、今までの音がコンサートホールの空気感なら、Reference 16の音は宮殿の空気感と言えます。聖堂でも城でもなく、宮殿のイメージです。このような情景が目に浮かぶのは、音に華やかさが増したからでしょう。どこか清々しさも感じられるようなその音は、付属ケーブル時の分厚いサウンドからは想像できないものです。キラキラと輝くReference 16の見た目そのままの音で、見事にケーブルの見た目と音がリンクしていると言えそうです。このReference 16特有の音は、ラックスマンが独特の味わいある音を持っているのと同じように、オーディオ的な作られた音なのだと思います。しかし、この音が実に心地よいのです。ALOサウンド、完成度の高い音ですね。

slcd3-11.jpgReference 16の音は、キレと締まりを強く感じさせてくれますが、それでも直接的な圧力は感じません。いくら一般的なダイナミック型ヘッドホンの鳴り方に近づいたとは言っても、圧力を感じないことが平面駆動であることを思い出させてくれます。Reference 16の音は、凄く攻撃的な音を出すこともできるのに、全く耳に負担がかからない音なのです。BLO-DSQL2B同様に、ここでもまた低域の変化がわかりやすく、歪みの無さ、正確さ、解像度感、キレ、重み、濃さ、総合力で見ればe9やPS1000を超えた低域と言ってもいいぐらいに素晴らしいものですが、どうしたって圧力がなく綺麗に音を出すというのはLCD-3の不変の特徴です。この低域は多くの人にとって魅力的な低域となりえるのではないかと思います。音場感は低域は近め、中域から高域にかけてはやや遠め、それなりに広い空間で立体的です。どちらかと言えば付属ケーブルの音場感に近いように思います。違いと言えば、音がタイトでスッキリしたことで、全体的にコンパクトなサウンドになり、壮大さ、スケールといった点は減退したことでしょうか。逆に言えば、現代的な音楽への対応力が大きく向上したとも言えます。

得意ジャンルが変わることはありません。ここでもまたクラシック、ジャズを得意とします。しかし、Reference 16は、他の2本のケーブルと比べると最も幅広いジャンルに対応できる音となっています。ロックやメタル、打ち込みやポップスなどなど、あらゆる音楽をそつなく捌ききってくれます。音色が多彩なので、付属ケーブルとは違った音楽の楽しみ方を出来ると思いますし、使い分けるという意味でも、Reference 16は価値あるケーブルのように思います。


★まとめ

以上ここまで長いレビューにお付き合い戴いた方はお疲れ様です。LCD-3は、ダイナミック型平面駆動ヘッドホンの可能性を存分に感じられるヘッドホンでした。力強さを持ちながら、歪みがなく綺麗な音という新しい世界を見せてくれたLCD-3。その音の傾向から、単純にダイナミック型のハイエンド機種と比較できるものではありません。しかし、十分に並みいるハイエンドヘッドホン達と肩を並べるだけのポテンシャルを持っているのは確かです。平面駆動型ヘッドホンというのは、LCD-3、LCD-2やHE-6を聞く限り、あまり固有の音を持たないのかもしれません。なぜなら、環境やケーブルによってずいぶんと印象が変わるからです。コンデンサー型と違い、ダイナミック型はアンプの種類が豊富で、なおかつ高性能なものも多く存在しますから、LCD-3は自分好みの音を追求できる可能性と、音質的な高みを目指せる可能性を同時に秘めたヘッドホンであると思います。今まではフォステックスぐらいしかダイナミック型平面駆動ヘッドホンを販売していませんでしたが、AUDEZ'EのLCDシリーズやHiFiManのHEシリーズといったハイクオリティなダイナミック型平面駆動ヘッドホンをきっかけとして、今後、他のメーカーからもダイナミック型の平面駆動ヘッドホンを是非とも発売してほしいものです。

 

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