★Captain
ローゼンクランツのスパイク受けインシュレーターCaptain。
Point BasieとGiant Baseの間に位置する製品。
Giant Baseはちょっと高すぎる・・・、といった方にも入手しやすい価格設定になっている。
Captainの構造はインシュレーターのPB-COREによく似ている。
階段構造になっており、「きれいな音だけではなく、激しい音や汚い音をも含めて”全ての音を開放する”」ことをテーマとしている。
このコンセプトはPB-COREそのもの。
PB-COREは、私が最も衝撃を受けたインシュレーターで、そのエネルギッシュさもさることながら、なんとも生々しいエレキギターサウンドに驚かされたものだ。
歪んだギターの音を見事に再現してくれており、こんな音が出たのは初めての体験だった。
「綺麗な音に仕上げることがオーディオ」という概念をぶち壊した作品である。
オーディオの音に慣れてしまうと忘れがちになるのが生の音。
生演奏の音には、時に乾いた音、擦れた音、歪んだ音などが存在する。
このような音も全て含めてリアリティを生み出すのではないだろうか。
全てを吐き出すというPB-COREと同じコンセプトを持ったCaptainの実力や如何に。
★Captainインプレ
まず初めに、ジャズボーカルの音源を鳴らしてみた。
最初に低音の質の違いに気を取られたが、直後にボーカルの存在感に驚かされた。
よく言われる「スピーカーが消える」という表現の意味はこのことか・・・一人で納得。
スピーカーから音が出ている感覚が極めて薄く、「目の前に人が居て歌っているのが見える」感覚。
ボーカルや楽器だけに限らず、例えば川が流れている音が入っている音源であれば、目の前に川があって水が流れているように感じられるぐらいに実在感、存在感のある音がスピーカーから出てくるのだ。
空間表現力が上がったと言ってもいいだろう。
空間の中に音像を作り上げ、存在させる力、場の再現能力。
「場」「空間」といった音楽が奏でられる雰囲気を見事に部屋に具現化してくれる。
今まで以上に部屋を使って音が鳴っているという点も見逃せない。
特に低域の重心が下がり、上から下までを大きく使って音楽が鳴るようになり、これがスケール感のUPに繋がっている。
次に好きなクラシックのひとつである「ラフマニノフ / ピアノ協奏曲第3」で試聴。
この曲で感じたのは、音の膨らみのバリエーションの向上。
こんな表現は今までしたことがない。
初めての経験だ。
少なくともヘッドホンでは一度も感じたことがない感覚。
部屋全体で音を鳴らすスピーカーならではの変化だろうか。
「こんな音の変化の仕方もあるのか・・・」と、オーディオマニア心を擽られる。
ストレートに音が伝わってくる楽器と、ぶわっと広がって音が伝わってくる楽器があるが、その音の膨らみ具合の違いがわかるようになった。
これは管楽器だけに限ったことではなく、例えばピアノでも同じことが言える。
弦をハンマーで叩き、空気が振動して音が伝わる、その音の振動がピアノの筐体に伝わり、更に外へ音が伝わっていく。
その音の振動の経過が感じ取れると思ってしまうぐらいに、空気を伝わる音の振動の強弱、柔と剛の表現力が高い。
この効果が一番影響を与えているのが音のリアリティ。
よりピアノはピアノらしく、より管楽器は管楽器らしく鳴るわけだ、ボーカルもしかり。
音色ではなく、音の広がり方、空気の震わし方、音の伝わり方、こういった面でリアリティのある音へ持っていくパターンは新しい経験だったので斬新かつ新鮮であった。
空間表現力(実在感)の向上、多彩な音の膨らみ方によるリアリズム。
この二つの変化が大きいだけに後回しになってしまったが、PB-COREの経験から今回一番期待していたのは音色の変化。
この点は期待通りで、音の艶っぽさ、甘さをずいぶん消すことができた。
味付けの無い音へ少し近づくことに成功。
ローゼンクランツの支配率が高まれば高まるほどに音色の演出された色気は消えていく。
当然、音を作るというのはオーディオの醍醐味のひとつであり、とろりと甘く艶やかな音も魅力的。
しかし、ローゼンクランツに関しては、PB-REX Ⅳのような例外を除けば甘い音にはならないので人によっては注意が必要である。
次に、音色の多彩さを確認するためへヴィーメタルを試聴。
ギラつくエレキギターサウンド、ノリの良さ、アタック感などを確認する。
やはり、まず最初に驚かされたのは低域。
バスドラの音の響き方が格段に良くなった。
ドラムを打つ時のアタック音、その響きの再現度が凄まじく高い。
あえて強調させてもらうが、この打音のリアリティは誰もが驚くのではないか。
今まで書いてきたことを全て踏まえて、低域の変化が一番分かりやすくて意識がいきやすいようだ。
この低音のスケールの大きさは、完全にヘッドホンの枠を超えたものであり、スピーカーシステムを導入して良かったと改めて思わせてくれた。
私の中で、「この楽曲を上手く鳴らせればゴール」というものがある。
それがへヴィーメタルの王道ジューダスプリーストの名曲ペインキラー。
この曲に関しては、ヘッドホンで到達することが出来た理想の鳴り方にまだまだ届かないと感じたのが正直なところ。
これぞメタルと言えるような金属的なギター音をまだ出せていないし、攻撃的な縦ノリも納得いくレベルに達していない。
そして、バスドラはもっとスピード感とキレが欲しいし、なにより音のタイミングがもっとビタっと揃って欲しい(音の統一感、体との一体感)。
このあたりの向上が今後の課題となりそうだ。
余談ではあるが、ヘッドホンの利点は、「耳との距離が近く、音がバラバラにならずに綺麗にまとまる点」だということにスピーカーシステムを体験して気付くことができた。
逆に言えば、スピーカーは全体の音をまとめあげる、そしてタイミングをビタっと揃えるのが難しい。
セッティングの必要がないヘッドホンは、スピーカーとは比較にならないほどお手軽であり、これがヘッドホンの良いところだと思われる。
最後に打ち込みを試聴。
当たり前だが無機質感が最も際立つ打ち込み。
それだけに、甘さや艶が減少したのが一番良く分かる。
電子音がより電子音らしく鳴ってくれる。
しかし心地よい、それは音楽が伝わってきている証拠。
打ち込みというのは、非常に低い低域が入っていたりするため、システムによっては低域がブーストされたようになってしまい不快に感じるケースがある。
しかし、ローゼンクランツの音は、音楽と向き合う時にはグっと心を掴む求心力のあるサウンドでありながら、何か作業をしながら聞くときにはBGMとして聞き流せるような自然なサウンドとなる。
邪魔にならない音、これもまたスピーカーならではの音楽の楽しみ方だろう。
まとめると、音色の味付けを減らし、ソースに含まれる音をそのまま引き出せていると言えそうだ。
最近のローゼンクランツの製品は、このようなあるがままを全て出す傾向が強まってきているように感じる。
インシュレーターだけでなくケーブルも同様。
そのため、全てのジャンルに対応できる(どんなジャンルでもその良さを引き出せる)ようになってきている。
「音楽」を見据え、音楽の要であるタイミングを極め、奏者であり製作者の意図を聴き手へ伝える。
これがローゼンクランツの意思。
★総評
Captainの導入、結果は大成功。
何が変わったんだろう?
と聞かれれば、なんとも返答できないような不思議さが毎度お馴染みローゼンクランツの特徴だが、Captain導入による音の変化を一言に集約するなら「本物っぽくなった」ことに尽きる。
ギターはギターらしく、ピアノはピアノらしく、ドラムはドラムらしく、打ち込みに本物も何もあったものではないが、打ち込みは打ち込みらしく。
個人的には、特に音の響きにより生まれるリアルさというのが大収穫だったように思う。
軽視されがちなスパイク受けというオーディオアクセサリーは、なかなかどうして侮れない存在であった。
ヘッドホン、イヤホン、アンプ、ヘッドホンケーブル大放出!ヘッドホンを売るのはコレが最後になりそうです。興味のある機種などありましたらお気軽にご連絡ください。よろしくです。
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