「カイザーサウンド」
第一章~初心忘れるべからず~
第二章~カイザーサウンド(音は生き物)~
第三章~破滅からの転生~
第四章~貝崎親子来訪記Part.2~
第五章~ヘッドホンサウンド~
第六章~スピーカーサウンド~
第七章以降未定
★第三章~破滅からの転生~
◆スピーカーセッティング
ヘッドホンシステムとスピーカーシステム。
機器におけるオーディオシステム上の違いはどこにあるのか。
実は、全くといっていいほど差が無い。
それどころか、差は無いと言い切ってしまってもいいだろう。
音を出す振動板までは、ヘッドホンとスピーカーは同じ道を辿る。
音が出る瞬間、その時まで、何も差は生まれない。
差は無いのだ。
あとはヘッドホンから、スピーカーから音が出てフィニッシュ。
と、上手くことが運べばどれだけ楽か。
現実はそんなに甘くない。
確かに、音が出るまでに限れば、差は何一つ無いと結論付けて問題ないだろう。
しかし、音は耳に届くまで見届けなければならない。
音を感じるのは人なのだから、至極当たり前の道理である。
音が出てから耳に届くまでの空間。
ココがヘッドホンとスピーカーの決定的な違いだ。
たったコレだけの違いが、とてつもない差を生み出す。
もし仮に、ヘッドホンが「樹海を抜けたら目の前に旅館」だとすれば、スピーカーは「樹海を抜けたら絶壁」と表現したい。
トランスポート、DAコンバータ、アンプ、ケーブル、電源などなどを攻略し、樹海を抜ければ気持ちのよい温泉と美味しいご馳走、ふかふかのお布団が出迎えてくれるヘッドホンシステム。
同じ苦労をして樹海を抜けても、今まで以上に困難な、スピーカー設置とルームチューニングという絶壁を攻略する必要のあるスピーカーシステム。
ヘッドホンシステムとスピーカーシステムのセッティングに大きな隔たりがあることに疑問の余地はない。
スピーカーの設置とルームチューニング。
スピーカーユーザーなら誰もが悩み苦労していることだろう。
考えただけでも心が疲弊し、オーディオを投げ出したくなるほどである。
それほどスピーカーを鳴らすことは難儀。
スピーカーシステムにおいて重要なのは、音が出てから耳に届くまでの空間を制すること。
空間を制することで、音楽は心の壁を越えて人へ伝わる。
すなわち、心に響く音楽の獲得である。
心の壁は無理矢理越えることなどできない。
音の流れを感じ取り、音と呼吸を合わせ、空間に溶け込む意識。
音と心が通じたとき、心の壁は消えてなくなる。
スピーカーのルームチューニングとは、このような領域なのではないかと素人ながらに推測する。
◆破滅からの転生
初めてのスピーカー導入については、「貝崎親子来訪日記」を読んで戴きたい。
「貝崎親子来訪日記」によって、以下の流れを知ることができる。
・初めて自分で組んだスピーカーシステム
・鳴らないスピーカー
・命を吹き込まれたスピーカー
貝崎氏の腕によって一旦は音楽を表現できるようになった現実。
その後何があったのか。
話を進めていこう。
貝崎親子来訪から数ヵ月後、サウンドステーションⅡというオーディオボードを導入した。
自分で設置したため、若干スピーカーの配置が変わってしまった。
位置が変わることで音が狂うかと思ったが、その心配は杞憂であった。
素人がポンと置いただけで部屋いっぱいに音が広がる。
魔法か!このオーディオボードは!
サウンドステーション恐るべし。
音が部屋全体で鳴らなくて困っている人には是非試して欲しいオーディオボードである。
次に、スピーカーケーブルをSP-RGB3に変更。
これは、SP-RGB1、SP-RGB2を超えるハイクラスのケーブル。
非常に高価なケーブルということもあり、大いに期待して導入した。
それはもう、期待に期待を込めて。
この時、スピーカーケーブル導入が破滅の始まりになろうとは微塵も思わなかった。
そして、スピーカーケーブルを交換して音出し。
!!??
まさかの崩壊。
音は痩せ細り、部屋全体で音を鳴らすなど夢のまた夢。
前方からしか聞こえてこない音。
音が死んでいる。
聞くに堪えない酷い音だ。
スピーカーケーブルをアップグレードしたことによって音が死んでしまったのだ。
こんな結果は想定の範囲外。
悪化することなど予想できようものか。
上りきった絶壁から突き落とされ、振り出しに戻ってしまった。
またも目の前に立ちはだかる壁。
絶望以外のなにもない。
その後、スピーカーの配置を移動、移動、移動、移動、移動・・・・・・
掴めそうな岩を探りに探り、少しでも這い上がろうと試みる。
上っては戻り、上っては行き詰る。
一線を越えれない。
素人技の限界。
結局、壁を登りきることはおろか、上ろうとする気力すら消え失せた。
そして、スピーカーシステムは破滅した。
後から貝崎氏にこの話をしたところ以下のような回答を戴いた。
前回訪問した時は、その時に所有していたメーカーのバラバラなアンプやスピーカー、ケーブルを使って、強引に鳴るようにセッティングしたようだ。
それはもう針の穴を通すほどの緻密なセッティング。
使用するケーブルが変わり、位置も変われば、バランスが崩れて当たり前。
無限に存在する絡み合ったセッティングの紐。
その中から当たりの紐を探り当てるのは、スピーカー素人の私にできる芸当ではない。
お手上げ。
己の力の限界、袋小路、完全なる敗北。
職人技によって生み出される工芸品を素人が作るのが無理なのと同じこと。
スピーカーセッティングは実力が全て。
そこには慈悲の欠片も存在しない。
戦争、戦い、力を持つものが勝利を手にする。
自分の手によってスピーカーに命を吹き込むことは不可能だと悟り、静かにスピーカー第一章は幕を閉じた。
時は流れ、2年。
オーディオとは人生そのもの。
自分の生活スタイルに合わせ、自分の精神、肉体に合わせてオーディオ、即ち音は変化していく。
あらゆるパーツがカチカチと組み合わさり、タイミングという名のパズルが完成する。
今こそ転機なり。
アンプも、スピーカーも、スピーカースタンドも、ケーブルも売却。
そこに迷いはない。
一度白紙へ戻し、全てを一新する。
新たなスピーカーシステムを組むタイミングは今しかないと警笛が鳴っている。
準備は整った。
早速貝崎氏に連絡をとる・・・破滅からの転生を信じて。
こうしてスピーカーシステム第二章が幕をあけた。
「カイザーサウンド」
第一章~初心忘れるべからず~
第二章~カイザーサウンド(音は生き物)~
第三章~破滅からの転生~
第四章~貝崎親子来訪記Part.2~
第五章~ヘッドホンサウンド~
第六章~スピーカーサウンド~
第七章以降未定
★カイザーサウンド(音は生き物)
カイザーサウンドとは、
「カイザーサウンドは特徴が無い音」
「・・・?」
誰もの頭上に浮かび上がる特大の疑問符。
間違いない、カイザーサウンドの音を言葉で伝えきることは不可能。
実際に自分の耳で聞くことでしか理解できない、これが現実。
と言ってしまっては元も子もないので、言葉の限界に挑戦してみよう。
カイザーサウンドとは、
兎にも角にも音楽的、熱く生命力に溢れ、パッションに満ちている。
何よりも音の流れ、しなやかに音が流れ、ビシッ!ビタッ!と決まるタイミング、リズム。
感情表現の鬼、時に激しく、時に優しく、そして悲しさ、楽しさも表現可能。
音色もまた変幻自在、暖かくも冷たくも変化する。
あらゆる音を一つのシステム、一つのスピーカーで再現できる。
なぜなら、固有の音を持たないから。
無個性、そう、個性、特徴が無いのがカイザーサウンド!
結局ソコかい!
右往左往して到着した先に待ち受けていた言葉。
それはスタート地点で横にいたあいつ、「特徴の無い音」。
特徴の無い音、特徴の無い音・・・、ブツブツと唱えていてふと思う。
「だから何なんだ?」
そう、だから何なのだ。
ローゼンクランツの音は特徴の無い音、無個性な音。
これは間違いない。
今まではここで思考が止まっていた。
これでは話が先に進まない。
一歩踏み出す必要がある。
しかし、その一歩を踏み出す為に必要なピースが欠けていた。
否、思考の欠如、はたまた怠慢か。
何故?の思考を止めるなとはよく言ったものだ。
人間は常に疑問を抱くことで成長する。
どんな音か、それを伝えようとしていたことが間違い。
先見性、視野の拡大、音の先にあるナニカ。
今一度問おう。
「だから何なんだ?」
今なら更に先まで思考を巡らせることができる。
ローゼンクランツの音は個性を持たない音。
言い換えれば、低音が、高音が、音が太い、音が細い、冷たい、暖かい、柔らかい、硬いなどといった、音の細かな要素に意識がいかない音。
だから・・・ローゼンクランツの音は、「強制的に音楽に意識がいく」のだ。
それは、まるで目を閉じ、耳や鼻を塞ぎ、五感を一つ一つ排除していった時に、研ぎ澄まされてくる第六感に似ているのかもしれない。
数々の音の要素を排除することによって、音楽の本質が浮き彫りになってくるのだ。
まるで、強制的に音楽に意識がいくように操られているかのように。
自然と、無意識に、音楽に意識が引き寄せられる。
これがカイザーサウンドなのだと今は確信を持って言える。
「強制的に音楽に意識がいく」ことを狙ってローゼンクランツ製品は作られているのか。
それとも結果的に「強制的に音楽に意識がいく」音作りになったのか。
いずれにせよ、「魅力」という能力値が特化していることに変わりはない。
例えるなら、三国志で魅力溢れる武将達、劉備、諸葛亮、周瑜、張昭・・・何か違う。
ローゼンクランツのイメージに合うのは張魯か。
人を惑わすほどの圧倒的魅力。
一種の宗教的魅力に近いものがある。
ということを客観的意見として書いておこう。
これもまた素直な感想。
原音に忠実な音を目指す場合、おのずと癖の少ない音を目指す人が多いのではないか。
私もその一人。
それが自然な音に近づけると考えていた。
自然な音は、妙に艶っぽかったり、派手でキラキラしてはいない。
作ったような癖のある音ではない。
つまり、癖を減らせば自然な音に近づいていく。
いたって理に適った考え方ではないか。
しかし、自然な音を目指していくと同時に、陥りやすい音の傾向がある。
これは私のオーディオシステムを組む能力不足によるところもあるので、一例として捉えて欲しいのだが、「音の癖を削るほど、音楽を流していても気にならないほど自然で、空間に溶け込んだ音になっていく」というのが私が経験から自力で導き出した結論だ。
また、自分にはこの結論に至るだけの力しかなかったとも言える。
耳に優しく、サラサラと体に入ってくる自然体なサウンド。
これが音の癖を削ることで到達する境地。
ただ・・・そこに・・・熱が、勢いが、感情が、うねりが無いのだ。
そして、汚さや凄み、激情を表現することができない。
癖の無い音、カイザーサウンド。
同じ癖の無い音でも、カイザーサウンドは全く逆。
グイグイと心を惹きつける魅力の強い音。
同じ癖の無い音でも、全く方向性が違うというのは驚きである。
カイザーサウンドは、小さな音量であろうが、疲れて寝ようと思っていようが、音楽に心奪われる。
それだけの求心力を持った音。
なぜこんな音が実現できたのか。
私は、ローゼンクランツ製品が秀でている「魅力」の原因は以下の3点にあると考える。
1.生命力
2.運動能力
3.感情表現
オーディオ経験のある人ならば、
「何を言っているんだ?今はオーディオの話をしているんだぞ?」
と思うに違いない。
およそオーディオに関連性があるとは思えない言葉ばかり並んでいる。
しかし、これらがカイザーサウンドの正体。
生命力、運動能力、感情表現、まさに生物そのものではないか。
溢れ出るエネルギーとパワー、激しくも柔軟にも動き、ピタっと静止し、勢いよく動き出す。
そして、無限に変化する感情を巧みに描き出す。
どうすれば生命力が出るのか。
どうすれば運動能力が高くなるのか。
どうすれば感情表現が豊かになるのか。
カイザーサウンドは、そのカラクリを熟知し、自在にコントロールすることができる。
匠の技、それは1000を超える現場でのセッティングによって培われた熟練の技術、研ぎ澄まされた感性。
その技術と感性によって製品が作られているからこそ、ローゼンクランツ製品は共通して三大要素を持つ。
また、全製品に流れるマインドにブレが無いからこそ、ローゼンクランツ製品の支配率が高くなるほどに足並みを揃え、生き物としての完成度を増していく。
自然に身を任せる。
自然の摂理に逆らわない。
生物、植物、自然界の全てが、理に適った構造を持っている。
当たり前のことを当たり前にすることの難しさ。
それが出来た時、生きた音を生み出すことができる。
自然を模範とし、理解し、オーディオに流用することで音に生命が吹き込まれる。
カイザーサウンドとは、生き物である。
「カイザーサウンド」
第一章~初心忘れるべからず~
第二章~カイザーサウンド(音は生き物)~
第三章~破滅からの転生~
第四章~貝崎親子来訪記Part.2~
第五章~ヘッドホンサウンド~
第六章~スピーカーサウンド~
第七章以降未定
★第一章~初心忘れるべからず~
「どんなスピーカーが欲しいですか?」
「どんなヘッドホンが欲しいですか?」
このような質問をされた時、脳裏に浮かんでくるイメージ。
それが自分にとっての理想の音だろう。
理想の音、真に好きな音、心から音楽を楽しめる音。
オーディオを趣味とする者は、己の理想とする音を追い求めることに邁進する。
ただ直向に、前へ前へと歩を進めることに集中する。
しかし、その先にある理想郷へ辿り着けるものは極僅か。
多くの者は迷い、苦しみ、立ち止まり、失い続ける。
考え、正しき道を定めない限り・・・
「あなたにとっての理想の音ってどんな音ですか?」
こう聞かれた時、どのように答えるか。
この質問、決定的に音楽観を判別する魔性の質問。
回答は以下の四つ。
1.クリアーで澄み切った音
2.甘美でとろけるような美しく柔らかな音
3.鋭利でキレのあるスピード感のある音
4.重厚で密な圧倒されるような音
究極の選択、よく考えて選んでほしい。
今までのオーディオ経験から結論を導き出す。
自分の好み。どんな音が好きなのか。
本来ならば考えてはいけないこと。
嗜好とは、直感に頼り、即答すべき本質的なもの。
1番を選んだ人。
クリアー、澄み切ったというイメージは、生演奏の音そのもの。
色付けされていない自然な音を指している。
即ち、原音に忠実な音をオーディオで再現しようとしている人。
なんてのはデタラメ、馬鹿げた虚偽そのもの。
どの回答を選んだとしても言えることが一つある。
それは、音を部分部分のパーツで見てしまう人というのは、オーディオの悪魔に囚われている可能性が非常に高いということ。
対して、以下のように答えた人はいるだろうか。
「何言ってんだ。音楽を楽しめる音が理想の音だろ?」
これこそ真理。
音楽の真髄を理解できている人。
心を揺さぶるその音が、音を判断する指針となる。
さて、あなたの回答は前者か後者か。
おそらく、前者のほうが圧倒的に多いのではないだろうか。
いくつものオーディオ機器、オーディオアクセサリーを試し、金と労力、時間を費やす。
変化する音に喜び、そして悩み、近づき遠ざかる理想像。
その道は険しくそして果てしない。
夢は夢なのか、心を削られる日々。
オーディオの悪魔が、身動きのとれない泥沼へと引きずり込む。
動けば動くほど深みへとはまっていく、これがオーディオの怖さである。
無駄、無駄、無駄、全てが無駄だ。
そんなことを思う時もあったのではないか。
オーディオにおいて、無駄なことなど一つもない。
無駄にしてしまうことが過ち。
無駄だと考えず、そこから学び糧とすることで成長へと転ずる。
オーディオに限らず、人生においても同じこと。
過ちの数が多いだけ人は成長する。
いつからだろう。
理想の音など考えるようになったのは。
この発想はオーディオに興味のある人特有のもの。
いろいろな音を経験するからこそ生まれてくる考え方。
様々な音を知れば知るほどに、理想の音はより具体的に細かく設定される。
その時にはもう遅い、手遅れ。
砂漠の中央に置かれた蟻、生存確率は限りなくゼロだ。
起死回生、命を繋ぐオアシスを見つけることができるか否かに全てがかかる。
オアシスとは何か。
自分の力でオーディオシステムをゴールへと導くことができないと悟った時。
救世主たる存在、音のカラクリを知る人に頼るのは決して間違いではない。
自分ひとりでは実現不可能なこと、それは生活、仕事においても多々あること。
餅は餅屋、専門家の存在、それこそオアシス。
話を戻そう。
オーディオの知識など全く無かった頃の自分を思い出してみてほしい。
ラジカセから流れてくる音楽を聞いて、低音が弱い、高音が痛いなどと考えていただろうか。
ラジオから流れてくる音楽を聞いて、解像度が低い、音色が冷たいなどと考えていただろうか。
単純に、「この曲良いなぁ」と思えたあの感覚が、音楽の核心をついている。
そこを忘れてしまっては、いつまでたってもゴールに到達することはできないのではないか。
かといって、音のひとつひとつの要素を軽視していいわけではない。
なぜなら、人それぞれ好みの音があるからだ。
甘美な音が好きな人もいれば、繊細な音が好きな人もいれば、へヴィな音が好きな人も存在する。
これはこれで大事なこと。
しかし、好みの音を追い求めることに意識がいきすぎていないだろうか。
常に忘れてはならないのは音楽の本質。つまり、音楽を楽しむということ。
本能に全てを委ね、音楽を楽しむ。
こんな簡単なことが、オーディオ経験が長ければ長いほど難しくなってしまう不思議。
経験が、知識が、鋭い感覚を鈍らせる。
音の変化が人を惑わせるのだ。
これがオーディオの悪魔の正体だろう。
自分は音楽を楽しんでいるのだろうか。
音の細かな要素にばかり意識がいっていないだろうか。
改めて自問自答してみてほしい。
誰もが初めは純粋に音楽を楽しんでいたはずだ。
初心忘れるべからず。
音を楽しんでこその音楽であることの再認識。
何よりも第一に、音楽の本質を見極められるようになった時。
本当の意味での理想の音へと近づいていけるようになるはずだ。
これは、一度オーディオという世界を経験しなければ理解できないこと。
経験した苦労、苦悩が多いほど、何倍も音楽に感動できるのではないか。
何が理想なのか、その考え方を変える勇気。
もし今の自分がひとつひとつの音の要素に囚われているならば、今すぐ初心に戻ってほしい。
音楽を楽しむことの大切さ。
それだけで、間違いなく理想へ近づけるはず。

型番:LCD-3
メーカーAUDEZ'E
タイプ:平面磁界・全面駆動式
再生周波数帯域: 5Hz - 20KHz,(usable high frequency extension 50KHz)
インピーダンス:50Ω
感度:93dB/1mW
質量:550g(ケーブルなし)
ケーブル長:2.5m
プラグ:6.3mmステレオ標準プラグ,4ピンXLR
その他:ケーブル着脱式
メーカー製品紹介ページへ
見た目通り?見た目以上?の超重量級ヘッドホン。装着すれば意外と重さを感じないのでは?という期待を見事に裏切ってくれます。ガッツリと頭部から肩にかけて圧し掛かる重量感は、修行と言うよりも苦行の類。LCD-3の直後にGRADOのPS1000を装着した時に、装着してないのかと錯覚する程に軽く感じ、「あれ?RS-1かコレ?」と言葉が漏れたのは嘘のような本当の話。ラムスキン製のイヤーパッドはフカフカしており感触が良く、耳にピトっと吸い付きます。イヤーパッド部分で頭部に固定する力が強いため、これだけ重いにも関わらず、頭頂部にはそれほど負担がかからない点はgood。頭頂部に鈍痛を感じるものの、刺さるような激痛を感じることはなく、辛うじて最悪の事態だけは免れています。とは言っても、数ある全てのヘッドホンの中で、ワースト10以内に必ず入るであろう装着感を有した極悪ホンであると個人的には思います。いくら音が良くても、重量だけは気にしなければならないと今更ながら学習することができました。93dBという能率は、一般的なヘッドホンと比べるとやや低いスペックとなっていますが、特に音量を取り難いという印象はなく、大抵のヘッドホンアンプで十分音量を取ることが可能です。この点は特に問題視する必要はないでしょう。LCD-2ではヘッドホン側のケーブルコネクタが真下に向かって出ており、ケーブルが肩に当たって気になる欠点がありましたが、LCD-3では斜め45度前方へコネクタが向いているため、肩にケーブルがかからなくなっています。ちょっとしたことではありますが、嬉しい改善ポイントとなっています。全体の造りはしっかりしており、木と金属の質感を活かした見た目はハンドメイド感と高級感が上手く融合していて好印象。所有欲を満たすのに十分なクオリティーを持っています。ヘッドホンケーブルは着脱式。リケーブルが可能ですので、ケーブルによる音の変化を楽しむことができます。レビューの最後に述べますが、リケーブルによる音の変化が出やすいヘッドホンなので、リケーブルによって二度も三度も楽しめるヘッドホンです。
LCD-3付属のケーブルは、シングル接続のものとバランス接続のものの2種類入っています。ただし、バランス接続のケーブルは、主流とは言えないAKGのK1000やHE-6などで採用されている4ピンXLRコネクタになっている点に注意が必要。今回のレビュー内容は、付属のバランスケーブルに変換ケーブルを噛まして、主流であるXLR×2のバランス接続に変更して使用したものとなっています。変換ケーブルをかましているので完全には付属ケーブルの音とは言えませんが、限りなく付属ケーブルの音を聞いてのレビューと思って戴いて問題ないと思います。
量感バランスは中低域寄り~フラット。基本性能は十分に高く、膨大な情報量を筆頭に、レンジ感、解像度感もハイレベルです。解像度感はコンデンサー型のそれに近く、全ての音を微粒子のように感じられるタイプ。音の分離感はほぼ無いに等しく、全面で音が鳴る点もコンデンサー型同様です。一般的なダイナミック型ヘッドホンのような高い解像度と分離感によって、一つ一つの音を鮮明にクッキリハッキリ知覚できるようなオーディオ的な解像度感ではありません。コンデンサー型とまではいかないものの、まるで流水のように滑らかに流れる音が、自然音に近い解像度感を感じさせてくれます。音の歪みの無さは通常のダイナミック型とは比較になりません。全帯域において凸凹感や癖を感じさせない淀みのない綺麗な出音で、決してガチャガチャしない音を奏でてくれます。情報量の多さはLCD-3のセールスポイントのひとつでしょう。開放型とは到底思えない密な空間を作り出します。湿度の高いミストサウナの蒸気を音に置き換えた感じでしょうか。もし仮に音度(おんど)という言葉が存在するならば、限りなく音度100%に近い空間だと言えます。レンジは低域方向へよく伸びており、かなり低いところまでしっかり鳴らしてきます。高域方向に関しては、ハイエンドヘッドホンとして見ると少し物足りなさを感じるかもしれません。低域方向と比較するとやや抑えた高域といった印象を受けますが、これは音が抜けきるのではなく、空間内で響かせて音の末端をスーッっと消えていくように処理する特徴のためで、音が伸びきらないという印象を持つことはありません。もう一つ、LCD-2でも同様の傾向が見られる特徴があります。それは、LCD-2、LCD-3共にダイナミックレンジが優れていることです。ダイナミックレンジに関しては、数多くのヘッドホンを聞いていても凄いと感じることが滅多に無い部分なのですが、LCD-2とLCD-3はこの部分が明らかに優れています。AUDEZ'Eが意識的にダイナミックレンジが音楽を表現する上で大事な要素だと認識して重視しているのか、もしくは、理想の音を追求した結果、ダイナミックレンジに優れたヘッドホンが完成したのか、いずれにせよ、両機がダイナミックレンジに優れていることが音質において好結果を生む形となっているのをLCD-3から感じ取ることができます。LCD-2とLCD-3は、微小音から大きな音までを動的に鳴らし、音の流れに起伏があり、表情豊かに活力に満ちた音楽表現をします。まるでビッグウェーブに乗っているかのような、またはジェットコースターに乗っているかのような勢いと躍動感溢れるサウンドに体が反応し、ゾクゾクと身震いするほどの興奮と高揚感を与えてくれます。音を抑えた状態から・・・ブワッ!と湧き上がる大音量に体がリンクし、鳥肌が立つような感覚を味わえる稀なヘッドホンです。ダイナミックレンジについては、別のメーカーであればSTAXやゼンハイザーも得意とする部分です。これらのメーカーのヘッドホンでも同様の感覚を味わうことができるので、STAXのイヤースピーカーや、ゼンハイザーのHD650やHD800を所有している人であれば容易に想像できるかと思います。
次に、それぞれの音域を具体的に見ていきましょう。低域は濃く深く凄みのある音をしています。ここまで凄みのある低音というのは貴重なもので、低域の印象の強さという視点から見れば、比較対象としはULTRASONEのEdition9ぐらいしか思いつきません。強烈なインパクトを持ったEdition9の低域とは質が全く違うという前置きをした上で、LCD-3はEdition9と同等の迫力ある低域を聞かせてくれます。LCD-3の場合は、歪みがなく解像度感が高い低域であることを礎として、ふわりと豊潤で量感があり、ウッドベースや管楽器などの響きを含んだ低音を得意とします。逆に、打音のようなタイトさ、エッジ感、力感が欲しいような低音は若干苦手で、明確に低域を描き分けるタイプではありません。低域の主張感、存在感の強さは勿論、縁の下の力持ち的な意味で全体の雰囲気作りをする低域としても高い能力を発揮します。次に中域を見ていくと、まず言わせてください、「極上」であると。LCD-3の中域は、直接脳に訴えかけるような音楽性豊かな中域です。この直接的な中域はオーディオテクニカの中域表現に近いものがあります。LCD-3は分厚い低域に意識がいきがちですが、実はLCD-3の魅力は低域よりも中域にあるのではないかというのが個人的な見解です。平面駆動という構造上、尖った音やジャキジャキした音の表現は出来ませんが、歪みがなく滑らかで艶やかで綺麗な音にかけては、「極上」の域に達しています。高域は僅かに鮮やかさを持ち、金属的な華やかさも多少表現することが可能です。柔らか滑らか一辺倒な高域と思いきや、意外と快活さのある高域で、そこに繊細というイメージは浮かんできません。高域の線が細くないので、個性ある低域に負けることなく意識が全帯域に行き届きます。
さて、ここからLCD-3の音の方向性について書いていきます。先ほどのサウナの話でも十分に感じて戴けたかと思いますが、このヘッドホンの最大の特徴は、音の「厚み」と「濃さ」だと断言します。この「厚み」と「濃さ」という要素が癖、個性と言えるぐらいにパラメータ的に特化しています。全域で音の厚み、密度感が圧倒的で、ここまでギッシリ音の詰まった音はそうそうあるものではありません。過去濃く充実した音だと感じたヘッドホンに、Edition9やオーディオテクニカのATH-L3000がありますが、それらと比較しても同等の凄みのある音をしています。Edition9やATH-L3000が密閉型なのに対し、LCD-3は開放型ですから、いかに特異なヘッドホンであるかがわかるというものです。通常、「厚み」や「濃さ」があると同時に「重い」音になるものですが、LCD-3は「重い」音ではなく「想い」音を持ったヘッドホンです。物理的に重量があるという意味での音の重さは感じず、心に響く感情という意味で、「想い」を伝える力に秀でた説得力のある音なのです。決して音が重くならず、くどくならず、むしろ僅かに清々しさを感じるほどで、このように感じるのは、歪み感の少なさによって体にさらりと溶け込む音の性質によるものなのだと思います。
オーディオの醍醐味である音色でもまた、LCD-3は独自の魅力ある音色を持っており、存分にアピールすることが可能です。特に中域で感じられる艶やかな音、そして甘い音、これはLCD-3の個性を決定付ける要素のひとつでしょう。LCD-3は、人工甘味料のような甘さではなく、自然の甘さ、自然な艶やかさを持っています。ちょっと艶っぽいかな?と感じる程度なので、何でもかんでも艶やかに甘く染めてしまうわけではなく、ロックやメタルにも十分対応できる範囲内で、程よい味付けがされているという認識で問題ないでしょう。例えるなら、ATH-W2002のような、口に含んだ瞬間に旨みが爆発するような大トロではなく、口に含み深く味わい心の奥底で美味いと思えるような大トロ、それがLCD-3です。そして、低域の説明の時に少し述べましたが、LCD-3は響きの上手さも優れています。響きのコントロールについてはSTAXを筆頭に、平面駆動がかなり有利なように感じます。ボーカルは勿論のこと、ウッドベース 管楽器などの音を自然かつリアルに再現します。このような響き成分を含んだ音の表現力と比べると、打音はちょっと苦手なように感じますが、しっかりエネルギーの乗った音なので、聞き応えは十分にあります。「もうちょっとアタック感が欲しいかな?」という感想が、例えばピアノなどの音を聞いたときに出てくるのは否定できませんが、これは好みの範囲内であって、決定的に不得手ということは決してありません。
ダイナミック型平面駆動ヘッドホンとは大まかに言ってどのような音なのでしょうか。仮に、コンデンサー型を0、ダイナミック型を10とするならば、LCD-3は鳴り方として3~4の位置に在るヘッドホンです。どちらかと言えばコンデンサー型の鳴り方に近いと感じます。一般的なダイナミック型ヘッドホンと比べれば一目瞭然で、まず音が全面で鳴り、音に輪郭を作らずに鳴らす傾向が強いです。ただし、コンデンサー型ほどは全面で鳴らず、僅かに焦点の合った音像感と、エネルギー感や力強さを内包しており、上手くバランスのとれたヘッドホンという印象です。HD800のレビューで「何を聴くにしても贅沢な気持ちにさせてくれる高級料理のようなヘッドホン」と表現したのに対して、LCD-3は「何を聴くにしても満足感に満たされる郷土料理のようなヘッドホン」と表現したいですね。高級料理でなくても心の底から「美味かった」と満足感に満たされる料理ってありませんか。
音場感はソースの影響がよく出てくるようです。スタジオ録音では狭めな空間を作ることが多く、LIVE音源やクラシックなどではそれなりに広さを感じられます。しかし、広い音場という印象はあまりありません。多くの音源で、低域から中域にかけて間近でモリモリ鳴り、高域にかけては放射状に広がっていく空間を形成します。そのため、迫力ある低域や味わいあるボーカルなどは間近で感じられ、綺麗な響き成分は上空にふわっと広がり満ちて心地よさを感じることができます。「それが理想の音場感!」となる人も出てきそうな、オーディオとして一つの理想系とも言えるような音場感を持っています。基本性能として応答速度が速くキビキビした音をしていますが、LCD-3に関しては、あえて俊敏性を見せつけないようにしている感があります。機敏でキレのある音が欲しい場合には、音の傾向上LCD-2のほうが優れているので、両機種を上手く使い分けることが可能でしょう。
得意ジャンルはクラシックとジャズ。異論は認めません!と言いたくなるぐらいに最高に合います。全面で鳴る音というのは、本当にクラシックのホールの臨場感を生み出しますね。STAXのイヤースピーカーでクラシックを聞けば、クラシックに興味の無かった人でも虜になるように、LCD-3もSTAXレベルとまでとは言いませんが、ダイナミック型のヘッドホンでは最高峰の臨場感を味わうことが可能です。とにかく音が自然、「ホールの音の響きを完全再現!」なんて誇大広告があったとしても、「確かに再現できとるな」と思わず納得してしまうぐらいの音です。打音のインパクト感や、緊張感、スリリングさなども含めると、HD800のほうが適正が高いとも言えますが、STAXを使うか、LCD-3を使うか、HD800を使うか、各々好みで選んで戴けたらと思います。いずれもクラシックを聞くならば、一本で満足できるクオリティーを持ったヘッドホンです。クラシックとの相性と比べるとグンと落ちてしまう感があるのは否めませんが、それでもボーカルモノとの相性は素晴らしいものがあります。オーディオテクニカのボーカル表現が好きな人であれば、LCD-3のボーカル表現も好きなのではないでしょうか。ボーカルを身近に感じられ、声の細かなニュアンスまで感じとることができ、声に加味されるいい塩梅の艶っぽさが、ノスタルジーに浸るのに一躍買っています。優しい声質との相性が特に良いので、この手の音楽が好きな人にはオススメしたいヘッドホンです。どんなジャンルの音楽でも綺麗に鳴らしてしまう傾向があるため、キレや音のエッジ感、歪んだ音のジャキジャキ感が欲しいロックやメタルとの相性は良いとは言えません。私の好みの問題ではありますが、メタル特有の"負の感情"を表現する能力が低いため、私の場合はメタルは駄目だと切り捨てるというのが正直な感想です。"凄み"は出せるけど"エグさ"が出せないといった感じで、なかなか言葉で伝えるのが難しい部分ではあります。しかし、綺麗な音で聞くロックが好きな場合には、他に代えのきかないヘッドホンになることでしょう。楽器別で個人的に良い音だと感じたのは、ヴァイオリンとウッドベースです。どちらも甲乙つけがたいほどに心に響く音をしていますが、どちらか選べと言われればウッドベースの音を選びます。ボンボンと響くウッドベースの低い音の再現度、響き成分を含んだ低域を得意とするLCD-3の十八番です。この音は是非実際に聞いて確認してみてほしいものです。
ここまでで付属ケーブルのレビューは終了となります。「どんだけ書くねん、もうええわ!」って人は右上の×ボタンを、もっとLCD-3のことを知りたい人は引き続きお付き合いください。ここからはリケーブルした時の音のレビューになります。
★BLO-DSQL2B(Blossom)へリケーブル
このケーブルは、LCD-2Rev2に付属でついていたものですが、通常は、AUDEZ'E社製のシングルエンド標準ケーブルが付属ケーブルとしてつくようです。2ndstaffは、LCD-2Rev2のキャンペーンを二度行っており、そのうちの一回目のキャンペーンの時のみ付属ケーブルをBlossomのBLO-DSQL2B(シングル / バランス)にして出荷していたようです。
LCD-3付属ケーブルと比較して基本性能はやや向上。音色が中庸で色付けが少ないため、後で紹介するALO audioのReference 16よりもこちらのほうが解像度が向上しているという実感が強いです。とは言っても、付属ケーブルと比べて劇的に性能の向上を感じるかと言えばそんなことはなく、逆にそれほど変化がないと言ったほうが正確でしょう。解像度同様、情報量についても特に差があるとは感じません。高域方向へのレンジ感は多少改善されており、よく音が伸びていて、クリアーな音質になったことで高域の主張感が少し強くなっているように感じます。Reference 16でも高域方向へのレンジの改善が感じられることから、相対的に見てLCD-3の付属ケーブルは、他のケーブルと比べると低域にバランスが寄っており、高域方向への音の伸びが控えめになっているようです。
BLO-DSQL2Bの音を、コンデンサー型を0、ダイナミック型を10とするならば、鳴り方として4~5の位置になります。丁度中間地点、文字通りダイナミック型平面駆動ヘッドホンと言えるような、平面駆動とダイナミック型の良さをバランス良く引き出せているケーブルです。
まず音を出してすぐに感じるのは、クリアーな空間になったことでしょう。音の色付けが排除され、クリーンで澄み切った音色になります。付属ケーブルで感じられた甘さや柔らかさ、音の厚みや重厚さが減退し、全体的に音が締まってピシっとします。この結果、特に低域の解像度感、というよりは分離感の向上によって、低域の明確さが増したように感じます。音に輪郭が若干つき、加えて見通しがよくなったことで、全体感の強い低域にタイトさが生まれ、背景と低域が分離しています。このような低域になった影響で、キレやスピード感が増し、ロックやメタルへの対応力が良くなっており、付属ケーブルと比べれば、オールランドに使える汎用性の高いヘッドホンになっています。これは他の帯域でも同じことで、例えばボーカルにおいては、フォーカス精度が上がったことによって、ボーカルの音像がポッカリと空間に浮かび上がるようになり、同様に楽器の位置関係も把握しやすくなっています。
付属ケーブルでは耳あたりの良い色艶ある音色をしていて、それが大きな魅力のひとつとなっていました。BLO-DSQL2Bにリケーブルすると、その色付けがガクンと減少してしまいます。音の味わいという部分で見れば、魅力は減ったと言わざる得ません。しかし、これがリケーブルの醍醐味で、BLO-DSQL2BにはBLO-DSQL2Bにしか出せない独自の魅力があり、それを楽しむのがリケーブラーのマナーと言うもの。中庸な音になり、輪郭が生まれたことによって、高域には鮮やかさとエッジ感が加わり、ジャキジャキとした音が出せるようになっています。また、低域ではタイトさ、キレ、スピード感、迫力や凄みが出せるようになっています。BLO-DSQL2BにはBLO-DSQL2Bにしか出せない魅力がたっぷりと詰まっているのです。このような傾向から、ストレートかつダイレクトに音をぶつけてくるタイプに変化したのかと思うかもしれませんが、そこは平面駆動、やはり平面駆動、されど平面駆動、何度でも言いますが、平面駆動の土台は絶対的に崩れません。どこまでも痛みや圧力のない音で、耳に優しい音なのです。また、BLO-DSQL2Bは音場感に優れており、間近で音が鳴る印象が薄らぎ、自分を中心に全方向へ音が広がるようになります。特に中高域での変化が顕著で、少し距離を置いて音が鳴るようになるので、ガツガツしたサウンドを少し距離をおいて聞くようなリスニングスタイルになります。空間がクリアーになったことも影響しているのだと思いますが、音が響き広がっていくのをしっかりと感じられます。
得意ジャンルはやはりクラシック。この点はどのケーブルに変更しても変わらないでしょう。それ以外のジャンルでは、BLO-DSQL2Bではロック、メタル、打ち込みとの相性が良くなったように思います。音の色付けが少なく、金属的な音や打ち込みの音を素直に出してくれます。また、非常にノリの良さを引き出せる点もプラスに影響しています。付属ケーブルの低域がウッドベースの音に最適ならば、BLO-DSQL2Bの低域はエレキベースの音に最適です。低域の輪郭が強く描かれることで、低域が地を這うようにうねっているのが目に見えるようです。また、唸るボーカルの凄みや、突き上げるハイトーンヴォイスなど、付属ケーブルの時とはまた違った意味で、ボーカルを堪能できるようになっています。圧倒的プレッシャーとパワー、押し寄せる威圧的な気配、破壊力は抜群です。Edition9の低域を力100、圧のかかる面積を60とするなら、BLO-DSQL2Bでの低域は、力70、圧のかかる面積100といった感じです。広範囲で重量級の低域を体にぶち込んできます。歪みがなく耳へ負担がかかるような圧力の無い低域は、コンデンサー型の低域との共通点が多いように思いますが、この迫力ある低域をコンデンサー型で出すことはできないでしょう。逆に、ダイナミック型である以上、コンデンサー型級の究極のなめらかサウンドを出すことも不可能でしょう。
BLO-DSQL2Bバランス感覚に優れ、高いクオリティーを持ったよく出来たケーブルで、優しい音から激しい音までをニュートラルな音色で多彩に表現が可能なケーブルです。BLO-DSQL2Bにリケーブルすることで、「多様なジャンルに対応できるLCD-3」にすることが可能です。個人的にはLCD-3付属ケーブルよりもこちらのほうが使い勝手が良くてオススメですね。ちなみに、クラシックやボーカルモノをメインで聞く場合には、LCD-3付属のケーブルのほうが相性が良いように思います。
★Reference 16 Silver/Copper(ALO audio)へリケーブル
最後に、ALO audioのReference 16 Silver/Copperへリケーブルした時の音について書いていきます。まず見た目が美しいですね。綺麗に編み込まれたキラキラと輝く線材が期待を増幅させます。流石にこれだけの物量を投入したケーブルだけに、あまり取り回しは良いとは言えません。重さもなかなかのもので、通常であればケーブルが重くて邪魔になるところですが、LCD-3はヘッドホンそのものが重過ぎるので、ケーブルの重さが全く気になりません。「なんだかなぁ」といったところでしょうか。
LCD-3付属ケーブルと比較して基本性能はやや向上。とは言っても、それほど変化はないように思います。BLO-DSQL2BとReference 16の解像度は差がほとんど感じられません。情報量についても特に差があるとは感じません。しかし、細かな音の鮮明さ、音の滑らかさなどから、若干ではあるものの基本性能が高いのは間違いないでしょう。解像度、情報量と違って一聴して改善されたと感じられるのはレンジ感です。明らかに高域方向へのレンジが良化しており、しっかりと音が伸びきるようになっています。そのため、低域方向へも高域方向へも思う存分音がノビノビと躍動し、低域寄りな印象の強かったバランスがフラット傾向へ近づいています。付属ケーブル時にあれだけ主張していた低域が、他の帯域と足並みを揃えて整然としています。
Reference 16の音を、コンデンサー型を0、ダイナミック型を10とするならば、鳴り方として5~6の位置になります。付属ケーブルと比べると、ずいぶんと音に輪郭が生まれ、焦点が定まり、音の粒立ちがハッキリしています。BLO-DSQL2Bと比較しても、Reference 16のほうが音の輪郭を描き、音を締め上げる傾向があり、音がシャキっとスタイリッシュになります。全体で鳴る印象はかなり薄まったように感じます。そのため、音像が見えやすくなり、音の実在感、実体感が増し、より迫力ある音、言うなれば一般的なダイナミック型に近い感覚の迫力あるサウンドを出せるようになっています。しかし、その反面音の重厚感、濃さといった要素は減退しています。輪郭を強く描くことで音のエッジ感が出るようになっていますが、音の輪郭の滑らかさという見方をすると、3本のケーブルの中でReference 16が最も滑らかで、耳当たりの優しい音になっています。また、意識しなければ感じないレベルではあるものの、音の定位感が優れており、安定感があって安心して音楽に没頭できるようになったように思います。そのせいか、ついつい長時間音楽を聞いてしまうのは、Reference 16を使用した時のLCD-3だったりします。
音色的には付属ケーブルともBLO-DSQL2Bとも違います。付属ケーブルのように甘くもなく、BLO-DSQL2Bのように中庸な音色でもありません。唯一このケーブルだけは格調高い華やかさを持っています。音色の味付けは微々たるもので、明確に知覚できるようなものではありません。しかし、多彩な色使いで、表情豊かな音色になったことは間違いないと確信しています。深い音、濃い音、凄みのある音、煌びやかな音、綺麗な音、艶やかな音、エレキトリックな音まで、他のケーブルでは味わえなかった様々な音に出会うことができます。そして、空間に漂う空気感、雰囲気が変わったことも重要な変化でしょう。突如として気品ある貴族が現れたかのように場の空気感が変わるのです。音に上品さが付加され、薄っすらと高貴な気配が音に感じられるようになります。その結果、今までの音がコンサートホールの空気感なら、Reference 16の音は宮殿の空気感と言えます。聖堂でも城でもなく、宮殿のイメージです。このような情景が目に浮かぶのは、音に華やかさが増したからでしょう。どこか清々しさも感じられるようなその音は、付属ケーブル時の分厚いサウンドからは想像できないものです。キラキラと輝くReference 16の見た目そのままの音で、見事にケーブルの見た目と音がリンクしていると言えそうです。このReference 16特有の音は、ラックスマンが独特の味わいある音を持っているのと同じように、オーディオ的な作られた音なのだと思います。しかし、この音が実に心地よいのです。ALOサウンド、完成度の高い音ですね。
Reference 16の音は、キレと締まりを強く感じさせてくれますが、それでも直接的な圧力は感じません。いくら一般的なダイナミック型ヘッドホンの鳴り方に近づいたとは言っても、圧力を感じないことが平面駆動であることを思い出させてくれます。Reference 16の音は、凄く攻撃的な音を出すこともできるのに、全く耳に負担がかからない音なのです。BLO-DSQL2B同様に、ここでもまた低域の変化がわかりやすく、歪みの無さ、正確さ、解像度感、キレ、重み、濃さ、総合力で見ればe9やPS1000を超えた低域と言ってもいいぐらいに素晴らしいものですが、どうしたって圧力がなく綺麗に音を出すというのはLCD-3の不変の特徴です。この低域は多くの人にとって魅力的な低域となりえるのではないかと思います。音場感は低域は近め、中域から高域にかけてはやや遠め、それなりに広い空間で立体的です。どちらかと言えば付属ケーブルの音場感に近いように思います。違いと言えば、音がタイトでスッキリしたことで、全体的にコンパクトなサウンドになり、壮大さ、スケールといった点は減退したことでしょうか。逆に言えば、現代的な音楽への対応力が大きく向上したとも言えます。
得意ジャンルが変わることはありません。ここでもまたクラシック、ジャズを得意とします。しかし、Reference 16は、他の2本のケーブルと比べると最も幅広いジャンルに対応できる音となっています。ロックやメタル、打ち込みやポップスなどなど、あらゆる音楽をそつなく捌ききってくれます。音色が多彩なので、付属ケーブルとは違った音楽の楽しみ方を出来ると思いますし、使い分けるという意味でも、Reference 16は価値あるケーブルのように思います。
★まとめ
以上ここまで長いレビューにお付き合い戴いた方はお疲れ様です。LCD-3は、ダイナミック型平面駆動ヘッドホンの可能性を存分に感じられるヘッドホンでした。力強さを持ちながら、歪みがなく綺麗な音という新しい世界を見せてくれたLCD-3。その音の傾向から、単純にダイナミック型のハイエンド機種と比較できるものではありません。しかし、十分に並みいるハイエンドヘッドホン達と肩を並べるだけのポテンシャルを持っているのは確かです。平面駆動型ヘッドホンというのは、LCD-3、LCD-2やHE-6を聞く限り、あまり固有の音を持たないのかもしれません。なぜなら、環境やケーブルによってずいぶんと印象が変わるからです。コンデンサー型と違い、ダイナミック型はアンプの種類が豊富で、なおかつ高性能なものも多く存在しますから、LCD-3は自分好みの音を追求できる可能性と、音質的な高みを目指せる可能性を同時に秘めたヘッドホンであると思います。今まではフォステックスぐらいしかダイナミック型平面駆動ヘッドホンを販売していませんでしたが、AUDEZ'EのLCDシリーズやHiFiManのHEシリーズといったハイクオリティなダイナミック型平面駆動ヘッドホンをきっかけとして、今後、他のメーカーからもダイナミック型の平面駆動ヘッドホンを是非とも発売してほしいものです。

型番:MDR-EX1000
メーカー:SONY
タイプ:密閉ダイナミック型
再生周波数帯域:3 - 30,000Hz
インピーダンス:32Ω
感度:108dB
質量:8g(コード別)
ケーブル長:1.2m/0.6m 7N-OFCリッツ線(両出し)
プラグ1:金メッキL型ステレオミニプラグ(1.2m コード)
プラグ2:金メッキステレオミニプラグ(0.6m コード)
その他:ケーブル着脱式
メーカー製品紹介ページへ
付属のイヤーピースにフィットするサイズがあれば装着感は問題なさそうです。ジワジワ抜けてくる場合はコンプライに付け替えることで安定した装着感を得られます。ケーブルはしなやかで、絡みにくいので煩わしさを感じることがなくgood。遮音性はいまいちで外の音が普通に聞こえます。外の音が聞こえて安全と考える人にとっては良いものの、音楽に没頭したい人にとっては致命的な欠点となる恐れがあります。ケーブルが着脱式で、もしもの断線に対応できる点は安心感がありますね。
量感バランスはフラット~やや低域寄り。基本性能は十分に高く、特に低域の解像度の高さはハイレベル。細部の音を明確に表現できる解像度の高さには素直に驚きを感じます。容易に個々の音に意識が行き届くだけの分離感がありつつも、音が分離しすぎることがなく全体の一体感、統一感を併せ持つ絶妙なバランス感覚を持っています。そして何よりも推したいのが、個人的にMDR-EX1000の最大の強みだと感じている低域のクオリティです。MDR-EX1000の低域の解像度と分離感の高さ、多彩な表現力は素晴らしく、タイトな打音から更に低いベース音までを見事に描き分け、量ではなく質で勝負できる最高峰の低域を実現できています。もしヘッドホンでこのレベルの低域の分離感を持った機種を探すとなると、そうそう見つかるものではありません。耳とドライバーユニットとの距離が短く、音をダイレクトに聞くことができるイヤホンの強みを上手く活かしたお手本のような低域ではないでしょうか。具体的には、濃くグゥっと沈み込み、重さや密度感を感じられる低域で、豊かさとタイトさが上手く噛み合っています。唯一気になるのは、低音をより低音らしく感じさせるような強調感、別の言い方をすれば人工的な癖を多少感じること。とは言っても、無駄に響きを乗せることなく重く分厚く質量感があり、それでいながら息が詰まるような重苦しさを感じさせないMDR-EX1000の低域は、癖があるという点を差し引いても個人的には最大限の評価をしたい部分です。中域~高域にかけては、派手さが無く統一感、連帯感を大事にした堅実な音作りで安定感のあるものです。高域方向へはしっかりと音が伸びますが、際限なくノビノビと音が伸びていくのではなく、許容範囲内でコントロールして鳴らしている印象を受けます。線が細かったり、音の輪郭が鋭利なわけでもなく、線が太く筋肉質であったり、音が柔らかいこともなく、力強いというわけでもなく繊細というわけでもなく、これといった特徴の無い音をしています。これは言い換えるならば、癖の少ない日常生活に溶け込むような自然な音と言えるのかもしれません。そして、もしMDR-EX1000の中~高音を表現する時にひとつだけ言葉を選ぶなら、「正確な音」というのが最もイメージに合致します。この「正確な音」は全体的な印象としても言えることです。
音の方向性は、「優等生」という言葉が的確にMDR-EX1000のキャラクターを表しているように思います。良くも悪くもソニーらしい音作りで、低域を除けば色付けは皆無に等しく、モニター的と言える音をしています。柔らかさ、派手さ、煌びやかさ、熱気や色気などを演出するわけではありませんし、かといって冷徹、寒色系、硬質と言うわけでもありません。実に中庸、ソースに忠実に音を出します。低域から高域までを、自分のコントロールできる範囲内で制御する堅実さ。決して暴れずぶれず、どっしりと腰を下ろし、安定感のある分厚いサウンド。暴れずミスをせず丁寧かつ正確に、日本人気質な精巧なサウンド。何か一つ得意科目があるタイプではなく、全ての科目で確実に高得点を叩き出し、掌の上で音を自在に転がす「優等生」、それがMDR-EX1000の正体です。原音忠実性という部分を重視する人にとっては、かなりポイントの高いイヤホンになり得ると思います。
あえて欠点をあげるならば、キャラクターが薄いだけに面白さがないことでしょうか。突出した特長がないため、音色での求心力、鳴り方での求心力が弱いように思います。無表情、無機質、淡白な音だと言えなくもない点は否定できず、実際ボーカルモノのように感情表現が鍵となる楽曲は苦手な部類だと私は感じます。しかし、この特性は欠点でもあり利点でもあると私は考えます。なぜなら、独自の色が薄いからこそ環境側の音が乗りやすいからです。下記で再度述べますが、このMDR-EX1000の無個性路線は考え方によっては強みとなるのです。ただひとつ、音の流れ、それによるノリの良さはお世辞にも「素晴らしい!」とは言えないイヤホンです。この部分は環境側で調整が効きにくい部分であって、イヤホンに大きく依存する部分です。MDR-EX1000は所謂「前ノリ」に関してはやや良い部類に入るように思いますが、対して「縦ノリ」に関しては弱い部類に属し、淡々と音楽が進行していく感覚があり、ノリが良いにも関わらずノリが悪いという「どっちやねん」状態に陥ります。ノリの良し悪しについては、どちらのノリを強く意識するか、感じるかで個人差が出るところなので、一概にノリが悪いと断定することはできません。
MDR-EX1000は非常に環境追従性の高いイヤホンです。性能面や音色、音場感が環境に合わせて変化します。元々色付けがなく演出効果が少ないだけに、アンプの味が素直に反映されるのでしょう。特に中高域でアンプの色がハッキリ出るので、MDR-EX1000のキャラクターの薄さは問題視すべき点ではないように思います。あまりソリッドな音に追い込むのではなく、響きを増して色付けすることで「遊び心を持った優等生」へと変身します。ポータブルアンプを使用して、自分好みの音に調整する楽しみを存分に味わえるイヤホンですね。ちなみに、MDR-EX1000の音場は、横は狭め、前後、上下にそこそこ広い空間を作り、立体的に音像を配置します。この状態をベースとして、アンプによっては更に前後感を出すことが可能です。
得意ジャンルはオールジャンル。何を聞いても良い音だと思わせてくれます。ただし、アンプを使用しない場合は、キャラクターが薄いので、ボーカルモノや生楽器は多少苦手と言えなくもありません。また、MDR-EX1000は高域の処理が上手いイヤホンなのですが、この良さがipodに直挿し程度では感じることができず、解像度不足で高域がゴチャゴチャ、ガヤガヤしてしまうため、音数の多い楽曲でうるさくなってしまいます。MDR-EX1000の高域のポテンシャルを引き出すために、是非ともアンプ等で基本性能を底上げして使用してほしいと思います。
音は素晴らしく良いと断言します。何を持って高音質かは別として、単純に誰が聞いても「高音質だ!」と思わせる音です。これって簡単なようで実に難しいと私は思います。アンプを使用することで色々な表情を見せてくれる点も良いですね。MDR-EX1000は、イヤホンにおける高音質とは何か、そのひとつの基準、指針としてもいいのでは?と思えるだけのクオリティーを持ったイヤホンです。

型番:K3003
メーカー:AKG
タイプ:密閉ハイブリッド型(ダイナミック型&BA型)
再生周波数帯域:10 - 30,000Hz
インピーダンス:8Ω
感度:104dB
質量:10g(コード別)
ケーブル長:1.2m(両だし)
プラグ:3.5φステレオミニストレート
その他:ケーブル着脱不可
メーカー製品紹介ページへ
造形は奇をてらったものではなく、シンプルな円柱形。材質はステンレス製で質感が良く、重量があり存在感をアピールしてくれます。スポっと耳に収まる装着感は快適。装着し難い、抜けやすい、ずれやすい、ケーブルが絡みやすい、といったマイナス要素が無く扱いやすいイヤホンです。遮音性は良いとは言えず、外の音が聞こえてきます。ただひとつ、高価なイヤホンなだけに、ケーブル交換ができないのは残念です。
量感バランスはフラット~低域寄り。広範囲で鳴る低域の影響で聴覚上僅かに低域寄りに感じます。基本性能は非常に高く、解像度、レンジ、情報量、どれを取ってもトップクラス。中でも情報量の多さは抜けており、情報量で押し切るイメージを持つほどです。高解像度な中高域の影響もありますが、他のイヤホンで知覚できないような音に気づかされることが多々あります。低域の解像度は少し弱め。中高域の解像度が高いので、相対的に低域の解像度が弱く感じます。レンジ面では特に高域方向へよく音が伸びます。密閉型でありながら高域がよく伸びるのは、音の流れが綺麗な証拠、形状の勝利、構造の勝利。K3003の高域は奇跡的にノビノビと抜けていきます。頭打ち感がなく伸びきる高域は気持ちが良いですね。また、音の応答速度が非常に速く、リズム感に優れています。そのため音楽との一体感が強く、楽しく音楽に没頭することが可能です。
K3003は、低域はダイナミック型、中高域はBA型(バランスアーマチェア型)で鳴らすハイブリッド型イヤホンです。このハイブリッドテクノロジーによる音は実にユニークかつ魅力溢れるものであり、成功していると断言します。ダイナミック型で奏でられる低域は、豊かな情報量、迫力、音の厚み、力感、押し出し感といった音楽の持つパワー、エネルギッシュさを演出し、全体の雰囲気を形作ります。少し話が逸れますが、私が初めてK3003の音を聞いたときの感想が、「ヘッドホンみたいな鳴り方をするイヤホン」でした。後から知ったのですが、AKGのK3003の謳い文句は、「まるで高級大型ヘッドホンを聴いているかのような、サイズを超えた最上級のサウンド」なのですね。これは大いに納得できます。このイヤホンとは思えないスケール感は、全体感が強く広範囲で鳴る低域によってもたらされているのでしょう。あえて欠点を強引に挙げるならば、輪郭を強く描き実体感の強いゴリっとした低域ではないことでしょうか。しかし、これは欠点と言うよりも個性の差異。K3003の低域は、「実体感」ではなく「実在感」を感じさせるものであり、其処に音が「在る」ことを強く印象付けるものです。
対してBA型による中高域は、「そこまで作りこむか!?」というほどに精密に作られた銀細工のようで、どの角度から見ても一分の隙もない音像を形成します。場の空気感を臨場感たっぷりに再現する低域の中で、立体的で高精度かつ正確な音像が中高域によって形を成します。ハーモニーで聞かせる水彩画タイプではなく、キッチリ音を分離して鉛筆デッサンのように描写するタイプです。この中高域の音作りは、古代種K240 Sextett、異端児K1000、名機K701などと共通したものです。AKGは「まろ~ん」とした柔らかな音は作らないですね。シャキっとした素直な出音、そこに程よく金属的な艶が乗ります。そしてAKGの代名詞とも言える繊細さ、精細さは、K3003にしっかりと受け継がれています。飽きのこないAKGサウンドであり、様々なジャンルに対応できるニュートラルな音です。
次に、ハイブリッドテクノロジーによる長所と短所ですが、個人的には短所は無いに等しく、圧倒的なまでに長所が光っているように思います。まず長所ですが、K3003は中高域が高精細であるため、中高域と比較することで低域の「ダイナミック感」が強調され、よりダイナミックに感じます。逆もまた然り、ダイナミック型の低域と比較することで、BA型の細かな表現力が際立つ結果となっています。このお互いを高め合う相乗効果がK3003の音の良さの原因のひとつであると私は確信しています。更に、音のノビの良さもこのハイブリッドテクノロジーが影響してるのではないかと私は考察します。構造的に優れているのはまず間違いないのですが、高域方向の空間をクリアーにすることで、音を目ならぬ耳で追いやすいように感じます。このように、タイプの違う鳴り方が混同しているにも関わらず、否、タイプの違う鳴り方を混同したからこそ、K3003はお互いの長所を高めることに成功したのでしょう。それにしても、このバランス感覚、チューニング精度には頭が下がります。
しかし、長所ばかりとはなかなかいかないもので、短所が無いわけではありません。冒頭で少し述べましたが、低域と中高域の性能差、主に解像度の差は存在します。また、低域は全体的に鳴らすのに対し、中高域はクリアーな空間に音像を配置します。この空間表現力の違いに違和感を感じる人もいるでしょう。この点に関しては、無理に統一感を追求するのではなく、それぞれ役割を分担することで長所を伸ばしたK3003独自の新しい音なのだと私は解釈しました。
得意ジャンルはオールジャンル。何が苦手というのは特にありません。イヤホンの規格を超えたスケール感、LIVE感を持ったイヤホンなので、人の声や生楽器のほうが良さを引き出せますね。今まで持っていたステンレス筐体の機種のイメージとはちょっと違い、K3003は後味の爽やかな清清しい艶、程よく人肌を感じられるような温もり、決して攻撃的にはならない音の先端を持っており、これらはボーカルを非常に魅力的に再生してくれます。ステンレス=クールなイメージは通用しません。K3003はパッションを感じるサウンドです。
K3003の音は、AKGの集大成とも言える完成度の高い音です。「もうイヤホンを買うことは無いかな」、そう思わせるだけの実力と魅力を持った機種です。しかし、悲しいかなハイエンドヘッドホンと比較してしまうと全てにおいて完敗です。それでも、イヤホンの枠の中であれば、№1を争えるだけのポテンシャルを持った機種だと私は思います。利便性、扱い易さ、ポータビリティ、音質といった総合力で考えれば、ドラクエでいう裏ボスクラスですかね。
今までありそうでなかった音。
オーディオ的な味付けを廃し、音楽を直球で伝えてくれる。
一見魅力の無い音なので嫌われる傾向にあるのは悲しい性。
発売当時と比べるとずいぶん価格も下がり手に入れやすくなっているので、物好きさんには一度聞いてみて欲しい機種である。
オーテクは、ヘッドホン販売をメインにしている企業では筆頭と言っていいだろう。
個人的には良いヘッドホンをいくつも開発しているように思うが、一部過激なアンチが存在する謎なメーカー。
私は記念モデルの中から、ヘッドホン2機種とイヤホンを購入。
正直、50周年という大きな節目なだけに、とんでもない化け物ヘッドホンを期待していた。
しかし、実際にお披露目されたのは無難なヘッドホンで少しガッカリ。
でも音はなかなか良いので好し。
今回のオーテクの無難な記念モデルからも感じたが、奢ったヘッドホンを造る流れがピークに達し、下降線へ入ったように感じる。
QUALIA 010やATH-L3000、EditionシリーズやSR-009、このような高級モデルは、FAのようなメーカーを除けば、しばらく開発されなくなるような気がしてならない。
そう考えると、現存するハイエンド機たちは、稀代の名機種として語り継がれる可能性もなくはない。
今後のヘッドホン界の流れに注目したい。
おそらくこの買収劇によってSTAXの収支は大幅に改善されるだろう。
しかし、品質の良し悪しと利益率は比例しない。
品質を落として利益を上げることは十分に可能。
要はコストと利益の最適なバランスのポイントにいかに近づけることができるかどうかだ。
STAXはこの点が下手だったのは事実。
コストがかかりすぎる、価格が高くなる、数が売れない、悪循環この上ない。
しかし、それでこそ維持される品質があったのも事実。
どうなるSTAX?
今年の最大の収穫はAKGのイヤホン、K3003だ。
これしかない。
音が良いと言うよりも、音楽を伝える能力が飛びぬけて高い。
音の流れが秀逸。
ドバーっと音楽の持っている魅力を余すことなく伝えてくれる。
詳細はレビューで書くとして、これは今のうちに買っとけ!と強くオススメする。
生産コスト高そう、高額、売れ難そう、嫌な雰囲気しかない。
生産中止になってからでは後悔するのみ。
外出時はイヤホンで音楽鑑賞、EX1000に始まりK3003で感動。
音楽を聞く時間が格段に増加。
来年の目標は
「ブログ記事を12以上書く」
これが今の自分にとってどれだけ厳しいノルマか・・・
というのも、なんと今年は記事を3つしか書いていないのだ。
これは酷い・・・
アクセス数が一日一桁ぐらいなら更新しなくても気にしないのだが、そうでもないので見に来て戴いている方に申し訳ない。
ひと月にひとつは記事を書くように頑張ろうと思う。
オーディオは時間と心に余裕がないと楽しめないもの。
時間に追われている今の自分にはオーディオを楽しむだけの余裕がない。
もっと精進しなければならないな。
いろいろと、頑張ります!
型番:HD800
メーカー:SENNHEISER
タイプ:開放ダイナミック型
再生周波数帯域:6 - 51,000Hz(-10dB)、14 - 44,100Hz(-3dB)
インピーダンス:300Ω
感度:102dB
質量:370g(コード別)
ケーブル長:3.0m(両だし)
プラグ:6.3φステレオ
その他:ケーブル着脱可能
装着感は良くもなく悪くもなく。側圧は緩め、イヤーパッドの質感はサラサラしており肌触りは良好だが薄く硬め、370gという重量もあり前傾姿勢になるとずれてきます。頭頂部が痛くなったり、耳が痛くなったりすることはなく、長時間リスニングに対応可能。ケーブルは軽くて癖がなく、音楽鑑賞時にさほど気にならない点はgood。外観に関しては、高級感溢れる質感で近未来的なクールビューティーヘッドホンと感じるか、プラモデルのような安っぽさのあるオモチャヘッドホンと感じるか、どちらとも言えないギリギリのラインにあるように思います。個人的には後者ですが、、、いずれにせよ、奇抜なデザインであることは間違いないので好みが分かれそうですね。
量感バランスはほぼフラット。基本性能はなかなか高いのですが、それ以上にオーディオとしての音作りの完成度の高さのほうが際立っています。「自然さ」を極めるとこのような音になるのかと、しばし時を忘れて感嘆してしまう程に隙の無い音作り。広大な音場と広角的な音の鳴り方、そして細部まで明確に描くと言うよりも、ひたすら細かく微粒子の如く音を表現する解像度感は、コンデンサー型であるSTAXを連想させます。情報量が多く、非常に細かな音まで、隅々の音まで出し切り、例えば残響成分の丁寧な表現からは、性能の高さと同時に職人技のような芸術性すら感じます。繊細さや精巧さの結晶により音が形作られているHD800に、どこか懐かしさや安堵感、馴染みある何かを感じるのは、日本とドイツの伝統的美意識の共通点によるものなのでしょうか。
基本的なキャラクターとしては、僅かにゼンハイザーらしい陰影と温もり、落ち着きを感じさせるものの、限りなく中庸で味付けを感じさせない音色となっています。HD650譲りの余裕を持って”細かな描写を当然かの如く自然に鳴らす”という芸当は、更に洗練されて磨きがかかっており、HD800を象徴する性質と言っていいでしょう。静寂さの中に多彩な音色が水彩画のように描かれる様から、「日本のヘッドホンメーカーの老舗であるSTAX以外で、日本特有の『侘び』や『寂び』といった美意識を表現できる機種が出てくるとは、、、」と思わず唸らされてしまいました。HD800の内面の描写力の高さによる求心力はピカイチ。
決して音が強い輪郭感を持って強調せず、ガツガツと押しの強いタイプではありません。音の輪郭をハッキリさせて存在感を目立たせるのではなく中身で勝負し、音に芯を持たせることで個々の音の存在感や分離感を実現しています。そのため、ただただサラサラと綺麗な音を垂れ流すことなく、迫力を出すべきところでは鳥肌が立つほどのスリリングさを体感させてくれます。この特徴はゼンハイザーが有する匠の技のひとつで、HD650でも体験することができます。全域に亘って細身で輪郭感が薄く、音がグラデーションのように空間に溶け込んでいくため、音と音、音と空間の融合性やハーモニーが秀逸。全体の音のまとまりが良いのは、低域から高域までの量感バランスが良い証拠でしょう。全ての音が同じ方向を向いて音楽を成しています。
音色はゼンハイザー製品で共通して感じられる若干ダークなもの。ゼンハイザーらしい独特のウォーム感を纏っており、大人の落ち着きを感じさせます。ただし、ゼンハイザー色を全面に押し出しているわけではなく、薄く全体を「安らぎの源」で支配し、クリアーかつレスポンスの良いサウンドに仕上がっているのはHD800独自の特性でしょう。あらゆる面で余裕を持って音を鳴らし、「リッチ」「贅沢」「優雅」という言葉がとてもよく似合います。客観的に見れば、音色に若干のゼンハイザー的な着色を感じますが、実際音楽に集中すれば、これが味付けではなく自然さを感じさせるために必要不可欠な要素なのではないかとも思えてきます。つまり、音色面での演出ではなく、味の素よろしくゼンハイザーの素として、自然感を作り出しているのではないかと、、、そんな妄想が膨らむほどに自然さを極めたサウンドです。僅かな色付けのある音色に対し、鳴り方の面で見ると異常なほどに癖の無いヘッドホンです。音の硬さ、輪郭、響き、音の出方、引き方といった点にわざとらしさが感じられず、これによって非人工的な音、要は原音忠実性の高い音を実現出来ています。個人的には、原音忠実と言うよりも美しく綺麗に聞こえるように音が調整されているように感じますが、原音に忠実か否か、音が調整されているか否かにかかわらず、HD800は「リアル」ではなく「自然」を感じられるヘッドホンだという事実をしっかりと心に留めて欲しいと思います。
音場感は、大きなホール状の空間を形成し、低域から高域までが非常に充実して空間に満ち溢れます。どちらかと言えばスカっとした音抜けの良さよりも、空間の中に音を響かせて間接的に音を聞かせるタイプ。間近で全ての音を隅々までチェックするような所謂モニター的な鳴り方をするヘッドホンとは逆で、音の広がりや響き・余韻を十二分に活かし、コンサートホールのS席の臨場感を再現したかのような贅を尽くしたサウンドを追及したヘッドホンです。目を閉じたならば、空間を満たすサウンドが新世界を創造し、生活感溢れる一室からトリップすることが可能です。ヘッドホンひとつで”場”を造り出すゼンハイザーの空間表現へのこだわり、熱意、探究心に最敬礼。物理的に距離感をおいた位置から音楽を鑑賞するスタイルになるため、ダイレクト感、音楽との距離感、一体感は弱く、言うなればLIVE会場の最前列の熱気を表現することはできない機種です。空間演出力に大きく貢献している"響き"の美しさは一聴の価値有り。
ゼンハイザー特有の落ち着いたムードの中で、あらゆるジャンルをそつなくハイクオリティーにこなせる万能型ヘッドホンです。中でも得意ジャンルは叙情性に富んだ楽曲。大味なサウンドでは決して実現不可能な、音色やメロディに宿る複雑に絡み合う感情を表現しきれるヘッドホンで、生きたボーカルの繊細なニュアンスを惜しみなく感じ取ることができるでしょう。艶っぽさや色気といった音色面での後押しは無いものの、素材の味を正直に引き出すボーカル表現力は個人的に有りです。レスポンスに優れておりノリに関しては申し分ないのですが、音が広い範囲で鳴る傾向、音の輪郭が薄い点、音が遠目でダイレクト感が弱い点から、ロックやメタルとの合性は「最高」とは言えず「良い」止まり。また、明るくスカッっと爽やかな、ゼンハイザー色を活かせないタイプの楽曲は明らかに苦手分野でしょう。HD800は臨場感を重視した鳴り方をするため、どのような曲を聞いても若干LIVE音源的な聞こえ方になる点は利点であり欠点で、上手く使いこなす必要がありそうです。特にこの”現場を再現する力”を発揮するのがクラシックで、HD650を経ることでクラシック音楽への対応力は完成の域に到達したように思います。様々なHD800の特徴が、クラシックの良さを引き立てるために調整されているのではないかと勘繰ってしまうぐらいに相性抜群です。ジャズやフュージョン、打ち込み系でも"臨場感"を存分に味わえることから、室内、ホール的LIVE感を再現することには長けていることが確認できますが、野外LIVEのような開放感を出すのは苦手なようです。野外LIVEの醍醐味を味わいたい場合は、素直にGRADOのヘッドホンを使うのが賢そうですね。ともかく、何を聴くにしても贅沢な気持ちにさせてくれる高級料理のようなヘッドホンだと言えます。
オーディオシステムの影響を受けやすいヘッドホンです。まず第一にipodやノートPCに直接繋ぐ場合は音量がとり難いので、ヘッドホンアンプを使用することをオススメします。性能面はシステムのグレードに比例して見事に向上してくれるので、環境整備に力を入れている人にとっていろんな意味で楽しみの多い機種となりそうです。情報量、解像度に関しては、上流機器による差が如実に表れます。また、性能の向上によってクリアーなサウンドになるため、空間の見通しが良くなり音場が広がります。音場感はシステムによって差が出やすい部分のように思います。
ファーストインプレッションで感じた「ゼンハイザーの音だなぁ」という感想が全てを物語っているように思います。ワクワクドキドキテンションが上がり、自ら音楽に乗っかっていくような音ではなく、音楽が体に染み込んでくるような受動的な音。限界ギリギリまで性能を使い切るのではなく、「余裕を持って最高」であるからこそ生まれる貫禄ある音楽性を体験できる、HD800はそんなヘッドホンです。
最後に、HD800によってゼンハイザーの音の方向性が1968年に発売された開放型ヘッドホンHD414の頃から変わっていないのを確認することができました。別の言い方をすれば、オーディオメーカーとして音楽性にブレがないことを確認することができました。この事実から、今後も安定したゼンハイザーサウンドを提供し続けてくれるであろうことを確信できます。誰もが良い音だと思える安定感、ノーリスクの安心感、世界を虜にしたHD650の後を継ぐフラグシップ機として、HD800は一時代を築いてくれそうです。「王道此処に在り」を示すに相応しい音質を備えた名機だと私は思います。
★リケーブル Locus design Hyperion Ag
公開するかどうか未定
とりあえず感想は、良くも悪くもゼンハイザー色が消えます
型番:Edition10
メーカー:ULTRASONE
タイプ:開放型ヘッドフォン
再生周波数帯域:5 - 45,000Hz
インピーダンス:32Ω
感度:99dB
質量:282g(コード別)
ケーブル長:3.0m
プラグ:6.3φステレオ
その他:ヘッドフォンスタンド付属
装着感は最高レベル。強すぎず弱すぎず適度な側圧で、上を向いても下を向いてもずれることがなく、長時間つけていても疲れない軽さ、痛くならない頭頂部、蒸れることなく優しくフィットするエチオピアンシープスキン製イヤーパッド、といった具合にどこをとっても隙の無い作りを備えています。開放型の中でも音漏れは激しい方で、小型のスピーカーかと思うぐらいに音が漏れる点には注意が必要。ケーブルは非常に軽量。質感がプリプリとしており柔軟性に欠けますが、その代わりに絡まることは皆無です。艶やかに輝く立派な木箱はご愛嬌。箱の底にヘッドホンスタンドが隠されているのでお忘れなく。ヘッドホンのデザインについては好みが分かれそうです。
音の方向性は、総合的に見て”Editionの音”を継承しているように思います。特徴のある高域と低域、低域から中域にかけての密な音空間、キレ及びハイスピード感、クッキリとした音の輪郭、自然な鳴りよりも全ての音を細部まで描写しきる顕微鏡のような音作りに”Edition魂”を感じずにはいられません。音に個性を持たせて惹きつけるという過去築き上げてきたEditionスタイルを礎に、進化したEditionサウンドとして”ナチュラルな音”、そして開放型でなければ出せない特徴である”音の抜け”や”スケール感”が付加されているのがEdition10です。
高域は、解像度の高さに加え、輪郭感の強さと分離感の強さから、細かな音まで潰れることなく正確に描写されます。管楽器や弦楽器では、感性を刺激するようなスリリングさを持ち合わせ、例えばシンバルの音であれば、原音忠実性よりも、人が金属から連想する音にどれだけ近づけられるかを追求したような音をしており、鋭角な金属の粒子が耳を擽り、脳に直接訴えかけるような鮮烈、鮮やかな音色となっています。低域は、密度感や粘度、弾力のあるものですが、流石に密閉型のEdition9と比較すると圧力、迫力、力感、インパクトといった部分で物足りないものがあります。しかし、その代償として、開放型でなければ実現できないであろうストレスフリーな音抜けの良さとスケールの大きさを得ています。重心が低くて重く沈み込むような低域ではないので、レスポンスに優れており、全くもたつきを感じません。超ハイスピードかつ鬼のキレを持った低域である点は、Edition10のセールスポイントのひとつでしょう。Editionシリーズらしい解像度が高く濃密で実体感の強い低域を感じさせつつ、ノリと言うよりも機械の如く正確無比にリズムを刻む様にある種の物恐ろしささえ感じます。中域は個性的な低域や高域に負けることなく主張感があり埋もれることがありません。数々のチェック項目を拾い上げていく中で、ソースに含まれている音の隅々にまでくまなく意識がいきわたるように調整されたバランス感覚の良さには度々感心させられます。分厚い中域が低域と高域の間に入り、ガッチリと全体を支配、コントロールしているかのようです。
音場感は良好。どちらかと言えばホール的に空間を作るタイプですが、音が空間に満ちる感覚は薄く、むしろ逆に開放的に抜けていく感覚のほうが優勢です。”限りなく開放的なホール”とでも表現したらいいのでしょうか、最後まで綺麗に音が伸びきり、そこまで空間が存在する感覚で、GRADOのような全抜けタイプとは違うものの、絶妙な塩梅で開放感溢れる音をしています。音が満ちる感覚が薄いことからもわかる通り、必要以上に音が響きません。残響成分が少なく敏速にスっと音が引いていきます。この性質がレスポンスの良さに影響しており、アナログ的な音の味わいを生み出さない原因でもあるのでしょう。空間の広さは録音に左右されるように感じます。クラシックやLIVE音源では広い空間を感じられ、離れた位置から聞いている感覚になりますし、スタジオ録音では間近で聞いている感覚になります。総合的に判断すると、直接的に音を聞く所謂スタジオモニター的な鳴り方に近く、間接的に音を聞くタイプではありません。前後の距離感を感じられ、耳の真横ではなくやや前方から音が聞こえます。そして、ULTRASONEのヘッドホンの代名詞とも言えるS-Logicテクノロジーについての言及を避けるわけにはいかないでしょう。過去のS-Logicでは、聞き始めの時にグルングルンと回るような感覚があり違和感を覚える人もいたかと思われますが、S-Logic plusになった影響か、開放型である恩恵か、以前のような不自然さは無くなり、より自然な空間表現力を得ているように感じます。また、定位感が良く、各楽器、ボーカルの位置が手に取るようにわかります。音抜けが良いので、耳への負担が少なく、長時間聞いていても耳が疲れない点は隠れた嬉しいポイントで、装着感、音の両面で、長時間のリスニングに適したヘッドホンだと言えそうです。
久しぶりに驚きを与えてくれたヘッドホンで、今までに聞いたことの無い新しい音でした。リズム王の称号を得るに相応しい最高峰の応答速度を持った機種なので、キレ重視な人、そして音に色づけをしたくない人にオススメです。自然さを追求したような音ではないので、その点は注意が必要です。途中でも述べましたが、長時間使用していても全く耳が疲れないのは驚くべきことで、これほど耳への負担の少ないヘッドホンは初めてのように思います。値段相応の価値があるのかと言われれば、そこはオーディオの世界、人によりけり何とも言えない部分ではありますが、少なくとも私は購入して良かったと満足感を得ることができました。
★エージング
エージングの進行度によって音の印象がずいぶん変わっていくヘッドホンのようで、音が落ち着くまでに時間がかかりました。Edition9もずいぶん音が変化していく機種でしたが、Edition10はそれ以上に変化が大きいように感じます。
・初期
弱ドンシャリ。全ての音をハッキリと認知できる優れたバランス。音が凝縮されていて密で濃く、edition9のような音をしています。驚くべきは開放型とは思えないほどにビシっと締まっていて制動が効き、キレキレで超速な低域。高域は適度に輪郭がクッキリしていて金属質。中域もよく前に出てきます。開放型らしい綺麗な音の広がりはあまり感じられませんが、この時期は凝縮された音の圧力、パワーが気持ちよく、音抜けが良いので耳への負担もなく、ある意味良いこと尽くめの音だったりします。edition9に空気感を+αしたような音で、この音は最初期でしか味わうことができない貴重なものです。
・中期
徐々に音がほぐれていきますが、様々な部分で音が暴れだします。この頃から長時間高域がシャリシャリと癖のある時期が続きます。この擦れた感じは楽器の音だけでなく空気感にまで影響します。特にボーカルのカサカサ感は酷いものです。全体的に乾いていて粗く、低域がスッカスカになり出なくなると同時に、刺激的すぎる高域の主張が激しく、高域寄りのバランスへ変化します。バランス、音色など全てにおいて、この時期の音は本当に酷く、聞けたものではありません。
・後期
その後、徐々に低音が回復しながら、音のトゲトゲしさが収まっていきます。低域の量感は割りと短時間で回復します。高域のシャリシャリ感は長時間続くものの、次第に落ち着いていき、ピークの時からは想像できないほど高域の刺激は消えていき、最終的には痛さを感じることは無くなります。そこからさらに鳴らしていくと、音の硬さが取れていき、音にしなやかさが生まれてきます。また、音の繋がり、まとまり感が出てきて一体感が向上し、僅かに残響成分が増えてきます。そして、レビューのような音へと落ち着いていきます。
「ULTRASONEのヘッドホンはエージングに200時間」という一種のネタとして確立しているような一文があります。私自身、これはネタでも誇張表現でもなく、過去の経験上「確かに200時間は鳴らしてから評価したほうがいいのかな」と思います。それぐらい長時間経過してから音がまとまってくるわけです。途中、お世辞にも良い音とは言えないような音になる期間もあります。それだけに、早期に評価を決め付けてしまうのは、Edition10にとって酷な仕打ちとなるので、暖かく長い目で見守ってあげてください。
型番:PS1000
メーカー:GRADO
タイプ:開放型ヘッドフォン
ハウジング:アルミ&木製
再生周波数帯域:5 - 50,000Hz
インピーダンス:32Ω
感度:98dB
質量:-----
プラグ:6.3φステレオ
GS1000同様イヤーパッドが直接耳に触れることがないので、ザラザラとしたパッドの質感によって耳がヒリヒリと痛くなることはありません。ヘッドホン界最高峰の重量は相応の覚悟が必要で、頭頂部が痛くなることはないのですがひたすら重いです。重さに耐えながら音楽を聴く必要があり、決して快適なリスニング環境とは言えません。前傾姿勢になると重さでヘッドホンが落ちてくるため、机に向かいながらのリスニングも不可能です。また、開放型ヘッドホンの中でも音漏れが激しい部類に入る点も注意が必要です。
MDR-EX1000、PS1000出品中。スピーカーメインのオーディオへ移行につきヘッドホンオーディオ縮小。そのため他の機種も随時出品していきます。ヘッドホン大好きな方ご連絡ください。
レビュー予定
ATH-CKW1000ANV(オーテク)
ATH-W3000ANV (オーテク)
ATH-PRO700MK2ANV (オーテク)
AURVANA Air(CREATIVE)
Hyperion Ag(HD800用)(Locus design)
LCD-2 with Rev2 Driver(AUDEZ'E)
Reference 16 Silver/Copper(ALO audio)
HE-6(HiFi Man)
Reference 8 Salty Pepper(ALO audio)
SR-407(STAX)
SX-3000BD改(アンプ)(イシノラボ)
AKG
K3003
K1000
K701
K501
K340
K290 Soround
K240 Sextett 二代目
ALESSANDRO
MS-1
AUDEZ'E
LCD-3
Audio-Technica
ATH-W5000
ATH-L3000
ATH-W2002
ATH-AD2000
ATH-A2000X
ATH-W1000
ATH-W100
ATH-A55
ATH-ESW10
beyerdynamic
DT880 Edition2005
BOSE
Bose on-ear headphones
DENON
AH-D7000
AH-D5000
FOSTEX
T50RP
GRADO
PS1000
GS1000
PS-1
RS-1
SR-325
Monster Cable
Beats by Dr.Dre
SENNHEISER
HD800
HD650
HD25-1
HD25-13 Ⅱ
HD414
SONY
MDR-SA5000
MDR-CD3000
MDR-EX1000
STAX
SR-007A + SRM-007tA
SR-404 LIMITED
SRS-4040
ULTRASONE
Edition10
Edition9
Edition9バランス仕様
PROline2500
DJ1PRO
Victor
HP-DX1000
その他
USTヘッドフォン(EXH-313他)









