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スピーカー、ヘッドホンとオーディオアクセサリーのレビューをメインとしたオーディオブログ。感じ取れ音楽!
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s2012-10-22_14-44-36_209.jpg型番:HE-6
メーカー:HiFiMAN
形式:平面駆動型
再生周波数帯域:8 - 65,000Hz
感度:83.5dB/mW
インピーダンス:50Ω
ケーブル長:2.0m
プラグ:4pin XLRメス出しケーブル(OCC 4pin XLR - 標準フォン)
質量:502g

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Gradoのようなヘッドバンド、ハウジングはプラスチック製ですが、ピアノブラックで安っぽさはありません。重量は502gと重量級。側圧が弱めでイヤーパッドがフカフカしているので、ドッシリと重く圧し掛かるような重量感はありません。ケーブルは付属にしては高品質。ALOaudioのような外観で、手の込んだ編みこみケーブル。音質、造りの両面でクオリティーが高いです。4pin XLRバランスケーブルと、シングルエンドへの変換ケーブルが付属しています。日本で一般的な3pin XLRバランスケーブルへは別途変換ケーブルが必要です。音量がとり難いのでハイパワーなアンプが必要な点は注意が必要です。

s2012-10-22_14-44-49_280.jpgバランスはフラット。深く黒い低域も魅力なのですが、それよりも高域方向への音の伸びのほうが特質すべき点だと私は感じます。今まで経験してきた多くのヘッドホンと比較してもトップクラスの高域方向へレンジ感です。限界を見せないノビノビとした高域は爽快そのものです。情報量、解像度も高水準で、基本性能は十分に高く、微細な音の表現、空気感、ニュアンスを余すことなく伝えてくれます。平面駆動型ということもあり、音の輪郭を作るタイプではなく、STAXのような全面で音を出す傾向が強いです。LCD-2やLCD-3と比べると平面駆動らしさは弱く、ダイナミック型の良さをしっかりと残しつつ平面駆動型の繊細な表現を手に入れたような音と言えそうです。しかし、それでも繊細さはHE-6の大きな特徴であることに変わりはなく、中高域の音の出し方はSTAXを連想せずにはいられません。また、平面駆動型でありながら打音においてタイトさを感じられるのは斬新で、締まったビシっとした低域を出すことが可能であり、ロックやメタルもそつなくこなせます。同様に、音に緩さがなく張りがあるのも特徴でしょう。


s2012-10-22_14-45-59_155.jpg環境追従性の高い機種で、オーディオシステムの音を素直に出してくれるヘッドホンです。私のシステムで鳴らしたときには色がつかずに音が再生されているので、ヘッドホンそのものの色はほとんど持っていないことが確認できます。あえて言うなら僅かに灰色がかったような音調ですが、ほとんど気にならないレベルです。基本的には素直な音色であって、例えば金属音であれば、金のようなキラキラと演出的なものではなく、スチールやアルミのような、光沢を抑えたような質感をしています。ただし、音色に関してはオーディオシステムに依存する部分が大きいので、銀にも金にも変化させることは可能でしょう。色っぽい音の出るシステムであれば、甘美な世界観を構築するでしょうし、押しの強い音の出るシステムであれば、深い低域の良さを引き出し、ダークな面を見せてくれる機種です。曲による表情の変化が面白く、綺麗な曲であれば綺麗な面を見せてくれますし、激しい曲になれば激しい面を見せてくれます。空間表現はソース次第。クラシック等のLIVE音源での臨場感の再現性に優れており、広い空間を感じられます。逆にスタジオ録音で音が近いものは近くで音が鳴ります。 やはり推したいのはクラシック音楽への適正の高さでしょう。

s2012-10-22_14-45-03_547.jpg平面駆動型は本当に場の臨場感を引き出すのが上手いです。コンサートホールの再現度はダイナミック型とは一線を画すものがありますね。クラシック以外では、ボーカルとの合性がよく、中高域の澄んだ空間にボーカル成分が広がり心地よさに満たされます。艶っぽさは加味されませんが、声が持つ味わいをストレートに感じることが可能です。 STAXは専用アンプが必要なため、なかなか導入するのが難しいと考えている人にとって、平面駆動型ヘッドホンはありがたい存在です。音量がとり難くて使い難いヘッドホンですが、こういった開発者のこだわりを感じられるヘッドホンというのは魅力的だと思います。

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PICT0750.JPG型番:ATH-CKW1000ANV
メーカー:オーディオテクニカ
形式:ダイナミック型
ドライバー:Φ14mm パーメンジュール採用磁気回路
再生周波数帯域:5 - 30,000Hz
感度:100dB/mW
最大入力:200mW
インピーダンス:17Ω
ケーブル長:0.6m
プラグ:Φ3.5金メッキ ミニステレオ

バランスは低域寄り。オーディオテクニカ特有のシャリシャリした高域は抑えられています。低域の質は響きを活かしたもので、木の影響がしっかりと出ています。丸く柔らかく「ボンッ」と響く低域で耳に優しい音です。中高域はクリアーで見通しが良く、音場感が良好で狭さはそれほど感じません。全体的に落ち着いた印象があり、オーディオテクニカで期待してしまう鮮烈さや派手さ、煌びやかさは弱いです。特に欠点、不満な点がなく上手くまとめられた音という印象。高性能かつ音の面で「木のイメージ」を持つイヤホンというのは他になかなか無いので、貴重なポジションのイヤホンだと思います。


sPICT0775.jpg型番:ATH-W3000ANV
メーカー:オーディオテクニカ
形式:密閉ダイナミック型ドライバー:Φ53mm
    OFC7Nボビン巻きボイスコイル
     パーメンジュール採用磁気回路
ハウジング:北海道産アサダ桜心材、漆仕上げ
再生周波数帯域:5 - 42,000Hz
感度:102dB/mW
最大入力:2000mW
インピーダンス:40Ω
ケーブル長:3m
プラグ:Φ6.3金メッキ ステレオ標準
質量:約340g


性能はかなり高めで、オーディオテクニカ製品の中ではトップクラスと言っていいでしょう。解像度が高く、非常に細かな音まで拾うので、ハイエンドと言えるクオリティーは確保できているように思います。情報量はATH-W5000ATH-L3000と比べると落ちます。ウッドシリーズなので木の響きが入ってくるのは間違いないのですが、しっかりと音が安定している感があり、制動の効いたヘッドホンという印象を受けます。バランスはフラット~微妙に低域寄り。ソースによっては結構しっかりドゥムドゥムと低域が鳴ります。概ね低域から高域までバランスよく鳴ると言っていいでしょう。音場表現は近くで鳴るものの平面感を感じさせず、耳を小さなドームが包み込む感じです。特徴は中高域のクリアーさと、それにプラスして聞きやすい音の響き、そしてボリューム感、程よい厚みを持っています。ATH-W2002のような飴のような甘さはありません。音色は中庸。ATH-W5000程ではないものの、程よく厚みのある音でありながらキレの良さも持ち合わせており、ノリのイイ曲も対応できる点は、「何でもいけるよ?」とATH-W3000ANVに言われているようです。オーディオテクニカはボーカルがグイグイ前面に出てくるのが良くも悪くも特徴だったのですが、この点に関してはやや控えめになっています。見た目が綺麗なので所有満足度は高いと思いますが、緩い装着感はマイナスポイントです。
 


sPICT0759.jpg

型番:ATH-PRO700MK2ANV
メーカー:オーディオテクニカ
形式:密閉ダイナミック型
ドライバー:Φ53mm
再生周波数帯域:5 - 35,000Hz
感度:107dB/mW
最大入力:3500mW
インピーダンス:40Ω
ケーブル長:カールコード1.2m(最長3m)
プラグ:Φ6.3/Φ3.5金メッキステレオ2ウェイプラグ
質量:約340g
 

パワフルで音楽を楽しく聞かせてくれます。カッチリ系ではなくガッチリ系で、緩くはないですが堅くもなく、響く音はしっかり響きを感じられる程度にバランスが取られています。とは言っても自然さとか原音とか、そんなのは無視して個性的な音であることは間違いありません。バランスは低域寄り、低域の主張感が強いですが、DJモデルなのでこれぐらいが普通なのでしょう。低域でノリを作り出すタイプ。性能はなかなか高く、十分に繊細な音も表現できるレベル。とは言っても高級機と比べればモコモコしています。意外だったのが音場感が優れていること。広くはないのですが壁を感じず気持ちよく音が抜けていきます。中高域は空間に広がり、低域はハウジングの壁で反射してモリモリ鳴る、実に面白い鳴り方をします。また、音楽性を伝える能力がなかなか優れています。もっと音が抜けてスコーンと届いてくれると完璧なのですが、そこまで求めるのは酷でしょう。音色面での魅力は特別ありませんが、ノリやグルーヴ感で惹きつけるタイプです。低域が強いので打ち込み系を聞く人にはオススメです。とても楽しく音楽を聞けるヘッドホンなので、隠れた?名機なのかもしれません。良いヘッドホンだと思います。癖は強いですけどね。

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slcd3-0.jpg

型番:LCD-3
メーカーAUDEZ'E
タイプ:平面磁界・全面駆動式
再生周波数帯域: 5Hz - 20KHz,(usable high frequency extension 50KHz)
インピーダンス:50Ω
感度:93dB/1mW
質量:550g(ケーブルなし)
ケーブル長:2.5m
プラグ:6.3mmステレオ標準プラグ,4ピンXLR
その他:ケーブル着脱式

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slcd3-3.jpg見た目通り?見た目以上?の超重量級ヘッドホン。装着すれば意外と重さを感じないのでは?という期待を見事に裏切ってくれます。ガッツリと頭部から肩にかけて圧し掛かる重量感は、修行と言うよりも苦行の類。LCD-3の直後にGRADOのPS1000を装着した時に、装着してないのかと錯覚する程に軽く感じ、「あれ?RS-1かコレ?」と言葉が漏れたのは嘘のような本当の話。ラムスキン製のイヤーパッドはフカフカしており感触が良く、耳にピトっと吸い付きます。イヤーパッド部分で頭部に固定する力が強いため、これだけ重いにも関わらず、頭頂部にはそれほど負担がかからない点はgood。頭頂部に鈍痛を感じるものの、刺さるような激痛を感じることはなく、辛うじて最悪の事態だけは免れています。とは言っても、数ある全てのヘッドホンの中で、ワースト10以内に必ず入るであろう装着感を有した極悪ホンであると個人的には思います。いくら音が良くても、重量だけは気にしなければならないと今更ながら学習することができました。93dBという能率は、一般的なヘッドホンと比べるとやや低いスペックとなっていますが、特に音量を取り難いという印象はなく、大抵のヘッドホンアンプで十分音量を取ることが可能です。この点は特に問題視する必要はないでしょう。LCD-2ではヘッドホン側のケーブルコネクタが真下に向かって出ており、ケーブルが肩に当たって気になる欠点がありましたが、LCD-3では斜め45度前方へコネクタが向いているため、肩にケーブルがかからなくなっています。ちょっとしたことではありますが、嬉しい改善ポイントとなっています。全体の造りはしっかりしており、木と金属の質感を活かした見た目はハンドメイド感と高級感が上手く融合していて好印象。所有欲を満たすのに十分なクオリティーを持っています。ヘッドホンケーブルは着脱式。リケーブルが可能ですので、ケーブルによる音の変化を楽しむことができます。レビューの最後に述べますが、リケーブルによる音の変化が出やすいヘッドホンなので、リケーブルによって二度も三度も楽しめるヘッドホンです。

slcd3-5.jpgLCD-3付属のケーブルは、シングル接続のものとバランス接続のものの2種類入っています。ただし、バランス接続のケーブルは、主流とは言えないAKGのK1000やHE-6などで採用されている4ピンXLRコネクタになっている点に注意が必要。今回のレビュー内容は、付属のバランスケーブルに変換ケーブルを噛まして、主流であるXLR×2のバランス接続に変更して使用したものとなっています。変換ケーブルをかましているので完全には付属ケーブルの音とは言えませんが、限りなく付属ケーブルの音を聞いてのレビューと思って戴いて問題ないと思います。

slcd3-6.jpg量感バランスは中低域寄り~フラット。基本性能は十分に高く、膨大な情報量を筆頭に、レンジ感、解像度感もハイレベルです。解像度感はコンデンサー型のそれに近く、全ての音を微粒子のように感じられるタイプ。音の分離感はほぼ無いに等しく、全面で音が鳴る点もコンデンサー型同様です。一般的なダイナミック型ヘッドホンのような高い解像度と分離感によって、一つ一つの音を鮮明にクッキリハッキリ知覚できるようなオーディオ的な解像度感ではありません。コンデンサー型とまではいかないものの、まるで流水のように滑らかに流れる音が、自然音に近い解像度感を感じさせてくれます。音の歪みの無さは通常のダイナミック型とは比較になりません。全帯域において凸凹感や癖を感じさせない淀みのない綺麗な出音で、決してガチャガチャしない音を奏でてくれます。情報量の多さはLCD-3のセールスポイントのひとつでしょう。開放型とは到底思えない密な空間を作り出します。湿度の高いミストサウナの蒸気を音に置き換えた感じでしょうか。もし仮に音度(おんど)という言葉が存在するならば、限りなく音度100%に近い空間だと言えます。レンジは低域方向へよく伸びており、かなり低いところまでしっかり鳴らしてきます。高域方向に関しては、ハイエンドヘッドホンとして見ると少し物足りなさを感じるかもしれません。低域方向と比較するとやや抑えた高域といった印象を受けますが、これは音が抜けきるのではなく、空間内で響かせて音の末端をスーッっと消えていくように処理する特徴のためで、音が伸びきらないという印象を持つことはありません。もう一つ、LCD-2でも同様の傾向が見られる特徴があります。それは、LCD-2、LCD-3共にダイナミックレンジが優れていることです。ダイナミックレンジに関しては、数多くのヘッドホンを聞いていても凄いと感じることが滅多に無い部分なのですが、LCD-2とLCD-3はこの部分が明らかに優れています。AUDEZ'Eが意識的にダイナミックレンジが音楽を表現する上で大事な要素だと認識して重視しているのか、もしくは、理想の音を追求した結果、ダイナミックレンジに優れたヘッドホンが完成したのか、いずれにせよ、両機がダイナミックレンジに優れていることが音質において好結果を生む形となっているのをLCD-3から感じ取ることができます。LCD-2とLCD-3は、微小音から大きな音までを動的に鳴らし、音の流れに起伏があり、表情豊かに活力に満ちた音楽表現をします。まるでビッグウェーブに乗っているかのような、またはジェットコースターに乗っているかのような勢いと躍動感溢れるサウンドに体が反応し、ゾクゾクと身震いするほどの興奮と高揚感を与えてくれます。音を抑えた状態から・・・ブワッ!と湧き上がる大音量に体がリンクし、鳥肌が立つような感覚を味わえる稀なヘッドホンです。ダイナミックレンジについては、別のメーカーであればSTAXやゼンハイザーも得意とする部分です。これらのメーカーのヘッドホンでも同様の感覚を味わうことができるので、STAXのイヤースピーカーや、ゼンハイザーのHD650HD800を所有している人であれば容易に想像できるかと思います。

slcd3-2.jpg次に、それぞれの音域を具体的に見ていきましょう。低域は濃く深く凄みのある音をしています。ここまで凄みのある低音というのは貴重なもので、低域の印象の強さという視点から見れば、比較対象としはULTRASONEのEdition9ぐらいしか思いつきません。強烈なインパクトを持ったEdition9の低域とは質が全く違うという前置きをした上で、LCD-3はEdition9と同等の迫力ある低域を聞かせてくれます。LCD-3の場合は、歪みがなく解像度感が高い低域であることを礎として、ふわりと豊潤で量感があり、ウッドベースや管楽器などの響きを含んだ低音を得意とします。逆に、打音のようなタイトさ、エッジ感、力感が欲しいような低音は若干苦手で、明確に低域を描き分けるタイプではありません。低域の主張感、存在感の強さは勿論、縁の下の力持ち的な意味で全体の雰囲気作りをする低域としても高い能力を発揮します。次に中域を見ていくと、まず言わせてください、「極上」であると。LCD-3の中域は、直接脳に訴えかけるような音楽性豊かな中域です。この直接的な中域はオーディオテクニカの中域表現に近いものがあります。LCD-3は分厚い低域に意識がいきがちですが、実はLCD-3の魅力は低域よりも中域にあるのではないかというのが個人的な見解です。平面駆動という構造上、尖った音やジャキジャキした音の表現は出来ませんが、歪みがなく滑らかで艶やかで綺麗な音にかけては、「極上」の域に達しています。高域は僅かに鮮やかさを持ち、金属的な華やかさも多少表現することが可能です。柔らか滑らか一辺倒な高域と思いきや、意外と快活さのある高域で、そこに繊細というイメージは浮かんできません。高域の線が細くないので、個性ある低域に負けることなく意識が全帯域に行き届きます。

slcd3-1.jpgさて、ここからLCD-3の音の方向性について書いていきます。先ほどのサウナの話でも十分に感じて戴けたかと思いますが、このヘッドホンの最大の特徴は、音の「厚み」と「濃さ」だと断言します。この「厚み」と「濃さ」という要素が癖、個性と言えるぐらいにパラメータ的に特化しています。全域で音の厚み、密度感が圧倒的で、ここまでギッシリ音の詰まった音はそうそうあるものではありません。過去濃く充実した音だと感じたヘッドホンに、Edition9やオーディオテクニカのATH-L3000がありますが、それらと比較しても同等の凄みのある音をしています。Edition9やATH-L3000が密閉型なのに対し、LCD-3は開放型ですから、いかに特異なヘッドホンであるかがわかるというものです。通常、「厚み」や「濃さ」があると同時に「重い」音になるものですが、LCD-3は「重い」音ではなく「想い」音を持ったヘッドホンです。物理的に重量があるという意味での音の重さは感じず、心に響く感情という意味で、「想い」を伝える力に秀でた説得力のある音なのです。決して音が重くならず、くどくならず、むしろ僅かに清々しさを感じるほどで、このように感じるのは、歪み感の少なさによって体にさらりと溶け込む音の性質によるものなのだと思います。

slcd3-4.jpgオーディオの醍醐味である音色でもまた、LCD-3は独自の魅力ある音色を持っており、存分にアピールすることが可能です。特に中域で感じられる艶やかな音、そして甘い音、これはLCD-3の個性を決定付ける要素のひとつでしょう。LCD-3は、人工甘味料のような甘さではなく、自然の甘さ、自然な艶やかさを持っています。ちょっと艶っぽいかな?と感じる程度なので、何でもかんでも艶やかに甘く染めてしまうわけではなく、ロックやメタルにも十分対応できる範囲内で、程よい味付けがされているという認識で問題ないでしょう。例えるなら、ATH-W2002のような、口に含んだ瞬間に旨みが爆発するような大トロではなく、口に含み深く味わい心の奥底で美味いと思えるような大トロ、それがLCD-3です。そして、低域の説明の時に少し述べましたが、LCD-3は響きの上手さも優れています。響きのコントロールについてはSTAXを筆頭に、平面駆動がかなり有利なように感じます。ボーカルは勿論のこと、ウッドベース 管楽器などの音を自然かつリアルに再現します。このような響き成分を含んだ音の表現力と比べると、打音はちょっと苦手なように感じますが、しっかりエネルギーの乗った音なので、聞き応えは十分にあります。「もうちょっとアタック感が欲しいかな?」という感想が、例えばピアノなどの音を聞いたときに出てくるのは否定できませんが、これは好みの範囲内であって、決定的に不得手ということは決してありません。

ダイナミック型平面駆動ヘッドホンとは大まかに言ってどのような音なのでしょうか。仮に、コンデンサー型を0、ダイナミック型を10とするならば、LCD-3は鳴り方として3~4の位置に在るヘッドホンです。どちらかと言えばコンデンサー型の鳴り方に近いと感じます。一般的なダイナミック型ヘッドホンと比べれば一目瞭然で、まず音が全面で鳴り、音に輪郭を作らずに鳴らす傾向が強いです。ただし、コンデンサー型ほどは全面で鳴らず、僅かに焦点の合った音像感と、エネルギー感や力強さを内包しており、上手くバランスのとれたヘッドホンという印象です。HD800のレビューで「何を聴くにしても贅沢な気持ちにさせてくれる高級料理のようなヘッドホン」と表現したのに対して、LCD-3は「何を聴くにしても満足感に満たされる郷土料理のようなヘッドホン」と表現したいですね。高級料理でなくても心の底から「美味かった」と満足感に満たされる料理ってありませんか。

音場感はソースの影響がよく出てくるようです。スタジオ録音では狭めな空間を作ることが多く、LIVE音源やクラシックなどではそれなりに広さを感じられます。しかし、広い音場という印象はあまりありません。多くの音源で、低域から中域にかけて間近でモリモリ鳴り、高域にかけては放射状に広がっていく空間を形成します。そのため、迫力ある低域や味わいあるボーカルなどは間近で感じられ、綺麗な響き成分は上空にふわっと広がり満ちて心地よさを感じることができます。「それが理想の音場感!」となる人も出てきそうな、オーディオとして一つの理想系とも言えるような音場感を持っています。基本性能として応答速度が速くキビキビした音をしていますが、LCD-3に関しては、あえて俊敏性を見せつけないようにしている感があります。機敏でキレのある音が欲しい場合には、音の傾向上LCD-2のほうが優れているので、両機種を上手く使い分けることが可能でしょう。

slcd3-9.jpg得意ジャンルはクラシックとジャズ。異論は認めません!と言いたくなるぐらいに最高に合います。全面で鳴る音というのは、本当にクラシックのホールの臨場感を生み出しますね。STAXのイヤースピーカーでクラシックを聞けば、クラシックに興味の無かった人でも虜になるように、LCD-3もSTAXレベルとまでとは言いませんが、ダイナミック型のヘッドホンでは最高峰の臨場感を味わうことが可能です。とにかく音が自然、「ホールの音の響きを完全再現!」なんて誇大広告があったとしても、「確かに再現できとるな」と思わず納得してしまうぐらいの音です。打音のインパクト感や、緊張感、スリリングさなども含めると、HD800のほうが適正が高いとも言えますが、STAXを使うか、LCD-3を使うか、HD800を使うか、各々好みで選んで戴けたらと思います。いずれもクラシックを聞くならば、一本で満足できるクオリティーを持ったヘッドホンです。クラシックとの相性と比べるとグンと落ちてしまう感があるのは否めませんが、それでもボーカルモノとの相性は素晴らしいものがあります。オーディオテクニカのボーカル表現が好きな人であれば、LCD-3のボーカル表現も好きなのではないでしょうか。ボーカルを身近に感じられ、声の細かなニュアンスまで感じとることができ、声に加味されるいい塩梅の艶っぽさが、ノスタルジーに浸るのに一躍買っています。優しい声質との相性が特に良いので、この手の音楽が好きな人にはオススメしたいヘッドホンです。どんなジャンルの音楽でも綺麗に鳴らしてしまう傾向があるため、キレや音のエッジ感、歪んだ音のジャキジャキ感が欲しいロックやメタルとの相性は良いとは言えません。私の好みの問題ではありますが、メタル特有の"負の感情"を表現する能力が低いため、私の場合はメタルは駄目だと切り捨てるというのが正直な感想です。"凄み"は出せるけど"エグさ"が出せないといった感じで、なかなか言葉で伝えるのが難しい部分ではあります。しかし、綺麗な音で聞くロックが好きな場合には、他に代えのきかないヘッドホンになることでしょう。楽器別で個人的に良い音だと感じたのは、ヴァイオリンとウッドベースです。どちらも甲乙つけがたいほどに心に響く音をしていますが、どちらか選べと言われればウッドベースの音を選びます。ボンボンと響くウッドベースの低い音の再現度、響き成分を含んだ低域を得意とするLCD-3の十八番です。この音は是非実際に聞いて確認してみてほしいものです。

ここまでで付属ケーブルのレビューは終了となります。「どんだけ書くねん、もうええわ!」って人は右上の×ボタンを、もっとLCD-3のことを知りたい人は引き続きお付き合いください。ここからはリケーブルした時の音のレビューになります。


★BLO-DSQL2B(Blossom)へリケーブル

このケーブルは、LCD-2Rev2に付属でついていたものですが、通常は、AUDEZ'E社製のシングルエンド標準ケーブルが付属ケーブルとしてつくようです。2ndstaffは、LCD-2Rev2のキャンペーンを二度行っており、そのうちの一回目のキャンペーンの時のみ付属ケーブルをBlossomのBLO-DSQL2B(シングル / バランス)にして出荷していたようです。

slcd3-7.jpgLCD-3付属ケーブルと比較して基本性能はやや向上。音色が中庸で色付けが少ないため、後で紹介するALO audioのReference 16よりもこちらのほうが解像度が向上しているという実感が強いです。とは言っても、付属ケーブルと比べて劇的に性能の向上を感じるかと言えばそんなことはなく、逆にそれほど変化がないと言ったほうが正確でしょう。解像度同様、情報量についても特に差があるとは感じません。高域方向へのレンジ感は多少改善されており、よく音が伸びていて、クリアーな音質になったことで高域の主張感が少し強くなっているように感じます。Reference 16でも高域方向へのレンジの改善が感じられることから、相対的に見てLCD-3の付属ケーブルは、他のケーブルと比べると低域にバランスが寄っており、高域方向への音の伸びが控えめになっているようです。

BLO-DSQL2Bの音を、コンデンサー型を0、ダイナミック型を10とするならば、鳴り方として4~5の位置になります。丁度中間地点、文字通りダイナミック型平面駆動ヘッドホンと言えるような、平面駆動とダイナミック型の良さをバランス良く引き出せているケーブルです。

まず音を出してすぐに感じるのは、クリアーな空間になったことでしょう。音の色付けが排除され、クリーンで澄み切った音色になります。付属ケーブルで感じられた甘さや柔らかさ、音の厚みや重厚さが減退し、全体的に音が締まってピシっとします。この結果、特に低域の解像度感、というよりは分離感の向上によって、低域の明確さが増したように感じます。音に輪郭が若干つき、加えて見通しがよくなったことで、全体感の強い低域にタイトさが生まれ、背景と低域が分離しています。このような低域になった影響で、キレやスピード感が増し、ロックやメタルへの対応力が良くなっており、付属ケーブルと比べれば、オールランドに使える汎用性の高いヘッドホンになっています。これは他の帯域でも同じことで、例えばボーカルにおいては、フォーカス精度が上がったことによって、ボーカルの音像がポッカリと空間に浮かび上がるようになり、同様に楽器の位置関係も把握しやすくなっています。

slcd3-10.jpg付属ケーブルでは耳あたりの良い色艶ある音色をしていて、それが大きな魅力のひとつとなっていました。BLO-DSQL2Bにリケーブルすると、その色付けがガクンと減少してしまいます。音の味わいという部分で見れば、魅力は減ったと言わざる得ません。しかし、これがリケーブルの醍醐味で、BLO-DSQL2BにはBLO-DSQL2Bにしか出せない独自の魅力があり、それを楽しむのがリケーブラーのマナーと言うもの。中庸な音になり、輪郭が生まれたことによって、高域には鮮やかさとエッジ感が加わり、ジャキジャキとした音が出せるようになっています。また、低域ではタイトさ、キレ、スピード感、迫力や凄みが出せるようになっています。BLO-DSQL2BにはBLO-DSQL2Bにしか出せない魅力がたっぷりと詰まっているのです。このような傾向から、ストレートかつダイレクトに音をぶつけてくるタイプに変化したのかと思うかもしれませんが、そこは平面駆動、やはり平面駆動、されど平面駆動、何度でも言いますが、平面駆動の土台は絶対的に崩れません。どこまでも痛みや圧力のない音で、耳に優しい音なのです。また、BLO-DSQL2Bは音場感に優れており、間近で音が鳴る印象が薄らぎ、自分を中心に全方向へ音が広がるようになります。特に中高域での変化が顕著で、少し距離を置いて音が鳴るようになるので、ガツガツしたサウンドを少し距離をおいて聞くようなリスニングスタイルになります。空間がクリアーになったことも影響しているのだと思いますが、音が響き広がっていくのをしっかりと感じられます。

得意ジャンルはやはりクラシック。この点はどのケーブルに変更しても変わらないでしょう。それ以外のジャンルでは、BLO-DSQL2Bではロック、メタル、打ち込みとの相性が良くなったように思います。音の色付けが少なく、金属的な音や打ち込みの音を素直に出してくれます。また、非常にノリの良さを引き出せる点もプラスに影響しています。付属ケーブルの低域がウッドベースの音に最適ならば、BLO-DSQL2Bの低域はエレキベースの音に最適です。低域の輪郭が強く描かれることで、低域が地を這うようにうねっているのが目に見えるようです。また、唸るボーカルの凄みや、突き上げるハイトーンヴォイスなど、付属ケーブルの時とはまた違った意味で、ボーカルを堪能できるようになっています。圧倒的プレッシャーとパワー、押し寄せる威圧的な気配、破壊力は抜群です。Edition9の低域を力100、圧のかかる面積を60とするなら、BLO-DSQL2Bでの低域は、力70、圧のかかる面積100といった感じです。広範囲で重量級の低域を体にぶち込んできます。歪みがなく耳へ負担がかかるような圧力の無い低域は、コンデンサー型の低域との共通点が多いように思いますが、この迫力ある低域をコンデンサー型で出すことはできないでしょう。逆に、ダイナミック型である以上、コンデンサー型級の究極のなめらかサウンドを出すことも不可能でしょう。

BLO-DSQL2Bバランス感覚に優れ、高いクオリティーを持ったよく出来たケーブルで、優しい音から激しい音までをニュートラルな音色で多彩に表現が可能なケーブルです。BLO-DSQL2Bにリケーブルすることで、「多様なジャンルに対応できるLCD-3」にすることが可能です。個人的にはLCD-3付属ケーブルよりもこちらのほうが使い勝手が良くてオススメですね。ちなみに、クラシックやボーカルモノをメインで聞く場合には、LCD-3付属のケーブルのほうが相性が良いように思います。


★Reference 16 Silver/Copper(ALO audio)へリケーブル

slcd3-12.jpg最後に、ALO audioのReference 16 Silver/Copperへリケーブルした時の音について書いていきます。まず見た目が美しいですね。綺麗に編み込まれたキラキラと輝く線材が期待を増幅させます。流石にこれだけの物量を投入したケーブルだけに、あまり取り回しは良いとは言えません。重さもなかなかのもので、通常であればケーブルが重くて邪魔になるところですが、LCD-3はヘッドホンそのものが重過ぎるので、ケーブルの重さが全く気になりません。「なんだかなぁ」といったところでしょうか。

LCD-3付属ケーブルと比較して基本性能はやや向上。とは言っても、それほど変化はないように思います。BLO-DSQL2BとReference 16の解像度は差がほとんど感じられません。情報量についても特に差があるとは感じません。しかし、細かな音の鮮明さ、音の滑らかさなどから、若干ではあるものの基本性能が高いのは間違いないでしょう。解像度、情報量と違って一聴して改善されたと感じられるのはレンジ感です。明らかに高域方向へのレンジが良化しており、しっかりと音が伸びきるようになっています。そのため、低域方向へも高域方向へも思う存分音がノビノビと躍動し、低域寄りな印象の強かったバランスがフラット傾向へ近づいています。付属ケーブル時にあれだけ主張していた低域が、他の帯域と足並みを揃えて整然としています。

slcd3-8.jpgReference 16の音を、コンデンサー型を0、ダイナミック型を10とするならば、鳴り方として5~6の位置になります。付属ケーブルと比べると、ずいぶんと音に輪郭が生まれ、焦点が定まり、音の粒立ちがハッキリしています。BLO-DSQL2Bと比較しても、Reference 16のほうが音の輪郭を描き、音を締め上げる傾向があり、音がシャキっとスタイリッシュになります。全体で鳴る印象はかなり薄まったように感じます。そのため、音像が見えやすくなり、音の実在感、実体感が増し、より迫力ある音、言うなれば一般的なダイナミック型に近い感覚の迫力あるサウンドを出せるようになっています。しかし、その反面音の重厚感、濃さといった要素は減退しています。輪郭を強く描くことで音のエッジ感が出るようになっていますが、音の輪郭の滑らかさという見方をすると、3本のケーブルの中でReference 16が最も滑らかで、耳当たりの優しい音になっています。また、意識しなければ感じないレベルではあるものの、音の定位感が優れており、安定感があって安心して音楽に没頭できるようになったように思います。そのせいか、ついつい長時間音楽を聞いてしまうのは、Reference 16を使用した時のLCD-3だったりします。

音色的には付属ケーブルともBLO-DSQL2Bとも違います。付属ケーブルのように甘くもなく、BLO-DSQL2Bのように中庸な音色でもありません。唯一このケーブルだけは格調高い華やかさを持っています。音色の味付けは微々たるもので、明確に知覚できるようなものではありません。しかし、多彩な色使いで、表情豊かな音色になったことは間違いないと確信しています。深い音、濃い音、凄みのある音、煌びやかな音、綺麗な音、艶やかな音、エレキトリックな音まで、他のケーブルでは味わえなかった様々な音に出会うことができます。そして、空間に漂う空気感、雰囲気が変わったことも重要な変化でしょう。突如として気品ある貴族が現れたかのように場の空気感が変わるのです。音に上品さが付加され、薄っすらと高貴な気配が音に感じられるようになります。その結果、今までの音がコンサートホールの空気感なら、Reference 16の音は宮殿の空気感と言えます。聖堂でも城でもなく、宮殿のイメージです。このような情景が目に浮かぶのは、音に華やかさが増したからでしょう。どこか清々しさも感じられるようなその音は、付属ケーブル時の分厚いサウンドからは想像できないものです。キラキラと輝くReference 16の見た目そのままの音で、見事にケーブルの見た目と音がリンクしていると言えそうです。このReference 16特有の音は、ラックスマンが独特の味わいある音を持っているのと同じように、オーディオ的な作られた音なのだと思います。しかし、この音が実に心地よいのです。ALOサウンド、完成度の高い音ですね。

slcd3-11.jpgReference 16の音は、キレと締まりを強く感じさせてくれますが、それでも直接的な圧力は感じません。いくら一般的なダイナミック型ヘッドホンの鳴り方に近づいたとは言っても、圧力を感じないことが平面駆動であることを思い出させてくれます。Reference 16の音は、凄く攻撃的な音を出すこともできるのに、全く耳に負担がかからない音なのです。BLO-DSQL2B同様に、ここでもまた低域の変化がわかりやすく、歪みの無さ、正確さ、解像度感、キレ、重み、濃さ、総合力で見ればe9やPS1000を超えた低域と言ってもいいぐらいに素晴らしいものですが、どうしたって圧力がなく綺麗に音を出すというのはLCD-3の不変の特徴です。この低域は多くの人にとって魅力的な低域となりえるのではないかと思います。音場感は低域は近め、中域から高域にかけてはやや遠め、それなりに広い空間で立体的です。どちらかと言えば付属ケーブルの音場感に近いように思います。違いと言えば、音がタイトでスッキリしたことで、全体的にコンパクトなサウンドになり、壮大さ、スケールといった点は減退したことでしょうか。逆に言えば、現代的な音楽への対応力が大きく向上したとも言えます。

得意ジャンルが変わることはありません。ここでもまたクラシック、ジャズを得意とします。しかし、Reference 16は、他の2本のケーブルと比べると最も幅広いジャンルに対応できる音となっています。ロックやメタル、打ち込みやポップスなどなど、あらゆる音楽をそつなく捌ききってくれます。音色が多彩なので、付属ケーブルとは違った音楽の楽しみ方を出来ると思いますし、使い分けるという意味でも、Reference 16は価値あるケーブルのように思います。


★まとめ

以上ここまで長いレビューにお付き合い戴いた方はお疲れ様です。LCD-3は、ダイナミック型平面駆動ヘッドホンの可能性を存分に感じられるヘッドホンでした。力強さを持ちながら、歪みがなく綺麗な音という新しい世界を見せてくれたLCD-3。その音の傾向から、単純にダイナミック型のハイエンド機種と比較できるものではありません。しかし、十分に並みいるハイエンドヘッドホン達と肩を並べるだけのポテンシャルを持っているのは確かです。平面駆動型ヘッドホンというのは、LCD-3、LCD-2やHE-6を聞く限り、あまり固有の音を持たないのかもしれません。なぜなら、環境やケーブルによってずいぶんと印象が変わるからです。コンデンサー型と違い、ダイナミック型はアンプの種類が豊富で、なおかつ高性能なものも多く存在しますから、LCD-3は自分好みの音を追求できる可能性と、音質的な高みを目指せる可能性を同時に秘めたヘッドホンであると思います。今まではフォステックスぐらいしかダイナミック型平面駆動ヘッドホンを販売していませんでしたが、AUDEZ'EのLCDシリーズやHiFiManのHEシリーズといったハイクオリティなダイナミック型平面駆動ヘッドホンをきっかけとして、今後、他のメーカーからもダイナミック型の平面駆動ヘッドホンを是非とも発売してほしいものです。

 

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s1000.jpg

型番:MDR-EX1000
メーカー:SONY
タイプ:密閉ダイナミック型
再生周波数帯域:3 - 30,000Hz
インピーダンス:32Ω
感度:108dB
質量:8g(コード別)
ケーブル長:1.2m/0.6m 7N-OFCリッツ線(両出し)
プラグ1:金メッキL型ステレオミニプラグ(1.2m コード)
プラグ2:金メッキステレオミニプラグ(0.6m コード)
その他:ケーブル着脱式

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付属のイヤーピースにフィットするサイズがあれば装着感は問題なさそうです。ジワジワ抜けてくる場合はコンプライに付け替えることで安定した装着感を得られます。ケーブルはしなやかで、絡みにくいので煩わしさを感じることがなくgood。遮音性はいまいちで外の音が普通に聞こえます。外の音が聞こえて安全と考える人にとっては良いものの、音楽に没頭したい人にとっては致命的な欠点となる恐れがあります。ケーブルが着脱式で、もしもの断線に対応できる点は安心感がありますね。

sPICT0253.jpg量感バランスはフラット~やや低域寄り。基本性能は十分に高く、特に低域の解像度の高さはハイレベル。細部の音を明確に表現できる解像度の高さには素直に驚きを感じます。容易に個々の音に意識が行き届くだけの分離感がありつつも、音が分離しすぎることがなく全体の一体感、統一感を併せ持つ絶妙なバランス感覚を持っています。そして何よりも推したいのが、個人的にMDR-EX1000の最大の強みだと感じている低域のクオリティです。MDR-EX1000の低域の解像度と分離感の高さ、多彩な表現力は素晴らしく、タイトな打音から更に低いベース音までを見事に描き分け、量ではなく質で勝負できる最高峰の低域を実現できています。もしヘッドホンでこのレベルの低域の分離感を持った機種を探すとなると、そうそう見つかるものではありません。耳とドライバーユニットとの距離が短く、音をダイレクトに聞くことができるイヤホンの強みを上手く活かしたお手本のような低域ではないでしょうか。具体的には、濃くグゥっと沈み込み、重さや密度感を感じられる低域で、豊かさとタイトさが上手く噛み合っています。唯一気になるのは、低音をより低音らしく感じさせるような強調感、別の言い方をすれば人工的な癖を多少感じること。とは言っても、無駄に響きを乗せることなく重く分厚く質量感があり、それでいながら息が詰まるような重苦しさを感じさせないMDR-EX1000の低域は、癖があるという点を差し引いても個人的には最大限の評価をしたい部分です。中域~高域にかけては、派手さが無く統一感、連帯感を大事にした堅実な音作りで安定感のあるものです。高域方向へはしっかりと音が伸びますが、際限なくノビノビと音が伸びていくのではなく、許容範囲内でコントロールして鳴らしている印象を受けます。線が細かったり、音の輪郭が鋭利なわけでもなく、線が太く筋肉質であったり、音が柔らかいこともなく、力強いというわけでもなく繊細というわけでもなく、これといった特徴の無い音をしています。これは言い換えるならば、癖の少ない日常生活に溶け込むような自然な音と言えるのかもしれません。そして、もしMDR-EX1000の中~高音を表現する時にひとつだけ言葉を選ぶなら、「正確な音」というのが最もイメージに合致します。この「正確な音」は全体的な印象としても言えることです。

sPICT0257.jpg音の方向性は、「優等生」という言葉が的確にMDR-EX1000のキャラクターを表しているように思います。良くも悪くもソニーらしい音作りで、低域を除けば色付けは皆無に等しく、モニター的と言える音をしています。柔らかさ、派手さ、煌びやかさ、熱気や色気などを演出するわけではありませんし、かといって冷徹、寒色系、硬質と言うわけでもありません。実に中庸、ソースに忠実に音を出します。低域から高域までを、自分のコントロールできる範囲内で制御する堅実さ。決して暴れずぶれず、どっしりと腰を下ろし、安定感のある分厚いサウンド。暴れずミスをせず丁寧かつ正確に、日本人気質な精巧なサウンド。何か一つ得意科目があるタイプではなく、全ての科目で確実に高得点を叩き出し、掌の上で音を自在に転がす「優等生」、それがMDR-EX1000の正体です。原音忠実性という部分を重視する人にとっては、かなりポイントの高いイヤホンになり得ると思います。

あえて欠点をあげるならば、キャラクターが薄いだけに面白さがないことでしょうか。突出した特長がないため、音色での求心力、鳴り方での求心力が弱いように思います。無表情、無機質、淡白な音だと言えなくもない点は否定できず、実際ボーカルモノのように感情表現が鍵となる楽曲は苦手な部類だと私は感じます。しかし、この特性は欠点でもあり利点でもあると私は考えます。なぜなら、独自の色が薄いからこそ環境側の音が乗りやすいからです。下記で再度述べますが、このMDR-EX1000の無個性路線は考え方によっては強みとなるのです。ただひとつ、音の流れ、それによるノリの良さはお世辞にも「素晴らしい!」とは言えないイヤホンです。この部分は環境側で調整が効きにくい部分であって、イヤホンに大きく依存する部分です。MDR-EX1000は所謂「前ノリ」に関してはやや良い部類に入るように思いますが、対して「縦ノリ」に関しては弱い部類に属し、淡々と音楽が進行していく感覚があり、ノリが良いにも関わらずノリが悪いという「どっちやねん」状態に陥ります。ノリの良し悪しについては、どちらのノリを強く意識するか、感じるかで個人差が出るところなので、一概にノリが悪いと断定することはできません。

sPICT0251.jpgMDR-EX1000は非常に環境追従性の高いイヤホンです。性能面や音色、音場感が環境に合わせて変化します。元々色付けがなく演出効果が少ないだけに、アンプの味が素直に反映されるのでしょう。特に中高域でアンプの色がハッキリ出るので、MDR-EX1000のキャラクターの薄さは問題視すべき点ではないように思います。あまりソリッドな音に追い込むのではなく、響きを増して色付けすることで「遊び心を持った優等生」へと変身します。ポータブルアンプを使用して、自分好みの音に調整する楽しみを存分に味わえるイヤホンですね。ちなみに、MDR-EX1000の音場は、横は狭め、前後、上下にそこそこ広い空間を作り、立体的に音像を配置します。この状態をベースとして、アンプによっては更に前後感を出すことが可能です。

得意ジャンルはオールジャンル。何を聞いても良い音だと思わせてくれます。ただし、アンプを使用しない場合は、キャラクターが薄いので、ボーカルモノや生楽器は多少苦手と言えなくもありません。また、MDR-EX1000は高域の処理が上手いイヤホンなのですが、この良さがipodに直挿し程度では感じることができず、解像度不足で高域がゴチャゴチャ、ガヤガヤしてしまうため、音数の多い楽曲でうるさくなってしまいます。MDR-EX1000の高域のポテンシャルを引き出すために、是非ともアンプ等で基本性能を底上げして使用してほしいと思います。

音は素晴らしく良いと断言します。何を持って高音質かは別として、単純に誰が聞いても「高音質だ!」と思わせる音です。これって簡単なようで実に難しいと私は思います。アンプを使用することで色々な表情を見せてくれる点も良いですね。MDR-EX1000は、イヤホンにおける高音質とは何か、そのひとつの基準、指針としてもいいのでは?と思えるだけのクオリティーを持ったイヤホンです。

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sPICT0792.jpg

型番:K3003
メーカー:AKG
タイプ:密閉ハイブリッド型(ダイナミック型&BA型)
再生周波数帯域:10 - 30,000Hz
インピーダンス:8Ω
感度:104dB
質量:10g(コード別)
ケーブル長:1.2m(両だし)
プラグ:3.5φステレオミニストレート
その他:ケーブル着脱不可

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造形は奇をてらったものではなく、シンプルな円柱形。材質はステンレス製で質感が良く、重量があり存在感をアピールしてくれます。スポっと耳に収まる装着感は快適。装着し難い、抜けやすい、ずれやすい、ケーブルが絡みやすい、といったマイナス要素が無く扱いやすいイヤホンです。遮音性は良いとは言えず、外の音が聞こえてきます。ただひとつ、高価なイヤホンなだけに、ケーブル交換ができないのは残念です。

sPICT0790.jpg量感バランスはフラット~低域寄り。広範囲で鳴る低域の影響で聴覚上僅かに低域寄りに感じます。基本性能は非常に高く、解像度、レンジ、情報量、どれを取ってもトップクラス。中でも情報量の多さは抜けており、情報量で押し切るイメージを持つほどです。高解像度な中高域の影響もありますが、他のイヤホンで知覚できないような音に気づかされることが多々あります。低域の解像度は少し弱め。中高域の解像度が高いので、相対的に低域の解像度が弱く感じます。レンジ面では特に高域方向へよく音が伸びます。密閉型でありながら高域がよく伸びるのは、音の流れが綺麗な証拠、形状の勝利、構造の勝利。K3003の高域は奇跡的にノビノビと抜けていきます。頭打ち感がなく伸びきる高域は気持ちが良いですね。また、音の応答速度が非常に速く、リズム感に優れています。そのため音楽との一体感が強く、楽しく音楽に没頭することが可能です。

sPICT0734.jpgK3003は、低域はダイナミック型、中高域はBA型(バランスアーマチェア型)で鳴らすハイブリッド型イヤホンです。このハイブリッドテクノロジーによる音は実にユニークかつ魅力溢れるものであり、成功していると断言します。ダイナミック型で奏でられる低域は、豊かな情報量、迫力、音の厚み、力感、押し出し感といった音楽の持つパワー、エネルギッシュさを演出し、全体の雰囲気を形作ります。少し話が逸れますが、私が初めてK3003の音を聞いたときの感想が、「ヘッドホンみたいな鳴り方をするイヤホン」でした。後から知ったのですが、AKGのK3003の謳い文句は、「まるで高級大型ヘッドホンを聴いているかのような、サイズを超えた最上級のサウンド」なのですね。これは大いに納得できます。このイヤホンとは思えないスケール感は、全体感が強く広範囲で鳴る低域によってもたらされているのでしょう。あえて欠点を強引に挙げるならば、輪郭を強く描き実体感の強いゴリっとした低域ではないことでしょうか。しかし、これは欠点と言うよりも個性の差異。K3003の低域は、「実体感」ではなく「実在感」を感じさせるものであり、其処に音が「在る」ことを強く印象付けるものです。

sPICT0765.jpg対してBA型による中高域は、「そこまで作りこむか!?」というほどに精密に作られた銀細工のようで、どの角度から見ても一分の隙もない音像を形成します。場の空気感を臨場感たっぷりに再現する低域の中で、立体的で高精度かつ正確な音像が中高域によって形を成します。ハーモニーで聞かせる水彩画タイプではなく、キッチリ音を分離して鉛筆デッサンのように描写するタイプです。この中高域の音作りは、古代種K240 Sextett、異端児K1000、名機K701などと共通したものです。AKGは「まろ~ん」とした柔らかな音は作らないですね。シャキっとした素直な出音、そこに程よく金属的な艶が乗ります。そしてAKGの代名詞とも言える繊細さ、精細さは、K3003にしっかりと受け継がれています。飽きのこないAKGサウンドであり、様々なジャンルに対応できるニュートラルな音です。

sPICT0766.jpg次に、ハイブリッドテクノロジーによる長所と短所ですが、個人的には短所は無いに等しく、圧倒的なまでに長所が光っているように思います。まず長所ですが、K3003は中高域が高精細であるため、中高域と比較することで低域の「ダイナミック感」が強調され、よりダイナミックに感じます。逆もまた然り、ダイナミック型の低域と比較することで、BA型の細かな表現力が際立つ結果となっています。このお互いを高め合う相乗効果がK3003の音の良さの原因のひとつであると私は確信しています。更に、音のノビの良さもこのハイブリッドテクノロジーが影響してるのではないかと私は考察します。構造的に優れているのはまず間違いないのですが、高域方向の空間をクリアーにすることで、音を目ならぬ耳で追いやすいように感じます。このように、タイプの違う鳴り方が混同しているにも関わらず、否、タイプの違う鳴り方を混同したからこそ、K3003はお互いの長所を高めることに成功したのでしょう。それにしても、このバランス感覚、チューニング精度には頭が下がります。

sPICT0733.jpgしかし、長所ばかりとはなかなかいかないもので、短所が無いわけではありません。冒頭で少し述べましたが、低域と中高域の性能差、主に解像度の差は存在します。また、低域は全体的に鳴らすのに対し、中高域はクリアーな空間に音像を配置します。この空間表現力の違いに違和感を感じる人もいるでしょう。この点に関しては、無理に統一感を追求するのではなく、それぞれ役割を分担することで長所を伸ばしたK3003独自の新しい音なのだと私は解釈しました。

sPICT0787.jpg得意ジャンルはオールジャンル。何が苦手というのは特にありません。イヤホンの規格を超えたスケール感、LIVE感を持ったイヤホンなので、人の声や生楽器のほうが良さを引き出せますね。今まで持っていたステンレス筐体の機種のイメージとはちょっと違い、K3003は後味の爽やかな清清しい艶、程よく人肌を感じられるような温もり、決して攻撃的にはならない音の先端を持っており、これらはボーカルを非常に魅力的に再生してくれます。ステンレス=クールなイメージは通用しません。K3003はパッションを感じるサウンドです。

K3003の音は、AKGの集大成とも言える完成度の高い音です。「もうイヤホンを買うことは無いかな」、そう思わせるだけの実力と魅力を持った機種です。しかし、悲しいかなハイエンドヘッドホンと比較してしまうと全てにおいて完敗です。それでも、イヤホンの枠の中であれば、№1を争えるだけのポテンシャルを持った機種だと私は思います。利便性、扱い易さ、ポータビリティ、音質といった総合力で考えれば、ドラクエでいう裏ボスクラスですかね。

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shd800_1.jpg型番:HD800
メーカー:SENNHEISER
タイプ:開放ダイナミック型
再生周波数帯域:6 - 51,000Hz(-10dB)、14 - 44,100Hz(-3dB)
インピーダンス:300Ω
感度:102dB
質量:370g(コード別)
ケーブル長:3.0m(両だし)
プラグ:6.3φステレオ
その他:ケーブル着脱可能

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装着感は良くもなく悪くもなく。側圧は緩め、イヤーパッドの質感はサラサラしており肌触りは良好だが薄く硬め、370gという重量もあり前傾姿勢になるとずれてきます。頭頂部が痛くなったり、耳が痛くなったりすることはなく、長時間リスニングに対応可能。ケーブルは軽くて癖がなく、音楽鑑賞時にさほど気にならない点はgood。外観に関しては、高級感溢れる質感で近未来的なクールビューティーヘッドホンと感じるか、プラモデルのような安っぽさのあるオモチャヘッドホンと感じるか、どちらとも言えないギリギリのラインにあるように思います。個人的には後者ですが、、、いずれにせよ、奇抜なデザインであることは間違いないので好みが分かれそうですね。

量感バランスはほぼフラット。基本性能はなかなか高いのですが、それ以上にオーディオとしての音作りの完成度の高さのほうが際立っています。「自然さ」を極めるとこのような音になるのかと、しばし時を忘れて感嘆してしまう程に隙の無い音作り。広大な音場と広角的な音の鳴り方、そして細部まで明確に描くと言うよりも、ひたすら細かく微粒子の如く音を表現する解像度感は、コンデンサー型であるSTAXを連想させます。情報量が多く、非常に細かな音まで、隅々の音まで出し切り、例えば残響成分の丁寧な表現からは、性能の高さと同時に職人技のような芸術性すら感じます。繊細さや精巧さの結晶により音が形作られているHD800に、どこか懐かしさや安堵感、馴染みある何かを感じるのは、日本とドイツの伝統的美意識の共通点によるものなのでしょうか。

shd800_2.jpg基本的なキャラクターとしては、僅かにゼンハイザーらしい陰影と温もり、落ち着きを感じさせるものの、限りなく中庸で味付けを感じさせない音色となっています。HD650譲りの余裕を持って”細かな描写を当然かの如く自然に鳴らす”という芸当は、更に洗練されて磨きがかかっており、HD800を象徴する性質と言っていいでしょう。静寂さの中に多彩な音色が水彩画のように描かれる様から、「日本のヘッドホンメーカーの老舗であるSTAX以外で、日本特有の『侘び』や『寂び』といった美意識を表現できる機種が出てくるとは、、、」と思わず唸らされてしまいました。HD800の内面の描写力の高さによる求心力はピカイチ。

決して音が強い輪郭感を持って強調せず、ガツガツと押しの強いタイプではありません。音の輪郭をハッキリさせて存在感を目立たせるのではなく中身で勝負し、音に芯を持たせることで個々の音の存在感や分離感を実現しています。そのため、ただただサラサラと綺麗な音を垂れ流すことなく、迫力を出すべきところでは鳥肌が立つほどのスリリングさを体感させてくれます。この特徴はゼンハイザーが有する匠の技のひとつで、HD650でも体験することができます。全域に亘って細身で輪郭感が薄く、音がグラデーションのように空間に溶け込んでいくため、音と音、音と空間の融合性やハーモニーが秀逸。全体の音のまとまりが良いのは、低域から高域までの量感バランスが良い証拠でしょう。全ての音が同じ方向を向いて音楽を成しています。

shd800_3.jpg音色はゼンハイザー製品で共通して感じられる若干ダークなもの。ゼンハイザーらしい独特のウォーム感を纏っており、大人の落ち着きを感じさせます。ただし、ゼンハイザー色を全面に押し出しているわけではなく、薄く全体を「安らぎの源」で支配し、クリアーかつレスポンスの良いサウンドに仕上がっているのはHD800独自の特性でしょう。あらゆる面で余裕を持って音を鳴らし、「リッチ」「贅沢」「優雅」という言葉がとてもよく似合います。客観的に見れば、音色に若干のゼンハイザー的な着色を感じますが、実際音楽に集中すれば、これが味付けではなく自然さを感じさせるために必要不可欠な要素なのではないかとも思えてきます。つまり、音色面での演出ではなく、味の素よろしくゼンハイザーの素として、自然感を作り出しているのではないかと、、、そんな妄想が膨らむほどに自然さを極めたサウンドです。僅かな色付けのある音色に対し、鳴り方の面で見ると異常なほどに癖の無いヘッドホンです。音の硬さ、輪郭、響き、音の出方、引き方といった点にわざとらしさが感じられず、これによって非人工的な音、要は原音忠実性の高い音を実現出来ています。個人的には、原音忠実と言うよりも美しく綺麗に聞こえるように音が調整されているように感じますが、原音に忠実か否か、音が調整されているか否かにかかわらず、HD800は「リアル」ではなく「自然」を感じられるヘッドホンだという事実をしっかりと心に留めて欲しいと思います。

shd800_4.jpg音場感は、大きなホール状の空間を形成し、低域から高域までが非常に充実して空間に満ち溢れます。どちらかと言えばスカっとした音抜けの良さよりも、空間の中に音を響かせて間接的に音を聞かせるタイプ。間近で全ての音を隅々までチェックするような所謂モニター的な鳴り方をするヘッドホンとは逆で、音の広がりや響き・余韻を十二分に活かし、コンサートホールのS席の臨場感を再現したかのような贅を尽くしたサウンドを追及したヘッドホンです。目を閉じたならば、空間を満たすサウンドが新世界を創造し、生活感溢れる一室からトリップすることが可能です。ヘッドホンひとつで”場”を造り出すゼンハイザーの空間表現へのこだわり、熱意、探究心に最敬礼。物理的に距離感をおいた位置から音楽を鑑賞するスタイルになるため、ダイレクト感、音楽との距離感、一体感は弱く、言うなればLIVE会場の最前列の熱気を表現することはできない機種です。空間演出力に大きく貢献している"響き"の美しさは一聴の価値有り。

shd800_5.jpgゼンハイザー特有の落ち着いたムードの中で、あらゆるジャンルをそつなくハイクオリティーにこなせる万能型ヘッドホンです。中でも得意ジャンルは叙情性に富んだ楽曲。大味なサウンドでは決して実現不可能な、音色やメロディに宿る複雑に絡み合う感情を表現しきれるヘッドホンで、生きたボーカルの繊細なニュアンスを惜しみなく感じ取ることができるでしょう。艶っぽさや色気といった音色面での後押しは無いものの、素材の味を正直に引き出すボーカル表現力は個人的に有りです。レスポンスに優れておりノリに関しては申し分ないのですが、音が広い範囲で鳴る傾向、音の輪郭が薄い点、音が遠目でダイレクト感が弱い点から、ロックやメタルとの合性は「最高」とは言えず「良い」止まり。また、明るくスカッっと爽やかな、ゼンハイザー色を活かせないタイプの楽曲は明らかに苦手分野でしょう。HD800は臨場感を重視した鳴り方をするため、どのような曲を聞いても若干LIVE音源的な聞こえ方になる点は利点であり欠点で、上手く使いこなす必要がありそうです。特にこの”現場を再現する力”を発揮するのがクラシックで、HD650を経ることでクラシック音楽への対応力は完成の域に到達したように思います。様々なHD800の特徴が、クラシックの良さを引き立てるために調整されているのではないかと勘繰ってしまうぐらいに相性抜群です。ジャズやフュージョン、打ち込み系でも"臨場感"を存分に味わえることから、室内、ホール的LIVE感を再現することには長けていることが確認できますが、野外LIVEのような開放感を出すのは苦手なようです。野外LIVEの醍醐味を味わいたい場合は、素直にGRADOのヘッドホンを使うのが賢そうですね。ともかく、何を聴くにしても贅沢な気持ちにさせてくれる高級料理のようなヘッドホンだと言えます。

shd800_6.jpgオーディオシステムの影響を受けやすいヘッドホンです。まず第一にipodやノートPCに直接繋ぐ場合は音量がとり難いので、ヘッドホンアンプを使用することをオススメします。性能面はシステムのグレードに比例して見事に向上してくれるので、環境整備に力を入れている人にとっていろんな意味で楽しみの多い機種となりそうです。情報量、解像度に関しては、上流機器による差が如実に表れます。また、性能の向上によってクリアーなサウンドになるため、空間の見通しが良くなり音場が広がります。音場感はシステムによって差が出やすい部分のように思います。

ファーストインプレッションで感じた「ゼンハイザーの音だなぁ」という感想が全てを物語っているように思います。ワクワクドキドキテンションが上がり、自ら音楽に乗っかっていくような音ではなく、音楽が体に染み込んでくるような受動的な音。限界ギリギリまで性能を使い切るのではなく、「余裕を持って最高」であるからこそ生まれる貫禄ある音楽性を体験できる、HD800はそんなヘッドホンです。

最後に、HD800によってゼンハイザーの音の方向性が1968年に発売された開放型ヘッドホンHD414の頃から変わっていないのを確認することができました。別の言い方をすれば、オーディオメーカーとして音楽性にブレがないことを確認することができました。この事実から、今後も安定したゼンハイザーサウンドを提供し続けてくれるであろうことを確信できます。誰もが良い音だと思える安定感、ノーリスクの安心感、世界を虜にしたHD650の後を継ぐフラグシップ機として、HD800は一時代を築いてくれそうです。「王道此処に在り」を示すに相応しい音質を備えた名機だと私は思います。


★リケーブル Locus design Hyperion Ag

shd800_7.jpg公開するかどうか未定
とりあえず感想は、良くも悪くもゼンハイザー色が消えます










 

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PICT0134.JPG型番:Edition10
メーカー:ULTRASONE
タイプ:開放型ヘッドフォン
再生周波数帯域:5 - 45,000Hz
インピーダンス:32Ω
感度:99dB
質量:282g(コード別)
ケーブル長:3.0m
プラグ:6.3φステレオ
その他:ヘッドフォンスタンド付属

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 装着感は最高レベル。強すぎず弱すぎず適度な側圧で、上を向いても下を向いてもずれることがなく、長時間つけていても疲れない軽さ、痛くならない頭頂部、蒸れることなく優しくフィットするエチオピアンシープスキン製イヤーパッド、といった具合にどこをとっても隙の無い作りを備えています。開放型の中でも音漏れは激しい方で、小型のスピーカーかと思うぐらいに音が漏れる点には注意が必要。ケーブルは非常に軽量質感がプリプリとしており柔軟性に欠けますが、その代わりに絡まることは皆無です。艶やかに輝く立派な木箱はご愛嬌。箱の底にヘッドホンスタンドが隠されているのでお忘れなく。ヘッドホンのデザインについては好みが分かれそうです。

PICT0136.JPGバランスはフラット個性ある低域と高域の影響で若干弱ドンシャリ傾向に感じますが、量感的には凡そフラットです。基本性能はHigh end of High endと言えるだけの貫禄を感じさせてくれます。特に情報量の多さは圧巻で、音の洪水が空間を埋め尽くし、全域にわたって密で厚みのあるサウンドを形成します余すことなくソースに含まれている音を出し切るので、超微小な音を含めた全ての音に意識が行き渡ります。低い音から高い音まで必要十分に再現可能な帯域の広さは勿論のこと、特に中域から高域にかけての最後まで流れるように伸びきる音は「お見事!」の一言に尽きます。分離感の強さと解像度の高さのコラボレーションは、想像を超える明瞭さを生み出し、細部までクッキリハッキリ描き出します。

音の方向性は、総合的に見て”Editionの音”を継承しているように思います。特徴のある高域と低域、低域から中域にかけての密な音空間、キレ及びハイスピード感クッキリとした音の輪郭自然な鳴りよりも全ての音を細部まで描写しきる顕微鏡のような音作りに”Edition魂”を感じずにはいられません。音に個性を持たせて惹きつけるという過去築き上げてきたEditionスタイルを礎に進化したEditionサウンドとして”ナチュラルな音”、そして開放型でなければ出せない特徴である”音の抜け”や”スケール感”が付加されているのがEdition10です。

高域は、解像度の高さに加え、輪郭感の強さと分離の強さから、細かな音まで潰れることなく正確に描写されます。管楽器や弦楽器では、感性を刺激するようなスリリングさを持ち合わせ、例えばシンバルの音であれば、原音忠実性よりも、人が金属から連想する音にどれだけ近づけられるかを追求したような音をしており、鋭角な金属の粒子が耳を擽り脳に直接訴えかけるような鮮烈、鮮やかな音色となっています。低域は、密度感や粘度、弾力のあるものですが、流石に密閉型のEdition9と比較すると圧力、迫力、力感、インパクトといった部分で物足りないものがあります。しかし、その代償として、開放型でなければ実現できないであろうストレスフリーな音抜けの良さとスケールの大きさを得ています。重心が低くて重く沈み込むような低域ではないので、レスポンスに優れており、全くもたつきを感じません。超ハイスピードかつ鬼のキレを持った低域である点は、Edition10のセールスポイントのひとつでしょうEditionシリーズらしい解像度が高く濃密で実体感の強い低域を感じさせつつ、ノリと言うよりも機械の如く正確無比にリズムを刻む様にある種の物恐ろしささえ感じます。中域は個性的な低域や高域に負けることなく主張感があり埋もれることありません。数々のチェック項目を拾い上げていく中で、ソースに含まれている音の隅々までくまなく意識がいきわたるように調整されたバランス感覚の良さには度々感心させられます。分厚い中域が低域と高域の間に入り、ガッチリと全体を支配、コントロールしているかのようです。

PICT0146.JPG音調は暗くもなく明るくもなく中庸、音色は鮮やかな高域を除けば基本的に味付けがなく無機質でクリア。音の芯、輪郭をハッキリ作るタイプで分離感が強く、ふわりとした軽やかさや繊細さ、角の無い柔らかさ、まろやかさとは逆をいくスタイル。アスリートの鍛え抜かれたしなやかな筋肉、はたまた鍛え上げられた日本刀、そんなイメージを彷彿とさせます。音がカッチリしすぎることがなく、芯に力を秘めつつ音がしなるように躍動する様は、”機能美から昇華された芸術美”とも言える美しさを持っており、この部分がEdition9との違いと言えそうです。各所に特徴ある音を持っているにも関わらず、初めて聞いたときに「なんて生々しい音なんだ」と衝撃を受けたのが面白い点で、艶っぽさや潤い、温もりや暖かさ、柔らかさ、味わい深さといった所謂オーディオ的な美的要素をバッサリと切り落とした結果、生き生きとした現実感のある音を得ることに成功しています。汚い音を素直に汚く、乾いた音乾いて表現できるヘッドホンで、特にその効果が空気感、場の雰囲気(臨場感)などで強く感じられ、尚且つ高い性能も相まって奏者のニュアンスをダイレクトに伝えてくれますここまで音の""の部分を思い切って排除した音作りは珍しく、ある部分ではオーディオ的な癖を持たせつつ、ある部分ではオーディオ的な癖を排除するという、矛盾とも思える音作りが生み出す摩訶不思議な非現実的リアルサウンドに新境地を見た気がします。Edition10は、中庸な音調、無機質な音色から、キャラが無い無個性な音だと判断するか、生々しいリアリティのある音だと判断するかで大きく評価がわかれそうな紙一重の音作りなのかもしれません。

音場感は良好。どちらかと言えばホール的に空間を作るタイプですが、音が空間に満ちる感覚は薄く、むしろ逆に開放的に抜けていく感覚のほうが優勢です。”限りなく開放的なホール”とでも表現したらいいのでしょうか、最後まで綺麗に音が伸びきり、そこまで空間が存在する感覚で、GRADOのような全抜けタイプとは違うものの、絶妙な塩梅で開放感溢れる音をしています。音が満ちる感覚が薄いことからもわかる通り、必要以上に音が響きません。残響成分が少なく敏速にスっと音が引いていきます。この性質レスポンスの良さに影響しており、アナログ的な音の味わいを生み出さない原因でもあるでしょう。空間の広さは録音に左右されるように感じます。クラシックやLIVE音源では広い空間を感じられ、離れた位置から聞いている感覚になりますし、スタジオ録音では間近で聞いている感覚になります。総合的に判断すると、直接的に音を聞く所謂スタジオモニター的な鳴り方に近く、間接的に音を聞くタイプではありません。前後の距離感感じられ、耳の真横ではなくやや前方から音が聞こえますそして、ULTRASONEのヘッドホンの代名詞とも言えるS-Logicテクノロジーについての言及を避けるわけにはいかないでしょう。過去のS-Logicでは、聞き始めの時にグルングルンと回るような感覚があり違和感を覚える人もいたかと思われますが、S-Logic plusになった影響か、開放型である恩恵か、以前のような不自然さは無くなり、より自然な空間表現力を得ているように感じます。また、定位感が良く、各楽器、ボーカルの位置が手に取るようにわかります。音抜けが良いので、耳への負担が少なく、長時間聞いていても耳が疲れない点は隠れた嬉しいポイントで、装着感、音の両面で、長時間のリスニングに適したヘッドホンだと言えそうです。

PICT0140.JPG得意ジャンルはオールジャンル。ゆったりな音楽、激しい音楽、クラシックやジャズからメタルや打ち込みまで、個人的には全てを気持よく聞くことができますこれでもかと素っ気無く鳴らすことが、これでもかとリアリティを生み出します。ボーカル、楽器、全てにおいてリアル。正確には擬似リアルと言うべきかもしれません低域や高域に特徴があり、原音忠実性など語れるような音ではありませんが、それでも音にリアリティを感じ取れるということは、音楽性の再現度が高いからではないかと思います。全ては応答速度の速さによる優秀なリズム感によるもので、それによって直球で音楽を伝えてくれるため、ジャンルを問わず何を聞いても楽しく、そして音楽とのシンクロ率が高いように感じます音質的には、乾いた音、例えばハスキーな声質をこれほど上手く表現できるヘッドホンは他にないのでは?と思わせるほどに再現度が高く、それは管楽器や弦楽器等でも同様です。これは、素材による音の癖を上手く抑えているからこそ実現できているように思います。甘美な音色で人を惹きつけるのではなく、レスポンスの良さ、リズム感でグイグイ引っ張っていくタイプのヘッドホンです。どうしたって味わいのある音を出せないヘッドホンですが、それだけに嫌味が無く、飽きのこない何時間でも聞いていられる音を持っています。

久しぶりに驚きを与えてくれたヘッドホンで、今までに聞いたことの無い新しい音でした。リズム王の称号を得るに相応しい最高峰の応答速度を持った機種なので、キレ重視な人、そして音に色づけをしたくない人にオススメです。自然さを追求したような音ではないので、その点は注意が必要です。途中でも述べましたが、長時間使用していても全く耳が疲れないのは驚くべきことで、これほど耳への負担の少ないヘッドホンは初めてのように思います。値段相応の価値があるのかと言われれば、そこはオーディオの世界、人によりけり何とも言えない部分ではありますが、少なくとも私は購入して良かったと満足感を得ることができました。
 

★エージング

エージングの進行度によって音の印象がずいぶん変わっていくヘッドホンのようで、音が落ち着くまでに時間がかかりました。E
dition9もずいぶん音が変化していく機種でしたが、Edition10はそれ以上に変化が大きいように感じます。

・初期

弱ドンシャリ。全ての音をハッキリと認知できる優れたバランス。音が凝縮されていて密で濃く、edition9のような音をしています。驚くべきは開放型とは思えないほどにビシっと締まっていて制動が効き、キレキレで超速な低域。高域は適度に輪郭がクッキリしていて金属質。中域もよく前に出てきます。開放型らしい綺麗な音の広がりはあまり感じられませんが、この時期は凝縮された音の圧力、パワーが気持ちよく、音抜けが良いので耳への負担もなく、ある意味良いこと尽くめの音だったりします。edition9に空気感を+αしたような音で、この音は最初期でしか味わうことができない貴重なものです。

・中期

徐々に音がほぐれていきますが、様々な部分で音が暴れだします。この頃から長時間高域がシャリシャリと癖のある時期が続きます。この擦れた感じは楽器の音だけでなく空気感にまで影響します。特にボーカルのカサカサ感は酷いものです。全体的に乾いていて粗く、低域がスッカスカになり出なくなると同時に、刺激的すぎる高域の主張が激しく、高域寄りのバランスへ変化します。バランス、音色など全てにおいて、この時期の音は本当に酷く、聞けたものではありません。
 

・後期

その後、徐々に低音が回復しながら、音のトゲトゲしさが収まっていきます。低域の量感は割りと短時間で回復します。高域のシャリシャリ感は長時間続くものの、次第に落ち着いていき、ピークの時からは想像できないほど高域の刺激は消えていき、最終的には痛さを感じることは無くなります。そこからさらに鳴らしていくと、音の硬さが取れていき、音にしなやかさが生まれてきます。また、音の繋がり、まとまり感が出てきて一体感が向上し、僅かに残響成分が増えてきます。そしてレビューのような音へと落ち着いていきます。

ULTRASONEのヘッドホンはエージングに200時間」という一種のネタとして確立しているような一文があります。私自身、これはネタでも誇張表現でもなく、過去の経験上「確かに200時間は鳴らしてから評価したほうがいいのかな」と思います。それぐらい長時間経過してから音がまとまってくるわけです。途中、お世辞にも良い音とは言えないような音になる期間もあります。それだけに、早期に評価を決め付けてしまうのは、Edition10にとって酷な仕打ちとなるので、暖かく長い目で見守ってあげてください。

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sPICT0120.jpg型番:PS1000
メーカー:GRADO
タイプ:開放型ヘッドフォン
ハウジング:アルミ&木製
再生周波数帯域:5 - 50,000Hz
インピーダンス:32Ω
感度:98dB
質量:-----
プラグ:6.3φステレオ

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GS1000同様イヤーパッドが直接耳に触れることがないので、ザラザラとしたパッドの質感によって耳がヒリヒリと痛くなることはありません。ヘッドホン界最高峰の重量は相応の覚悟が必要で、頭頂部が痛くなることはないのですがひたすら重いです。重さに耐えながら音楽を聴く必要があり、決して快適なリスニング環境とは言えません。前傾姿勢になると重さでヘッドホンが落ちてくるため、机に向かいながらのリスニングも不可能です。また、開放型ヘッドホンの中でも音漏れが激しい部類に入る点も注意が必要です。

 
sPICT0121.jpg形状はGS1000と同じですが、その音はずいぶんと違います。GS1000がRS-1の系譜ならば、PS1000はPS-1の系譜。基本性能はハイエンドと呼ぶに相応しいレベルを有しており、レンジの広さは特筆に値します。
バランスは低域寄り。ソースによっては過剰なまでに強烈な低域となり、低音が空間を支配し陶酔感は抜群。私の場合低音過多に感じますが、低域好きの人からすれば丁度良い量感に感じるのかもしれません。重心が低く、高域が地味目で低域重視なバランスはPS-1と酷似しています。また、音が「重い」点もPS-1に通じるものがあります。この「重さ」がPS1000最大の持ち味だと私は感じました。GS1000も低域の量感が非常に多く、インパクトの強い低域を持っていますが、GS1000の音には「重さ」がありまsPICT0124.jpgせん。音に「重さ」が加わることによって、よりPS-1に近い低域に仕上がっています。GRADO特有の空気感を強く纏っている点もPS-1との類似点でしょう。音に「重さ」が宿ったことによる相乗効果として、密度感、安定感、濃さ、実体感が強くなっており、その反面、軽やかさ、透明感、開放感といった要素は減退、エレガントな表現は苦手分野となっています。へヴィさ、ダークさ、ゴリゴリ、ブリブリとした音を遺憾なく発揮できる音作りとなっており、モダへヴィ系、ドゥームメタル、ブラックサバスを起源とするストーナーロック等の世界観にこれでもかと合致するように思います。RS-1等の機種と比較すると、音と耳との距離が多少あるため、ダイレクト感、音と身体の一体感は減少。その代償として音場感を得ており、音の広がり、ハーモニーの形成といった面は向上しています。これらの要素を統合して、決してブーストしたような安っぽい低域ではない、質の高い低域に酔える機種となっています。edition9のような直接的リアル志向な音とは違った間接的リアル志向を感じられ、空気を伝わって聞こえてくるあのLIVE感を味わえます・・・が、そのようなイメージを具現化すべく作られた非リアルサウンドだとも言えます。金属と木のハイブリッドハウジングの恩賜を受け、音は硬すぎず柔らかすぎず、どちらかと言えばガッシリとした音寄りに位置しています。GS1000やRS-1と比べると音の味わい、潤い、艶やかさに欠けるため、枯淡な音質になりがちで、甘美なボーカル、ピアノや弦楽器の音色を求めるのは酷かもしれません。揺らぐような8の字的ノリを持ったGS1000に対し、PS1000は縦ノリ、もたつくことのないキレと重さを両立した類稀なる低域を持っています。
 
sPICT0122.jpg得意ジャンルはへヴィーメタル全般。中でもダウナー系との相性は最高です。寂寥感に満ち、懊悩する日々を過ごすあなたを、絶望的なまでに奈落の底まで叩き落してくれるサウンドをPS1000は与えてくれます。パンテラ、スレイヤー、テスタメント等も激しくへヴィに聞けます。へヴィであればあるほど相性がよく、正統派メタル、明るく陽気なメタルになるほど相性が悪くなっていくヘヴィネスヘッドホン。ヘドバンしながら聞きたいところですが、ヘッドホンが吹っ飛んでいくので厳禁です。アメリカンサウンドはGRADOの下位機種のほうが上手く表現できているように思いますし、味のある音を求めるならRS-1やGS1000、キレや疾走感が大事なメロディックスピードメタルを堪能するのであればSR-325系と、ジャンルに合わせて上手く使い分けたいところです。メタル以外は正直微妙で、おそらく音に味付けが少ないのが原因だと思われます。かといって無機質な打ち込みが合うのかと言えばそんなことはなく、空気感がストレートな明瞭さを邪魔してしまっていまいちです。個人的にはGRADOで打ち込みは相性が悪いように思いますが、ノリの良い機種なので良いと感じる人も多いでしょう。こうして見ると、あまり多様に使えるヘッドホンとは言えず、万能タイプではない個性派ヘッドホンというのが私の結論ですが、このあたりは嗜好が強く反映される部分なので、オールラウンドに使えると判断する人も多いことでしょう。
 
最後に、伝説の名機PS-1とよく似た音に出会えたことを嬉しく思います。低音重視のヘッドホンは数あれど、このクオリティーで、この空気感を纏った低音はGRADOでしか出せないでしょう。重さという船を、ダークな方向へ舵をきるか、へヴィな方向へ舵をきるか、どちらへ進んでも極致へと誘ってくれるだけの能力をこのヘッドホンは持っています。レビューの内容から、ダークな印象ばかりが目立ってしまっていますが、アンプで音に味わいを付加させてあげることで様々なジャンルに対応できるようになるでしょうし、逆にカッチリと音を固めて重く鋼鉄なサウンドを追求するのも面白そうです。このあたりはお好みで調整してみてください。また、経験上バランス化することで、音がガシっと安定、制御される傾向があるので、バランス化によって更にメタルの良さを引き出せるようになるのではないかと思います。これで重量が重くなければ最高だったのですが・・・難しいものですね。

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s-PICT0015.jpg型番:ATH-A2000X
メーカー:オーディオテクニカ(Audio-Technica)
タイプ:密閉型ヘッドフォン
ハウジング:チタンハウジング
再生周波数帯域:5 - 45,000Hz
インピーダンス:42Ω
感度:101dB
質量:298g
ケーブル長:3.0m
プラグ:標準/ミニ金メッキステレオ2ウェイ

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オーディオテクニカの他のウィングサポート型ヘッドフォンと比べると重量が軽く、側圧が緩めでスカっと装着する感じになります。軽いので長時間使用でも首が疲れないのは良いですね。見た目はメタリックで先鋭的。Wシリーズとは対照的な美を感じます。

48370f16.jpeg基本性能は価格なり。情報量とレンジ感は少し物足りないように思いますが、解像度は聴覚上良く聞こえるような音作りがされています。バランスはフラット~高域寄り、癖の強い高域の影響で少し高域寄りに感じます。低域は緩みの無い程度に締まっており、それなりにレンジも広くそこそこ重みとキレのある良質な低域を聞かせてくれます。高域の癖が強く、これがATH-A2000Xの一番の特徴だと私は感じました。乾いたような、そして熱さの無い冷徹さを持っており、響きは付帯音的な響きではなく、高域の芯のみを取り出して増幅して鳴らすような、ある意味直球勝負とも言える高域です。他のヘッドフォンではなかなか聞くことのできない特殊な高域で、「チタンの癖の乗った高域」とでも表現しておきます。チタン製インシュレーターで感じることのできる高域の癖と同様のものが感じられます(余談ですが私はこのチタン特有の14ef3fc3.jpeg響きが受け入れられません・・・)。中域は低域や高域と比べると多少温もりが感じられるように思います。それはVoでよくわかり、意外と肉声的な声を味わえます。全体的に見た時に、「クリアーに綺麗に聞かせる」、そんな印象を受けました。明瞭な音ではあるものの、決して陽のイメージにならず、落ち着き、冷たさ、冷静さ、そんな中に温もりを垣間見れる大人なサウンドです。音の色づけは無いと言ってもいいほどで、このあたりはWシリーズと対照的です。甘さや艶っぽさ、煌びやかさを抑えて中庸な音を目指しているように思います。響きが控えめで線が細く、厚みはあまり感じられないタイプ。音の分離感が強く、特に高域はかなり輪郭がハッキリしており強調されます。オーディオテクニカらしからぬどちらかと言えば音像型の鳴り方な点は興味深く、分離感を重視しており、それによって距離感を出しています。その影響で横方向は狭いものの、前方方向への奥行き感を作ることに成功しており、この鳴り方は一般的な臨場感を重視したオーディオテクニカのヘッドフォンと一線を画します。ULTRASONE的な音場を好む人はすんなり馴染めると思います。音の立ち上がりは遅くもなく速くもなく、それほどノリが良いわけではありません。

パっと聞いて「高音質」だと思わせるような音に仕上げたのかな?と想像できます。決して「高音質=良い音」ではありませんが、高音質だと感じられることは音の判断材料の中で大きな支配力を持っている要素ですから、「長期的に数を捌くためによく考えられた音作りだな」・・・そう感じました。一言で言えば「Aシリーズらしい音」です。この路線でハイエンド機種並の性能を身につければ、オーディオテクニカと言うよりは某ハイエンドヘッドフォンのような音になるのでは?なんて思ったりもしますね。私の本音の評価は、「商業的には名機、オーディオ的には迷機」です。弦楽器が上手い、のようなピンポイントな売りがあるわけでもなく、ヘッドフォン一本でオールジャンルを高音質で楽しみたい人向けではないでしょうか。

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s-PICT0091.jpg型番:SR-404 LIMITED
形式:エレクトロスタティック型プッシュブル
再生周波数帯域:7 - 41,000Hz
感度:100dB/100V r.m.s.
静電容量110pF
ケーブル長:2.5m
質量:約472g

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SR-404とほぼ同じ音なので事前にSR-404のレビューを一読してからSR-404 LIMITEDのレビューを読んで頂けたらと思います。

SR-404との違いはイヤーパッド、ケーブル、色。音の違いはイヤーパッドと線材の違いによるものでしょう。イヤーパッドは皮製になりピトっと肌に吸い付き音が逃げにくくなっています。装着感が向上しており、耳にイヤーパッドが密着するので安定感も増したように思います。なにより色が茶色からブラックになったのが個人的に一番嬉しいポイントです。

以下は「SR-404 LIMITED + SRM-007tA」という組み合わせでのインプレとなります。

s-PICT0068.jpg初めに書いた通り、基本的にSR-404と同様の鳴り方をします。同じと言えば同じと言えますし、違うと言えば違うとも言える微妙な違いです。SR-404はサラサラとしていて力感や迫力、圧力が弱く、緩くて音にどっぷり浸かるような感覚を持ったヒーリング王のようなヘッドフォンです。対してSR-404 LIMITEDは適度に音が引き締まり、多少音に輪郭が生まれ、低域に僅かな力感、そしてアタック感が出せるようになっています。また、SR-404ほど繊細さを押し出した音ではなく、スイっと1本芯が通ったような音で、何でもかんでも綺麗に聞かせてしまうSR-404と違って微妙に粗さの表現も出来るようになったように思います。この変化は特に高域で感じられ、繊細さよりもツイっと端整で凛々しいといった印象のほうが強く、エッジ感も感じられるようになっています。基本性能や音場感、音の立ち上がりの速さは同等、相変わらずの高速な音の立ち上がりでモタつきを感じさせない点は流石コンデンサー型だと唸らされます。

d977a57f.jpegSR-404と比べると適応ジャンルが増えたのではないでしょうか。流石にクラシックでは音場の広いSR-007Aのほうが有利だとは思いますが、それ以外のジャンルであればSR-404 LIMITEDを使うという人も多く現れてくるように思います。SR-404 LIMITEDは「シャンとしなさい!」と言われて気持ちピリっとしたSR-404といった感じで、ロックなんかも結構上手く良さを引き出せるようになったのでは?と思います。緩さを感じ無いという意味ではSR-007Aと似ていますね。ただし、注意してほしいのはSR-404と比べての話であって、ダイナミック型を含めたヘッドフォン全体で相対的に見ればとてもピシっとしたメリハリのある音だとは言えません。基本となるのはコンデンサー型らしい全体感の強い力感や圧力、エネルギー感の弱い音です。

SR-404と使い分けが出来るか?と問われれば・・・沈黙をもって回答としたいのが正直なところです。使い分けるほどの差は無いと私は思うので、「これぞコンデンサー型!」といった音を望むのであればSR-404、「ちょっとだけでもいいからダイナミックさが欲しいかも?」といった場合にはSR-404 LIMITEDを選択するのがいいように思います。

それにしても聞くたびに思いますが、コンデンサー型ヘッドフォンからは本当に聞き疲れのしない肩の力を抜いてず~っと聞いていられるような音が出ます。これこそがコンデンサー型の特権、STAXが唯一無二の存在でいられる絶対的な理由でしょう。変な誇張や癖がなく自然に音を聞かせることに関しては群を抜いていますね。

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プロフィール
名前:
まみそ
競馬:
性別:
男性
「まみそぶろぐ」って何?:
ヘッドフォンやオーディオアクセサリーの感想などを筆ペン先生がぶった斬るWebサイト。
軽く自己紹介:
「永遠のオーディオ初心者」「糞耳筆頭」「ケーブル患者」「アクセ馬鹿」かつ「競馬中毒者」です!よろしく!








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