型番:SRM-007tA
メーカー:STAX
メーカー製品紹介ページへ
型番:SR-007A
形式:プッシュプル・エレクトロスタティック・イヤースピーカー
再生周波数帯域:6---41,000Hz
感度:100dB/100Vr.m.s. 入力/1kHz
標準バイアス電圧:580VDC
コード材質:幅広低容量6芯平行コード
コード長:2.5m、PC-OCC
重量:365g(本体のみ)
メーカー製品紹介ページへ
装着感が良く何時間使用しても痛さ、疲れはありません。見た目とは裏腹に重量が軽く、首が疲れることもなく快適です。ラムスキンのイヤーパッドのフィット感は良好ですが、蒸れやすい点は注意が必要でしょう。奇抜さの無いシンプルなデザインは「余計な装飾はいらないのだよ」といったオーラを発しており、ヘッドフォン界の王者として十分な貫禄を漂わせています。価格相応の高級感に溢れ、所有欲を満たしてくれるように思います。
以下は「SR-007A + SRM-007tA」でのインプレとしてご覧ください。おそらくドライバー(やその他環境)によって鳴り方が変わってくるはずです。今回は欠点だと感じる要素を環境側の調整で改善し、「SR-007A + SRM-007tA」の組み合わせにおいての音の方向性での完成度を限りなく突き詰め、納得できる音質にした状態でレビューしましたので、「これだけの音が出せるポテンシャルを持っている」といったニュアンスで読んで戴けると幸いです。決してドライバーをポン置きでこのような音が出るわけではないのでご注意ください。トランスポートからDACまではダイナミック型ヘッドフォンのシステム(まみそのオーディオ環境参照)と同様です。
まず初めに、「SR-007Aはヘッドフォンにあらず、イヤースピーカーである」といった印象を持ちました。音量が上がっても、音数が増えても、コンデンサー型ヘッドフォンはダイナミック型ヘッドフォンを含めた上で相対的に見たときに音圧が弱く、この特性に加え、SR-007AはSRS-4040と比べると音場が広く、と言うよりは音が遠いため、耳への負担が更に弱いです。まるでスピーカーで音楽を聞いているかのような間接的な音楽鑑賞の感覚を「音の感じ方」の面で味合うことが可能で、これはダイナミック型ヘッドフォンではどうあがいても実現不可能な鳴り方であり、コンデンサー型ヘッドフォンの最大の強みであり弱みでもあります。そして、これがコンデンサー型ヘッドフォンを好むか嫌うかの分かれ目でもあります。そのため評価が真っ二つに割れる可能性が高く、好きな人はとことん好き、嫌いな人は受け付けない鳴り方をする、そんなヘッドフォンだと思います。
性能は総じて高いと言えますが、部分的に見ると物足りない部分もあります。現在では高性能なダイナミック型ヘッドホンがいくつも存在するため、性能面においての優位性が大きいとは断じて言い切れない現実があります。とは言っても、超低域から超高域まで余すことなく出し切るレンジの広さは流石の一言に尽きますし、解像度、情報量共に高いレベルにあります。しかし、「どこまで細かな音まで知覚しやすいか」といった少し斜めからの見方をするならば、SR-007Aはそれほど高い能力を持っているとは言えません。これは、音にエネルギーがしっかりと乗り、微小音でも独立し主張感の強いダイナミック型ヘッドフォンと違い、コンデンサー型ヘッドフォンでは全面で鳴る傾向が強いため、微小音の実体感であり存在感が弱い傾向があるからでしょう。このような理由から、コンデンサー型ヘッドフォンは微小音まで余すことなく全て感じとりたい場合、または全ての音を手に取るように知覚したい場合にはあまり適したヘッドフォンとは言えないのかもしれません。この特徴について別の捕らえ方をしてみるならば、全体で鳴る傾向が強いコンデンサー型の鳴り方があるからこそ、統一感のある自然なサウンドだと言えそうです。ただし、これは真空管を使用したSRM-007tAでの音であることを忘れてはなりません。ドライバーをSRM-727Aにしたならば、各音の輪郭が明確になり主張感が強まり、また違った表情を見せてくれることでしょう。
バランスはフラット。ただし、低域と高域の存在感が強いため、感覚的にはフラット~ドンシャリに感じます。低域は質、量共に素晴らしく、ダイナミック型ヘッドフォンと比べれば実体感やエネルギー感、音圧の弱さを感じるのは否定できないものの、「深さ」「重さ」「濃さ」をこれでもかと出せる濃密かつ深く沈み込む説得力のある低域です。グっと凝縮された低域に緩さは感じず、程よくアタック感、実体感も感じられます。最大の特徴であり利点はGRADOのヘッドホンのような空気をたっぷり含んだ「LIVE感溢れる低域」を聞かせてくれる点でしょう。また、実体感が強いとは言えませんが存在感の強さは高く評価したいところです。加えて、全体で言えることですが、音の立ち上がりが非常に高速なため、このような重く質量感を感じる低域でありながらキレがありハイスピード感を味わえる低域となっています。勿論「SR-007A + SRM-007tA」が持つ響きを活かした豊潤さは言うまでもなく優れており、この特徴はLIVE感を出すための重要なピースであることは疑いようもありません。中域は存在感抜群の低域に負けることのない濃密さと厚みを持っており、音が空間に満ち溢れ、情報量の多さを存分に味わうことができるでしょう。臨場感重視で全体感が強いため、音に包まれるような、もしくは音にどっぷりと浸かるような感覚で音が鳴ります。ストレート、直接的に音が飛び込んでくる感覚を味わえるタイプのヘッドホンではありません。高域は果てしなく伸びきり刺激とは無縁。基本的に繊細だと言って間違いは無いのですが、SRS-4040と比べるならば、エネルギッシュで音のエッジも感じられ、SRS-4040のような綺麗一辺倒ではなく多少粗さも表現できます。とは言っても、音の粗の表現が苦手なのは確かで、なんでもかんでも綺麗に鳴らしてしまう点はコンデンサー型ヘッドフォンの利点であり欠点でしょう。音のエッジ、粗さ、鋭さ等の表現力はダイナミック型ヘッドフォンに比べれば劣ると言わざる得ません。これは高域でのスリリングな緊迫した緊張感、雑味からくる荒々しい野性的な躍動感などを出せないことに繋がり、特にロック、HR/HMといったジャンルの良さを殺してしまっているように思います。
全体の鳴りの方向性としては臨場感重視、ホールで聞くような鳴り方をします。「場」の雰囲気をこれほど忠実に再現できる機種は他にないと言ってしまっても過言ではないでしょう。場の再現性は、「これぞコンデンサー型の真骨頂!」と思わず拍手をしたくなるほどです。音をハッキリと分離せず、全体の音の繋がり、音の調和を重視した鳴りであるのはSRM-007tAの真空管による影響が強く出ているのかもしれません。この全体で聞かせる臨場感重視の鳴りはSRS-4040と同様です。また、全域に渡って歪み感が皆無で、体にスーっと浸透してくるような聞きやすい音なので、心地良く音楽を聞ける部類に入ると思います。反面、躍動感、ダイナミズムを出すのは苦手としているようで、音の抑揚をあまり感じられるタイプのヘッドフォンではありません。これはSRS-4040でも同様で、コンデンサー型ヘッドフォンの特徴なのでしょう。開放型らしい抑圧の無い綺麗に音が広がる音場を形成し、全体的に全ての音が少し距離をおいて鳴るように感じます。全面で鳴る傾向が強いため、上下前後左右あちこちから音が鳴るような立体感を出すのは苦手なようです。響きは適度、過剰に響きが乗ることはなく、響きに味付けとして艶が付くこともなく極めて自然でニュートラルな音色、響きを持っています。
コンデンサー型ヘッドフォンの音が好きな人であれば何でも気持ちよく聞けると思います。しかし、私の正直な気持ちを書かせてもらうなら、クラシック及びLIVE音源以外では使う気にはなりません。極端な言い方になってしまいましたが、言い換えれば、それぐらいクラシック音源との相性に特化しているということです。SR-007Aの良さは優れた臨場感、言い換えればその「場」の雰囲気を上手く伝えてくれること。臨場感を発揮させるという目的のためであれば、分離感の弱さ、音圧や力感の弱さといった欠点が利点へと好転し、加えて超微小音まで知覚しにくいという点も、むしろ臨場感という視点から見れば自然かつリアルだとも考えられます。LIVEで細かな音まで注意して聞いている人がいるでしょうか、LIVEとは場の雰囲気、全体の一体感を感じられるのが醍醐味だという考え方があってもいいように思います。一方、スタジオ録音の音源ではSR-007Aの魅力は半減してしまいます。何でもかんでも綺麗に鳴らしてしまい音の粗さを出しにくいため、ロックやジャズには合わないように思いますし、実体感や力感、エネルギー感のことを考えると打ち込みとの相性にも疑問が出てきます。また、ボーカルモノであるならば、音が近いSRS-4040のほうが良いでしょう。
まとめに入る前に、SR-007A、環境側の影響を強く受けるヘッドフォンのようです。つまり、環境によってはレビューの内容とは異なる音が出ると言い切れます。それは今回私が欠点だと感じた部分の改善が十分可能であることを意味し、逆に言えば私の環境では出なかった新たな欠点が出てくる可能性も含むわけです。自分にとってベストだと思える鳴り方を環境側で調整して探してみて欲しいと願います。
ヘッドフォンの終着点と考えている人も多いであろうSR-007Aですが、コンデンサー型ヘッドフォンということでダイナミック型ヘッドフォンの延長と考えてはいけません。なぜなら、根本的に鳴り方が異なるためです。最大の利点であり欠点であるのはやはり力感、エネルギー感、音圧、実体感の弱さでしょう。わかりやすい例えを出すと、プログレッシブロックのタイフォンというバンドのアルバムの中で、自然音である雷の轟音が鳴り響く部分があるのですが、ダイナミック型ヘッドフォンであれば体に電気が走るかのようにゾクゾクビリビリと身震いするかのような感覚を味わえるのに対し、コンデンサー型ヘッドフォンでは音がスーっと体に染み込んできてしまいます。音の実体感が弱く、音圧が弱く、エネルギー感が弱いのが原因です。初めに書いた「SR-007Aはヘッドフォンにあらず、イヤースピーカーである」という表現がコンデンサー型ヘッドフォンの全てを物語っているように思います。コンデンサー型ヘッドフォンは一見癖がなく無難なようで実はとても個性的な音なのではないか、とも思います。なにしろ鳴り方そのものが特異ですから。そういった理由から、あまり万人にオススメできるようなヘッドフォンではないと個人的には思います。要試聴、この鳴り方が好きな人であればこれ以上のヘッドフォンは存在しない、それだけのクオリティーを持った最高峰のヘッドフォンです。絶対的にダイナミック型ヘッドフォンと音が被ることが無い貴重な音を出せるヘッドフォンですので、STAXには末永く製造し続けていって欲しいものです。
それにしても、まみそさんのような意見が出てくると、コンデンサー神話の終焉みたいのを感じてしまいますね。昔はコンデンサーはダイナミック型と一線を画する別格の音といった感じでしたから。
コンデンサーって言ったら僕がヘッドホンを始めたころは憧れでしたし、あまり考えたくはないのですが…
ところで、写真のクオリティが上がりましたね。カメラ変えたのですか?
フラッシュたいているみたいですが、室内でもフラッシュなしで、露光時間を上げてISOを下げてやると低ノイズでものすごく綺麗に取れますよ。
ただし、スタンドが必要なのと動く被写体にはむきませんけど。
辛口レビューなのは自分でもわかっているのですが、私にはこれが限界です。
コンデンサー型が苦手な人だとこんなレビューになる、ってことですね。
これはこれで良い一例になるのではないでしょうか。
確かに727だと改善される部分もあると思いますが、それ以上に失う部分の方が多いようにも思います。
私的にはコンデンサー型使うなら思いっきりコンデンサーらしい4040のほうが吹っ切れてて好きですね。
総合的に見たら好み的には五分五分ですが。
>カメラ
気付いてくれて嬉しいですw
最近の記事は新しいカメラで撮ったものです。
仰るとおりで、部屋が暗いのでいつもフラッシュたいています。
ISOはオートになってます、スタンドがないので露光時間上げるとブレブレになるので無理ですw
室内で綺麗に撮るための細かい調整は少しずつ試していきたいと思ってます。
なんかあれですね、オーディオ好きとカメラ好きは結構かぶってますね。
逆にあり方をいろいろ考える機種になりました。
ただ果てしなく、ストイックで飾り気のない音。
個性が無い、のではなく、それが007Aたる所以、
唯一無二の強い個性だったというところです。
ノリの良さならedition9のほうが強いですし、
繊細さだけならSA5000とか4070が上かもしれません。
中途半端な落ち着き方とも言えますが、
どの切り口から見ても中間値より遥か上をとっているので
それはそれで優秀な機種なんだなぁと。
私も実際のところ使用頻度は少ないです(苦笑)。
完璧主義よりダメな子ほどかわいいというか、
007Aのおかげでヘッドホンの個性を
もっとよく聴くようになりましたね。
上流で音をを作り上げる楽しさは、
私も007Aならではだと思います。
ただ私の場合、balanced home ampをDACにしているので
低音ばっかりドカドカ鳴ってます(笑。
コメントありがとうございます。
実際コレはコレで素晴らしい音だと感じるのは事実。
がしかし・・・やっぱりダイナミック型ヘッドホンのほうが聞いてて楽しいんですよね。
音の立ち上がりが超高速にも関わらず、音の抑揚、起伏、ダイナミズムを感じられないコンデンサー型特有の鳴らし方、これが私が好きになれない一番の原因だと思います。
この点を上手く出せてるのがGRADOでしょうか。
あれほど音楽を楽しく聞かせる音を出すメーカーって他になかなか無いように思います。
それにしても、個性は本当に大事だとつくづく感じます。
個性が強ければ強いほど賛否両論あると思いますが・・・面白いw
無印Ω2の頃から、音圧の低さと平面的で薄い鳴りが気になっていたので、電ケーで音圧をあげて、RCAで音の滑らかさを確保して、満足のいくオールマイティな音になりました。
音場の大きさと立ち上がりの早い美しい音が魅力的です。
>やっぱり環境面の影響が大きいみたいですね
そうですね。
足場にインシュかますだけで凄い変わりましたから、007Aは環境追従性が高い機種ですね。
ドライバが違えばかなり違ってくると思いますし。
オールマイティさを求めるとなると727Aなんですかね~。
そのうち727Aも買ってみようかな。
さほど期待していませんでしたが変わりますね。
音圧が少し上がり、音の解像度も良くなったようです。
ノーマルと比較すると、音質が刺激的になってベールが一枚剥がれた感じ。
SR-007の音にやや飽きてきた方は試してみる価値ありだと思います。
イヤーパッドで音が変わるのは他のヘッドホンでも同じなので、いろいろ試してみるのも面白いでしょうね。
GRADOは装着感が悪いこともあって、いろいろ試している人が多いですが、音のことを考えると最終的にオリジナルに戻る人が多いように思います。
音質のことも考えてイヤーパッドも作られているでしょうから、あんまり自己流にするのも考えものなのかもしれませんね。
007は聞いたことがないので違いがわかりませんが、404と404limは若干違う印象を受けました。
404は優しくサラっとしたイメージ、404limは端整で僅かにシャキっとしたイメージです。
STAXのアンプは足場に敏感なイメージが強かったので、足場を変更してみるのも一つの手だと思います。
STAXはクラシック鑑賞専門の人とそうでない人には、ありがたみが全く違ってくる。
いやぁ~私もSR-007Aを買っちゃった手前、その曖昧に響く音に戸惑っていたのですが、はっきり書いてもらって、読了後すっきりしました。
(007A、褒め殺しに辟易としていたので)
私のヘッドフォン履歴はコンデンサに始まり、現在ダイナミック+自作DAC、HPAへと広がっているのですが、楽曲ジャンルによる使い分けに踏ん切りがついた思いです。
コメントありがとうございます。
ダイナミック型とコンデンサー型は別物ですよね。
オーディオですから、どちらが良いと言えるものではありません。
ただ、私のようなメタルを聞く者にとって、コンデンサー型の打音(ドラム)というのは違和感を感じます。
音の押し引き、歯切れの良さ、こういった部分でダイナミック型のほうがメタルやロックに合うように思います。
コンデンサー型の僅かな音の揺らぎの継続というのは、非常に心地よさを演出してくれるように思うので、クラシックであったりゆったりした曲では良さが倍加するのでしょう。
オーディオは正確でないほうが心地よい音を出すもので、これが「味」であり、これがオーディオの楽しさだと思います。
そういった意味で、ダイナミック型とコンデンサー型は、鳴り方が根幹から違うので、使い分けという目で見れば良い選択ですよね。
ポップスは増幅された直接音だけが勝負なので、それについては知りません。
クラシックは間接音含みですから、コンデンサ型にかなうものはありません。
こいつは最高のホール中央(S席)にいるような音場を提供してくれます。
本当はSR-009がほしいんですが、迷ってます。高すぎますもん。
まあ当面はこいつ(ピラミッドただしハイエンドが飛び出す)とHD800(ドンシャリややハイが勝る)の、どちらも音場が素晴らしいヘッドホン2機種の使い分けで行きますか。
ヘッドホン、イヤホン、アンプ、ヘッドホンケーブル大放出!ヘッドホンを売るのはコレが最後になりそうです。興味のある機種などありましたらお気軽にご連絡ください。よろしくです。
AKG
K3003
K1000
K701
K501
K340
K290 Soround
K240 Sextett 二代目
ALESSANDRO
MS-1
AUDEZ'E
LCD-3
Audio-Technica
ATH-W5000
ATH-L3000
ATH-W3000ANV
ATH-W2002
ATH-AD2000
ATH-A2000X
ATH-W1000
ATH-CKW1000ANV
ATH-PRO700MK2ANV
ATH-W100
ATH-A55
ATH-ESW10
beyerdynamic
DT880 Edition2005
BOSE
Bose on-ear headphones
DENON
AH-D7000
AH-D5000
FOSTEX
T50RP
GRADO
PS1000
GS1000
PS-1
RS-1
SR-325
HiFiMAN
HE-6
Monster Cable
Beats by Dr.Dre
SENNHEISER
HD800
HD650
HD25-1
HD25-13 Ⅱ
HD414
SONY
MDR-SA5000
MDR-CD3000
MDR-EX1000
STAX
SR-007A + SRM-007tA
SR-404 LIMITED
SRS-4040
ULTRASONE
Edition10
Edition9
Edition9バランス仕様
PROline2500
DJ1PRO
Victor
HP-DX1000
その他
USTヘッドフォン(EXH-313他)