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スピーカー、ヘッドホンとオーディオアクセサリーのレビューをメインとしたオーディオブログ。感じ取れ音楽!
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s-PICT0049.jpg型番:Beats by Dr.Dre
メーカー:Monster Cable
タイプ:ノイズキャンセル型ヘッドフォン
再生周波数帯域:20 - 20,000Hz
感度:115dB
質量:260g
ケーブル長:3.0m(片出し)
プラグ:3.5/6.3φステレオ

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ノイズキャンセル型ヘッドフォン。ノイズキャンセルをONにしていないと音が出ない不親切設計は残念でなりません。ノイズキャンセル機能をONにしている時は僅かにホワイトノイズが発生するため、家で静かに音楽鑑賞するときには向いているとは言えず、主戦場はやはり外出時となります。

筐体はプラスチック製、ピアノ面仕上げで見た目上の安っぽさは感じられませんが、指紋がベタベタ付くのが困りものです。イヤーパッドはモチモチしており、耳をスッポリ覆うのでフィット感が良好。重量も軽くガッチリと固定され、アウトドアでの使用に最適でしょう。しかし、あまり長時間つけていると頭頂部が痛くなってきます。

s-PICT0055.jpg基本性能は価格(約$350と地味に高い)を考えるともう少し頑張って欲しいというのが正直なところですが、ノイズキャンセル型ヘッドフォンとして考えるのであれば妥当、健闘していると言える基本性能を持っています。流石にハイエンド機種と比較すると解像度の甘さ、帯域の狭さを感じますが、値段を無視すれば必要十分な性能でしょう。まずレンジ感ですが、高域方向へは気持ちよく音が伸びるのと比較すると低域方向は少し苦手で、最低域まで出しきれない点は不満に感じる人もいるかもしれませんが、それほど問題視する必要は無いと個人的には思います。解像度の甘さは特に生楽器による音源において顕著に現れ、音の粗さ、雑味を感じることがありますが、価格からしてあまりハイレベルな基本性能を求めるのは酷でしょう。おおよそ同価格帯のヘッドフォンと同等、少し劣るぐらいだと考えて問題ありません。バランスはフラット。低域と高域が特徴的なため一見ドンシャリ傾向に感じますが、中域がしっかりと出ているため全体を見ればフラットだと言えます。低域は締まっていて膨らまず、ダムダムとした質感でダンピングが効いていてキレがありノリの良さを引き出せています。特に「打力」「音圧」の強さが特徴的で、ダンダンダンダンと打ちつける実体感の強さはHD25の低域を凝縮させたかのようです。HD25との低域の質の比較をもう少し詳しく述べるs-PICT0048.jpgならば、HD25よりも音が締まっているため、押し寄せるような音圧はHD25に劣ります。しかし、締まっているぶんだけ密でグっとくる低域になり、打音の弾みっぷりはHD25以上のものがあります。中高域は非常に癖の強い音色、鳴り方で、人工的な艶と人工的な響きを伴います。おそらく、初めてBeats by Dr.Dreの音を聞いたときには誰もが「作られた音」だと違和感を感じると思われます。揺らぐように心地良く音が広がり、まるでエコーがかかっているかのようです。しかし、不思議かつ面白いもので、この中高域の音の張り、艶、響きはソースによっては神がかり的に好印象を与えてくれます。全体的に厚みがあり密な空間を形成し、エネルギッシュでパワフル、音ひとつひとつにしっかりとエネルギーが乗っていて太く、それでいて聞きやすさ、心地良さも持っています。メリハリをつけるべきところではピシっと音が張り、柔らかく表現したいところでは響き豊かにふわりと鳴らします。音は近くで鳴り、音場そのものは広くありませんが、独特の音の広がりを持っているため音場の狭さはあまり感じません。良いこと尽くしのようで人工的な音が良し悪しの分かれ道となるキワモノヘッドフォンですね。

得意とするジャンルは打ち込みのみ。何故だかわかりませんが、打ち込みにおいてのみ気持ち悪いぐらいに良さを発揮します。生楽器演奏で感じる性能面の弱さも感じなくなり、低域の質感であり特徴、幻想的に綺麗に響き満ちる高域、間近でよく聞こえるVo、抜群のノリの良さ、最高に打ち込みとの相性が良いです。相性が悪いのは生楽器全般。人工的で不自然な音色と鳴り方が生楽器の「生っぽさ」を殺してしまい、リアリティに欠け無機質な音になり、また性能面の弱さも表面化してきます。RS-1GS1000のように生楽器を得意とするヘッドフォンと比較するとよくわかるのですが、常に音が修正補正されているような違和感が付きまといます。

s-PICT0051.jpg似たような音を出すヘッドフォンとなると思い当たる機種がなく、あえて例えるならば「メリハリを効かせて聞きやすい音になったDJ1PRO」といったところでしょうか。人工的な音である点も共通していますし、生楽器が苦手で打ち込み特化である点も同様です。何度も言いますが、これほど上手く鳴らせるジャンルが限定されているヘッドフォンはそうそうありません。打ち込みにのみターゲットを絞って調整したかのような特化型ヘッドフォンです。当然打ち込みをメインで聞く人にオススメです。キワモノホンなので試聴してから購入したいと誰もが思うでしょうが、日本国内では発売されておらず、海外から輸入するしか入手する術がないのが難点(現在は日本国内でも販売されており、一大勢力となっています)。

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s-PICT0037.jpg型番:SRM-007tA
メーカー:STAX

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型番:SR-007A
形式:プッシュプル・エレクトロスタティック・イヤースピーカー
再生周波数帯域:6---41,000Hz
感度:100dB/100Vr.m.s. 入力/1kHz
標準バイアス電圧:580VDC 
コード材質:幅広低容量6芯平行コード
コード長:2.5m、PC-OCC
重量:365g(本体のみ)

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装着感が良く何時間使用しても痛さ、疲れはありません。見た目とは裏腹に重量が軽く、首が疲れることもなく快適です。ラムスキンのイヤーパッドのフィット感は良好ですが、蒸れやすい点は注意が必要でしょう。奇抜さの無いシンプルなデザインは「余計な装飾はいらないのだよ」といったオーラを発しており、ヘッドフォン界の王者として十分な貫禄を漂わせています。価格相応の高級感に溢れ、所有欲を満たしてくれるように思います。

s-PICT0041.jpg以下は「SR-007A + SRM-007tA」でのインプレとしてご覧ください。おそらくドライバー(やその他環境)によって鳴り方が変わってくるはずです。今回は欠点だと感じる要素を環境側の調整で改善し、「SR-007A + SRM-007tA」の組み合わせにおいての音の方向性での完成度を限りなく突き詰め、納得できる音質にした状態でレビューしましたので、「これだけの音が出せるポテンシャルを持っている」といったニュアンスで読んで戴けると幸いです。決してドライバーをポン置きでこのような音が出るわけではないのでご注意ください。トランスポートからDACまではダイナミック型ヘッドフォンのシステム(まみそのオーディオ環境参照)と同様です。

まず初めに、「SR-007Aはヘッドフォンにあらず、イヤースピーカーである」といった印象を持ちました。音量が上がっても、音数が増えても、コンデンサー型ヘッドフォンはダイナミック型ヘッドフォンを含めた上で相対的に見たときに音圧が弱く、この特性に加え、SR-007AはSRS-4040と比べると音場が広く、と言うよりは音が遠いため、耳への負担が更に弱いです。まるでスピーカーで音楽を聞いているかのような間接的な音楽鑑賞の感覚を「音の感じ方」の面で味合うことが可能で、これはダイナミック型ヘッドフォンではどうあがいても実現不可能な鳴り方であり、コンデンサー型ヘッドフォンの最大の強みであり弱みでもあります。そして、これがコンデンサー型ヘッドフォンを好むか嫌うかの分かれ目でもあります。そのため評価が真っ二つに割れる可能性が高く、好きな人はとことん好き、嫌いな人は受け付けない鳴り方をする、そんなヘッドフォンだと思います。

s-PICT0035.jpg性能は総じて高いと言えますが、部分的に見ると物足りない部分もあります。現在では高性能なダイナミック型ヘッドホンがいくつも存在するため、性能面においての優位性が大きいとは断じて言い切れない現実があります。とは言っても、超低域から超高域まで余すことなく出し切るレンジの広さは流石の一言に尽きますし、解像度、情報量共に高いレベルにあります。しかし、「どこまで細かな音まで知覚しやすいか」といった少し斜めからの見方をするならば、SR-007Aはそれほど高い能力を持っているとは言えません。これは、音にエネルギーがしっかりと乗り、微小音でも独立し主張感の強いダイナミック型ヘッドフォンと違い、コンデンサー型ヘッドフォンでは全面で鳴る傾向が強いため、微小音の実体感であり存在感が弱い傾向があるからでしょう。このような理由から、コンデンサー型ヘッドフォンは微小音まで余すことなく全て感じとりたい場合、または全ての音を手に取るように知覚したい場合にはあまり適したヘッドフォンとは言えないのかもしれません。この特徴について別の捕らえ方をしてみるならば、全体で鳴る傾向が強いコンデンサー型の鳴り方があるからこそ、統一感のある自然なサウンドだと言えそうです。ただし、これは真空管を使用したSRM-007tAでの音であることを忘れてはなりません。ドライバーをSRM-727Aにしたならば、各音の輪郭が明確になり主張感が強まり、また違った表情を見せてくれることでしょう。

s-PICT0032.jpgバランスはフラット。ただし、低域と高域の存在感が強いため、感覚的にはフラット~ドンシャリに感じます。低域は質、量共に素晴らしく、ダイナミック型ヘッドフォンと比べれば実体感やエネルギー感、音圧の弱さを感じるのは否定できないものの、「深さ」「重さ」「濃さ」をこれでもかと出せる濃密かつ深く沈み込む説得力のある低域です。グっと凝縮された低域に緩さは感じず、程よくアタック感、実体感も感じられます。最大の特徴であり利点はGRADOのヘッドホンのような空気をたっぷり含んだ「LIVE感溢れる低域」を聞かせてくれる点でしょう。また、実体感が強いとは言えませんが存在感の強さは高く評価したいところです。加えて、全体で言えることですが、音の立ち上がりが非常に高速なため、このような重く質量感を感じる低域でありながらキレがありハイスピード感を味わえる低域となっています。勿論「SR-007A + SRM-007tA」が持つ響きを活かした豊潤さは言うまでもなく優れており、この特徴はLIVE感を出すための重要なピースであることは疑いようもありません。中域は存在感抜群の低域に負けることのない濃密さと厚みを持っており、音が空間に満ち溢れ、情報量の多さを存分に味わうことができるでしょう。臨場感重視で全体感が強いため、音に包まれるような、もしくは音にどっぷりと浸かるような感覚で音が鳴ります。ストレート、直接的に音が飛び込んでくる感覚を味わえるタイプのヘッドホンではありません。高域は果てしなく伸びきり刺激とは無縁。基本的に繊細だと言って間違いは無いのですが、SRS-4040と比べるならば、エネルギッシュで音のエッジも感じられ、SRS-4040のような綺麗一辺倒ではなく多少粗さも表現できます。とは言っても、音の粗の表現が苦手なのは確かで、なんでもかんでも綺麗に鳴らしてしまう点はコンデンサー型ヘッドフォンの利点であり欠点でしょう。音のエッジ、粗さ、鋭さ等の表現力はダイナミック型ヘッドフォンに比べれば劣ると言わざる得ません。これは高域でのスリリングな緊迫した緊張感、雑味からくる荒々しい野性的な躍動感などを出せないことに繋がり、特にロック、HR/HMといったジャンルの良さを殺してしまっているように思います。

全体の鳴りの方向性としては臨場感重視、ホールで聞くような鳴り方をします。「場」の雰囲気をこれほど忠実に再現できる機種は他にないと言ってしまっても過言ではないでしょう。場の再現性は、「これぞコンデンサー型の真骨頂!」と思わず拍手をしたくなるほどです。音をハッキリと分離せず、全体の音の繋がり、音の調和を重視した鳴りであるのはSRM-007tAの真空管による影響が強く出ているのかもしれません。この全体で聞かせる臨場感重視の鳴りはSRS-4040と同様です。また、全域に渡って歪み感が皆無で、体にスーっと浸透してくるような聞きやすい音なので、心地良く音楽を聞ける部類に入ると思います。反面、躍動感、ダイナミズムを出すのは苦手としているようで、音の抑揚をあまり感じられるタイプのヘッドフォンではありません。これはSRS-4040でも同様で、コンデンサー型ヘッドフォンの特徴なのでしょう。開放型らしい抑圧の無い綺麗に音が広がる音場を形成し、全体的に全ての音が少し距離をおいて鳴るように感じます。全面で鳴る傾向が強いため、上下前後左右あちこちから音が鳴るような立体感を出すのは苦手なようです。響きは適度、過剰に響きが乗ることはなく、響きに味付けとして艶が付くこともなく極めて自然でニュートラルな音色、響きを持っています。

s-PICT0044.jpgコンデンサー型ヘッドフォンの音が好きな人であれば何でも気持ちよく聞けると思います。しかし、私の正直な気持ちを書かせてもらうなら、クラシック及びLIVE音源以外では使う気にはなりません。極端な言い方になってしまいましたが、言い換えれば、それぐらいクラシック音源との相性に特化しているということです。SR-007Aの良さは優れた臨場感、言い換えればその「場」の雰囲気を上手く伝えてくれること。臨場感を発揮させるという目的のためであれば、分離感の弱さ、音圧や力感の弱さといった欠点が利点へと好転し、加えて超微小音まで知覚しにくいという点も、むしろ臨場感という視点から見れば自然かつリアルだとも考えられます。LIVEで細かな音まで注意して聞いている人がいるでしょうか、LIVEとは場の雰囲気、全体の一体感を感じられるのが醍醐味だという考え方があってもいいように思います。一方、スタジオ録音の音源ではSR-007Aの魅力は半減してしまいます。何でもかんでも綺麗に鳴らしてしまい音の粗さを出しにくいため、ロックやジャズには合わないように思いますし、実体感や力感、エネルギー感のことを考えると打ち込みとの相性にも疑問が出てきます。また、ボーカルモノであるならば、音が近いSRS-4040のほうが良いでしょう。

まとめに入る前に、SR-007A、環境側の影響を強く受けるヘッドフォンのようです。つまり、環境によってはレビューの内容とは異なる音が出ると言い切れます。それは今回私が欠点だと感じた部分の改善が十分可能であることを意味し、逆に言えば私の環境では出なかった新たな欠点が出てくる可能性も含むわけです。自分にとってベストだと思える鳴り方を環境側で調整して探してみて欲しいと願います。

s-PICT00382.jpgヘッドフォンの終着点と考えている人も多いであろうSR-007Aですが、コンデンサー型ヘッドフォンということでダイナミック型ヘッドフォンの延長と考えてはいけません。なぜなら、根本的に鳴り方が異なるためです。最大の利点であり欠点であるのはやはり力感、エネルギー感、音圧、実体感の弱さでしょう。わかりやすい例えを出すと、プログレッシブロックのタイフォンというバンドのアルバムの中で、自然音である雷の轟音が鳴り響く部分があるのですが、ダイナミック型ヘッドフォンであれば体に電気が走るかのようにゾクゾクビリビリと身震いするかのような感覚を味わえるのに対し、コンデンサー型ヘッドフォンでは音がスーっと体に染み込んできてしまいます。音の実体感が弱く、音圧が弱く、エネルギー感が弱いのが原因です。初めに書いた「SR-007Aはヘッドフォンにあらず、イヤースピーカーである」という表現がコンデンサー型ヘッドフォンの全てを物語っているように思います。コンデンサー型ヘッドフォンは一見癖がなく無難なようで実はとても個性的な音なのではないか、とも思います。なにしろ鳴り方そのものが特異ですから。そういった理由から、あまり万人にオススメできるようなヘッドフォンではないと個人的には思います。要試聴、この鳴り方が好きな人であればこれ以上のヘッドフォンは存在しない、それだけのクオリティーを持った最高峰のヘッドフォンです。絶対的にダイナミック型ヘッドフォンと音が被ることが無い貴重な音を出せるヘッドフォンですので、STAXには末永く製造し続けていって欲しいものです。

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★KA-10SH [6DJ8ヘッドフォンアンプキット](春日無線変圧器)

春日無線変圧器の19AQ5単管・ステレオヘッドフォンアンプに続くヘッドフォンアンプキット。
設計は長島勝氏。
構造が非常に複雑で、立体的にパーツや線材が配置されている。

※詳細は春日無線変圧器Webサイトをご覧ください


★インプレ

s-PICT0029.jpg※このインプレは可能な限り標準仕様に近い構成によるものとする

中低域は厚みがあり密度感が高く濃い音。
決してボワつかず半導体アンプのようなメリハリも兼ね備えている。
全域に渡って線が太く、低域から高域までしっかり音が出ており駆動力は文句無し。
基本的にどの球でもパワフルで力強い面が目立つが、優しく柔らかい面を持っているのは真空管ならでは。
その優しさや柔らかさが際立って目立つ球も存在する。

解像度は球によって差はあるが、必要十分なレベルは確保できており、音楽を聞く際に音が粗いと感じることはまずないだろう。
解像度と同時にSN比も球による差はあるが、どの球でも認識できるようなハッキリとしたノイズが出ることは皆無。
SN比は優秀と言えるレベルにあると感じる。
ボリュームは通常10時の位置付近で聞くことになるが、MAX(6時)まで上げてもノイズは聴覚上全く聞こえない。
レンジ感、解像度、情報量といった基本性能はコンデンサの換装等による改造で引き上げることが可能なので是非試してみて欲しい。

いくら「半導体アンプのような」と言っても真空管の鳴りであるのは確か。
半導体アンプと比べれば『輪郭が甘く』『メリハリ感が弱い』傾向があり、『全体感が強く』『芯が軟らかく』『ふんわり』とした鳴りを基調とする。
これらの点を利点と取るか欠点と取るかは好み次第だろう。
半導体アンプと差があるとは言ってもそれほど違いがあるわけでもなく、「違いがわからない」と感じる人がいてもおかしくない。
あまり気にせず、漠然と「聞きやすい音な気がする」程度に考えておいていいレベルの範囲内の差。

音のバランス、おおまかな傾向はどの球でもほぼ同じと言えるが、音色は使用する真空管によって変わってくるので断定することはできない。
艶やかさ、柔らかさ、力強さ、響きなどといった要素は球によりけり。


★まとめ

真空管アンプではあるが、かなり半導体アンプらしさの強い真空管アンプだと私は思う。
メリハリも兼ね備えたアンプなので、どのような音楽でもこなせるバランス型だと言えそうだ。
なんとなく聞きやすい音がして、中低域に厚み、密度感、濃さのある、線の太いしっかり音の出るアンプ、といった感じだろうか。
芯が軟らかく音の粒立ち感が弱い、及び音の分離感が弱く全体の音の繋がり感が強いため、ニュアンスをハッキリと聞き取りたい、言い換えればモニター的な意味で聞きたいという場合には向いておらず、全体の雰囲気、臨場感で音楽を感じたい場合には向いているように思う。
全体感の強さが影響しているのか、音と無音空間とのコントラストが弱い点は人によっては嫌う可能性があるが、逆にこの鳴り方を好む人もいるだろう。
真空管アンプなので当然と言えば当然だが、真空管アンプの鳴り方が根本的な部分で支配していると考えて間違いない。
分離感、定位感重視であれば半導体アンプを使い、臨場感重視であれば真空管アンプを使う。
このように音楽や気分によってアンプを使い分けるのも乙なものである。


★改造その1~カップリングコンデンサ変更~

カップリングコンデンサは無極性のため極性を合わせる必要性はないのだが、実際向きを変えて接続してみると、極性によって音質が変わるのを確認できる。
接続する向きは好みに合わせてどうぞ。

>auricapに変更

当たり前だがauricapの特徴が強く出てくるようになる。
解像度が非常に高く空間表現力、音場感に優れ、なによりバランスが良い。
この音と比べると標準仕様はボヤけた音だと感じる。
低域から高域までバランス良く出ており、とても自然な鳴りとなる。
豊富な情報量と超解像度によりサラサラとした細やかな音成分が満ちる感覚はSTAXのヘッドフォンを思わせる。
ふわっとした優しい鳴り方もSTAXを連想させる要因のひとつだろう。
ダイナミック型でありながらコンデンサー型ヘッドフォンのような音を手に入れることが可能。
この音をATH-W5000で聞けば、「ATH-W5000がSTAXのようだ」という例えに誰もが納得するだろう。(コンデンサー型と同等の高解像度を実現できるポテンシャルをATH-W5000が有しているという意味)

>DynamiCapsに変更

auricapに負けない性能、音場感。
なにより音楽性が高い。
言葉で説明するのは難しいのだが、あえて音質面の特徴を説明するならば音が濃く、粘りが出ることだろうか。
エージングが進むにつれ、この濃さや粘りが自然に溶け込んでいき、最終的に生命感へと変化する。
auricapも素晴らしいコンデンサだが、DynamiCapsは「auricap + 生命力」、そんな音のするコンデンサ。
有機的な生きた音を望む人に強くオススメしたい。


★改造その2~電解コンデンサを変更~

>16V100μFの部分をシルミックⅡ αに変更

シルミックはDACにも使用している個人的に好きなコンデンサ。
全体的に柔らかく優しい音となり、艶やか、そしてなめらか。


★改造その他

コンデンサ以外にも内部配線材や抵抗の変更、パーツ配置の変更、3Pインレット化やジャック類のパーツ変更、ボリュームの変更、振動対策やノイズ対策等々。


★改造まとめ

オーディオグレードのパーツに変更すればそれだけ制作費は嵩むものの、標準仕様と同じとは思えないハイクオリティーな音を手に入れることができる。
自作の強みは通常市販のアンプではまず使われることが無いハイエンドパーツを自由に使えること。
それはつまり、性能面においても市販のアンプを大きく超える可能性を秘めているということでもある。
改造を前提として製作するのであれば、極めて高い性能と音楽性を両立できるアンプとなるだろう。


★聞いたことのある真空管

※現存する球数に限りのある真空管では評価が及ぼす流通価格への影響が無いとは言い切れないため球別インプレは無しとします

s-PICT0033.jpg○6DJ8 / SYLVANIA
○6DJ8 / Ei Elites 金足
○6922 / PhilipsECG
○E88CC / TESLA 軍刀マーク 金足 ※常用球
○E88CC / Mullard 金足
○E88CC / Amperex
○E88CC / JJ
○ECC88 / TRONAL (6N23P V1-77)
○ECC88 / PHILIPS MINIWATT
○E288CC / SIEMENS ※流石に凄い伝説の球
○6R-HH2 / 日立
○6N1P
○6N23P
○6BQ7A
○6ES8 / Zaerix

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★リンク

私がよく見にいくサイト、よく参考にさせて戴いているサイトをリンクしています。
基本的に私はコメントやメール等で交流のある方のみリンクするようにしているので、個人的な要素の強いリンク集となっています。
さて、今回はリンクしているサイトを軽く紹介してみたいと思います。

Headphones Kingdom

付き合いの長い蒼天肉雄氏のヘッドホンレビューサイト。ヘッドホン界では有名なレビューサイトでしょう。最近は全盛期の勢いはなくなり更新が停滞気味。再びオーディオ熱が燃え上がることは無いのでしょうか。わかりやすい言葉遣いと端的に纏められたレビューは素人受けが良さそうです。数あるヘッドホンレビューの中で、私が最も好きな文章構成、文章表現です。

ThemeSpatiality

lmstさんの管理するオーディオ総合サイト。PCトランスポートを軸とするオーディオシステムを組む人にとっては大変参考になると思います。感性を大事にしつつも理論的見地からオーディオを組み上げるその手法は憧れます。

鰯の雑記帳

「SATRIの伝道師」こと鰯さんのほのぼのオーディオライフを綴ったブログ。まみそぶろぐと設立時期がほとんど同じで、同期生として勝手に仲間意識が強かったりします、迷惑行為万歳。数少ないPS-1ユーザーの一人で、PS-1にUSTを組み込もうとしていたビックリ人間でもあります。今はヘッドホンを卒業してスピーカーの世界で頑張っています。

It is more blessed to give than to receive.

ntzg4さんの管理するオーディオブログ。ヘッドホンからスピーカーへ移行し、物凄い勢いで環境整備を進めています。カメラにも精通しており、ブログで綺麗な写真を見ることもできて心安らぐブログですね。

漫画ドリームの気まぐれなBlog

漫画ドリームさんのヘッドホンやCD紹介ブログ。少ない資金で地道に頑張っているあたり、私と似ていて好感が持てます。お互い頑張りましょう!GS1000やedition9を所有しており、その気概の良さには注目しています。今後高額ケーブル等にも投資していきそうな・・・しちゃってください。

スピーカー作っちゃう?準備室

HD25やHD650用自作ケーブルで有名なばぢるさんのブログです。技術力の高さは私とは比べものになりません。なかなかチャンスが無くて未だケーブル製作を依頼したことがありません。いつの日か1本お願いしようと考えています。

わっぴょんのオーディオ+日本酒・焼酎ご紹介ヽ(^▽^@)ノ

オーディオアクセサリー経験豊富なわっぴょんさんのブログ。高価な電源ケーブルやインシュレーターを多数お持ちです。わっぴょんさんもヘッドホンからスピーカーへ移行してしまった一人ですね。実は私の所有しているGS1000はわっぴょん印だったりします。

ヘッドホン@デジタル

私には面倒で到底できないような詳細な比較検証をなさっているだおさんのヘッドホンブログ。その視点、発想、文章力、感性、全てに惹かれるものを感じます。購入ヘッドホンの選択理由に私と似たような臭いを感じます。そんな妄想から予測するに、今後に期待しています。

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★Lynx AES16 - XLR

 0e0211d0.jpg

デジタル出力に定評のあるサウンドカード。
音の立ち上がりが高速でハイスピード。
豊富な情報量により空気感を強く感じられ、音ひとつひとつのエネルギー感が強い。
低域と高域が「性能」「質」共に見事。
低域と高域の存在感であり実体感の向上が著しく、これだけのためにAES16を導入する価値があると言ってもいいぐらいだと個人的には感じる。
基本的に凄みで圧倒するタイプのサウンドカードだが、それでいて自然な音、そして密な空間、広い音場を形成する。


★RME 96/8 PSTと比較

RMEとLynxはずいぶん音の傾向が違うようだ。
RMEはクリアーで繊細、解像度が高くサラサラとした質感、清涼感のある自然さを感じさせてくれる。
Lynxは音の持つエネルギー感が強く、凄みで押し寄せてくるタイプ。
音のキャラクターは置いておいて、性能面を見るならば、情報量、解像度、レンジ感、どれもAES16のほうが明らかに上。
96/8 PSTからAES16へのグレードアップは音のキャラクターがガラっと変わってしまうのでリスクが大きいかも。
個人的に96/8 PSTのコストパフォーマンスを高く評価している。
PCトランスポートでデジタル出力の入門としてオススメのサウンドカード。


★RME HDSP 9652と比較

HDSP 9652は一言で言えば96/8 PSTのパワーアップ版。
音の傾向は全く同じなので、96/8 PSTからの正統なグレードアップには最適ではないだろうか。
解像度の向上、情報量の増加から、より強く空気感を感じられるようになる。
また、より自然な音となり、臨場感や場の雰囲気も更にリアルになる。
RMEの音作りで最高峰のサウンドカードと言っていいだろう。

そんなHDSP 9652とAES16を比較するならば、キャラクターの違いとしか言いようが無い。
どちらの音が好みか、それに尽きる。
クリアーで高解像度、綺麗で繊細な音が好きなのであればHDSP 9652。
実体感の強い音、エネルギー感の強い密な音を求めるのであればAES16。

オーディオシステム構築において実体感を付加させるのは難題だと私は思うのだが、この問題をAES16ひとつで解消できてしまうので、そーいった意味でAES16は美味しいアイテムだと感じる。
正直、何十万もする高額な電源ケーブル導入によって実体感を付加させることを考えればAES16は安いとすら感じる。


★AES16用ケーブル

d5126972.jpg

AES16の付属ケーブルは見ての通り・・・うじゃうじゃ。
再生専用でAES16を使用する場合、基本的にデジタルOutを一つ使うだけ。
せっかく16In/Outという多くのIn/Outを持つAES16だが、申し訳ないが利用しない人にとっては無駄な機能でしかない。
このキャット・オブ・ナインテイルみたいな付属ケーブルは使い難いのでケーブルを自作する人が多いと思われる。
ちなみに、私はAES16用ケーブルの線材にMuse-Cableを選択した。

s-PICT0007.jpg

簡単にケーブルの製作方法を書いておくことにする。

>必要な材料

・D-Sub 26ピン オス(及びカバー)
・XLRコネクター オス XCCタイプ
・線材(インピーダンス:110Ω)

※AES16のPortA、Out1を使用する場合

XLRコネクター側 / 1番⇒Gnd、2番⇒Hot、3番⇒Coldでハンダ付け
D-Subコネクター側 / 5番⇒Gnd、14番⇒Cold、22番⇒Hotでハンダ付け

※他のOutputを使用する場合は以下の画像参照のこと

AES16pin.jpg

製作難易度が非常に高い。
問題となるのがD-Subコネクター側。
針のようなピンへのハンダ付けをしなければならないので、太い線材では極悪の難易度となる。
できるだけ細い線材を選択したほうが製作が楽だろう。

XLRコネクター、D-Subコネクター共に番号がふってあるのでわかるとは思うが、一応D-Subコネクターの番号振りの画像を載せておくので、必要な場合は画像をクリックして大きな画像にして確認してみてほしい。

s-PICT0008.jpg

画像左の状態でのハンダ付けは困難極まりないので、妥協策として使用するピン以外を抜き取ってスペースを確保するのもアリだろう。
 

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s-PICT0018.jpg型番:HD25-13 Ⅱ
メーカー:SENNHEISER
タイプ:密閉型ヘッドフォン
再生周波数帯域:16 - 22,000Hz
インピーダンス:600Ω
感度:120dB
ケーブル長:3m
プラグ:3.5/6.3φステレオ
質量:約140g



HD25-13 Ⅱ(及びHD25-1 Ⅱ)では旧シリーズと付属品に違いがあります。新たに追加されたのはベロアイヤーパッド(布製イヤーパッド)、ヘッドフォンを収納する袋、オーディオプレイヤーインストールCDの3つ。旧シリーズのイヤーパッドも入っているので、2種類のイヤーパッドを好みに合わせて使用できるようになっています。付属のケーブルですが、線材の材質がHD25-1とは違ってOFC-Cableになっており、長さも1.5mではなく3m、プラグは6.3mm標準ジャック(3.5mmへ変換可能)です。その他スペック面の詳細を書いておくと、感度が120dB(HD25-1及びHD25-13は105dB、HD25-1 Ⅱは120dB)、インピーダンスが600Ω(HD25-1及びHD25-1 Ⅱは70Ω、HD25-13は600Ω)となっています。ケーブルの材質の違いやインピーダンス、感度の違いは音質面への影響があると思われるので、HD25-1とHD25-13は勿論、HD25-1とHD25-1 Ⅱでも違いがあるのではないでしょうか。

装着感はHD25-1と全く同じ。良くも悪くもなくいたって普通。付属のベロアイヤーパッドに付け替えると蒸れの心配は無さそうですし、装着感も若干良いように感じます。

ファーストインプレッションは「ドイツ製のHD25-1に似た音だなぁ」というものでした。HD25-1(アイルランド製)特有の荒々しさ、荒削りな部分が抑えられ、ドイツ製HD25-1のように洗練されたピシっとフォーカスの合った音で、ボワつきが抑えられタイト、刺激もなく耳障りの良い聞きやすい音が出ます。詳細に述べるならば、全体的なキャラクターはアイルランド製HD25-1、細かな部分的な要素を見るとドイツ製HD25-1に似ているといった感じでしょうか。

s-PICT0020.jpg微妙な感覚的な違いではありますが、ドイツ製HD25-1が「フォーカスの合った音」で、チューニングの違いを感じさせるのに対し、HD25-13 Ⅱは「緩さを力で押さえ込んでいる」ように感じます。つまり、HD25-1(アイルランド製)と同じ鳴り方ではあるが、それを強制的にパワーでビシっと整えている、そんなイメージを持ちました。これがインピーダンスの差によるものなのでしょうか。ですから、全体的なキャラクターはアイルランド製のHD25-1に近く、ビシっとタイトになったのはインピーダンスの違い、刺激が抑えられ洗練された音だと感じるのはケーブルの材質の差が影響していると思われます。

ドンちょいシャリというバランスはHD25-1(アイルランド製)と同様ですが、全体的にまとまりがあって整った印象を受けます。低域は程よく締まりつつも量感があり迫力を出せるタイプ。HD25-1(アイルランド製)と比べると多少タイトになった分だけ暴れん坊な迫力は減少していますが、キレが増しスピード感を感じられるようになっており、HD25-1(アイルランド製)らしい重さのある低域でありながら、SR-325のキレを隠し味的に加味したような低域です。高域は繊細ではありませんが、刺激があるわけでもなく、HD25-1(アイルランド製)と比較すると微妙に色づけがあるように感じます。全体のバランスが良いのでVoもしっかりと聞こえてきます。音場は広いとは言えませんが、音が密集しているということもなく、それなりに音が分散して配置されていますし、程よく響きも感じられるので、空間が狭いと感じることはありません。基本性能は価格相応なので、ハイエンド機種の音を知っている人からすると粗っぽい、雑だと感じるレベルではありますが、HD25-1(アイルランド製)と比較すれば粗さが無いので多少高音質だと言えそうです。

s-PICT0016.jpg標準イヤーパッドとベロアイヤーパッドによる音の違いですが、ベロアイヤーパッドにすることによって迫力が減退し、その代わり音場感がずいぶんと改善され、開放的な鳴りとなります。また、高域が綺麗に伸びるようになったようにも感じます。ストレートな押し出し感と迫力、音圧を求めるなら標準イヤーパッド、迫力を犠牲にしてでもふわっと音が広がる感覚、広い空間を得たい場合はベロアイヤーパッドが良さそうです。装着感だけでなく、音質面でも二度楽しめるのでHD25-13 Ⅱ(及びHD25-1 Ⅱ)はお買い得感がありますね。

単純に聞きやすさという意味ではフラット傾向なドイツ製HD25-1には及ばず、アイルランド製HD25-1の量感バランスのまま若干聞きやすくした感じなので、打ち込みやロック等は特に上手く鳴らせるでしょう。

HD25-1(アイルランド製)と比べるとかなり鳴らし難い印象を受けました。パワーのあるアンプでしっかり鳴らさないと、なんとも弱々しくメリハリの無い淡々とした音になってしまいますし、音が纏まらずブワブワと散漫に広がってしまい聞けたものではありません。HD650より確実に鳴らし難いので、パワフルなアンプでの使用が絶対条件となります。

HD25-13 Ⅱの利点はパワーのあるアンプで鳴らした時にビシっと制動を効かせられる点でしょう。刺激が抑えられている、多少解像度が上がっている、といった点はHD25-13 Ⅱの利点というよりはケーブルの恩恵によるところが大きいでしょうから、HD25-13 Ⅱである必要はないと思われます。要するに、基本性能や音色面の変化であればHD25-1(及びHD25-1 Ⅱ)をリケーブルすることで実現可能です。

ハイエンドモデルにHD25のような鳴り方をするヘッドフォンは無いように思うので、ミドルクラスでありながら所有しておきたいと思わせる魅力を持った機種。HD25-1(アイルランド製)の緩みを押さえ込み、制動の効いたビシっとした音を求めている人は試してみるのもアリかもしれません。しかし、個人的にはHD25の魅力は荒々しさであり迫力だと思うので、HD25-1(及びHD25-1 Ⅱ)のほうが「個性」という見方をすれば魅力的だと思います。

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★リケーブル

e798cce9.jpgヘッドフォンのリケーブル。ヘッドフォンのケーブルを他のケーブル(線材)に変更し、基本性能の向上であったり音色や質感、音場感等々を変化させることができる。一般的なヘッドフォンはケーブルが着脱式ではないため簡単にリケーブルするのは不可能。しかし、中にはケーブルが着脱式になっており、手軽にケーブル交換ができる機種が存在する。その代表格がSENNHEISER(他にはAKGやULTRASONE等)のヘッドフォンだろう。今回はその中でもユーザーが比較的多いと思われ、尚且つ交換可能なケーブルが多数存在するHD650を使用してケーブルによる音の違いを検証してみることとする。ちなみに、HD25では基本性能の低さ(HD650比較)から、ケーブルの能力を持て余すケースが出てくるため、ケーブルの性能を可能な限り引き出すことを目的とする意味でもHD650を選択している。

ケーブルを換えれば当然音が変わってしまう。ケーブルが着脱可能である構造が設計者の真意なのか否かは定かではないが、望む望まずに関わらず、受け手である我々の判断により、与えられた自由は有効に活用させてもらおうではないか。


★HD650標準ケーブル

細く柔らかく取り回しは最も楽。コネクタの接続感も問題なし。

この音がHD650の音。柔らかく丸い豊かな低域、高域は繊細、全体的にぬるくてまろやか、音が空間に綺麗に広がるのを感じられ、立体的な音場を形成する。ふんわりとしていてとにかく心地良い。情報量がそこそこで迫力を出し切れないのも考え方によっては有りで、気軽にリスニングする際には標準ケーブルが一番適しているように思う。ノリの悪さという致命的な欠点を除けば、コストパフォーマンスの高い優れたケーブル。

解像度 7

情報量 7

レンジ感 7

音場感 7


★Blue Dragon V2(現行モデル V3)

s-PICT0006.jpg

自由自在にクネクネ曲がるわけではなく太さもそこそこあるので多少邪魔に感じる。Cardasコネクタ、Furutechプラグ共に接続感はgood。

s-PICT0010.jpg標準ケーブルを正当進化させた音。標準ケーブルと比較すると解像度の向上が著しく、曇りが晴れたかのように明瞭な音となる。その代償として標準ケーブル特有の幻想的な雰囲気は減少。低域寄りバランスで重心が低くドッシリと落ち着いており、厚みのある重厚なサウンドとなる。低域から高域まで柔らかさのある耳障りの良い心地良い音。低域は量感たっぷりでウッドベースのような太い音を上手く鳴らすことができる。高域に派手さは一切なく、どちらかと言えば地味な部類に入るだろう。強く主張してこず、繊細というわけではなく、気品良く絶妙のエネルギー感で存在感を感じさせてくれる。全体感の強い鳴りのため、音の繋がりや調和に優れており臨場感を出すのを得意とする反面、定位感や分離感はどちらかと言えば苦手で、音場感は標準ケーブルと比べると若干下回る。HD650らしさを保ちながら多少ノリの悪さを改善できるケーブル。Silver Dragonで「もう少しまろやかな音色にしたい」と感じた場合にはBlue Dragonが良い選択になるだろう。

解像度 8

情報量 8

レンジ感 8

音場感 6+


★Silver Dragon V2

s-PICT00051.jpg

造りはBlue Dragon V2と同様。自由自在にクネクネ曲がるわけではなく太さもそこそこあるので多少邪魔に感じる。Cardasコネクタ、Furutechプラグ共に接続感はgood。

クリアーで明瞭、Blue Dragon V2を少しだけZU Mobius寄りにシフトしたような音。基本性能はBlue Dragonとほぼ同等。音が若干引き締まるのでBlue Dragonほどの重厚感はないが、それでも厚みのある音を出すタイプに属するケーブル。Blue Dragonを高域方向へ少しシフトさせたようなバランスで、低域の量感は減少、高域は逆に僅かにだが量感が増し、全体で見るとフラットで自然なバランスとなっている。クリアー系だが決して中域が音痩せすることがない点も嬉しい限りだ。Blue Dragonのような音の柔らかさが抑えられているぶん音ひとつひとつのメリハリが増し、実体感のある音になり、低域は程よく締まり、高域は凛々しくエネルギー感がある中に繊細さを垣間見ることができる。高域に関しては好みもあるだろうが、個人的には煌びやかで綺麗だと感じる。言い換えれば色づけされているとも言えるが、適度な味付けで嫌味はなく、隠し味程度の微妙な色づけ。空間表現はBlue Dragonより上手で、標準ケーブルと比べても若干広くなったと感じられるレベル。標準ケーブルと比べるとノリの良さが改善されているが、A Pure Soundほどのハイスピード感があるわけではない。Blue Dragonで「もう少しピシっとしてて明瞭で煌びやかな音色にしたい」と感じた場合にはSilver Dragonがオススメ。

解像度 8+

情報量 8

レンジ感 8

音場感 7+


★A Pure Sound V3 Headphone Cables(brack)

s-PICT00022.jpg

太さはBrack DragonやSilver Dragonと同じぐらいなのだが、こちらは硬くて取り回しが悪い。今回紹介するケーブルの中では最も硬い。

s-PICT00032.jpg解像度が高く、クリアー、ハイスピードタイプの音傾向だが、高性能からくる説得力は十分感じられる。一言で言えばZU Mobius系に属する。ZU Mobiusほどカッチリした音ではなく、ふんわりとした響きと広がりを持っており、洗練さを若干抑えたぶんだけ安らぎを与えてくれる。バランスは極めてニュートラル。低域はローエンドまでしっかり出ておりビシっと締まっていて濃く力強く実体感がある。高域は基本的には繊細だが低域同様実体感があり粒立ちが良いのが特徴。高域において痛い音は出さないが、ふわっと音が響く特徴の影響で時に派手さを生み出すことがある。徹底した繊細さを求めるのならば、高解像度による繊細さを出せるZU Mobiusを選択したほうが良いだろう。銀らしいシャープさ、クリアーさ、瞬発力、ノリの良さ、明快さ、明るさ、煌びやかさを持ちながら、銅らしい残響成分を持ち、音の調和表現が上手く、耳に優しい聞きやすさがある。銀のちょっと尖った要素を上手く緩和してくれているように感じる。雄大さや重厚さ、暖かみや柔らかさを出せるケーブルではなく、押し出しが強く直接的かつストレート、音場感が苦手という点を考慮すると、HD25との相性が良いと感じる。HD25においての音場感について補足しておくと、HD25はHD650ほど空間表現力に優れていないため、A Pure Soundを使用した際に音が密集してゴチャゴチャする傾向がある。これは逆に良いように考えれば、ストレートな押し出し感を出せていてロックなどに相性が良いとも言えるので、良し悪しは人によって変わってくるだろう。

解像度 8+

情報量 9

レンジ感 9

音場感 6


★ZU Mobius mk2

s-PICT00101.jpg

今回紹介するケーブルの中では扱いやすい部類に入る。コネクタ~分岐点まではケーブルが柔らかく、使い心地の良さに繋がっている。コネクタ、プラグ共にガッチリとした接続感。プラグ側の線材の接続はZU Mobius独自の方法を採用しているようで、あまり強度が強いとは思えない。全体的に造りがデリケートな部分はある。また、Zu CableはコネクタがHD650に合わせてあるためHD25での使用は不可能。

s-PICT00061.jpgクリアーで解像度が高く、粗さが全く感じられず細かな音まで潰れることなく明確に描き出す。レンジ感が優れており、高域の伸びは申し分なく、低域もローエンドまでしっかり出ていて説得力がある。HD650の潜在能力を存分に引き出してくれる高性能なケーブル。低域は引き締まりキレが良く弾力を持ち、HD650のノリの悪さを見事に改善。中高域は銀線らしく洗練されていて機敏、高解像度からくる繊細さがあり、若々しくピンと張った艶を持っている。ピシっと快活、明るく明瞭な音となってしまい、HD650が本来持つまったり感は消滅するので、本来のHD650の音が好きな人にはオススメできない。しかし、ZU MobiusによりHD650のキャラクターが大きく変えられてしまうものの、音場感に関しては今回紹介しているALOを除くケーブルの中では頭ひとつ抜けており、見通しよく広大で立体的な素晴らしい空間を形成することができるので、HD650の音場感を活かすという視点で見るならば、ZU MobiusはHD650らしさを伸ばせているとも言える。なんにせよ、「HD650 + ZU Mobius」という組み合わせはオールジャンルで活躍してくれるだろう。値段が高いと感じる人がいるかもしれないが、この性能であれば適性価格だと個人的には思う。ぶっちゃけ「HD650 + ZU( + m902)」の神話にメスを入れてやろうと老獪な企みを持っていたのだが・・・完敗です。


解像度 10

情報量 10

レンジ感 10

音場感 9


★ALO 18G Cryo

 s-PICT0003.jpg

太い、重い、硬いの三重苦。A Pure Soundと同等、それ以上の扱い難さ。音質重視な人向けのケーブル。

s-PICT0005.jpg解像度、情報量、レンジ感はZU Mobiusより僅かに上。「これ本当にHD650?」と疑ってしまうほどにリアリティのある音を出せる高性能ぶり。ZU Mobiusと比較するとキャラクターは対照的で、こちらは重厚で密度感の高い音。ワイドレンジかつ情報量が多く、解像度が高いことから、同じ重厚タイプのSilver DragonやBlue Dragonとは格が違うのを一聴して感じ取れる。低域は重く低く、実体感と豊潤さ、心地良さを両立しており、弦の揺れまで感じ取ることができる解像度の高さを持っている。高域は繊細で艶やか、こちらもまた解像度の高さを存分に感じさせてくれる。高域は独特のふんわりと心地良い響きを伴いサラサラとした質感。全体的に柔らかく艶っぽい暖かさを感じる音だが、基本性能が高いため音の説得力が強く決して緩い印象を与えない。心地良くもメリハリの効いた音は音の立ち上がりの速さが影響しているのだろう。音場感は頭一つ二つ抜けており、情報量の多さから残響成分をふんだんに感じられる影響で、広さ的にはZU Mobiusと変わらないのだが、s-PICT0009.jpgより強く空間を感じられるようになったという表現が適切だろう。HD650の音場感を最大限引き出せる音場系ケーブルとも言えそうだ。このケーブルの強みは響きの表現の上手さだろう。響きによって細かなニュアンスを感じさせてくれ、またハーモニーの美しさ、リアルな臨場感を生み出すことに成功している。クリアー明瞭タイプの極みがZU Mobiusならば、こちらはHD650らしさを継承した重厚で心地良いタイプの極み。HD650好きが音質重視でリケーブルするならALOがオススメ。音質のみで評価するならば、私の場合ALOが最も好みの音であった。


解像度10+

情報量10+

レンジ感10+

音場感10


★オーグラインケーブル(自作)

s-PICT0002.jpg情報量が多くエネルギッシュで密度感が高いのと同時に繊細さも併せ持っているのが特徴。厚みのあるタイプではなくどちらかと言えばクリアーなタイプなあたりはオーグラインが銀線ベースであることを思わせる。低域は重く低くビシっと引き締まっており実体感の強さはA Pure Soundと並んでトップクラス(厳密にはA Pure Soundのほうがより締まっていて実体感が強い)。高域は刺激皆無で標準ケーブルと同等かつ同種の繊細さを持っており、独特の艶があり色づけされているので好みが分かれそうだ。独特の艶やかな音色、重く実体感のある低域、この二つがオーグラインの主な特徴となる。低域方向へは低いところまで伸びるのに対し、高域方向へは低域と比較するといまいち伸びない。スピード感に優れておりキレが良くノリが良い点も見逃せない。迫力があり、ズシズシと体に響く実体感の強い低域を活かすという意味でHD25との相性が良いだろう。銀の特徴をベースとしながら銀の尖った要素を抑えるという音作りはA Pure Soundとよく似ており、あえてこの二つを比較するならA Pure Soundはストレート、オーグラインは繊細で優しい。A Pure Soundと違い、HD25においてもある程度空間の広さを形成し、綺麗に音が配置されるため、音の実体感ではA Pure Soundに劣るものの、音の存在感はオーグラインのほうが勝っているように感じる。A Pure Soundとオーグラインは今回紹介しているケーブルの中で、実体感のある低域を出せるツートップと言って間違い無いのだが、細かく分別するのならば、実体感のA Pure Sound、存在感のオーグラインとなるだろう。

解像度 8

情報量  9

レンジ感 8

音場感  7+


★オーグライン Pt(自作)

オーグラインに更にプラチナを混合したケーブル。値段はオーグラインの4倍もするが、音質的にはほとんど同じ。基本的なクオリティーの差は感じ無い。オーグラインに比べ、音に芯があり実体感が強まり、多少エネルギー感が強いように感じる。オーグラインと比べ値段ぶんの優位性があるとは思えないので個人的にはオススメしない。オーグラインPtを選択するのは自己満足以外のなにものでもない。万能型HD25を求めるのであれば、非常に適した線材である。

解像度 8

情報量 9

レンジ感 8

音場感 7+


★まとめ(+独り言)

ここまでやっておいて言うのもなんだが、いくらリケーブルしようがHD650がHD650であることに変わりはない。基本性能を数値化することで「差」を強調してはいるが、限りなく「微小な違いの範囲内での差」であることに注意してほしい。ハッキリ言ってどれでもほとんど一緒と言ってしまってもおかしくない、それぐらいの差なのだ。なにしろ元となるヘッドフォンは全て同じであり、当然ベースとなるのは常にHD650であるわけだから。言い換えれば、元々のHD650が好きでないのならば、もっと自分の好きな音を出せるヘッドフォンを買ったほうが手っ取り早いし賢い、と私は考える。


>独り言(スルー推奨)

私を含め、高額なケーブルに付け替えてまでHD650を使用するのは酔狂者と言っても過言ではないだろう。もちろん人によって考え方は違う。多額の投資をしてリケーブルし、HD650を使うのが間違いだとは言わないし、正解だとも言えない。ただひとつ言えるのは、ここまでしてHD650を使う人はよっぽどHD650が好きな人なんだろうなぁ、というのが個人的な感想である。確かにZU MobiusやALO 18G Cryoでは大きな基本性能の向上により、HD650とは思えないほどのクオリティーを発揮することが出来たが、元から高性能な機種を使用したほうがいいのでは?と考えてしまうのは私だけではないはずだ。「HD650ならではの良さがある」という意見も否定はしない。しかし、私からすれば例えばATH-W5000を使用して環境側で音質を調整したほうが遥かに高みを目指せるわけで、リケーブルしてまでHD650を使う利点を見出すのは難しい。そもそも、私自身がHD650をそんなに好きではないからこのような考えが出てくることに対しては疑う余地が無いと自分でも感じており、HD650を好きな人であれば、リケーブルしてまでHD650を使うに値するだけの理由を見出せるのだろうとは思う。私の中にこれだけのケーブルを試してみたのは無駄ではなかったという考えもある。これは別に自分を慰撫するためだとか、自分を肯定したいがためではなく、この企画を始める前に、自分にとってのHD650の限りなくゼロに近いマイナスからプラスに転ずる可能性を朧げながら感じ、希望を持っていたからにほかならない。そして、結果的にZU MobiusやALO 18G Cryoは見事その期待に応えてくれた。中でもALOはHD650としての完成形を見せてくれたと感じたことは事実。ただし、そのHD650の可能性はHD650という限られた世界の中での話であって、ヘッドフォン界全体で相対的に見るならば、最初に語ったようなHD650のリケーブルの意義に対する疑問が生まれ、数多くのヘッドホン全てというマクロ的な視点とHD650のみの限られたミクロ的な視点の混同から生まれる葛藤が存在する。リケーブルとはそのヘッドフォン内の話であり、HD650であればHD650の中でだけの話に留めておくべきなのか、それともHD650という範疇を超え、ヘッドフォン全体と並べて比較してもよいのか。HD650の音とはHD650の標準ケーブルを使用した時の音、リケーブルを施した時点でHD650ではないのか、リケーブルしたHD650はHD650ではないのか。様々な思いが駆け巡り、明確な答えを導き出すのは難儀である。ま、あれだな、実際やってみて自分にとって良いと思えればそれで良いじゃないか?


HD650のリケーブルはHD650が基本的に好きであることが重要だろう。そして、HD650で感じている「僅かな不満」がもしあるのならば、その僅かな不満を解消するという目的でリケーブルするのは賢い選択だと思う。根本的にHD650が好みと合わないのであれば、別ヘッドフォンを選択することをオススメしたい。

最後に、もしリケーブルをするのなら、値段と入手のし易さを考慮し、HD650のキャラクターを大きく変えてしまわないという意味ではSilver DragonやBlue Dragonが優秀だと思う。音質最重視で金に糸目を付けないのであれば、ZU MobiusやALO 18G CryoはHD650以上のHD650を感じさせてくれるので試してみる価値は十分にある。ただし、これらの高性能ケーブルはそれなりの環境が無いと真価を発揮できない(特にレンジ感)。ポータブル環境等ではオーバースペックになってしまい勿体無いように思うので、購入の際にはよく熟慮し決定してほしい。性能が高いとは言えないHD25にしても、Silver DragonやBlue Dragonがスペック的に相性が良い。他にCardasやOehlbach、Equinox、CLOUなど、HD650で使用できるケーブルがメーカーから販売されているので、それらを選択するのもいいだろう。



HD650レビュー

HD25レビュー

HD25-13 Ⅱレビュー

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★ローゼンクランツ

インシュレーターの王様と言われるローゼンクランツ。
よく研究された構造を持っていると同時に、とてもオカルト要素の強いインシュレーターである。
金属に方向性などあるのだろうか?
私はオカルトグッズに抵抗は無いので、余計な邪念無しに純粋に音だけで判断する。
音が良ければ文句は無い。


★PB-REX Ⅳ

pbrex4-2.jpg 

ローゼンクランツの名を不動にした定番モデル。
PB-REX ⅣはREXシリーズの現行モデルとなる。(2008年7月現在)
重量のある機器やスピーカー用のPB-BIGシリーズを除けばPB-REXシリーズが最上位モデルに位置する。


★インプレ

下位モデルのPB-COUSIN & PB-JRの延長上の音と簡単に言ってしまうのはおこがましい。
ただ単に性能を引き上げただけではなく、音楽性の向上やローゼンクランツの特徴にますます磨きが掛かっている。

私の勝手なイメージだが、インシュレーターは機器に内在する不純な要素をインシュレーターを通じて下へ(外へ)逃がす、そんなイメージを持っていた。
しかし、PB-REX Ⅳは逆のイメージを持った。
インシュレーターの下にはアピトンボードを置いており、PB-REX Ⅳはこのボードが持つエネルギーをぐんぐんと吸い上げて音として出している、そんなイメージを持った。
それほどエネルギー感に満ちていると捉えて欲しい。
ボードからインシュレーター、そして機器、これらが一体となって良い意味で共鳴し、エネルギーの流れを生み出し音として出す。
これがローゼンクランツなのではないだろうか?
もう・・・完全に宗教です。
そして、そんな宗教が好きです。

PB-COUSIN & PB-JRは音質面での特徴があまりなく、癖の無い"自然"な音を出せていた。
対してPB-REX Ⅳは"自然"な音であるのは同じなのだが、尋常ではない"美音"になるのが最大の特徴。
まさに究極の美音を手に入れることができるインシュレーターと言っていいだろう。
足だけでここまで音色が変わるものなのか・・・
ただし、どこか作られたような人工的な美しさのような気がしないでもない。
D-PROPのほうが自然な美しさのように感じる。

情報量、レンジ感、解像度、全てD-PROPと同等、全く遜色ない。
解像度だけを取ればチタン等もっと上は存在するが、これだけのバランス感覚を持ちながらこれだけの性能を出せているのは感嘆せざる得ない。
PB-COUSIN & PB-JRで不満のあった性能部分を見事に改善できていると断言できる。

空間表現について。
空間表現だけを見ればD-PROPのほうが優れていると個人的には感じる。
やはりD-PROPの音像の定位感が強い点、空間をしっかりと作り響きの広がり方の美しさ、空間の広さをハッキリと感じさせてくれるのはD-PROP。

D-PROPでもそうだったが、あまり細かな要素を言葉で表現できるようなタイプではない。
締まってるとか緩いとか、繊細だとか力強いとか、カッチリしてるとか柔らかいとか、そのどれでもなく自然の一言に尽きる。
このあたりはローゼンクランツの下位モデルも一緒。

ローゼンクランツ特有の要素、"音の流れ"と"音の熱さ"はPB-REX Ⅳでも健在。
流れと熱さがより洗練され、熱い血がなめらかに体内を流れるかのように音楽が流れていく。
"音の流れ"と"音の熱さ"はD-PROPには無い要素。
ローゼンクランツはエネルギー感が非常に強く音楽性が高い。


★まとめ

pbrex4.jpg下位モデルでの不満は全て解消された。
ローゼンクランツのインシュレーターを導入するのであれば、いきなりPB-REX Ⅳを導入するのが最善策だろう。
下位モデルと比べれば全てにおいて上回っているのだから。

最後に少し客観的な視点で駄目出しするならば、人によってはPB-REX Ⅳの美音を作為的だと感じ、嫌味に感じる可能性があること。
素直で味付け少なく万能タイプなのはD-PROPのため、万人受けしやすいのはD-PROPのように思う。
また、クリアーで高解像度、分離感が強くビシバシとしたサウンドが好きな人にも方向性が全く違うので合わないだろう。

音場感と自然な美しさを求めるのであればD-PROP。
エネルギー感と異常に美しい音、高い音楽性を求めるのであればPB-REX Ⅳ。

私の経験上、この二つがバランス型インシュレーター界のツートップ。
共に甲乙つけ難い素晴らしいインシュレーターで、強くオススメできる逸品だ。

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★audioquest OPTILINK-5

s-CAUG7CL7.jpg

audioquestの光ケーブルの最上位モデル。
光ケーブルにしては価格は高いように思うが、それでも10万円以下で買えるので同軸ケーブルに比べたらリーズナブルとも言える。
細身で普通に曲がるので取り回しは楽。


★インプレ

基本性能に関しては全く不満の無いレベルでハイクオリティー。
情報量が多く、特に解像度の高さは目を瞠るものあり。
クリアーで音の輪郭がハッキリしており、どちらかと言えば全体の音の繋がりでありハーモニーを重視するのではなく、それぞれの音をピシっと分離するタイプ。
クリアーで分離感が強いためか、全体の音の厚みはあまり感じられず、若干スッキリとした印象を受ける。
低域は締まっておりタイト、量感は多いとは決して言えないものの質は素晴らしく、ズシリとくる重さをしっかり出せ、またスピード感に優れている。
対して高域だが、おそらく一番好みの差が出るのが高域の質感だろう。
光ケーブルの宿命なのかもしれないが、どちらかと言えば無機質、良く言えば味付けがなく素直な音。
同軸ケーブル(Muse-Cable)と比べると、艶やかさ、煌びやかさに欠ける。

クリアーでピシっと締まっており分離感が強くレスポンスが良いので、特に打ち込みとの相性が抜群。
打ち込み特有の低く重い低域を見事に表現してくれる。
逆に全体的な音の繋がり、艶やかさや音楽性を必要とする曲との相性は良いとは言えない。
しかし、このあたりは好み次第で如何様にもなる範囲内なので、OPTILINK-5の音が好きであれば全く問題ないだろう。


★まとめ

音に音楽性、言い換えれば味付けを求めるのであれば素直に同軸ケーブルを選択したほうが無難だろうと私は思う。
ただし、OPTILINK-5と同等のクオリティーがどの程度の同軸ケーブルで実現できるのかは私にはわからない。
(参考までにMuse-Cableのデジタルケーブルは音の方向性は真逆だが、クオリティー的には大差無いと感じた。音の特性上そう感じるだけかもしれないが、若干OPTILINK-5のほうが解像度が高いように感じる。)
OPTILINK-5は高解像度でクリアー、分離感が強く味付けの無い素直な音を好む人にはピッタリなケーブルだろう。
無機質とは言っても基本性能が高く音に説得力があるため、露骨に無機質なわけではなく、「比較すれば確かに・・・」といったレベルなので気にならない人は気にならないかも。
逆に、味付け、例えでいくつか挙げるなら、エッジの丸さ、柔らかさ、ふんわり感、豊富な残響成分、音のハーモニー、艶やかさ、などなど、主に心地良いと感じさせるような成分を求める人にはあまり向いていないと思われる。

正直、基本的に私はOPTILINK-5のような音は好きではないのだが、たまにピシっとした音で聞きたくなる時があるので、気分に合わせて同軸と光の両方を併用するために購入した。
デジタルケーブル1本で僅かではあるが音の方向性を変えることができるので、DAC側のセレクターで切り替えて二種類の音を楽しむのもひとつの手ではないだろうか。

デジタルケーブルで音が変わるのは確かだが、本当に違いは僅かでガラっと変わるわけではない。
OPTILINK-5にしても、あえて違いを言葉で書くとピシっとしてて味気ない音となるが、言うほどピシっとしてるわけでもなく味気ないわけでもないので、微妙にそんな傾向のあるケーブル、程度に捉えて欲しい。


★光ケーブルの方向性

lmstさんのOPTLINK-5の記事で光ケーブルに方向性があると書かれているのを見て早速実践!
光ケーブルに方向性など無いだろう?
というのが正直なところで、期待せずに方向を逆にして接続。
不思議なことに・・・音が変わる・・・


低域と高域の主張感はなく全体のバランスが良い。
低域は量感よりも質感重視、凝縮されたようなスタイリッシュな低域で実体感、重さを出せる。
①②共に低域のスピード感は優れているが、②と比較すると①のほうがよりスピード感を感じられる。


一言で言えばドンシャリ傾向のバランス。
低域の量感が①より多く、また高域の主張感も①より強い。
そのため全体的に派手でエネルギー感の強い印象を受ける。

なぜ光ケーブルでこのような違いが出るのかサッパリわからない。
しかし、実際試して聞いてみると確かに違うと感じるのは事実。
不思議としか言いようがない。
OPTILINK-5購入の際は是非お試しあれ。

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43786053.jpg型番:GS1000
メーカー:GRADO
タイプ:開放型ヘッドフォン
ハウジング:木製 (マホガニー)
再生周波数帯域:8 - 35,000Hz
インピーダンス:32Ω
感度:98dB
質量:325g(ケーブル含む) / 240g(本体のみ)
プラグ:6.3φステレオ

メーカー製品紹介ページへ

 



装着感はGRADOという枠を超え、ヘッドフォン全体で見ても装着感が良いと言えるレベルにあります。耳をスッポリ覆うタイプのイヤーパッドなので、ザラザラしたパッドが耳を押さえつけることがなくなったのが幸を奏しているようです。重量も軽く快適な長時間リスニングが可能となっています。「K1000か!」ってぐらい音が盛大に漏れるので周囲の入念なチェックと音量に注意。

初期エージングは約20時間で終了。最初は擦れるような中高域でガサツなイメージが付きまといますが、20時間ほど鳴らすと美音へ変化します。同時に高域の刺激も嘘のように解消されます。低域も程よく締まり、全体のバランスが初期に比べると僅かにニュートラル方向へシフトし、全体のまとまりが出て安定感も増してきます。

gs10002.jpg基本性能は非常に高く、特に超微小な音まで滲まずぼやけることなく明確に鮮明に描き出す解像度の高さには驚かされます。情報量も多く密度感の高い空間表現となっており、密度感がありつつも開放型で抜けの良さを持っており、中高域はクリアーな印象。PS-1では若干不満のあった高域方向へも気持ちよく音が伸びていき、低域から高域までしっかりと音が出ているのでバランスが良いです。量感バランスは低域寄り~フラット。低域寄りであることは間違いないのですが、ソースによっては驚く程自然なフラットバランスでたいへん聞きやすいです。量感たっぷりで太く分厚く、そして柔らかく暖かみのある低域。『RS-1をパワーアップさせたような低域』と『 PS-1のようなLIVE感溢れる全体感を持った低域』を併せたような低域です。中高域は低域と比較すると量感は若干控えめで、解像度が高く繊細な表現力、時にサラサラという言葉が浮かぶ程に極小の粒子感までも感じ取れます。低域でどっしりとした全体の安定感を出し、クリアーな中高域で解像度の高さを見せるバランス感覚はATH-L3000を思わせます。全体的なイメージとしては柔らかく優しく暖かみのある心地良いサウンドで、基本的にRS-1の延長線上の音作りです。特に中高域の艶やかな美音には引き込まれてしまいます。音場感ですが、単純に場の広さという意味ではドライバを遠ざけたぶんだけ音が遠くから聞こえるようになって物理的に広くなった程度です。しかし、PS-1で感じられる抜群の臨場感を更に拡大したかのようなスケールの大きな臨場感による聴覚上での空間的な広がり、そして立体感はなかなかのもので、GRADO特有の耳横で鳴っているという感覚はあまり感じられません。音場音場とこだわることなく、GRADOの、開放型での、特有の「臨場感」を肌身で味わうのがGRADOユーザーの嗜みといったところでしょうか。

GS1000は高い基本性能によって細部の表現に長けていますが、edition9とは対照的に音像型よりも音場型に向いていると感じます。例えるなら、奏者一人一人の演奏をとにかく細かな音まで拾ってリアルに描き出すのがedition9。同様に細かな音まで拾いますが、それよりも全体的な場の雰囲気であり臨場感を重視したのがGS1000。そのため環境は音場型にセッティングしたほうがGS1000の良さを引き出せると個人的には思います。

s-P1010102.jpg美音系であるため、あまりストレートなパワフルさ、ガッツを必要とする音楽には合わないのではないでしょうか。また、GS1000はノリの質が鋭角的なキレ重視のノリではなく曲線的な揺らぐような気持ちの良いノリなので、アップテンポな曲よりもミドルテンポ以下のほうが相性が良いように思います。私的にはクラシックやジャズ、ポップスならば女性Voモノを魅力的に鳴らしてくれるヘッドフォンだと感じます。クラシックやジャズ等は臨場感重視で楽しめるので、ソロからオーケストラまで編成に関わらず上手く鳴らすことができますし、加えて低域から高域まで驚く程フラットで自然なバランスで鳴るのでとても聞きやすいです。対して打ち込みなのですが、GS1000の量感ある低域は問題ありません。しかし、密閉型のようなグっとくる溜めが弱く、空気感を伴う低域の質感、及びキレの質が影響して、どうしても生々しくと言うか有機的な音になってしまい、打ち込みとの相性が良いと言うのには抵抗があります。多少無機質ながらもガツガツ&ビシバシくる低域(edition9等)のほうが打ち込みに適していると私は思います。もちろんGS1000で打ち込みもアリですが、生楽器と比べるといまいち感があるのは否めません。言い換えれば、それだけ生楽器の表現力に秀でているヘッドフォンだとも言えます。クラシックやジャズ、LIVE音源などの良さを存分に引き出してくれるヘッドフォンです。豊潤な低域、気持ちよく伸びきる高域、そして極上の美音は素晴らしい弦楽器やピアノの音を聞かせてくれます。「うっとりするようなジャズなど聞くときには是非!」と言いたくなる機種ですね。

最初はGRADOらしからぬ鳴り方(主にイヤーパッドの違いが原因でしょう)から「こんなのGRADOじゃない・・・」と感じるかもしれませんが、慣れてくればRS-1の延長上に位置するヘッドフォンだと感じ、しっかりとGRADOしているので、RS-1が好きな人ならGS1000も好きになれるのではないでしょうか。このニ機種を使い分けるなら、気軽に音楽を聞きたい時はRS-1、どっぷり音楽に浸りたい時はGS1000。最初は違和感のあったGS1000ですが、最終的には「やはりGRADOはGRADOだった」と思わされました。

最後に、高域の痛さや線の細さといった要素が出るケースがあるようですが、これらの点は環境次第で改善可能だと思いますので、気に入らなかった場合、安易にGS1000を手放さず、少しセッティングを弄ってみて欲しいと強く願います。勿論同じ鳴り方でも人によって感じ方が違うので難しいところではありますが、私の場合高域の痛さは出ませんでしたし、線が細いという感覚は受けませんでした。また、キレをより強く引き出すこともできました。この場では具体的なセッティングの話は避けますが、是非いろいろ試してみて欲しいと思います。

GS1000に限らず、edition9でもATH-W5000でもそうなのですが、性能の高い機種はなかなか一筋縄ではいかない印象が強いです。それだけ潜在能力が高いということでしょうか。いずれも恐るべき音を秘めています。それを引き出してあげる作業もオーディオの楽しみのひとつだと私は思います。

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